Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
「ここは……?」
辺りを見回すとそこは俺の良く知る場所、今は思い出の中にしか存在しない世界、俺の元居た世界……。
「ははは……。久しぶりに戻ってくることが出来たな、夢の中でも嬉しいわ」
俺は、何も考えずにいつもの道を歩く。
辺りは何の変哲もない住宅街、特にこれと言って珍しい物でもない。
それでも、今の俺にはどんなに心打つ景色よりも心に響く。
そして、こちらには存在しないコンビニの弁当の空箱などが捨てられている階段が目に入る。普段なら、捨てた者に対して怒るところだがこの何とも言えないゴミが平和なのだと感じさせてくれる。
俺は、そのゴミにすら懐かしさを感じ階段を上って行く。
こちらでは、厳しい現実を叩きつけられたがこの世界は夢の世界そんな心配はいらない。足速に階段を駆け上がる。
階段を登り切り伏せていた顔を上げるとそこには、懐かしい俺の家が確かに存在していた。
「―――――ッ!!」
俺は、家に向かおうとするが中から人が出てきた。
夢の世界なのに咄嗟に隠れてしまう。
「なにやってんねんやろ……俺」
だが、隠れてしまったものは仕方がない、隠れながら様子を窺うことにした。
「待ってよパパ~!」
「ほら和真、男は何事もすばやくこなさなければいけないんやぞ!?」
「十分急いでるよ~!」
俺の良く知る2人の声が玄関から聞こえてくる。
「あぁ、あれは元の世界の親父に俺だ……。懐かしいな、俺の体のサイズから見てだいたい5歳位か?それにしても、まさか第三者の視点で俺自身を見ることになるとはな、なんか新鮮やな……、あっ!」
ドサっ!!
玄関から出てきた親父とそれを慌てて追いかけ扱けてしまう小さい俺。
「思い出した。確か、親父に急かされたせいで靴紐が解けた状態で飛び出そうとしたから踏んでしまって扱けたんやった。」
「うぅ……うわぁぁぁぁぁぁん!!」
辺りに響く大声で泣き出す小さい俺を見て我が事ながら恥ずかしくなってくる。
そんな小さい俺を見ながら親父は、溜息をつき膝をついて目線を合わせる。
「和真、男は簡単に泣いたらあかんで?じゃないと、強くなられへんぞ?」
「だって、だってぇぇぇぇぇぇぇ!!」
さらに泣き喚く小さい俺、親父はそんな俺に先ほどまでの困った目では無く優しい目をして小さい俺を抱き寄せた。
すると、すぐに小さい俺の町中に響くのでないかと言う程の泣き声は聞こえなくなる。
「これも、懐かしいな……。親父の心臓の音を聞くと安心するねんよな……。」
まったく世話かけすぎやな、と1人苦笑する。
「ほら、強く大きな男になるんやろ?」
「ぐず……うん!」
「なら、今から父さんと駆けっこや!!」
「なにが、なら!なの?解んないよ~!」
「えぇい!男が細かい事を気にするな!いつもの駄菓子屋まで競争だ!」
そう言って走り出す親父とそれを必死に追いかける小さい俺。
「結局、親父には勝てずまた泣いてまうねんよな。」
俺は、笑いを堪えながらそんな2人の背中を見送る。
すると、突然親父が立ち止まりこちらに振り向く。
「――――!!」
俺は、夢だと理解しているのに慌ててしまう。
そんな俺を懐かしそうに見る親父の顔から俺は目を離すことができない。
声を駆けたいが、その瞬間に夢から覚める気がして……。
一分一秒ここに居たいから、だから怖くて声を出すことができない。
本当は話したい事がたくさんあるのに、俺の脳がそれを許さない。
そんな俺を見て親父は、笑顔を見せながら声を発する。
距離的に声が聞こえずらいはずなのにはっきりとその声は、俺の耳に届く。
「お前は、俺と母さんの自慢の息子や!やから、大丈夫やで和真!」
「―――――親父ッ!!」
その瞬間世界が暗転する。
ドクン―――――。
ドクン―――――――。
ドクン――――――――。
懐かしい、親父の温もり親父の心臓の音……。
ドクン―――――。
俺は、心地よい感覚に襲われながらも無理やり目蓋を開く。
「うっ……!」
俺の目蓋の間から無遠慮に光が入り込み一瞬目の前が真っ白になる。
だが、徐々に目が慣れて行きようやく色を捉える事ができるようになってきた。
まず最初に俺が見たのは、リリアの顔、一瞬パニックになるが根性で冷静になる。
リリアは、俺を正面から抱っこした状態で寝ているようだ。
「これじゃ、まるでコアラやんか……。でも、それだとこの心臓の音はどこから」
俺が音のする方に顔を向け上を見ると、ザウルの顔があった。
どうやら、俺を抱いて寝ているリリアごと俺を抱いて寝ているようだ。
俺は、脱出を図り身じろぎするがリリアとザウルが同時に目を覚ます。
「おはよう~。」
「おはーーーー!!」
「み、耳元で大声ださんで……。」
「おっと、すまんすまん!!」
「それより和真、何か良い夢でも見たのか?」
「えっ?」
俺は自分の顔を確かめるために触る、すると確かに口角がわずかに上がっているのに気が付く。
「よかったね、和真。」
リリアが柔らかい笑顔で俺に笑いかけた。
「うん!」
「なんだ、なんだ?どんな良い夢を見たんだ~?教えろーー!」
ザウルが腕に力を籠め俺とリリアを抱き上げる。三人の顔はそのせいでぶつかる程に近づく。
「ちょ!ザウル離してッ!」
「「照れない、照れない!」」
「照れてない!」
リリアとザウルの笑い声が部屋に響く、俺もそれにつられて笑う。
親父、俺は大丈夫やでこんなにも良い仲間に巡り会えた。やから、大丈夫やで!
俺達は一頻笑った後、それぞれ離れ今は強化装備に着替えシミュレーターの前に集まっていた。
「和真!お前のシミュレーターの内容は見させて貰った。はっきり言おう……、あれじゃ、ダメだ!そもそも、作戦自体なりたっていない!何故だか解るか!?」
俺は考える。
敵は内陸まで進行、後方には市街地避難は完了していない、艦砲射撃による面制圧が行われるまで2分着弾まで3分、その間の遅滞作戦に出撃、部隊は壊滅残すは俺1人、敵は旅団規模であり1人でどうこう出来る数じゃ無い。
俺が考えうる最悪の状況、でもやらなければ無抵抗の人が蹂躙されてしまう。
端から作戦なんて物は合って無いようなものだ。
なら、何がいけなかった?光線級を殺すために群れの中に飛び込んだことか?それとも、なにかしらして敵を引き付ける方がよかったのか?だが、俺にはその方法が解らない。
「解らないか?」
俺は、力無く頷く。
「それはな、俺達の存在だ!和真!戦術機の基本はエレメントだ!エレメントでしか戦術機の性能を全力で発揮できないと言っても過言では無いと俺は考えている。」
「確かに……。分隊(エレメント)での行動が原則だけれど、これは最悪を想定したシミュレーションだから……」
「だから!そこが違う!!俺達が和真を置いて先に死ぬはずないだろ!?それに、もしも、俺達が先に死ぬ何て状態になったら和真は逃げろ。いいな!?」
「なっ!?それは!!」
「だから!!今から特訓だ!」
「えっ!?」
「今までは、入門編を教えていたが今日から応用編だ!和真は俺達が殺させはしない!!だから、和真は俺達を死なせないように強くなれ、良いな!」
そうか……。
最初から仲間がいない想定をしていた俺がバカだった。
俺は、1人じゃない!なら、皆を救うために……。
まずは、ザウルとリリアに背中を預けて貰えるくらいには強くなってやる!!
「了解!!」
俺は、ザウルに敬礼をすると満足した顔になり次に教官の顔付になる。俺は自然と背筋を伸ばし聞く体制に入る。
「よし……。では、本日1100よりJIVESを使っての演習を行う。設定の内容は和真少尉がシミュレーターで使った物と同じで行く。違う所は、俺達がいることだ!では、準備開始!!」
「了解!」
俺は、思考を切り替え2人から学べるところはすべて学び盗るつもりで愛機の元に向かった。
結果から言うと、作戦は成功した。
殆どおんぶにだっこ状態だったが、学ぶ事も多かった。
それよりも、仲間が居るだけでこれほど心的肉体的に楽に戦えるとは思わなかった。
俺は、愛機の足元に向かいあの頃の様に手を当てる。
でも、あの頃の様に絶望感を心が支配していない。
逆に別の何かが俺の心を満たしている。
「俺達は1人じゃない……。それに、もっと強くなれる。だから――――、力を貸してくれよ。殲撃!!」