Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
朝日が照らす海の上を黒い影二つが疾走する。
遠くに見える陸地内部では所々黒煙が上がり、今なお戦いは継続しているのをしらせる。
内陸からは、光の柱が天を突き破り戦艦から放たれた弾丸を消し飛ばしていく。
「トイ3、一気に行くぞ!俺の尻の匂いが解る位置から離れるんじゃないぞ!!」
「了解!」
俺は、いまだに恐怖に震える体を無視して一気に速度を上げる。
速度メーターは、800から1300に瞬時に変わる。戦術機の周りに雲(ベイパーコーン)が発生しその中をワープする様に潜り貫ける。
「グっ―――くっ!!」
体に途轍もないGが掛かり視界が一瞬黒一色になる。
「減速開始!速度900でファンデーション解除、BETAにプレゼントしてやれ!!」
「了解!速度900確認!解除します。」
ファンデーションから外れた戦術機は浮くように後方に下がりファンデーションは再度加速し前にいた要撃級に突き刺さる。跳躍ユニットを前面に噴射しながら地面を滑る様に削りとる。そして突っ込んできた突撃級を回避し尻に散弾を食らわせる。
「トイ3、新武装の調子は良好か?」
「・・・問題ありません。トイ1にトイ2そちらも問題ないですか?」
「あぁ!!やっぱり兄貴は最高だ!このXAMWS-24突撃砲は最高だな!」
XAMWS-24突撃砲、近接用に銃剣やスパイクが装備されており36mmや120mmの弾倉装填数も上がっている。
俺の新武装はフォルケイソード改、フォルケイソードとの違いはまず大きさが一回り大きくなった事と、鉤爪状の先端がさらに長くなり本当に鎌のような見た目になっている。最大の特徴は、鉤爪状の後部にロケット推進機構が取り付けられたこと、これにより斬り返しが速く行え斬撃の威力を上げることも出来る。
「トイ3、俺達はこれから前方のBETA群を突き抜けその先にいるファウスト大隊と合流するぞ!」
「・・・了解。」
前方にはBETAの壁があり、その先に合流する予定の部隊が戦っている。その部隊は、BETAに囲まれつつあり、すぐに救援に行きたいがどこに光線級がいるか解らない戦場では下手に飛ぶ事は死を意味している。いち早く部隊と合流するためには、前方のBETAの壁に穴を開けなければならない。俺は、ザウルとリリアが乗るブラーミャリサと連携し次々と進行の邪魔をするBETAを殺していく。
突撃級の突撃を躱し胴体に横から風穴を開け、要撃級の攻撃を屈んで躱し刀で切り上げる、足元に集ってくる戦車級には、この撃殲10型特有の背部兵装担架に積んでいる突撃銃をまるで、触覚の様に振り回しながら発砲し次々と戦車級をミンチに変えて行く。
俺がBETAを殺せば殺す程震えが増していきとうとう体の内部に広がる。肺が震え空気が喉を通って口から漏れ出す。
「くっくくく・・・。」
邪魔をするBETAしないBETA関係無く目に写るBETAは、片っ端から殺して行く。
すると目の前に要撃級に殴り殺されそうになっているストライク・イーグルを見つけた、どうやら俺達が合流する部隊から逸れてしまったのだろう、俺は急いで駆け付け要撃級を切り殺す。
「あ、ありがとうございます!」
助けた戦術機から通信が入る。
「まだ、戦えますか?」
俺は、相手のバイタルデータを確認し戦術機が無事であるか確認する。
「は、はい大丈夫です!」
俺は、その言葉を聞いて安心しザウルに指示を求めた。
「こちらトイ3、BETAの群れの中に取り残された友軍機を見つけ現在共に行動しています。指示をお願いします。」
俺が今の現状を説明すると、ザウルの顔が画面に写る。
「よく助けた!俺達も、今お前達の方向に向かっている。合流しだい、トイ3が保護している奴も引き連れて部隊と合流する!」
「了解!」
俺が、返事を返すとザウルの顔が消え今度は助けた戦術機に乗っていた人の顔が写る。
「聞いてた?」
「はい!」
「俺達は、今から部隊に辿り着くためにBETAの壁を突破していく。難しいけど、やれんことはないから、最善をつくそ!」
「は、はい!」
その後すぐにザウル達と合流し周りのBETAを殺しながら、突き進んで行く。その時、CPから最悪の連絡が来た。
「こちらCP!トイ・ボックス各機聞こえますか!?」
かなり慌てた様子でCPから連絡が入る。
「どうした!?」
ザウルが俺達を代表して問いかけた。
「ファウスト大隊、一機を残しKIA認定されました。」
KIA、つまり俺達は結局間に会う事ができずにファウスト大隊は、壊滅した事を意味する。その時、俺は取り返しのつかないことをしてしまった事に気が付いた。
「・・・うそ。」
―――ッ!!
俺は、助けた戦術機と通信を切っていなかった。ここにいる事を考えれば、この子がファウスト大隊の生き残りである事は容易に想像がつく。
「みんなーーーーッ!!」
跳躍ユニットを噴射し飛び上がり、光線級の存在を忘れもういない仲間の元に向かおうとする。
それを、見た俺はすぐに止めようとする。――――が
一筋の光が空を飛ぶ戦術機を貫き、そしてその瞬間上空に爆炎が上がる。
「――――ッ!!」
その光景を見た瞬間に頭の中で何かが千切れ、体の奥から震えが込み上げる。
そして体の震えが増していき、今まで耐えていた物が中から溢れ出す。
「くっくくくくくはははあははは・・・。ハハハハハハハハハハハハッ!!」
何故、俺は笑っている?目の前で人が死んで怖かったのではないのか?
戦う事がBETAが怖かったから体が震えていたのではないのか?
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
・・・違う、俺は喜んでいる。仇をとる事ができるのを、只々歓喜していただけなのか。
理解してしまうと、感情が反転、憎悪の感情が支配する。俺からまた奪ったBETAに明確な殺意を向ける。
「ハハハハハハ・・・。テメェらぁ――――――ッ!!」
足元に集ってきていた戦車級の群れを散弾でミンチにし壁になるBETAを切り殺し最大加速で先ほどレーザーを照射した光線級に向かう。
ザウルとリリアが何か叫んでいるが、俺にはノイズにしか聞こえない。
「お前達さえいなければぁ――――!」
只々突き進む、すべてを殺すまで止まらないと殺し回る。
その時、頭の中に歌のようなモノが聞こえた。
「これは・・・?」
その歌が終わる頃には、俺の思考には少し淀みができるが、そのおかげで冷静さを取り戻すことが出来た。
「後催眠暗示をかけたぞ、和真?・・・暴れたい気持ちもわかるが、今は任務に集中しろ。」
「・・・了解。」
そこからは、只々冷静にザウルの指示通りにBETAを殺して行った。
どれだけの時間戦っていたのか解らない、解らないがかなり時間が立っている事は解った。なぜなら、俺とザウル達の戦術機の周りはBETAの死骸とそのBETAから流れ出した血で地面が赤色になっていたからだ。これだけの数のBETAを殺したんだ、時間はかなり立っている筈だ。
俺がボンヤリと考えていると、ザウルから通信が入った。
「トイ3・・・、時間だ。オーストラリア海軍はすでに展開している。巻き込まれる前に引き上げるぞ?」
俺はそれに、力無く返事を返し噴射跳躍で俺達の空母があるクラビーに向かおうとした。
その時、センサーが悲鳴をあげる。
「振動センサに反応!?・・・真下!!和真、飛べ!!」
ザウルが俺に叫びながら指示を飛ばすが俺は、頭が後催眠暗示でクラクラしているのもあり、すぐに反応できなかった。
そして、ブラーミャリサが飛んだ瞬間に地面が爆ぜ、BETAが大量に姿を現した。
俺は何が起こったのか理解していなかったが、体が勝手に反応し近くにいた要撃級を斬り殺すが、最後の悪あがきなのか要撃級は前腕を振るい俺の戦術機の左腕を奪って死んだ。
その衝撃で体制を崩した俺の後方から突撃級が突っ込んで来る。
俺は、後ろに跳躍しながらフォルケイソード改のロケットを噴射し鉤爪を突撃級の先端部に引っかける。
すると、突撃級は勢いよく走っていたのか一瞬中を浮き腹部を見せる状態になり、カメのように起き上がる事ができない体制になった。
俺は、トドメにと斬り殺すが右腕の関節部が故障し動かない。
ザウル達は、俺を援護してくれているが俺とザウル達の間にも大量にBETAが存在し中々こちらに来ることが出来ないようだ。
俺は、背部の突撃砲を撃ち、周りの戦車級を蜂の巣に変えて行くが直ぐに弾切れになってしまう。
跳躍しその場から逃げようとしたが、跳躍ユニットをBETAが飛び出して来た時の破片にやられたのか、こちらも故障してしまい飛ぶ事ができない。
戦車級は俺の戦術機に飛び掛かってくる。
初めの二、三匹は足のカーボンブレードで殺したが数が多すぎて直ぐに組み付かれる。
俺は、恐怖心から直ぐにリアクティブアーマーを爆発させるがそんな物は、殆ど意味をなさずにまた群がってくる。
そして、等々俺は仰向けに押し倒された。
俺は、恐怖に心を食われ声すら出せない。
一匹の戦車級が、戦術機の頭の部分に覆いかぶさり、その醜い口を開け頭を食いちぎった。
「ひっ!!」
俺は、自分の顔面を食われた気がして慌てて確かめるが食われたのは戦術機の顔で俺の顔ではないと理解するが、次は本当に食われるのだと確認させられさらに恐怖が俺の心を食い荒らす。
頭を食われ外の状況を見ることは出来ないが、音だけは聞こえて来る。
リリアとザウルが悲鳴と怒声を上げているのが解る。
だが、それよりもすぐ近くで聞こえるまるで、カチカチに凍ったアイスクリーム前歯で削るような、氷を奥歯で噛み砕くようなそんな音が、聞こえて来る。
外の景色は見えないが、網膜投影システムは生きている。レーダーを見ると、俺の位置を表す点はすでに、多数の赤い点で覆い隠されている。
ザウルとリリアの顔も写っている。
2人は、すぐに助けに行くと言っているが、今1つ実感が持てない。
俺はこの時、理解してしまった。
ここで俺は死ぬのだと、何もなせずに、何も返せずにただここで死ぬのだと理解してしまう。
頭の中で、父さんの最後を思い出す。
自殺をしようとした父さんは、今の俺と同じ心境だったのだろうか・・・。
俺は、自然とククリナイフを手にしていた。
その光景を見たのだろう、リリアとザウルはさらに悲鳴をあげる。
「和真!待って、死なないで!!」
「邪魔をするなぁぁぁぁぁぁぁ!!どけええええええ!!!!」
だが、戦術機を噛み砕く音は止まない、俺はただ謝ることしかできなかった。
「父さん・・・ごめん、約束・・・守れないや・・・。」
その時、音がピシャリと止み続いて爆音が響き渡った。
レーダーを見るとさっきまでいた、赤い点はすでに無く代わりに味方を示す点が無数にあった。
そして、別の顔が画面に写る。
「死にそびれたな、坊主?」
俺が、模擬戦で倒したホーネットの衛士だった。
「今は、安心しろ・・・。諸君!小さき命は失われずに済んだ、神に感謝を・・・、そして、その神に唾を吐いた糞虫共に神の鉄槌を下せ!!判決は下った!やつらは・・・、死刑だ!!」
「「「「「「「「了解!!!」」」」」」」」
レーダーに写る赤い点は次々とその数を減らしていった。
俺はそれを茫然と眺めていることしかできなかった。
フレームが歪み外に出る事が出来なかった俺は、戦術機数機の肩を借りクラビーに向かった。
クラビーに何とか辿り着き、空母の格納庫に入る。
整備兵の人達は俺をコックピットから外にだそうとしている。
俺も中から何かできないか動こうとするが、操縦桿から手が離せない。
嫌違う、腕は離れようとしているが指がそれを許さない。
まるで、接着剤で固定されてしまったかのように俺の指は操縦桿から離れなかった。
「くそッ!!―――クソッ!!」
何度も指に力を入れ離そうとするがやはり無理で、今度は操縦桿ごと引っこ抜いてしまいそうなくらい、腕を引く。だが、それでも離れない。
良く自分の腕を見ると震えていた。
だが、戦っていた時のような震えでは無く、俺にも理解できない震えだった。
そうこう俺が四苦八苦していると、勝手にコックピットが開き座席が前に押し出されていく。
戦術機のコックピットはレールの上に固定されており、ハッチが開くと前に押し出される様になっている。
ハッチが開くと俺は訳が分からないまま、光の世界に連れて行かれた。
光の側に出ると、リリアとザウルがコックピットの中に飛び込んでくる。
「和真!大丈夫!?」
リリアが俺に問いかけて来るが俺にも訳が分からないので素直に答えることにした。
「指が・・・、操縦桿から離れへんねん。・・・なんでかな?」
俺が、リリアに顔を向けるとリリアとザウルは俺の顔を見て驚く。
「和真・・・、任務は終わったんだ。」
ザウルが、いつもより優しく語りかけてくる。
「・・・だから、もう良いんだよ?」
リリアがそう言いながら、操縦桿を握りしめていた指を一本一本丁寧に外していく。あれだけビクともしなかった指が素直に解かれていく。感謝しようとリリアを見ると俺は気付いた。リリアの瞳の中に写る俺は、難民街に居た時と同じ顔をしていると・・・。
俺は、自分の両の掌を見る。
ただの掌なのに、そこには助ける事が出来なかった人の血が、俺の目の前でレーザーに撃ち抜かれた子の血が見えた。
そして、体の震えが恐怖であると理解した。
その様子を今まで黙って見ていたリリアとザウルが俺に抱き着いてくる。
「・・・どうしたんや?いきなり。」
俺の問いにリリアは涙声で答える。
「生きていてくれてありがとう・・・、生き延びてくれて助かった。」
ザウルは黙って俺とリリアを抱きしめる。
俺は、リリアとザウルの温もりに安心感を覚えると、一気に感情が込み上げてきた。
「―――助けられへんかった・・・、俺が・・・もっと、気を付けていればあの子は死なずにすんだのに・・・。」
俺は、死ぬかもしれない恐怖より助けられなかった後悔の念が後から後から押し寄せて来て、壊れてしまいそうになるが2人が俺を壊さない様に守るように抱きしめる。
そんな2人に俺は、さらなる力を渇望し後悔の涙を流しながら言葉を贈った。
「―――そばにいてくれて・・・、ありがとう。」