Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
俺とタエは今はオーストラリアに居る。
俺達が乗っていた船は最も難民の数が多く。
どこも受け入れを拒否し最終的にオーストラリアに行きついた。
オーストラリアは、BETAの脅威がまったく無い大陸で楽園なんて言われたりするらしいが実の所は、白豪主義であり難民を奴隷扱いすることで問題となっている国である。
俺は、何も考える事が出来ずにふらふらと誘導されるまま難民キャンプに押し込められた。
難民キャンプは、1つの町の様になっており町には市場がありそこで少ない食糧を買う事も少し脇道に逸れて闇市で軍から流れてきた武器弾薬などを買う事もできる。
だが、そこに売っている物を仕事が無い難民が買う事なんてできない。
そのため、難民キャンプは半歓楽街になっており炊き出しに来た軍人に体を売ったりして金を稼いでいる。
だが、大多数は、オーストラリアに対して忠誠を誓い軍に入る者が殆どだ。
なぜ少数でも歓楽街で働いている人がいるのかと言うと、軍に入ると難民で構成された部隊は優先的に前線へと送られるからである。
折角BETAから逃げ切れたのに、また地獄に戻るのは嫌だと言うのが理由だ。
そんな中で俺は、毎日炊き出しに顔を出さず残飯を漁りその日暮らしを続けていた。
タエもそんな俺の傍にいつも居てくれている。
今日も俺は、残飯を探しに住処にしているボロ小屋から出て行く。
タエは目立つので、上着で隠しながら抱いている。
形見のナイフは腰にショットガンは、背中に隠している。
いつも残飯を漁る場所に来るが今日は無いらしい、我慢して明日来ても良いが今日の空腹はいつもより辛い。
俺は、他の場所も見に行くことにした。
次の場所まで歩いていると、路地裏から何か叫び声のようなものが聞こえるが、何を言い合っているのか解らない。
関わるのも後々面倒になると思い先に行こうとするが、タエがそれを許さなかった。
俺は、タエに余計なことはするな!と目で訴えるがタエは俺の腕から飛び降り声のした方に走って行く。
俺は、呼び止めようとするが声がでない。あれから一言も声を出していなかった俺の体はいきなり声を出そうとしたせいで驚いているようだ。
俺は、呼び止める事ができないことに苛立ちながらタエを追いかける。
そこには、今にもタエを蹴り飛ばそうとしている男が目に入った。
その光景を見た瞬間に頭の中で色々な思い出が紙芝居のように出ては消えて行く。
最後に見たのは、「後の事は頼んだよ」と言った父さんの姿……。
その事を思い出した俺は、1秒前の俺を殴りたくなる。
俺は、何て言われた!!後は頼むと言われ任せとけと言ったはずだ!!父さんの夢は人を救うことだ!俺が託された夢だ!!この夢は果たさなければならない!BETAから人々を救わなければならない!こんな所で時間を潰している暇は無い!
そして……。
「お前等、誰の家族を蹴ろうとしていた?」
もう家族を傷つけさせはしない!!
タエと男の間に割り込み男の蹴りを自分の足で受け止める。
5人いる男達は、何か喚いているが言葉が解らない。
俺は、タエを抱き上げ近くで座り込んでいた女に預ける。
そして、5人の男相手に殴り合いを始めた。
俺が正気に戻ると周りには倒れている男達がいた。
俺は、急いで安否を確認し全員が無事であることを確認するとその場に座り込む。
俺が、息を整えているとタエが俺の胸元に飛び込んで来て頬ずりをする。
「タエ待たせて悪かった……、ただいま。」
今までの俺は、俺じゃ無かった。
それをタエに教えて貰った、その感謝を込めてタエを優しく撫でる。
そんな時後ろから声が掛かる。
「助けて下さって、ありがとうございます。」
俺に話掛けてきたのは、綺麗な長い銀髪をカールさせている。
俺よりも年上だろう女性だった。
「日本語……。話せるの?」
「勉強させられたからね……。」
そう言うと少し辛そうな顔をする。
俺は、何か拙い事を聞いてしまったのかと心配したがその必要は無かった。
「ねぇねぇ!君強いね!?どこで強くなったの?もしかして軍人?」
いきなりのハイテンションに俺は着いて行けずに狼狽してしまう。
その時、路地裏の入り口の前に車が止まり中から大男が飛び出してくる。
「リリア!!」
「ザウル!!」
お互い名前を呼び合いながら抱き締めあう、どうやら知り合いの様だ。
どうでもいいことだが、目の前でイチャイチャしないでほしい。
「君達に言われたく無いなぁ~?」
リリアは、俺とタエを見てそう言う。
俺は口に出していたか?と疑問に感じていた。
「大丈夫!口に出して無かったよ!?」
リリアが慰めてくれるが、俺はさらに違和感を感じた。
その様子を見ていた大男……、ザウルと呼ばれた男が俺に近づいてくる。
俺は、咄嗟に攻撃の姿勢を取るが男はお構い無しに近づいてきて俺を抱きしめた。
「……は?」
俺は、いきなりの事に頭の中がパニクってしまう。
「リリアから聞いた!君が彼女を助けてくれたらしいね!ありがとう!」
「声がデカイんだよ!耳が痛い!?」
「あぁ!すまなかった!!私は、ザウル・カザコフ大尉だ!君の名前を聞いても良いかな?」
「築地和真だ。良いから離せ!抱き着くな!!」
「ハッハッハッハッハッ!照れなくても良いよ?」
「照れてねぇよ!」
ザウルは笑いながらも解放してくれた。
俺とザウルに挟まれていたタエはゲンナリとしている。
「おや?もうこんな時間か……。じゃあな少年!!また会おう!!」
ザウルはデカイ声のまま車に乗り込む。
リリアもそれについていく、車に乗る前にリリアはもう一度「ありがとう!!」と笑顔で手を振ってそのまま車に乗り込んだ。
俺は、ボロ小屋に帰る道中でタエに話し掛ける。
「タエ……、俺明日から軍に行こうと思うねんけど良いかな?多分それが、俺の為すべきことの一番の近道になると思うねん……。タエはついてきてくれるか?」
俺がそう聞くとタエは俺に頭を擦り付けてくる。
俺にはその行為が了承してくれたのだと思い。
「ありがとうな……」と感謝の言葉を口にした。
車の中でザウルは運転席にリリアは助手席に座り、難民キャンプとは違い綺麗に舗装された道路を車で走る。
ザウルは、上機嫌なリリアに話し掛ける。
「随分期限が良いな、リリア?」
「もう……。解ってるくせに♪」
「確かにな……。」
「見つけた!見つけたよ、ザウル♪私達の仲間になってくれるかもしれない人を!」
「あぁ、だから彼には発信機をつけさせてもらったさ。俺達の仲間になってもらうためにな……。」
「さすがだね、ザウル!」
そう言われたザウルは、眉を寄せる。
「……彼は、壊れているのか?」
ザウルの問いにリリアは顔を一瞬伏せるがすぐにザウルに目を向ける。
「……大丈夫だよ。まだ、壊れていない。それに壊れてしまっても彼なら乗り越えられるよ!」
「お前がそう言うならそうなのだろうな……」
ザウルは彼のこれからを案じながらも、我々大人が不甲斐無いばかりにと、愚痴を零しながらアクセルを強く踏み車の速度を上げた。
朝俺が目を覚ますといつも傍にいるタエがいなかった。
部屋の中を見回してもいない、そもそも家具事態無いボロ小屋に隠れる場所など無い。
俺は、不安に駆られ急いでナイフを腰に銃を背中に入れ外に飛び出す。
すると、外にはタエと遊んでいるリリアとその光景を眺めているザウルがいた。
「なんで、お前達がここに居る?」
俺は、すべての可能性を瞬時に考えるがどれも可能性が低いことばかりで、相手の考えが解らないことから、一気にすべての筋肉を起き上がらせ臨戦態勢を取る。
そんな俺を見てザウルは苦笑いを浮かべる。
「そんなに警戒しないでくれ……。まずは、いきなり押しかけた事を謝るよ!それと、君の居所が分かったのはそれの御蔭さ!」
相変わらず声がデカイなと思いながらもザウルが指指す所を見ると、何かが付いていた。良く見なければ虫と間違えてしまいそうな小さな物だ。
「発信機か?」
「そうさ!」
「で、こんな物を着けてまで俺に何のようだ?」
「君をスカウトしに来た!!」
「スカウト?」
「そうだ!!君は、世界を変えたくないか!?人々を救いたくないか!?」
俺は、タイミングのよさに警戒しながら話す。
「お前と行けば力をくれるのか?BETAから人を救うための力を……」
俺の問いかけにザウルは深く頷く。
「あぁ!君に力を上げるよ!!ただし、君は力を得る代わりにすべてを失うことになる。」
「どう言う事だ?」
「今はまだ話せない、1つ言える事は、今の世界ではBETAを滅ぼしても変わらないと言うことさ……。人類はその銃口をBETAでは無く人に対して向ける様になる。」
「それは、人間同士の戦争が始まると言うことか?」
「今のままならね……。それに、そもそもBETAに勝つことが出来ない!」
「人類を1つにするために、外道になれと?」
「まだ、可能性の話だけどね?世界がどうなるのかまだ解らない……。」
俺は、ザウルの顔を見る嘘を言っている様には見えない。
それに、軍に入っても力を得る事が出来るとは限らないし、なによりコイツは人間同士の殺し合いを止める術を持っている。
なら、俺の答えは決まっている。
「俺は、もう外道だ。なら……、今さら外道になる事を恐れたりしない。人を救う事が出来るなら、その力をくれるなら俺はお前達とその道を進むよ」
「そうか……。歓迎する!行こうか?」
車に乗り込む時に俺の装備を見たザウルは少し驚いた様子で「物々しい姿で出てくるね」と言ったが、「形見だ」と言うと理解してくれた。
俺達が、着いたのはアホ程でかいビルが目の前に立ちその周辺が軍の基地になっている場所だった。
俺が驚いているとザウルとリリアは悪戯が成功したみたいな顔をして、演技がかった口調で言った。
「「ようこそ!国連太平洋方面第9軍 ケアンズ基地へ!!そしてここが食品会社ネフレだ!!」」
「食品会社!?」
俺の叫びを他所にリリアが背を押す。
「まぁまぁ!細かいことは後から後から♪」
「あ、オイ!」
俺は、会社の中に押し込まれて行った。
社内は、高級ホテルの様だ。
俺は、難民キャンプでの生活を思い出し皮肉を込めて言う。
「随分と良い所で働いているんだな?」
するとリリアは事も無げに言う。
「各国家や企業のお偉い人達を招くのだから見栄は必要でしょ?」
俺は、その答えに無言で返した。
俺達はそのままエレベーターに乗り込む。
すると、ザウルはカードの様な物をボタンの下にある隙間に差し込んだ。
すると、エレベーターは地下に向かって動き出す。
「地下に行くボタンなんて無かったが?」
「今から行くのは選ばれた人しか行けない所さ!つまり秘密基地みたいなものだよ!!」
エレベーターが止まり扉が開く、その先にあった部屋はすべての壁が真っ白に塗装された取り調べ室の様な場所だ。
実際取り調べ室なのだろう。
その広い部屋の真ん中には、机がありその先には、もう1つ扉があった。
俺達が机のイスに座ると奥の扉から1人の男が入ってくる。
「やぁやぁ!君が、和真君だね?」
その男は、綺麗な金髪を肩で切り揃えた胡散臭そうな奴であった。
「あんたは?」
「私の名は、レオ・ネフレこの会社の社長をやらせて貰っている。」
レオは、自己紹介をしながら俺の前の席に座る。
「さて……。和真君、君はこの世界をどう思う?」
いきなりで訳が分からなかったが、素直な意見を言う事にした。
「終わりを迎える寸前かな?」
「どうしてそう思う?」
「人類はBETAに滅ぼされかけている。そしてこれはザウルから聞いた事だが、人類は滅ぼされかけているのに1つになることが出来ずにいる。このまま行ったら何れBETAに絶滅させられるか、仮に勝てたとしても人類に先は無いと思うから……。」
「ふむ。君は、この世界を理解しているのかな?」
理解なんてできているはずが無い、俺は世界を自分の目で見た訳じゃないのだから。
「理解なんてしてないさ。した気になっているだけだ。」
「そうか。じゃあ、解りやすく今の世界の形だけの協力関係を教えてあげよう。」
レオは、腕を組み直し教師の様に話始める。
「良いかい?まずとある学校にA君とB君がいるとしよう。
A君とB君はいじめっ子から自分の身を守るために協力しようと握手をしているんだ。
でも、A君はいじめっ子とは教室が違うから虐められる可能性が低い、しかも頭が良いからB君を盾にして逃げることもできる。
その事を知っているB君は、盾にされても大丈夫なようにいじめっ子に勝つために体を鍛えている。それを知ったA君は自分が殴られるかもしれないと武器を手に持ち出した。
これで、いじめっ子をこらしめよう!とB君にいってね?でもB君は、その武器が自分に向けられるかもしれないと心配になる。
ここで、お互いが疑心暗鬼になりながらもお互いに自分の身を守るために、手を繋いでいるんだ。いじめっ子に見せつけるためにね。
でも、もしいじめっ子が転向していなくなったら?A君とB君はこう思うはずさ{次はコイツが僕を虐めるに違いない!}てね。
学校の中でもいじめっ子の次に強いA君とB君がケンカなんてしだしたら学校中が大混乱だ。けれど、実際はいじめっ子は転向なんてしないからお互いに握手したまま……。
これが、世界の形だ。理解できたかい?」
「何となくだけどな……。で、お前達の立場は?」
「私達は教師かな。A君が虐められたら助けに行き、B君が虐められたら助けに行く。そして、A君とB君がケンカを始めたら体罰込みで指導をする。そんな立場さ。」
「体罰ね……。だから、ザウルは外道になるかも知れないと言ったのか」
「まだ、もしもの話だけどね。A君とB君がケンカをしなければ良いだけだ。」
「それにしても教師か……。世界の支配者にでもなったつもりか?」
俺の問いかけにキョトンとした顔をレオはした。
「何を言っているんだ?学校の支配者はPTAだろ?」
「……そう言うことか。」
つまり、こいつらのバックには別の組織がいるという事か。
俺、何だか悪の組織に入る気分だ。
嫌、今は悪の組織になる前の組織か。
「それでは和真君、面接を始めよう!この学校には覚悟の無い人間はいらないのでね?単刀直入に聞くよ?君はその手を赤く染めて外道と悪魔と呼ばれようとも人類のために働く気はあるかい?」
そんな物、父さんの遺言を思い出した時からできている。
救いきってみせるさ、人を!例え悪魔と契約したって構わない!この身はすでに地獄に行くことが決まっているのだから。
「あります。この身はすでに外道ですが、人を救えるなら悪魔にだってなってみせます。それにまだどの生徒もケンカを初めていない、なら体罰をする必要が無い、それとまずはいじめっ子からどうにかしないといけないでしょ?」
俺の答えにレオは満足そうに頷き、ザウルとリリアを見る。
リリアが頷くとレオは声を張り上げた。
「よろしい!その通りだ!私達が悪魔になるかは世界が決めることだ。そして、 我々が為すべき事はBETAから人々を救うことだ。最後に、これから私達は常にBETAと戦うことになる。楽に死ねる可能性が極めて少ないが構わないかい?」
「当然」
「愚問だったね!よし、君は採用だ。これからよろしく頼むよ!」
「こちらこそ!」
俺が、返事を返すとレオは椅子から立ち上がり奥の扉に向かう。
「良し、着いてきたまえ!!」
俺達は、レオの後を着いて行く。
俺達が来た別の部屋では整備員が忙しなく動いている。
俺は、レオの後をさらについていくとゲームセンターに置いてあるような大型筐体があった。
「さて和真君!この服を着てこれに乗りたまえ!」
渡された服はどう見ても、全身タイツでしかもスケスケだった。
「オイ!これを着るのか?」
「そうだよ?これは、衛士強化装備といってね。まぁ、万能なパイロットスーツだと思ってくれ。着方は説明書が一緒に入っているから、それを見て頼むよ?更衣室は奥にあるから。じゃ、私はこれから用事があるのでこれでお暇するよ!ザウル、結果報告頼むよ!」
「了解!」
そう言い残しどこかに行ったレオを眺めていると、ザウルとリリアが話しかけてくる。
「このテストで合格すれば衛士になれる!頑張れよ!」
「応援してるね!」
更衣室で着替えてみたは良い物の、鏡で今の自分を見てみると吐き気が込み上げてくる。
「こんなスケスケ、男に着せてどうすんねん。作った奴は変態か?」
もうそんな事を言っても後の祭り、どうでもいい羞恥心は頭から追い出しテストに向けて集中する。
神経を研ぎ澄まし、周りの音や光をシャットダウンし自分の中の世界にのみ意識を向ける。
心臓のリズム良い音が俺を落ち着かせる。
そして、音と光を取戻し外の世界に帰還する。
……もう準備はできた。
「よし、行くか!」
俺は、着替えを済ませ戻ってきた。
タエはリリアの頭の上にいる。
「準備はできたか!?本当は、色々と訓練してからこのテストをするのだが君は軍の者から訓練を受けていただろ!?さぁ、乗りなさい!!あぁ、それと気分が悪くなったらこのエチケット袋を使いなさい!」
俺は言われた通りに乗り込み座って待つ。
すると、突然目の前の景色が変わる。
「うわっ!」
「落ち着け!それは、網膜投影システムと言う奴だ!戦術機に乗ると外の映像などを見せてくれる便利なシステムだ!君は、ただ座っているだけで良い!勝手に後は機械がやってくれる!それでは、戦術機適性試験を始める!」
ザウルが言った瞬間、筐体と映像が連動して動き本当に戦術機に乗っている気分になってくる。
だが、たしかに少し気分が悪くなるが吐く程ではない。
精々、ジェットコースターと3D映画が合体した程度の物だった。
テストが終わり筐体から出ると、ザウルとリリアは驚いていた。
「気分、悪くないの?」
「少し悪いが問題無いレベルだ。」
「少し驚いたが、これも1つの才能だな!」
「で、結果は?」
「合格だ!」
俺は内心で小躍りしそうな程喜んでいたが、隠しきれずに顔がニヤけていた。
ザウルとリリアは微笑みながら共に喜んでくれる。
「それでは、和真これからよろしく頼むよ!」
「よろしく~!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。リリア、ザウル!」
「話し方が変わったな?」
「本当だ!」
「これから、この部隊に所属することになるのですから当然だと思います。」
「確かにその通りだが私達は気にしない!このメンバーといる間は普段通りで構わない!
では、祝いの抱擁をしてやろう!」
ザウルは、一瞬で俺の目の前に現れ俺を抱き上げる。
「わっ!ちょ!」
「あぁ~!ザウルずる~い!私も~!」
リリアが、背中から抱き着く。
「やめて~!」
「「照れるな照れるな!!」」
「照れてない!!」
俺が、もがいているとザウルとリリアが俺の匂いを嗅ぎだした。
「な、なんですか!?」
「少し臭うな!」
「和真!シャワー浴びてないの?」
「キャンプにいる間はシャワーなんか浴びれませんよ!臭うのは仕方ないでしょ?」
「でわ、浴びに行くとしよう!」
「へ?」
「タエもキレイキレイしようね~!」
タエはリリアに連れて行かれた。
「よし!俺達も行こうか!!」
「待って~~!!」
俺は、問答無用で連れて行かれた。
シャワー室ではザウルが嫌がる俺の頭を笑いながら洗ってくれた。
俺は、その時に父さんと風呂に入った時の事を思い出し涙を流したがザウルは笑いながら見て見ぬ振りをしてくれていた。
どうでもいい事だが、ザウルの男の象徴はプレシオサウルス級だった。
俺達が、サッパリしてシャワー室から出てリリアと合流し話をしているとレオがやってきた。
「おめでとう!和真君、君にプレゼントがあるんだ!ついてきてくれ」
ザウルは、いつの間にかレオに合格した事を伝えていたようだ。
俺は大方予想がついていたので、逸る気持ちを抑えながら着いていく。
次に連れて行かれた場所には列車があり、それに乗って進んで行き止まった場所からさらにエレベーターで下るとさっきまで居た場所よりも大きい格納庫だった。
俺達は格納庫を進んで行くと、ハンガーが何機かありそれぞれに巨人がいる。
その中に他のよりも整備員が忙しなく動き回っている2機のハンガーがあった。
「これは?」
片方は、頭の先に耳の様な物がついていて、もう片方は蜘蛛の目の様になっている。
レオは、蜘蛛目の方に俺を誘導する。
「これが、君の戦術機!殲撃10型だ。」
俺は、等々見つけた俺の力を前に歓喜の震えを止めることができない。
「コイツが俺の力……。」
レオは両手を広げ、舞台の役者の様に声を張り上げる。
「この殲撃10型は、表立ってネフレがライセンス生産しているF-16を統一中華戦線から改良技術を買い一部ライセンス生産で作った訳だが、統一中華戦線で作られている物とは、訳が違ってね!なんと、最新の技術が一部使われているんだ!だから、コイツは2.5世代機と言っても過言ではないよ!!そして、拡張性に乏しい機体だけれど、出来る範囲で君色に染め上げて上げよう!!」
俺は、この力を早く自分の物にしたいと逸る気持ちを抑えきれずにレオに詰め寄る。
「今から乗らせてくれるのですか!?」
レオはそんな俺に、後ずさりながら答える。
「準備がまだ整っていないんだ。明日には、乗れるからね?そんな事より、新たな仲間が出来たんだ。パーティーをしないといけないだろ!?そうと決まれば、さっそくPXに行くとしよう!!」
「「お~~!!」」
ザウルとリリアはノリノリのまま俺を拉致していった。
PXは、地上にあり学校の食堂を大きくした感じだ。
窓から外を見ると真っ暗で時計を見ると深夜になっていた。
「ここは、国連所属のPXでね。ご飯を食べる場合はここを使うと良いよ。」
「つまり、ここは国連の基地?会社では無く?」
「電車に乗ったろ?」
なんと、国連の基地の地下に工場を作っていた。
そんな事をしていいのかと思うが、この男ならやりかねないと思えてしまう。
「あぁ、国連軍の基地と言ってもここを使うのは、ネフレ所属の者ばかりだから安心するといいよ!」
「社長!そろそろ始めよう!」
「そうだ!そうだ~!」
ザウルとリリアが痺れを切らし騒ぎ始めた。
「それでは、始めるとしよう!その前に、和真君にはこれを渡しておくよ」
手渡されたのは、一枚のカードだった。
「それがあれば、さっきの所にも行ける。あそこ以外に行ける場所は部屋にあるパソコンで確認してくれ、部屋には後でザウル達に案内させるからね?」
「はい!ありがとうございます!」
「堅苦しいね?公の場では、それで構わないがこのメンバーの時は普段通りで構わないよ!」
「わかったよ。社長!」
「よろしい!では、パーティーを始めよう!!」
そこからは、辛かった……。
どこからか酒を出してきたレオにより酔ったザウルに抱き締められ落とされそうになり、リリアは凄く色っぽくなるし、レオは完全に壊れていた。
それと、俺は下戸である事が判明した。
それでも、酒を飲ませてくるので吐き死にそうになった。
パーティーが終わる頃には、皆酔い潰れていた。
ザウルは、頭から空のバケツに頭を突っ込んで寝ており。
リリアは、そんなザウルに四文字固めを駆けて寝ている。
レオは、酒瓶を抱きしめ寝ており時折キスさえしている。
俺は、そんな皆に毛布を掛けてその場を後にする。
向かう先は格納庫、部屋の中は最低限の明かりしか無く俺の息遣いと足音だけが響き渡り不気味さを際立たせる。
その中でもライトアップされた目的の物は威風堂々と立ったまま目覚める時を待っていた。
その姿を見た俺は幻視する。
コイツと共にBETA共を倒し世界が平和になり皆が笑う姿を。
……でもその中に、父さんやくまさんが居るのに気が付くと一気に現実の世界に引きずり出された。
「ホンマに嫌になるな。夢くらい見させてくれや……。」
もう見ることが出来ない、実現することが出来ない夢を抱きながら愛機の足元に近づいて行く。
「もう会う事ができひんけど……。そっちには行かれへんけど……。例えこの身が地獄に落ちようとも救える人は居るはずやから……」
佇む自分の愛機になる殲撃10型を見上げながら縋り付くように手を当て、この世界に来てからの経験を振り返りながら忘れるか、忘れてたまるかと自分に言い聞かせ自分に……嫌、世界に宣誓するかのように心の中で呟いていく。
いきなり知らない場所に来てしまって、泣きながら絶望した……。
この世界は自分の元居た世界とは違うことを知って、二度と家族に会えないと泣きながら絶望した……。
化物の姿を見て、ただ脅えることしかできない自分の無力さに泣きながら絶望した……。
くまさんが死ぬことをわかっていたはずなのに止めることができない自分に泣きながら絶望した……。
父さんを殺すことしかできない自分に泣きながら絶望した……。
父さんを殺したくせに、生き残れたことに安心している自分がいることに絶望した……。
絶望しつくしたのにそれでも、ただ流されるままにしか生きていけない自分に絶望した……。
すべての絶望を経験したと思っていても、この世界ではほんの一部でしかなくて、自分は何もできず何もなせずこのまま心も体も腐って死んでいくのだと思っていた。
でも、手に入れた……力を
絶望しか無いこの世界で唯一の力を……
「──────だから」
最後の「だから」のセリフは、笑いながら力に酔いしれる中で口から漏れ出た言葉、そんな感じです。
完全にオリジナルキャラ、オリジナル組織を登場させました。
これから、色々なキャラと主人公が出会っていくことになると思います。
これからも、よろしくお願いします。
リリアですが、クロニクルに登場するリリア・シェルベリとは別人です。