Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
二日目は、湿潤地帯を飛行補助ユニット(ファンデーション)のテストだ。そして、テスト終了と同時に俺達は帰還することになっている。だから、世話になった人達に俺は挨拶周りをし最後にタリサの所に来ていた。
「おっ!いたいた、タリサ~!」
タリサは、PXで椅子に座り黄昏ていた。
「ん?何だ、和真か・・・。」
タリサはいつもの様な子供らしい元気さが無く、しおれてしまったヒマワリの様に元気が無い。
「なんだとは何だ?」
俺は、からかいながら返すがタリサからの返事はそっけないものだった。
「何でもねぇよ。」
やはり元気がない、俺は立ちっぱなしでいるのも何なので座ることにした。
「そうか・・・。」
俺も、何も言わずにタリサの前の席に座る。
「・・・。」
「・・・。」
お互いに無言の時間を過ごす、俺は何だか居心地の悪さを感じ声を大きくしてタリサに言う。
「じゃなくて!」
「おわっ!何だよ、突然!」
タリサは、突然俺が大声を出した事に驚いたようだ。
「俺、今から新武装のテストをしてそのまま、マラッカ海峡に行くことになったんだ。」
俺はこれからのスケジュールをタリサに簡単に説明する。すると、タリサが何か興味があるのか話しに食いついてきた。
「マラッカ海峡って・・・。最前線のすぐ傍じゃねぇか!どうしてお前が・・・。」
確かに、最前線のすぐ傍だが、防衛ラインを常に監視しているのでそうそうの事がないかぎり危ない目に合う事はない。
「何だ?心配してくれるのか?」
俺は、ニヤニヤしながら驚くタリサに聞き返した。
「まぁ、少しわな・・・。あたしも、前線に戻るし。」
すっかり忘れていたが、タリサは前線からレンタルされている開発衛士なのだ、前線に戻るのは当たり前だろう。
「タリサも?何時から?」
俺の質問にダルそうに答える。
「今からだよ。出発の準備が出来るまでここで時間を潰してたんだよ。そしたら、どこかの口うるさい奴が来ただけさ!」
俺は、そこまで口うるさくないぞ!と思いながら少しブスッとして聞き返す。
「・・・それって俺の事か?」
「さぁ?」
今度はタリサがニヤニヤしだす。
「ハァ~。俺は、もう出発の時間だ・・・。タリサ楽しかったで?またな!」
そう言って去ろうとする俺をタリサが呼び止める。
「和真!!」
今度はタリサが大声を出した事に驚いたが、俺は立ち止まる。
「何だ?」
「お前・・・。本物のBETAとの戦闘経験はあるか?」
タリサの顔は、見たことが無いがどこか達観した顔付になっている、おそらくこの顔が衛士としてのタリサの顔なのだろう。
「ないが?」
俺の返答にタリサは僅かばかり俯く。
「・・・そうか。」
今度は、顔を忙しなく動かし何かを言おうとしている。
「和真!まだ、アタシ達の勝負は決まってないし、それにククリナイフも完成していない!だから、次に会う時はアタシが勝しククリナイフもアタシが完成させといてやるよ!!」
これは、タリサからの激励なのだろう、もしかするとBETAが来て俺が戦場に立つかもしれない、戦場に立つと言う事は、いつ死んでもおかしくないと言う事だ。タリサはいつも通りに振る舞っているつもりなのだろうが、眉毛が微妙に下がっている。心配してくれているのだろう。だから、俺はタリサを挑発するように、絶対生きてまた会うと言う思いを込めて言う。
「ハッ!!言ったなチビ助!上等!!次に会う時はまた驚かせてやるよ!」
「「またな!」」
俺は、そのまま振り返ることなく歩く。また、直ぐに会える気がしていたから。
俺は今、マラッカ海峡にいる。だが、海がキレイかどうかなんて解らない。戦術機のコックピットに入っているのだから。
「こちらCP、和真少尉準備はよろしいですか?」
「いつでも!」
「了解・・・。戦術機ハンガー2番後部エレベーターまで移動開始!続いて、飛行補助ユニット、ファンデーション、中央エレベーターまで移動を初めて下さい。」
俺の乗る戦術機はハンガーごと、後部エレベーターまで運ばれていく。
「2番ハンガー、後部エレベーターへ固定完了、上昇を開始してください。」
俺は、息苦しい船内からやっと陽の光が挿す外に出ることができた。だが今度は俺の戦術機はハンガーに宙づりの形を取らされる。足が付いていないと落ち着かないなと思っていると、前方の中部エレベーターからファンデーションが出てきて俺が居るエレベーターの前のカタパルト位置に着く。
「ファンデーション、カタパルト接続完了!続いて和真機をファンデーションに接続して下さい。」
ハンガーから押し出される形で出た俺はファンデーション上部の固定装置に戦術機の足を固定する。ただ、いきなりハンガーから落とすから少し驚いてしまった。
「固定確認!ファンデーションの操縦権を和真機に譲渡します。」
「アイ・ハブ・コントロール!」
俺は、戦術機の腰を低くさせる。
「いきます!」
そして俺は、大海原へ飛び出した。
「姿勢制御は勝手にやってくれるし操縦はハンドルきるイメージやな。それにしても、すごいな海面スレスレを飛んでるぞ!しかも、波まで微妙に上昇することで勝手に躱してくれるしこれなら、跳躍ユニットの燃料を温存したまま敵陣に突っ込めるで!」
「操縦には問題無いようだな!」
「初めてなのに上手だね!」
ザウルとリリアもファンデーションに戦術機を乗せ俺の後ろにいた。
「シミュレーターで嫌程練習したからな!」
「そんじゃ、追いかけっこ始めるか!!」
「行っくよ~!」
そこからは、ファンデーションの燃料が無くなりそうになるまで追いかけっこをさせられた。結局負けてしまったが・・・。
演習を終え、今は甲板の上で沈み行く夕陽を眺める。日本にいる皆は大丈夫だろうか・・・。
多恵は元気にしているだろうか・・・。日本は、まだBETAの上陸を許していない。それも時間の問題と言われているが、俺はそうは思わない。日本には彩峰さんや尚哉の様な強い人がたくさんいる。地続きなら解らなかったが、海を挟んでいるんだ。上陸はさせないだろう・・・。
そう思っていないと、今にも飛び出していきそうになる。
「身勝手なのは解っているけど、日本を頼むぞ・・・、尚哉。」
その時、けたたましいサイレンの音が船を包み込む。
「コンディション・レッド発令!コンディション・レッド発令!各員は所定位置へ!繰り返します―――。」
「即応体制!?」
俺は、急いでブリーフィング・ルームに向かう。
「五六和真少尉!ただいま参りました!」
中には、ザウルとリリアがいた。二人とも今まで見たことが無い表情をしていた。
「それでは、ブリーフィングを始める!」
ザウルが作戦の説明を始める。だが、俺は今から殺し殺される戦場に行くのだと頭では理解し納得しているが、体の震えが止まらない。光州での光景がフラッシュバックの様に頭の中に映像を思い出させる。俺は、震えを止めるために体に力を入れる。
情けない・・・。あれだけ憎んでいるBETAを殺しに行けるのに、俺はビビッているのか?その時、ザウルとリリアが俺を見ているのに気が付いた。
「す、すみません!」
作戦内容は頭に入っているが、ブリーフィングに集中できなかった。俺は、その事を言われるのだと身を固める。
「いや・・・、作戦内容は頭に入っているだろ?」
「はい!」
「そうか・・・、和真!お前には、俺達がいる!その事を忘れるなよ!?」
「はい!!」
「今はまだ、俺達に出撃要請はきていないが、何時でも出撃できるように準備しておけ!!」
「了解!!」
和真は、俺の解散の声を聞いて走ってブリーフィング・ルームを出て行く。おそらく、戦術機の所に向かったのだろう。それよりもだ・・・。
「ザウル・・・。」
リリアが俺に心配だと訴える、俺も心配だ。
「てっきり、初陣の衛士の様にビビッてしまうと思っていたが・・・。アイツ心底楽しそうに、それこそピクニックに行く前の日のみたいに、笑ってやがった・・・。」
「・・・うん。」
「少し心配だが、和真が無茶をしそうになったら俺が無理にでも止める・・・。もう仲間を失いたくないからな。・・・力を貸してくれるか?―――リリア。」
「あの時から、私はあなたと共にあり続けてる。力を貸すのは当たり前だよ・・・。」
リリアが俺を抱きしめる。そんなリリアに感謝の気持ちを込めて頭を一撫でした。
「それじゃ、仕事を早く終わらせようか!!」
「うん!!」
戦術機のコックピットの中で俺は震えを抑えようと必死になる。両手を見ると、小刻みに震え続けている。俺はその震えを無理やり止めようと肘を抱え込むが今度は肩が震えだす。さっきからこれの繰り返し・・・。只々、出撃命令を待つだけ。ブリーフィングからどれ程の時間がたったのか解らない、俺達は要請がなければ動く事ができない。ここにも、政治の顔が見え隠れする。
「くそが、下らない・・・。」
その判断を下すのにどれだけの被害を出せば気が済むのか。作戦が始まると同時に俺達を出してくれれば、救える命があるかもしれないのに・・・。
「理由が見栄だけなんて物なら、その見栄を張った奴を殴り倒してやる。」
そんな事が立場上できるはずが無いのに呟く、口にだして言わないとこの止めようのない震えと憤りが自分の中で混じりあってしまいそうで恐ろしかった。
「レオとネフレの力を信じるしかないか・・・。」
レオは、俺達を独立部隊として現地政府に許可を貰う前に出撃できるようにしてみせる。と言っていたが、おそらくその希望が通る事はないだろう。なんたって、先代達の頃からの問題だからだ。それでも、俺はレオに任せる事しかできない。
「他力本願だな・・・俺、かっこ悪。」
俺は自分に愚痴ると体全体に広がった震えを止めるたまに膝を抱え丸くなる。今は、戦術機を起動させていない、コックピットの中は暗闇が広がるだけで、初めてコックピットを見たときの感想が頭を過る。
「まるで、棺桶みたいだ。」
――――棺桶に何てしないさ、俺は生き残って人を救い続けなければならない。死んでる暇ですらもったいない。
その時、ヘッドセットに通信が入る。
「出番だぞ!和真!!」
俺は、急いで戦術機を起動させる。続いてヘッドセットの両頬のボタンを押し網膜投射システムを起動させる。
小ウィンドウが開きザウルとリリアの顔が映る。
「落ち着いて行け!俺達なら、朝飯前だ!!」
「いつも通りで大丈夫だよ!」
「了解・・・。」
一瞬心配そうな顔をするが直ぐに戻し、状況説明を始める。
「現在、国連太平洋方面第12軍、大東亜連合の部隊は第一防衛ラインを突破され第二防衛ラインにて迎撃している。それに伴い、国連インド洋方面軍に救援の要請、次に国連太平洋方面軍第9軍を通じて俺達にも出撃要請が降りた。そして、BETAの規模だが・・・、師団規模だ。」
BETAの規模に愕然とする。今は、監視衛星などを使い粗方BETAの進行は解る。当初は旅団規模だった筈だ!だから、多方面に救援を求めず自分達でどうにかできると高を括っていたんじゃなかったのか!?
「何か納得がいかないようだな?」
「はい、他人の力を借りずにメンツを気にしすぎた結果だと思います。・・・そこが気に入らない、何故助けを求めない!」
「和真、国や組織には色々あるんだ。現に国連大西洋方面軍12軍は要請を出していた。だが、大東亜連合が多数の国連軍が来るのを嫌がった。その理由はスワラージ作戦にある訳だが、今はその話しはいいだろう。彼らは恐れているんだ、また自分達の土地で好き勝手に暴れるだけ暴れて結果何も残さないなんて事をな・・・。だがな、皆助けは欲しいんだ!そこは誰も変わらない!皆が助けを求めている、脅えている!なら、俺達がすることはなんだ!!」
「1人でも多くの人をBETAから救い出す!!」
「その通りだ!国や組織が臆病なせいで個人が死んでいいはずが無い!なら、その個人を救いだすのが今の俺達だ!!・・・解ったか?」
「はい!」
俺は、震える体に活を入れ腹の底から返事を返す。
「良い返事だ!報告を続けるぞ。まず、師団規模を旅団規模と間違えた理由だが衛星では間違いなかった。つまり、BETAは大規模地中進行により一気に数を増やしたと言う事だ。防衛基地のプラセーン群タムボン・シンチャルーン基地だが、このまま第二防衛ラインが落ちると陥落は時間の問題だ。面制圧も、戦艦の数が足りずしかも、光線級がいるおかげで殆ど意味が無い。我々の任務はムアンパンガー群をオーストラリア軍の戦艦が来るまでに第12軍所属のファウスト大隊と共に守り貫き海軍が到着、面制圧を始めると同時に、光線級をファウスト大隊と協力して全滅させることだ。」
ザウルが説明を終えると、リリアがザウルに声を駆ける。
「ザウル大尉!」
「なんだ、リリア中尉?」
「オーストラリア海軍は後何時間で到着するのですか?」
俺もそこが気になっていた、どれだけ早く到着してくれるかで今後の任務が変わるかもしれないからだ。
「海が荒れているらしく、早くても後1時間はかかるそうだ。」
1時間・・・。これが、早いのか遅いのか解らないが最低でもそれだけの時間は、BETA共からムアンパンガー群を守らなければならない。・・・出来るのか、初陣の俺に?
俺が1人、悶々と考えている間にリリアはザウルに返事を返した。
「解りました。」
「質問が無いようなら、艦長からGOサインが出たらすぐに出撃するぞ!」
「「了解!!」」
「リリア、和真。」
ザウルが上官ではなく普段のザウルとして話しかけてくる。
「なに?」
「はい?」
俺達もザウルの空気に気づきすぐに元の自分達に戻す。
「生きて帰ってくるぞ!今回の任務が終わったら、俺が飯を奢ってやる!!」
「やった~!和真、何をご馳走して貰う?」
「そうやな?合成じゃない、本物のオージービーフを腹いっぱい食べたいな!」
「それイイねぇ~!私もそれにする!」
「おっおい!流石にそれは、払いきれないぞ!?」
「冗談やよ、ザウルのオススメのオージービーフが食える店に連れてってくれるならそれで手を打つわ!」
「和真は優しいなぁ~♪。」
「・・・任せとけ!最高の肉を食わせてやるよ!!」
「「ゴチになります!」」
俺達はその後通信を切りいつでも出撃できるように集中する。
そしてそれから数分後、その時が来た。
「こちら艦長。トイ・ボックスの諸君悪い知らせだ・・・。」
「どうした、艦長?」
「ファウスト大隊が、プーケット山脈を突破してきたBETA群に取り囲まれたとの情報が入った。」
「なっ!」
俺は、言葉を失ってしまうファウスト大隊がどれだけの精鋭か知らないが、BETAに囲まれてしまっては、どれだけ強くても意味が無い数の暴力に飲み込まれるだけだ。俺は、自然と体全体に力を入れて行く。
「これに伴い、君達の任務はまずファウスト大隊の救援から始まる、その後ムアンパンガー群のBETAの掃討並びに、プラセーン山脈から来る後続のBETAを排除してもらう、ここを守り貫かなければ、タムボン・シンチャルーン基地は弱い横腹をBETAに食いつかれる形となる。同基地の戦力はタイランド湾沿いの平坦な道を進むBETA群迎撃にほぼすべて出撃しており、残りは基地防衛の部隊しか残っていない・・・。つまり、君達にはムアンパンガー群を死守するようにとの命令だ。・・・最後に、厳しい任務になるがよろしく頼む。」
艦長が険しい顔付で任務を説明する。くやしいのだろう、ロイヤル・スウィーツにはミサイルや砲台など支援砲撃できる物がつんでいない、そんな何もできずに指を咥えて見ていることしかできない中での絶望的な任務を言い渡す、まさに断腸の思いなのだろう。だが、俺達は死にに行くわけでは決してない、生きて必ず戻って来る、その思いを乗せて艦長に敬礼し返事を返す。
「「「了解!」」」
俺達の思いが伝わったのか、艦長の空気は少し和らぐ。
「武運を祈っている!」
俺は演習と同じようにファンデーションに戦術機を固定させ発進準備を整える。
「固定確認!ファンデーションの操縦権を和真機に譲渡します。」
「アイ・ハブ・コントロール!」
俺が、操縦権が譲渡されたことを伝えるとCPから武運を祈る言葉がかけられる。
「あなた達に星の加護があらんことを・・・。」
船に乗る人達も絶対に安全だと言えない戦場で俺達の心配をしてくれる。俺は、心の中で皆に感謝しながら操縦桿を握りしめた。
行くぞ!相棒!!
「いきます!!」
俺が飛び出し、直ぐにザウルとリリアの戦術機も横に並ぶ。
「こちら、トイ1。トイ2、トイ3奴らに思い知らせるぞ!人類にケンカを売ると言うのがどう言う事かをな!!」
「「了解!!」」
今回登場した飛行補助ユニット、ファンデーションですが見た目はドダイ改です。運用は、沖合から戦術機を陸地に運ぶための物です。光線級に狙われた場合は、ファンデーションを先行させ戦術機をレーザーから守ってくれます。要するに、再突入カーゴとドダイを混ぜた物になっています。