Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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五六 和真

1998年3月

 

 俺が今いる場所は、国連太平洋方面第9軍ケアンズ基地ネフレ社野外訓練場である。

 演習場は3か所ありその一つの荒れ果て廃墟と化した市街地を再現した演習場である。

 ここには、平和な頃の光州の様な人の息吹が感じられず、BETA共が来た時の町と雰囲気が似ている。

 その空気を再現しているのは解るが、気持ちの良いものでは無い。

 ここに、来る度にあの頃を思い出してしまう。

 けれど、今の俺にはあの頃無かった力がある。

 俺はその力を逃がさないために、もう何度目になるのか解らない数の操縦桿の握りしめ直しと着座位置の調整を行っていた。

「すぅ……はぁ~。」

 俺は、深呼吸するが密閉されたコックピット内ではいくら深呼吸しようとも同じ空気が肺の中に入ってくるだけで、気持ちの切り替えが出来るはずが無い。

「ふぅ……。」

 今度は首を回しながら溜息を零し気持ちを切り替えようとするが、濃度の濃い二酸化炭素と鬱陶しい気持ちがミックスされた物しか出てこなかった。

 しかも、戦術機の首も一緒に動いたようだ。

 俺は、その事が面白く1人でニヤけていた。その時、わざわざザウルとリリアが通信で話駆けてくる。

「こちらトイ1!トイ3落ち着かないようだな?愛しの子猫ちゃんといられないのがそんなに辛いか!?」

「こちらトイ2~!あのモフモフは体験しないと解らないよ?いつまでも、抱きしめていたい位気持ちが良いんだよ!」

「トイ2……。タエが許している内は良いですが、過度にはしないでくださいね?それと、トイ1タエは子猫なんて歳じゃないですよ。」

「むッ!そうなのか……。何なに甘え上手なのに子猫じゃないのか……。」

 俺は、その発言にピンとくる。

「あんたか!?最近タエが丸くなってきた原因は!体調管理をしているこっちの身にもなってください!!」

「すまんすまん!でも、おねだりが上手なタエもいけないと思うぞ?あんな事をされては、ついついお菓子を上げたくなるじゃないか!」

「なるじゃないか~!」

「トイ2あなたもですか!?」

 ふざけ合っている内に先ほどまでの嫌な空気は姿を完全に消していた。

 俺は、気を回し過ぎだと思いながらも素直な気持ちを伝える。

「こちらトイ3、気分が落ち着きました。……感謝します!」

「「どういたしまして!!」」

 まったく、俺はあの人達からしてみればいつまでたっても新任少尉のままなのかな……。

 俺は、殲撃10型を紹介された次の日、今後世話になる人達の紹介もされた。

 戦術機の操縦や必要な勉学それにザウルとリリアの秘密も教えられた。

 そして、少尉になることもできた。

 戦術機の操縦も、ザウルとリリアに教え込まれたので自信がある。

 それでも、落ち着くことが出来ない。

 そんな事を考えているとCPから、通信が入る。

「これより、オーストラリア海軍との演習を始めます。」

 ――――――来た!!

 今回の合同訓練最後になるエレメントでの対人戦闘演習。

 あっちは二機ともF-18ホーネット、F-15イーグルに次ぐ性能を持っておりしかも乗っているのがエース級らしい、勝てる見込みは低いがそれは俺が1人で愛機がただの殲撃10型ならの話だ。

「カウント始めます。5・4・3・2・1演習開始!」

「良いか?トイ3、今回俺達は援護に徹する。好きにやってみろ!!」

「頑張ってね!」

「トイ3、了解!」

 俺は、一気に市街地中央の大通りに出て加速し相手に接近しようとする。が、敵の一機が遠くに聳え立つビルの中間の位置から狙撃をしてくる。

 俺は、真正面なのもあり回避するためにビルの陰に隠れるが、隠れたと同時に壁の一部が赤い塗料の色に染まる。

「うわッ!あの距離からここまで正確に狙撃出来るんかい!」

 考える暇も与えて貰えずコックピット内にアラートが鳴り響く。

「ロックオンされた!?くそ!」

 俺は、再び大通りに飛び出すと残りの一機が上空から突撃砲を撃ってくる。

 大通りに再び飛び出した俺は、狙撃手がいるポイントに真っ直ぐ全速で突っ込む。

 後ろには、突撃砲を逃げ道を塞ぐようにばら撒く敵、前には正確にこちらを狙う 狙撃手、退路は塞がれたように見えるがこの状況は織り込み済みである。

 前方の敵から銃弾が放たれる。

 まだ……。

 後方の敵が突撃砲を二丁にして撃ってくる。

 我慢しろ……。

 左手に持っていた突撃砲が後方からの射撃で被弾、後ろの敵に当たる様に投げ捨てるが躱される。

 耐えろ……。

 俺の取柄の危機回避と空間把握の力に全神経を使う。

 もう少し……。

 前方からの一発の銃弾が目の前に来るのを感じる。

「今!!」

 俺は、左肩のスラスターを全開で噴射し大通り右側のビル群に突っ込む。

 俺を狙って放たれた銃弾は俺の後方を追いかけていた敵に向かっていくがそれを急速下降することで躱す。

 俺は、ビル群に突っ込む前に跳躍ユニットを前面に向けビル群に右脚の足底面で踏みしめビルを削りながら急減速し、ビルを足場に片足で後方に宙返りする。

 宙返りしている一瞬の間に後方にいた敵が地面に足を付けていることを確認し、右肩のブレードマウントに固定されていた77式近接長刀を手に取る。

 そして、敵の後ろに急降下しながら刀を振り下ろす、その瞬間敵の大破判定が画面に出てくる。

 だが、俺が一瞬気を抜いた瞬間に一気に全身の筋肉が警報を鳴らす。

 俺は、それに従い後方に跳躍をするが右足を撃ち抜かれてしまい右側に転倒してしまう。

「グゥ、まだまだぁ!!」

 俺は、背部左側のガンマウントから突撃砲を手に取り狙撃手に撃つが敵が動き回るので当たらない。

 俺の反撃空しく敵が俺を撃とうとした瞬間、俺の上を猛スピードで飛んで行くブラーミャリサ、ザウルとリリアが乗る戦術機だ。

 そのまま真っ直ぐ同じ戦術機とは思えない速さで突き進んでいく。

 狙撃手が慌てて銃口を向け撃つがそれを体を捻る事で難なく躱し、逆に突撃砲で打ち抜く。

 その時、CPから通信が入る。

「敵ホーネット大破認定!演習を終了します。」

 何とか勝ことは出来たが、結局助けられる羽目になり俺は余り勝利の余韻に浸る事は出来なかった。

 演習が終わった俺達は、地上の格納庫に来ている。

 ここから、大型のエレベーターを使い地下に運び込むのだ。

「はぁ……。」

「浮かない顔だな!?和真!!」

 ザウルが俺の肩に手を置きながら話掛けて来た。

「一人で勝てなかったですからね……。」

「オイオイ!相手は、エース級の腕前だぞ!今回は教導の形を向こうは取ってくれていたが、それでも一機落とせただけでも凄いことだぞ!!」

 手を抜いてアレなのかと俺はさらに肩を落とした。

「和真~、ザウル~!」

 リリアが格納庫の外から走ってきた。

「兄貴が呼んでるよ!完成したんだって!」

「もうできたのですか!?流石に早すぎると思いますが……。」

「それが出来るのがネフレだよ!」

 俺は、この会社は本当に怖いなと思いながらも地下の格納庫に向かった。

 俺が、格納庫を進んでいると見知った顔を見つける。

「兄貴!完成したんだって?お疲れ様!」

「オウ!和坊、お前に言われたご要望通りだぜ?まったく無茶な要求をしてくれるぜ!」

 この俺が、兄貴と呼び慕う人は俺達の戦術機の機付長であり、整備兵のまとめ役でもあり戦術電子整備兵の変わりもして貰っている。

 それと、新型の開発主任もしてくれている万能な人だ。

 ここに来る前は、米国企業ノースロックで働いていたそうだ。

「兄貴は本社にいなくて良かったの?」

「今日か明日中にとんぼ返りだよ!ったく、人使いが荒い会社だぜ!!」

 そう言う兄貴は笑顔だ。本当に仕事が好きな人なのだなと俺は思った。

「それより、社長に和坊を連れて来いと言われていてな待たせるのも悪い、急ぐぞ!」

「おう!」

 格納庫のさらに奥にある社長室まで俺達は走って行った。

 兄貴は俺を社長室に送ると格納庫に戻って行った。

「築地和真少尉!只今参りました!」

「……入れ」

「失礼します!」

 俺が、部屋の中に入るとレオが皮で出来た高級そうなイスに座り待っていた。

「何、碇ゲンドウ見たいな座り方してるんですか……。」

「碇ゲンドウ?誰だいその人は?」

「いえ、こっちの話です。それより、前から言いたかったのですが何故イスは高級そうなのに机は安っぽいのですか?」

「これはね!私の拘りだよ!良いイスに座ってると心が落ち着き仕事が捗る。机なんてただの物置だよ!」

 そんな事はないと思うが、本人がそれで良いなら良いのだろう。

「それより、和真少尉。」

 俺は、レオが空気を変えた事を悟り佇まいを正す。

「はっ!」

「今回の演習結果は先ほど見せて貰った。戦術機に乗って間もない君にとっては好成績だろう、エースを1人落とせたのだから……。だが君は我々ネフレの計画に必要なテストパイロットであり私の部隊、Toy・Boxの衛士だ。この程度で満足していられては困る、解っているね?」

「はっ!」

「よろしい……。それより、築地和真少尉、死んでくれないか?」

 俺は、社長が言った意味が解らずパニックになりそうな脳内を無理やり抑え込み聞き返す。

「それは……何故でしょうか?」

 俺の動揺を感じたのか社長が言い直す。

「君が考えている様なことじゃない。築地和真、戸籍は日本、父に築地三郎妹に築地多恵を持つ17歳の男・・・。間違い無いね?」

「……はい」

 俺の過去の事について社長は知っている。俺がここに来たその日に……。

 それはリリアの力が関係している。

 リリアはオルタネイティブ3計画で作られた人口ESP発現体であり、その能力は画や色で相手の思考を読む力だ。

 あの頃の俺は、力を欲し過去の事ばかり考えていた。

 だから、リリアはすべて知っておりリリアから聞いたレオも知っている。

「死んで貰うと言ったのは、築地和真に対してだ。まぁ、もう死んでいるのだが……。」

「……どう言うことですか?」

「築地和真は光州で死んだ事になっているということさ。BETAが来る前にね?すまないが、この二か月の間に色々手を回したよ。日本の戸籍に築地和真と言う人物はいない、君は築地和真になる前に死んでいた、と言うことになっている。」

「それは、計画のためですか?」

「そうだ。……我々が外道となった時に元からいない人間の方が何かと都合が良い……。そう言う事だ。安心して良い、国連の方には今から仮の戸籍を作っておく。いざとなればそれで逃げきればいい。」

「じゃあ、今つけている階級章は?」

「ここでしか意味が無い物だよ。明日からは、それも意味を持つがね。さて、こちらで経歴などは適当に作っておくよ。君は、苗字だけ考えてくれればいい。」

 レオは、俺に築地を捨てろと言う……。

 だが、俺達が進む道に築地を巻き込む訳にはいかない。

 それに、父さんや多恵との思い出は心にある。

 なら、俺の答えは決まっている。

「分かりました、お願いします。」

 俺が、了承するとレオは先程までの社長としての張りつめた空気をどこかに捨て、ただのレオに戻す。

 俺も、肩の力を抜き少しばかりリラックスする。

「すまないね……。和真君、君に辛い思いをさせてしまう。」

「いいんですよ。むしろそこまでして頂いて感謝したい位ですよ。これで、巻き込まなくて済む……。」

「そう言って貰えると助かるよ。それでは、どうする?」

 俺の名前か……。どんなのが良いのだろうか?

 アメリカ系の名前かそれともオーストラリア系か難民設定にしてもらってユーラシアのどこかの国にするか、でもレオは築地を捨てろと言った。

 つまり、和真は残して良いと言うことか。

 それだと、いざという時に不振がられずに行動することが出来る。

 なら、苗字で呼ばれた場合の事も考えた方がいいか……。

 何か無いか?直ぐに自分の者にできる名前、違和感なくいける名前……。

 その時俺は思い出す。

 そうだ……、俺は元々築地では無かった。

 そもそも、この世界の人間ではなかった。

 なら、俺の最初の名前はこの世界に存在しない便利なものだ。

 俺の答えは決まった。

「……五六。」

「?」

「五六 和真でお願いします。」

「本当にそれで良いのかい?」

「はい!」

「なぜ、その苗字にしたのか聞いてもいいかい?」

 俺は少し悩んだ、このまま伝えても信じて貰えるのか解らない。

 それでも、伝えた方が良いと思ったので伝えることにした。

「先に、言っておきますけど今から言う事は真実ですからね?」

「……わかった。聞こう!」

 俺は、この世界の人間では無い事を包み隠さず話す。

 俺が話終えると、レオは遠くを見るような目をしていた。

「そんな世界があるなら、そこはきっと天国に違いないよ……。」

 レオは、頭の中に思い描いた世界に夢を馳せていた。

「おっと、すまないね……。みっともない所を見せてしまった。我々はその天国をこの地獄に再現するためにある……。その事を、再度認識したよ。そしてこの夢は何が何でも叶えなければならない。」

「はい!」

「……よし!では、五六和真、貴官の国連軍入隊を認める。入隊宣誓!!」

「私は国際平和と秩序を守る使命を自覚し、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、心身を鍛え、技能を磨き、責任感を持って専心任務の遂行にあたり、事に臨んでは、危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、人類の負託に応える事を誓う!!」

「よろしい!五六和真少尉、貴官を国連軍衛士として認めよう。そしてこれが衛士の証だ。」

 レオは、席を立ち俺の前に来ると俺の襟元に何かをつけた。

 それは、地球に翼を付けたバッジだった。

「それは、ウイングマークと言ってね。衛士にのみ着けることを許された物さ!」

「はっ!ありがとうございます!」

 俺は、喜びに震えながら敬礼をするとレオは頷いた。

「それでは、行きなさい!機付長が待っているよ?」

「それでは失礼します!」

 俺は、再度敬礼し部屋から出て行った。

 俺が、格納庫に向かうと殲滅10型が格納庫に戻っておりハンガーに入っていた。

 そこに向かうと兄貴が何か指示を飛ばしている。

「兄貴!戻ったよ!」

「オウ!和坊、待ってたぜ!いまから、コイツを修理してからそれぞれ武装を取り付ける!楽しみにしておけよ?それと、先にシミュレーターの方にデータは入れてあるから先にそっちで慣らしておくといいぜ!」

「ありがとう、兄貴!また整備士の皆に差し入れ持ってくるよ!もちろん今日中にね!」

「待ってるぜ!」

 俺は、足速に更衣室に向かい服を衛士強化装備に着替えシミュレーター室に急ぐ。

 俺は、着くなりすぐにシミュレーターに乗り込み稼働させる。

 皆忙しくしているので設定は自分で行う。

 設定は、旅団規模のBETAがケアンズ内陸部まで進行、機甲部隊、支援砲撃部隊、共に壊滅戦術機部隊で唯一の生き残りである俺が、BETAを足止め海からの艦砲射撃が全弾着弾するまでの5分間耐える事。

「これで、良し!シミュレーター可動させます。」

 後々使うと思うので、データも取ってある。

 俺が、可動させると景色が変わり、そして各兵装が表示される。

「フォルケイソード、やっぱり、ククリナイフに一番近いこいつの方が良いよな!これが、右手に1つ。左手に120mm散弾銃、ドラムマガジンの中に弾数が60発、でも散弾しか撃てないから小型種専用だな。しかも、重量を軽くするために砲身を削れるだけ削ってる。こんなのじゃ、目の前の敵しか撃てないんじゃないか?背部兵装担架に突撃銃が二つ腰部に予備弾倉、この背部兵装担架が今まで上下にしか動かなかったのを、横向きにも動ける様になった。これで、攻撃範囲が広くなる。そして跳躍ユニット主機共に5%最大出力強化がされている。俺の要求通りやないか……。すごいな、言うた装備がこんなに早く完成するなんて……。イヤ、もうすでに作ってあったって事か?考えてもしゃーないか。よし!作戦開始!」

 作戦開始を受けて、目の前の映像が切り替わる。

 辺り一面がBETAにより平らに均され、至る所に戦術機の残骸が転がり中には戦術機に戦車級が取り付き貪っている。

 この光景を見る度に思い出す。

 光州の最後を……。

 俺は、早く敵を弄り殺したくてうずうずしてしまう。

 ディスプレイの左下に5分のカウントダウンが始まるのを見て俺は思い出す。

「これは、現実ではない……。今から、新武装を試してみるだけ……。でも、気にいらない。だから、殺し尽くしてやるよ!!」

 俺は、一気に跳躍ユニットを点火し迫ってくる敵の前に躍り出る。

 着地点に蔓延っていた戦車級に散弾銃を撃つ。

 着弾と同時に赤い水たまりが一瞬で作られ、水たまりの中に着地させる。

「すごいな……。この通りの性能やったら戦車級にとっては悪夢やな……。」

 俺は、口元を獰猛に歪め喜びに震えながら今度は突撃級に銃口を向け撃つ。

 だが、全面の甲羅がすべての弾を弾きまったく効いていないようだ。

「やっぱ小型種限定やな、こいつは……。」

 突進してくる突撃級を飛び上がり回避し背後に回り込み、背部の突撃砲を前に展開し尻に風穴を開けて行く。

 その最中後ろから近付いてきた要撃級を片方の突撃砲で撃ち殺し、再び飛び上がり足元に来ていた戦車級を散弾銃で水たまりに変え、要撃級を上から刀で切り殺す。

 そんな事を繰り返して行き、何匹殺したのか解らない位殺すとレーザー照射警報が鳴り響く、すぐさま噴射跳躍し射線上に他のBETAを乗せる。

 これにより、味方誤射をしない光線級は打つ事を止める。

 俺は、壁にしたBETAを刀で切り殺しながら背部の突撃砲を空に伸ばしていき狙っていた光線級に銃口を向け撃ち殺す。

「この兵装担架、応用性がすごいな……。」

 今度は、光線属種の群れに向かって大型BETAを壁にしながら匍匐飛行で突っ込んでいく。

「出力も5%上がっただけでも、変わるな!コイツなら行ける!!」

 俺は、うまく群れの中に割り込み次々踊る様に殺していく。

 だが、ついにすべての弾が切れてしまい、刀だけになるも切り替えしに時間が掛かり結局背後の要撃級に殺されて終わった。

 カウントダウンは、後1分も残っていた。

「作戦失敗……。死の八分すら超えていない、後で反省会やな」

 俺が、シミュレーターから降りると兄貴が待っていた。

「和坊!やるじゃねえか!1人で1000近いBETAを殺しているぞ!」

「小型種含めてだよ、兄貴……。そんなに凄い事じゃ無い……。それより、トップヘビーの刀は一撃の威力があるけど、切り返しや持ち上げるのに時間が掛かるのが難点やね」

「まぁ、どこかを伸ばせばどこかが引くものだ。じゃ、そこの改良もしておいてやるよ!」

「忙しい中ごめんな、兄貴。」

「別に構わねぇよ!これが、仕事だからな!」

「兄貴、俺先に着替えてくるわ!PXに皆で行っといて!」

 待ってましたと、兄貴は顔を綻ばせる。

「了解だ!待ってるぜ!」

「すぐ行くよ!」

 

 更衣室で俺は考える。

 何がいけなかったのか、無暗に突っ込んだからか?弾を使うタイミングを間違ったのか……。

 でも、自分の中で最適だと思ったからこそ行動した。

 なら、なぜ?答えを出せずモヤモヤしたまま俺は、PXに向かった。

 PXに着くと、整備兵の皆とザウル、リリア、レオまでいた。

 しかも、全員出来上がっていた。

 俺が、居るのに気が付いた兄貴が酒臭い息を振り撒きながら俺を歓迎する。

「待ってたぜ~!おい!野郎共、我らが少尉様がお見えになったぞ!!」

 兄貴がそう言うと、一斉に皆が振り向く。

 その動きは、目標を見つけた重光線級のようだ。

「ひっ!」

「てめぇら!今日は和坊の驕りだ!死ぬまで飲みやがれ!!」

「「「「「ヤーハーー!ありがとうございま~す!!」」」」

「えっ?この人数全員!?聞いてないよ!兄貴!!」

「気にするな!俺は気にしないぜ!!そんな事より、お前も飲め!!」

 兄貴は、どこから取り出したのか酒瓶を俺の口に突っ込む。

「ちょ……まっ!ゴバゴボ……。」

 俺は、そのまま意識を失った。

 目が覚めると俺は部屋にいた。

 時刻を確かめると午前二時、いつも訓練をしている時間だと気が付いた俺はシミュレーター室に急ぎ訓練を開始した。

 最後に昨日と同じ設定で訓練をする。

 だが、結局なんど繰り返そうと任務成功することができない……。

 俺は、力を手に入れたのにうまく使う事ができないのかと、ただ壁を殴り鬱憤を晴らすことしかできずにいた。

「くそ……!くそ!くそ!!」

 壁を殴り続けていると、誰かが俺の腕を握りしめて殴るのを止めさせた。

「リリア……。」

 そこには、子供を心配しながらも怒る母親か姉のような顔をしたリリアがいた。

「和真、いけないよ?大切な腕なのだから大事にしないと!」

 俺は、腕を振り払おうとするがリリアが今度は抱きしめてそれを許さない。

「なにかあったの?」

「言わなくても、リリアなら解るでしょ?」

 俺が、そう言うとリリアは顔を曇らせてしまう。

 俺は、言ってはいけない事を言ってしまった事に気づいた。

「ご、ごめん……。」

 俺が、謝るころにはリリアは元の元気な顔に戻っていた。

「私の力の事は前に話したよね?」

 俺は力なく頷く。

 リリアの力……。

 初めて聞いた時は疑ってしまうような力だ。

 オルタネイティブ計画3これがリリアがこの世に生を与えられた切掛けの計画、人口ESP要するに超能力者を人口的に大量に作りだし、そしてハイヴに突入させBETAの思考を読むまたはBETAに人類が敵では無い事を訴える計画。

 リリアは、ハイヴに潜入し生き残った数少ない存在であり、その時の乗機のパイロットがザウルである。

「私は、何を考えているのか解る……。けど、それはテレビと同じ第三者の視点で何も感じる事無くただ見てるだけ、それだと感情移入はできない……。同じ思いを共有できない。だから、言葉にして教えて欲しいの!和真は何でそんなに、辛そうな顔をしているのかを……」

 ―――――この人は。

 本当にお人よしだ……。

 自然と俺の心に何かがストンと落ちる。

「まったく……。その言い方だと俺の姉みたいやないか。」

「私は、それでも良いよ~!これからは、お姉ちゃんと呼びなさい!!」

 リリアがその豊満な胸を張り、偉そうにする。

「ぷっ!くくくく……。リリアが姉さんだと、弟は大変そうやな!」

「むぅ~!それどういう意味~!」

「くくくッはははははは!!」

「もぅ~~~!」

「は~っ!こんなに笑ったの久しぶりや!……リリア聞いてくれる?」

 俺の問いにリリアは慈愛の籠った笑みで頷く。

「俺はな?父さんを殺して師匠を見殺しにしたんよ……。」

 俺は、リリアに話す。

 父さんと出会った時の事、くまさんとの出会いの時誘拐犯と間違えた事、その他にもたくさん話した。

 楽しかったことや、救われたこと、力を欲しがった最初の理由、そしてBETAが来たこと、すべてを……。

 リリアは、俺のつまらない昔語りをただ黙って聞いてくれている。

 俺は、父さんを殺した話をしている時にその時の場景を思い出し壁に背を預けズルズルと座り込んでしまう。

 リリアは、初め驚いたが同じように服が汚れるのを気にせず床に座る。

「やからな?俺は、自分の願いであり父さんの願いでもある、人を救う事を目標に生きてるねん……。そのために、力が欲しくてネフレに入った……。やのに、力を手に入れても俺は人を救う事ができやんのとちゃうかと思ってな?」

 俺は、段々と惨めに思えてきて左手で顔を覆い隠す。

「やからな?俺は、俺はな……。」

 その時、俺はリリアに抱き寄せられた。

「あっ……。リリア?」

 俺が、恥ずかしいと離れようとするがリリアはそれを許さない。

「和真?ありがとう、教えてくれて……。これで、和真が何故必死に訓練をしていたのか解った気がするよ。でもね、私とザウルは和真の仲間なんだよ?だから、もっと頼って欲しい甘えて欲しいな?それと、余り心配させないでね!」

 その言葉に俺はただ昔の様に泣く事しかできなかった。

 リリアは、泣きじゃくる俺を母のように抱きしめてくれていた。

 

 私が気が付くと、和真は眠っていた。

「手のかかる弟だね……、和真は。」

 私は、そう言いながらも安心して私の胸の中で眠る和真の髪を優しく梳く。

「でも、手のかかる子程可愛いものだろう?」

「ザウル!いつからいたの!?」

「しぃ~~!」

「あぁ!ごめん……。」

「和真がやっと胸の内を話してくれたあたりだ。……誰もが一度は世界に絶望する。嫌になってくるな」

「ホントにね……」

「でもこれからは、俺達に頼ってくるだろ!そして、もう1人で戦わない様に徹底的に教育しないとな!」

「頑張ってね?お兄ちゃん!」

「お前もだよ!お姉ちゃん!」

 私達は、笑うせめてこの一時の間でも和真が良い夢を見られるようにと、そして心の中で呟く。「私が守ってみせる、ザウルも和真もレオも、もう二度と仲間を失わないために……。」

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