Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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表と裏

俺達は、オーストラリア海軍がBETAを殺し尽くすのを海の上から眺めていた。

「よくやったな和真!お前は、死の八分を生き残りそして、作戦も成功させた。ケアンズに戻ったら約束通りうまい肉を食わせてやるよ!」

ザウルが俺の肩をバシバシ叩いてくる。

喜んでいるザウルとは対照的に俺は、気分が冴えないでいた。

「どうした?」

「うん・・・。俺達が、もっと早く作戦に参加させて貰えていれば救えた命がもっとたくさんあったはずなのになと思ってな。」

「そいつは、仕方がないさ・・・。BETAとの戦争は、常に人が死ぬ、人が死なない戦争なんて存在しない、だから、今は自分が生き残れた事を喜べ!いずれ今日救えなかった人達の何十倍何百倍何千倍の人を救いたいなら、今生きている事に感謝しろ!いいな?」

俺は、ザウルの言葉に頷く。

「レオの奴も頑張ってくれている。何れもっと救えるようになるさ!それまでに、力をつけとかないとな!!」

そうだ、今のままじゃダメだ。俺は、強くならないと・・・。

「そうやな!その時が来て、俺が弱いままやったらあかんからな!」

「和真は今でもそこいらの衛士より強いけどな!?」

「それじゃ、ダメや!この世界で最強の衛士になるぞ!俺は!!」

「その意気だ!!」

俺は大見得を切ったが、仮に世界最強になれたとしてもザウルとリリアには、叶わないのだろうなと内心考えていた。

 

ケアンズに戻った俺達をレオが出迎え、戦果を報告しそのままレオも引き連れザウルオススメの肉屋に行くことになった。

皆がはしゃぐ中俺は、妙に落ち着かないでいた。

「どうした?和真君、まるで妻に長い間会えていない単身赴任中の夫のような顔をして。」

そんな俺に、レオが話しかけてくる。

「それはね!タエが第一町にいるから、タエ養分が足りてないからだよ!因みに私も足りてないよ!」

「なんと!私の例えは当たっていたのか!」

「ハァ・・・。」

俺とタエの話しで盛り上がる2人を他所に俺は溜息を吐いた。

「お~い!着いたぞ!!」

ザウルが指差す方を見ると高級感が漂う入るだけでも勇気がいりそうな店だった。

店の内装は、土足で歩いて良いのか悩んでしまう程に綺麗でふかふかの絨毯に、今では高級な本物の木を使った机や椅子、それだけでこの店が一般客を相手にしていない事がわかる。

「ふむ・・・。中々良い店だね。」

「だろ!!」

「う~~~!ザウル?私こんなお店来たことないよ?」

「そりゃ、俺が1人でうまい物を食べたい時に来ていた店だからな!」

「う~~~~!!」

「ハァ・・・。」

まったくこの人達は、どこにいようと変わらないな。

その後は、メニュー表を見て俺が目玉を飛び出したりレオが調子に乗って店で最高級の肉を出す様に言ったり、リリアが今度は2人で来ようね♡なんて、ラブラブ空間をザウルと作っていたりと大変だった。そして、最後に俺の誕生日祝いのためにケーキが出てきて俺は感動の余り泣きそうになってしまったりと、本当に楽しい一日だった。

 

あれから二日過ぎて今現在俺は、第一町にあるネフレ本社のビルにいる。第一町は太平洋に作られた人工の島でありここに、ネフレ本社がある。この町の地下では、合成材料を作っておりここから、各国に送っている。

「そろそろ来る頃だと思うのだけれど、遅いな・・・。」

俺は、ビル一階の喫茶店で人を待っている。三時に来ると言っていたのに手元の時計はすでに四時だ。俺が、時計を確認していると後ろから声を駆けられた。

「ごめんごめん!待たせたかい?」

声の主が誰なのか知っている俺は、振り返ることなく返事をする。

「あぁ、ずいぶん待たされたよ。今にも寂しさの余り技術部に突撃を駆けてしまいそうやったよ。」

「私はそれでも構わないけどね?私服姿でウイングマークと社員証を付けないでウチに突撃したら、スパイと勘違いされて取り調べされることになったかもしれないよ、キミ。」

そう言いながら、俺の前の席に腰掛ける。

「相変わらずだな、メル。」

「そう言うキミも相変わらずだね、和真!」

俺が待っていた人物、メルヴィナ・アードヴァニー、インド出身で父親がインドの先進技術部で働いていた頃レオと知り合い、オーストラリアに難民として連れてこられたのを知ってネフレに誘った。もちろん、裏の事を知っている。ネフレでは、家族皆技術部で働いており優秀であると聞いている。普段のコイツを見ていればそんな風には見えないが。

「それよりもだ・・・。」

「解っているよ。愛しのラブリーエンジェルはちゃんと連れてきているよ。」

メルが鞄を開けると中からタエが飛び出して来た。俺は、それを受け止め撫でまくる。

「元気にしていたか?」

「にゃ~!」

タエは喉をごろごろ鳴らして甘えてくる。

「本当にバカップルだね、キミ達は。・・・あぁ~、毎日忙しい中でタエの世話を欠かさずにしていて、おまけに毛繕いまでしたのになぁ~。和真は、イチャイチャを見せびらかすだけなのかにゃ~。」

「解っているよメル、報酬は何が良い?」

「さすが話しが解るね!大将!!」

「俺は、少尉だ・・・。」

「細かい事は気にしない気にしない、些細な事を気にしていると禿ちゃうよ?」

「くっ・・・。」

俺は、自分の髪を何かから守る様に右手で抑える。

「ぷっくくくく!そんなに、気にしなくてもまだフサフサじゃよ!まぁ、将来は解らないけどね?」

弄られるのが嫌な俺は、話しを変えようとする。

「それで、報酬は?」

「そうだねぇ~。最近出来たばかりのケーキ屋があってね。そこのケーキが食べたいなぁ~。」

「了解、お手柔らかに頼むよ。」

「それは、私の胃袋が決めることだからなぁ、解らないなぁ~。」

俺は、財布の中身を確認し、今月生きていけるかなと深く溜息を吐いた。

そして、歩くこと20分とうとう付きました、新参でありながらすでに顧客満足度№1のケーキ屋!その名も、糖分スウィーツ(笑)―――。

「えっ、何この糖尿病まっしぐらな名前は・・・。それに(笑)ってなに!?」

「今日はツッコミが冴えてるね~、和真!」

「誰もツッコんでないの!?おかしいだろ、この名前?」

「気にしない気にしない、美味しければ無問題だよ、キミ!」

「あれ?俺がおかしいのか?あれ?」

俺は、頭を抱えるがメルがさっさと入店するので慌てて着いていく。

店内は至って普通のケーキ屋で、1つ言えるのがカップル率が半端ないことだ。

メルが勝手にオーダーを頼みに行き、俺は席を確保することになった。

なんとか席は確保できたが、周りはカップルだらけで肩身が狭いしかも、タエを頭に乗せている俺は、かなり目立っていた。

「やぁやぁ!お待たせぇ~!」

俺が縮こまっているとメルがトレイに大量のケーキを乗せやってきた。

「おま・・・、どんだけ食う気だよ!!」

「はぁ・・・、和真は誰かさんのおかげで技術部に缶詰になっている乙女にそのような事を言うのかね?」

「ぐっ・・・。」

それを言われると何も言い返せない。

「はい、これはキミのでこっちはタエの分。」

最後の言葉に俺はピクリと反応する。

「・・・なに、猫用のケーキまであるのか?」

「当然!この店は頼めばなんでもケーキにして出してくれる夢の様なお店なのだよ!」

メルが無い胸を張って威張る。

「なん・・・だと・・・!」

この店は要チェックだ!!タエ専用のケーキを作ってくれるとは・・・、解っているじゃないかパティシエ!!

俺が、オープンキッチンの奥でケーキを作っているサンタクロースみたいな男に熱い視線を送るとこちらに振り向きもせずに、握りしめている手をこちらに向け親指をグッと持ち上げる。・・・惚れちまいそうだぜ、オヤジ!

「和真もこの店の良さが分かったかな?」

「あぁ!ケーキを食う前に胸が一杯だ!!」

それからは、ケーキを食べるのに必死になった。もちろん、タエには俺が食べさせている。

「ラブラブだね、もういっそ結婚しちゃいなよ。」

「俺とタエはそんなんじぇねよ。それより、メルの方はどうなんだよ?前にアメリカでおもしろい男と知り合ったって言ってたじゃないか。」

俺がそう言うと、メルはフォークを置き遠くを見つめる。

「ウィルのこと?彼とは、手紙のやりとりをしているだけだよ。それに、向こうは衛士・・・。なかなか会えないしね。」

おっ、この反応は・・・。脈ありか?

俺が、根掘り葉掘り聞きだしてやろうとすると、メルが立ち上がる。

「さて、満足したしそろそろ戻ろうか?お会計よろしく!」

解っていたことだが、会計をした俺の財布の中身はすっからかんになってしまった。

 

本社ビルに戻ると、レオが格納庫に来いと言っていると言われ俺達は格納庫に向かった。

格納庫には、レオと兄貴が俺達を待っていた。

「五六和真少尉まいりました!」

「メルヴィナ・アードヴァニーまいりました!」

俺とメルは敬礼をし2人が答礼を返して手を下す。

「和真もメルもそう固くならないでくれ・・・。こちらの肩が凝っちゃうよ!」

レオが肩を回しながらおどける。

「相変わらずですね、社長?」

「メル君も相変わらずチッパイな。」

レオはメルの一部を見て言う。メルは社長の視線に気づき胸を両手で隠しながら後ずさる。

「社長・・・。セクハラやで?」

「何を言うんだね和真君!私の視線には、母性が含まれている・・・。つまり、私が凝視した胸は大きくなるのだよ!!」

メルの背後に大きな雷が落ちた。

「なっなんだってぇーーー!?」

さらにレオの演説が続く。

「考えてみてくれ・・・。なぜ、リリアの胸があんなにも大きいと思う?」

「それは・・・。」

俺が、言おうとするとレオが掌を俺の眼前に突き付け黙らせる。

「イヤ!皆まで言わなくていい・・・。そうとも!リリアの胸は私が毎日凝視していたからこそあそこまでのバストになったのだよ!!」

レオの言葉を聞きメルが思考の海に入ってしまう。

「お~い!帰って来~い!」

俺が耳元で声を駆けてやると、ハッ!と気がついたメルは、目に涙を溜め上目使いでしかも首を傾げる+αのコンボで問いかけてきた。

「やっぱり、男は大きい方がいいのかい?」

くっ・・・!何をトキメイテいるんだ俺!!気をしっかり持つんだ!!

俺はなるべく優しく笑いかけ、メルを諭す。

「大丈夫だよ、メル・・・。小さいのにも需要はちゃんとあるから・・・。」

次の瞬間には、メルの拳が俺の顔面深くまでめり込んでいた。

「み、皆・・・。脂肪の塊に潰されて死んでしまえ~~~!」

メルは泣きながらどこかに走り去って行った。

「くくくくくくっ!!メル君は、おもしろいな!」

ツッコミたいたが顔面が変形している俺には言葉を口にすることができない。俺が困っていると、頭の上に居たタエが前足を器用に使い顔を整えて行く。

「ふぅ~!ありがとうな、タエ!!―――レオ、余りメルをからかうのは勘弁したってや?」

「何故だい?こんなに楽しいのに・・・。」

「臍曲げられて、新しい物作ってもらえんくなったらどうするんや?」

「・・・確かに、それは困るな。解った、機嫌を直してもらう為にプレゼントをしよう!・・・Dカップのブラジャーを送ったらどうなるだろうか。」

レオは顔をニヤァと歪め次の悪戯を考えていた。

「もうどうにでもなれ・・・。」

諦めた俺に今まで静観を決めていた兄貴が話しかけてくる。

「こうなった社長は当分帰ってこない、仕方ないが俺達は先に行くことにしよう・・・。」

「解ったよ・・・、兄貴。タエ、メルを慰めてあげてくれないか?」

俺の問いに、タエは尻尾で俺の後頭部を一度叩きタエを追いかけて行った。

そして俺達は1人、グフッグフフフフフフフ!!と不気味に笑うレオを置いて先に進むことにした。

広い格納庫の最奥まで行くとザウルとリリアが待っていた。

「あれ?2人も呼ばれてたんか?」

「和真もか!こいつは何かありそうだな!!楽しみだ!」

1人勝手に何かを理解して楽しんでいるザウル。

「兄貴~!レオは~?」

そんな中、リリアがレオがいない事に気が付いた。その答えを兄貴が返す。

「社長は遠い世界に旅行中だ!しばらくすれば戻ってくる筈だぜ?」

「わかった~!」

兄貴は説明を終えると唯の壁に手を当てる、すると壁が扉の様に開き通路の先にもう一つ扉が現れた。

「おら、行くぞ!」

呆ける俺を兄貴が叱咤し先に進ませる。通路の先の扉にカードを差し込むと扉の奥で重たい物が動き回る音が聞こえてくる。そして、扉が開くと左方向に進む通路が現れた。俺は、不思議に思いながらも皆に続き先に進む。進んだ先には、地面から蛍光灯の明かりがあるだけの暗い場所だった。おそらく格納庫だろう。

「兄貴、さっきの道のりは?」

「あぁ・・・。隠し扉の先の通路は、通路の壁自体が人物認証を行っていてな?登録されてない奴はまずあそこで死ぬ。そんで、次の扉だがカードの挿す位置で進む箇所が変わるんだ!盗まれても良い機密は真っ直ぐの通路の先にある。右側は兵器・情報関連で今いる左側は、試作改造の戦術機格納庫、そんで一番の機密に行く通路は下に向かう通路になる。

解ったか?」

「解ったよ、兄貴!」

「じゃ、これを見てくれ!」

兄貴がそう言い近くの壁にあったボタンを押すと天上のライトが一斉につき暗闇を一瞬で薙ぎ払う。そして、闇の中から三体の巨人が姿を現した。

「「――――ッ!!」」

リリアとザウルは、右側にいる戦術機を見て息を飲む、俺はその様子に違和感を感じていた。

すると、突然後方から声がかかる。

「紹介しよう!!」

「うわっ!!」

突然後ろからレオが現れた。そのせいで俺は驚いて声を出してしまった。

「左の戦術機の名は、ヴァローナ(ロシア語でカラス)、今ギャンブル中隊で使われている戦術機をさらに改良発展させた戦術機だ。コイツは、ソ連のジュラーブリクの開発データを得た我々が、独自に作った戦術機だ。・・・だが、ネフレがまだ若かった時に一部データがソ連に渡ってしまってね。ソ連に行くことがあったら良く似た戦術機があるかもしれないな。」

「―――って!何でソ連のデータもっとんねん!」

俺がそう言うと、ザウルとリリアの顔が曇る。だが、俺はそれに気が付かないでいた。

「オイオイ!和真君、我々の協力者は世界各地にいるし諜報員もまた同じだ。ソ連で似た戦術機があるかもしれないと言ったが、自信を持って言えるね!中身は別物だ。渡ったデータの中には、機密の部分が少なかったし、その当時のブラックボックスの部分のデータも今の我々には必要の無い物だからね、今使われているヴァローナは根こそぎ変えてしまっているよ?つまり、コイツはそのヴァローナすら上回る近接バカの戦術機なのさ!!」

オイオイ・・・、無茶苦茶な戦術機だな。

「続いて真ん中の機体だが、名前はヴェルター(ドイツ語の番人)、オールネフレ産の戦術機だ!コイツは、今我々が作っているハイヴ攻略戦術機スピリットの試作戦術機だ。この戦術機はすべてが、試作段階の戦術機で何かとバグが発生すると思うがよろしく頼むよ。」

俺は、その話しを聞いて口を開けてしまう。

「まぁ、驚くのも無理はないだろうね!でも、コイツ自身がすでに他の戦術機を凌駕する性能を引き出すこともできる可能性を秘めた戦術機であることも事実だよ!」

俺は、レオの言葉に溜息をつきながら言葉を返す。

「・・・自信ないんですか?」

「まぁ、乗る衛士しだいだからね?うまくコイツを使いこなす事ができれば問題ないし、できればそうあって欲しいね。もし、そこで問題が発生したら、スピリットの開発にも影響するからね。まぁ、見た目は変な感じだけど、武装を着けたらもっと変になるから楽しみにしていると良いよ!!」

俺は、もう一度その戦術機を観察する。

今は、武装がつけられていないのでお世辞にもカッコいいとは言えない。細くて長い脚、地面に着きそうな細い腕、腕と脚が長いせいで小さく見える後ろにひし形の物体が飛びだしている胸部、そして、まだセンサーマストすらつけられていない頭。全体を見たら人型でありながらその異形な姿から胴体が小さくなったリトル・グレイに見える。

「最後に右側の戦術機だが、F-22AラプターEMD Phase2先行量産型の改造機、リリアとザウルにとっては、見たくもない戦術機だろうが我慢してくれ・・・。」

レオは哀愁を漂わせながら話しを続ける。

「まぁ、私も二度と見たくない戦術機だが、この戦術機は射撃に関しては非常に優秀でねこの戦術機から取れるデータは貴重な物になるはずだ。」

レオがザウルとリリアに解ってくれと話す。

「・・・この戦術機が優秀なのは、嫌程知っていますからね・・・。」

ザウルが目を細め眉を寄せながら、了解の意を伝える。

レオはそれに頷くことで返し、説明を続ける。

「これらの戦術機を紹介したのは、ユーラシアが予想以上の速さでBETAに占領されかけているからだ、我々には時間が残されていない。だから予定を繰り上げてこの戦術機達を用意した。そして次からは、この戦術機達でテストをしていく訳だが、ヴェルターはまだ完成していない、よってヴェルターに乗る人にはケアンズに帰ってから別の戦術機を用意してあるからね。少しの間はその戦術機で他の2人のテストに付き合ってくれ!では、どの戦術機に誰が搭乗するのか発表する!」

俺達は、待ってましたと姿勢を正す。

「まずヴァローナだが・・・、ザウルだ!この戦術機の兵装は、射撃兵器を殆ど無くしその代わりに、近接スピード特化の戦術機に仕上げている。そして、スピリットの近接兵装の実験を主にする、良いデータを頼むよ!」

「了解!!」

「続いてヴェルターだが・・・、和真君だ!この戦術機は、他の二つの戦術機と違い新概念の武装の実験をしたりする。ある意味一番危ない戦術機だが、この戦術機から取れるデータは、今後のネフレにとって貴重な物になるはずだ。・・・期待しているよ?」

俺は、プレッシャーに震えるがこれは武者震いだと自分に言い聞かせてレオを見た。

「了解!」

レオは、俺に頷き返した後、首を重たそうにリリアに向ける。

「最後にラプターだが、すまないリリアこの戦術機に乗ってくれるか?」

リリアは一瞬眉を寄せ不快感を露わにするが、すぐに表情を戻しザウルに構わないと告げた。それにたいしレオは、すまないと短く小さな声で返した。

「この戦術機では、スピリットの狙撃兵装の実験を主にする、よろしく頼むよ。」

「了解!」

「他の細かい事は、後に説明するからね!」

俺は、新しい戦術機に対して心を躍らせていたが、リリアの戦術機が気になり聞いてみることにした。

「1つ良いですか?」

「何だい?和真君。」

「リリアの戦術機はどうやって手に入れたのですか?」

レオは、少し考えてから近くの大型ディスプレイを起動させ画像を表示した。その画像は、数多の戦術機が実弾で攻撃しあう人と人の戦争の姿だった。

俺はその画像に息を飲み、リリアとザウルは表情を無くす。

「ここに写っているのは、リリアの戦術機になるF-22AラプターEMD Phase2先行量産型・・・。この戦術機は表向き、12機作る予定の所をアメリカの予算削減のため9機しか作られなかった戦術機となっているが、実際は12機すべて作られていた。じゃあ、残りの三機はどこに行ったのか・・・。それは、大西洋の合成材料製造所、第二町に来た。しかも、F-15Eストライク・イーグル36機を引き連れてね。」

俺は、大方予想が付いていたが聞き返した。

「・・・一体何が目的で?」

「我々の事を恐れた組織が、当時そこにいた私や計画の主要メンバーを消しに来たのだよ。」

俺は驚愕した。最新衛の戦術機と大隊規模のストライク・イーグルを出撃させる。こんな規模での闘争はもはや戦争だ!ただ、一組織の幹部を殺すためだけに戦争をしかける。しかも、場所は多くの人が住む町だ!そんな所を戦術機で攻撃したら最悪、第二町自体が崩壊してしまうかもしれないんだぞ!そして、BETAに国土を奪われた人達の食糧を作っている場所を攻撃するなんて、正気の沙汰じゃない!

俺は、知らないうちに手から血が流れる程に握り閉めていた。

「まぁ、第二町にはトランプ中隊とリリアとザウルがいたから返り討ちにしたけどね?」

俺は、聞きなれない部隊の名前に首を傾げた。

「あぁ、教えて無かったね!ネフレ特殊防衛戦術機大隊トイ・キングダムの1つの中隊の名前だよ。その他にもチェス中隊とギャンブル中隊がある。チェス中隊は守り、ギャンブル中隊は攻め、そして両方をこなせるネフレ内でのエース部隊がトランプだ。情報が知りたかったら、機付長から聞けばいいよ。」

そんな部隊がいたなんて知らなかった。でも、良く考えると解ることだ。世界規模での計画なら、その計画を守る部隊が存在するのは当たり前だ。

「話しを戻すね?攻めてきた戦術機部隊だけれど、第二町が射程内に入る前にトランプ中隊とリリアとザウルに損害を出さずに全機撃墜、その後攻撃命令を出した組織はギャンブル中隊が壊滅させ、それに関わっていた者全員を殺した。疑わしい者に関しては、未だに監視を続けている。リリアのラプターは、一番損壊が少なかった物をこちらで修復した物だ。」

俺は、俯きながら考える。すでに、計画を邪魔する奴らがいて、もしかすると俺達も人と戦う時が来るかもしれない・・・。俺に、出来るのか?

黙り込む俺にレオが畳み掛けるように話す。

「和真君・・・。何も今すぐ、人殺しをしに行けと言う訳ではないから安心しなさい。それに、この事件が切っ掛けで各組織は当分の間、攻めてはこない筈だ。何故なら、皆解っているからね。ネフレに手を出すとどうなるかを・・・。それに、ネフレに組する時に私は聞いた筈だ。外道になることを恐れないかと・・・。今さら怖気付いたなんて言わないでくれよ?私は、君なら悪魔になろうとも出来る人間だと思ったから誘ったのだから。」

そうだ、その通りだ。出来る出来ないじゃない、やるしかないんだ!俺達の存在理由を考えるなら、反発する奴がいるのは解っていた筈だ!俺は、俺の願いの邪魔をする奴を排除するだけだ!

「解っているさ、レオ。俺達の計画は、何れこの世界に夢の世界を顕現させる。その邪魔をするなら・・・、殺す事も厭わないさ。」

レオは申し訳なさそうな顔をしていた。

「あぁ、すまなかったね。少し熱くなってしまったようだ。・・・それでは、各戦術機の情報は後ほど機付長より説明を受ける様に、解散!」

「「「了解!」」」

レオは、そのまま兄貴を引き連れ格納庫から出て行った。

レオがいなくなると、格納庫自体が静まりかえり無音の世界が出来上がる。その世界を始めに壊したのは、リリアだった。

「・・・和真。」

この人は、自分を殺しに来た奴が乗っていた戦術機に乗らなければいけないのに俺の心配なんかして・・・。

「大丈夫やで、リリア。俺は、もう覚悟が出来てるハズやから・・・。例え救われない人がいても、その数より多くの人が救えるなら、俺は頑張れるから・・・。」

俺は、これ以上気を使って欲しくなくてそう言って格納庫を後にした。

 

本社ビルに戻ると、メルがタエを抱えながら、うろうろしているのを見かけた。

「どうしたんや?」

俺が声を駆けるとメルは一瞬驚き息を整え俺に訴えかけてくる。

「部屋のカギを無くしてしまったのだよ、和真!」

俺は、何でそんな大切な物を無くすと溜息をついた。

「見かけなかった?」

メルは目線で俺に助けを求める。

俺は、手伝ってやろうと思うがその時頭の中でピーンと閃く。

「・・・メル、探すのを手伝ってやるよ!」

「ほ、本当かい!?」

「その代わり、もし見つけたら例のあの店のケーキ、奢ってくれないか?」

「ぐぬぬぬぬぬ・・・!」

メルは、頭の中で今俺に助けを求めることでどれだけの出費になるのかを計算しているのだろう、顔を見れば容易に想像がつく。

メルが悩んでいると、ビルの入り口からリリアとザウルが姿を現す。

「どうしたの?」

俺に問いかけるリリアに俺は、先ほどまでのやりとりを説明した。

「そっか~、じゃあ私も手伝うよ!!」

「なら俺も手伝おう!!」

リリアにザウルが呼応する。

そんな2人に、メルはまるで天使でも見るかのような目を向けた。

「ありがとう!ザウルさん、リリアさん!・・・和真もそれで手を打つから、手伝ってくれないかい?」

俺は、今日の出費をどうやって返上させてやろうか、と考えながらメルに問いかける。

「どの辺りで無くしたか心辺りはあるか?」

俺の問いにメルは、首を振ることで返答する。

そのやり取りを見ていた、リリアとザウルは考え込む。

「そうすると、簡単には見つからないな!!」

「そうだね~、どうしよ?」

2人が頭を悩ませる中、俺は余裕の表情を見せていた。

その様子に気が付いたザウルが俺に聞いて来る。

「なんだ、和真?カギのある場所が解るのか?」

「俺の場合は、思い出させることが出来るの方が正しいけどな。」

俺の返答に不思議そうな顔をするメルとは対照的にリリアは納得した顔をする。

「なるほどね!確かに和真なら、直ぐに見つけさせてあげる事ができるね!」

「そう言う事!」

俺は得意げに答える。

「えっと・・・、どういうことかな?」

「まぁ、直に解るから・・・。」

俺はそう言うと、メルの頬に両手を添え目線を俺に向けさせる。

「なっ!か、和真・・・!?」

赤い顔で驚くメルを無視して俺は催眠術の準備を整える、その時一瞬父さんの最後の瞬間が頭を過るが俺は首を左右に振り気持ちを落ち着ける。

「メル、俺の目を見るんや・・・。」

そこからは、いつも通りただ誘導するだけだった。

「・・・と言うわけで、部屋の中に置き忘れていただけだったと・・・。」

「感謝するよ和真!それより、さっきのあれは催眠術かい?」

「そっ、俺の特技みたいな物や!!」

俺が、メルに自慢しているとリリアが俺の肩を叩いて来る。

「ねぇねぇ!私もお気に入りのキーホルダー無くしちゃったのだけど、いいかな?」

俺は、日頃世話になっている恩を返せると、快く了解した。

「じゃ、リリア俺の目を見て?」

そして、俺はリリアを誘導しようとするがリリアが反応しないことに気が付く。

「・・・あれ、思い出せないよ?」

「おかしいな・・・。」

それから、何度かためすが結局リリアに催眠術の効果を与えることは出来なかった。

「ごめんな、リリア?」

「私の方こそごめんね?無理に何度もさせてしまって・・・。」

今まで俺の催眠術の効果が表れなかった人はいなかった、俺は初めてのケースに少し落ち込んでしまった。何より、やっとまともな恩返しが出来ると息巻いていたのにこの結果なのだ、仕方がないだろう。

落ち込む俺をザウルが後ろから、肩を抱き俺に笑いかける。

「今度は、俺にやってみてくれないか?」

俺は、汚名返上しようと鼻息を荒くする。

「何を無くしたんや?」

俺がそう問いかけると、ザウルは俺の耳元に口を寄せ小声で言ってくる。

「・・・タバコのライターを無くしちまってよ。」

俺は、ザウルに合せ小声で聞いた。

「タバコ吸うてんの?」

「・・・戦場に行く前にな!」

俺は、タバコがこの世界で物凄く高価な物であることを知っているが、少し興味が出たので聞いてみる事にした。

「タバコっておいしいん?」

俺の言葉が予想外だったのかザウルは一瞬目を瞬かせて、その後嬉しそうに笑った。

「何だ、和真も吸いたいのか?ならライターを見つけてくれた後で、一本吸わせてやるよ!」

俺は、未成年なのに生意気なことを言うな!と怒られると思っていたのに、逆に進めてくるので一瞬固まるが、ライターを見つけることにさらなるやる気をだした。

「了解や!!」

俺はそう言うと、ザウルから一度離れ正面に移動しザウルと視線を交じり合わせる。

「じゃ、俺の目を見て。」

俺は自分の中で催眠術のスイッチをONにしてザウルを誘導していく。今度は成功したようだ。俺は、そのまま誘導する、するとザウルのライターは先程までいた格納庫に置いてきてしまっていたようだ。

俺が催眠術を解くとザウルは俺に感謝するが、直ぐに慌てだした。

俺がザウルの背後を見るとリリアが髪の毛を逆立たせて怒っていた。

「ザウル・・・、タバコは体に悪いって言ったよね?」

ザウルはリリアが言い終わる前に、ビルから飛び出して行く。リリアがそんなザウルを何も言わずに追いかけていった。

「じゃ、カギの場所も分かった事だし私は部屋にもどるね。」

メルは、タエを連れ部屋に帰ってしまう。1人残された俺は、どうしようか迷うが答えを見つけられず、取りあえず歩いてどこかに行くことにした。

 

「・・・で、結局行きつくんわここやねんな。」

俺が、何も考えずに辿り着いた場所、それは撃殲10型のハンガーだった。俺の愛機は初陣の時の傷を癒すことが出来ずに実質放置されている。そして、この傷を見るとあの時の恐怖を思い出してしまう。

俺は、無言でガントリーに上がり撃殲10型の前に来る。

「・・・俺、新しい戦術機を貰えることになってんで?」

俺が語りかけるが、勿論返答が帰ってくることは無い。

「俺は、まだまだお前でも戦えると思うねんけどな・・・。」

俺は、まだ一回しか実戦で戦っていない戦術機だが愛馬のような感情をこの戦術機に持っていた。

 

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