Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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故郷

次の日、俺達は朝から移動を開始し現在は横浜に来ている。

戦術機達は皆ケアンズに先に送りメンテナンスをするらしい。

レオは横浜に着いて早々に俺達とは別行動をとり、ザウルとリリアはレオに着いて行っている。

俺だけが1人休みを貰い横浜を観光していた。

だが、観光と言っても顔見知りと遭遇するのは出来れば避けたい。

俺は、出来るだけ町から離れ海辺の近くをうろついていた。

「ここは、何もかわらへんな・・・。」

昔ここに来た時と同じだ。

この町は外界から途絶されているみたいに、空気が清らかで時間も穏やかに流れている。

俺は、この世界を守りたいから外の皆にもこんな世界があるのだと教えたいから、今戦場にいっているのだと改めて思いなおす。

俺は、海を眺めながら近くのベンチに腰掛ける。

「す~は~、うん、空気がうまいな。」

俺がそう言って空を眺め雲が流れて行くのを昔のように眺め時間を潰していた。

長い間上を向いていたため首が痛い。

俺は首を左右に振り間接を重くならす。

その動作は仕事が一段落着いたサラリーマンのようだ。

俺が、首を粗方スッキリさせ前を見ると不自然な人を見かけた。

その子は、キレイな赤い髪を振り回し何かを探しているようだ。

時折木を見上げたり、地面を見つめたり近くにいる人に声を駆けたりしている。

俺は、今は誰とも話したくないのもあり少し申し訳ないが声を駆ける事無く今度は、後ろに広がる海を眺めていた。

「すみません・・・。」

海が綺麗だ、この海を見ていたら戦争をしているなんて想像ができない。

「あの~、すみません。」

あっ、魚が跳ねた。

「すみませーーーん!!」

「おわっ!!」

俺はいきなり大声を出され驚いて声の主を探す。

だが、声の主は直ぐ目の前にいた。

俺に声を駆けてきたのは先程から何かを探していた赤髪の少女だった。

俺がその子に声を駆けようとすると逆にその子が驚いていた。

俺は頭に?を浮かべ問いかけようとするとその子が先に口を開いた。

「・・・何か辛い事でもあったのですか?」

「・・・へっ?」

俺は急に何を言い出すんだと思いながら問い返す。

「別に辛く無いで、なんでそう思ったんや?」

その子は一瞬考える素振りを見せ少ししてから話し始める。

「だって、泣きそうな顔をしていたから・・・。」

俺はそれを聞いて自分の顔を確かめようとするが生憎手持ちの鏡などは持っていないので確かめようが無かった。

だから、俺は努めて明るい声を出しながら話題を変える。

「俺は別に辛く無いし泣いてもないよ?でも、他人である俺に気を使ってくれてありがとうな。」

「あっ、いえ、そんな私も急に変な事を言ってしまってすみません・・・。」

「ハハハハ、ありがとうな!そんで、どうしたんや?俺に何か聞きたい事でもあるん?」

その子を曇りかけていた顔を瞬時に変え何かを思い出したように俺に話し始める。

「あ、そうだった!あの、すみません貴方のベンチの下にあるリボンを取りたくて・・・。」

「リボン?」

俺は、ベンチから立上がりベンチの下を除き込むと確かに黄色い布が落ちていた。

俺はそれを拾い上げ女の子に渡した。

「はい。」

「ありがとうございます!」

女の子が笑顔でリボンを髪に結びポニーテールになる。

「アッ!」

「???」

俺の驚いた声を聞いて女の子は頭に?を数個浮かべ不思議そうな顔をする。

とてもじゃないが言えない、この子の事をアッパーで男を吹き飛ばす姿からスーパーマンか何かと勘違いしていたなんてとてもじゃないが言えない・・・。

「いや、別になんでもないで?」

「???」

女の子は頭に?を浮かべながら、何かに気が付いた。

「あああああぁぁぁ!!」

「ど、どうしたんや!?」

「もうこんな時間だ!タケルちゃんに怒られちゃう!」

どうやら、待ち合わせをしているようだ。

「それじゃ、ありがとうございました、えっと・・・。」

女の子の様子から俺はそれを察した。

「五六和真やで、気いつけていきや?」

「あ、はい私は鑑 純夏(かがみ すみか)って言います。五六さん、本当にありがとうございました!」

鑑さんはそう言うと、もの凄い速さで走って行った。

「さて、俺もそろそろ帰ろかな!」

俺は夕陽の照り付ける海を一度眺めそして、町の喧騒の中に入って行った。

俺はレオ達との待ち合わせ場所に到着するが時間までまだあり、時間を潰すしかなかった俺はポケットに入っていたタバコを取り出し火をつけ、煙を体に染み込ませる。

「ふぅ~。」

口から吐き出される煙は風に流され海の方に向かう。

俺はそれを何の感情も籠っていない目で追いかけた。

すると、煙の先に見覚えのある赤い髪を見つけた。

その隣には、確か鑑さんにアッパーを食らって空高く吹き飛んでいた少年がいた。

2人はどこから見ても中の良いバカップルと言う奴だ。

甘い空気をまき散らしているので、彼女がいない野郎共が恨めしそうに見ている。

まぁ、俺もその1人なのだが・・・。

俺は、あの空間に入り込むだけの勇気も二人の空間を壊す空気の読めない男でもないので、あえて声を駆けずにいることにした。

それにしても仲が良いな・・・。

ときどき少年がふざけてそれを鑑さんが怒るったように頬を膨らませる。

そんな2人を見ていると、この世界が俺が元居た世界のような錯覚すら覚えてしまうほどにあの二人は幸せに満ちている。

「・・・ここだけは、外(戦場)の空気を入れたらあかんな。」

俺は、独り言を呟きながら、二本目のタバコに火をつけた。

「築地さん?」

俺が振り返るとそこには、少し大きくなった雅美ちゃんがいた。

「雅美ちゃん・・・?」

「ハイ!!」

買い物帰りなのだろう、荷物を抱える雅美ちゃんは、凄く嬉しそうな顔をしてくれたが、俺は別の事を考えていた。

マズい・・・、まさか築地の俺を知る人間と会うなんてそれに、変装もそれなりにしたつもりだぞ、くそこれは完全に俺のミスだ!どうする、他人の振りをするか、嫌もう遅すぎる、走って逃げるか、余計に怪しまれるぞ・・・、ここは、それとなく遠ざけるのが一番だな。

「久しぶりやな?」

「ハイ、本当に・・・。」

雅美ちゃんはそう言って俺の顔を見上げると泣き出す。

「うっ・・・ぐす・・・ふぇ。」

「ちょ、どないしたんや!?どこか痛いんか?」

「心配、したんですよ?大陸が襲われたってテレビで言っていたから・・・。本当に、心配したんですよ・・・?」

そう言うとドンドン涙が溢れて行き、止めることが出来なくなってしまったのだろう、雅美ちゃんは俯き涙を零し続ける。

周りの通行人は俺の事を非難の目で見てくる。

皆の目が語っている。

女を泣かせてんじゃねぇぞ!リア充が爆発させられたいか?と・・・。

俺は、命の危険を感じすぐに泣き止ませようとする。

「ほ、ほら俺はこんなにもピンピンしてるやろ?大丈夫やで、な?」

「ふっ・・・う、はい。」

ふぅ、どうやら泣き止んでくれたようだ・・・。

後は、うまく別れられればそれで完璧だ!

「じゃ、ごめんやけど俺・・・。」

「あの、これから家で晩御飯を作ろうと思っているのですけど、よかったら一緒にどうですか!?」

俺の言葉を遮って先に言われてしまう。

「いや、今回は遠慮しようかなぁ~なんて?」

「ダメ、ですか?」

また、雅美ちゃんの大きな瞳に涙が貯まって行く。

「わぁ~!分かった、分かったよ!ご一緒させてもらおっかな?」

「ハイッ!」

雅美ちゃんは満面の笑顔でそう言うと俺の手を取って走り出す。

俺は、それに引っ張られながら、雅美ちゃんの腕から荷物を取る。

雅美ちゃんは少し驚きながら私が持ちますよと言ってくれたが、俺はご馳走になるねんしこれくらいさせてと言って納得させた。

そして、雅美ちゃんの暖かい腕に引かれながら俺は見慣れた店に到着した。

「京塚食堂・・・、変わらんな。」

俺はそう言いながら暖簾を潜って店内に入る。

いつもなら、おばちゃんの声が聞こえるのだが聞こえてこない、それだけでこの店が死んでしまったかのような感覚を覚えてしまう。

「おばちゃんは、どうしたんや?」

俺がそう聞くと雅美ちゃんは少し暗い顔になった。

「お母さんは、今国連軍のPXで働いてるんです。・・・だから、この店には今は私しかいません。」

俺はそれを聞いてこの町にすら、戦争の香りが漂い始めているのだと知り悲しくなる。

「あっ、でも日曜日には帰って来てくれるから寂しくは無いですよ?」

雅美ちゃんが強引に俺を招待したのもこれで納得がいった、寂しかったのだろう。

俺は、徐に雅美ちゃんに近づき頭を撫でる。

多恵にしていたように優しく撫でて行く。

すると、雅美ちゃんは一瞬驚いたがされるがままになり俺に抱き着いてきた。

俺の胸元から雅美ちゃんの声を押し殺す音が聞こえて来る。

俺は、何も言わずに雅美ちゃんが泣き止むまで撫で続けた。

しばらくすると、雅美ちゃんは泣き止み俺から離れる。

「す、すみません・・・私、あの・・・。」

俺はそれに笑いながら答える。

「別にかまわへんよ?俺の胸なんかでいいんならいくらでも貸すで?」

俺はそういって胸を張って威張る。

「くすくす、はい!寂しくなったらまたお願いします。」

「おう!任しとき!!」

「・・・多恵ちゃんがほんとに羨ましい。」

「うん?なんか言うた?」

「い、いえなんでもないです。じゃ、じゃあお料理作っちゃいますね!」

「うん、楽しみにしてるな!」

俺は、そう言うと席についた。

「♪~~、♪~~~。」

キッチンからは雅美ちゃんの鼻歌が聞こえて来る。

随分機嫌が良いな、よっぽど1人でいることが寂しかったのだろう・・・。

すると、雅美ちゃんが料理を持って歩いてきた。

初めて会った時のように不安な足取りでは無くしっかりと歩いてる。

その姿を見て何だか、子供の成長した姿を見れた父親のような気分になり1人自然に微笑む。

「お待たせしました!鯖味噌煮定食です。」

テーブルには、俺と雅美ちゃんの2人分の料理が並べられる。

「「いただきます!」」

俺達は2人で他愛もない話しをしながら料理を食べて行く。

料理の味はおばちゃんの味にそっくりで物凄く美味しい。

俺は、久しぶりに食べた懐かしい味に夢中になる。

だが、食べて行くうちに何故か感情が込み上げてくる。

「あの、築地さん・・・?」

「うん?」

「おいしくなかったですか?」

俺は、そんなことは無いと言いたかったのだが言葉が喉で止まって出てこない。

「う、いや・・・おい、しい・・・で?」

やっとの思いで出した言葉は涙声で何を言っているのか解らない。

「おいしい、凄くおいしいで。」

俺は、美味しい美味しいと言いながら涙を止めることが出来ずに料理を平らげて行く。

そんな、見苦しい姿の俺を雅美ちゃんは何も言わずに小さくタンポポのように笑いながら、はいよかったです、と言ってくれた。

俺は、もう戻れない戻す事が出来ない時間を思い出しそれを噛み締めながら、暖かい料理を口に運ぶ。そうすることで、頭の中にいる父さんやくまさん多恵それに、リリアとザウル、レオが共にこの料理を食べて美味しいと良い、おばちゃんが笑い雅美ちゃんがタエを抱きしめ静かに笑う、そんな光景を消さないために温かい料理を胃に詰めて行く。

そんな取り戻すことが出来ない、普通の姿を妄想の中で描きながらどれだけ、それが素晴らしい時間なのかを改めて理解しなおし涙を流す。

料理を食べ終え、涙を一頻流し終えるまで雅美ちゃんは待ってくれていた。

「・・・ごめんな、見苦しいところを見せてしまって。」

「いえ、大丈夫です。築地さん・・・いえ、和真さん!」

「うん?」

「いつでも、いらして下さいね!もっとお料理の勉強しますから・・・、また来てくださいね!」

「うん。」

そして、帰る時俺は言わなければならない事を言う。

「雅美ちゃん、1つお願いがあるねんけど良いかな?」

「はい、何ですか?」

「他の人・・・、特に多恵には俺がここに来たことを俺と会った事を言わんといてほしいねん。」

「そんな!何故!?」

「詳しい事は言われへん・・・、けど、お願いや・・・俺はアイツの兄としてこれ以上俺と関わらん方が良いねん・・・、やからお願いや。」

俺がそう言って頭を下げる。

「何か、理由があるのですか?」

「あぁ・・・。」

「多恵ちゃん、悲しんでいますよ?」

「でも、不幸になるよりか、マシや。」

「・・・・・・・解りました。」

俺は頭を上げると怒った顔の雅美ちゃんの顔があった。

「でも、約束してください。いつか、会いに行くと・・・良いですね?」

俺は少し考える、そんな事が可能なのか殆ど可能性が無い、でも望みが無いわけでもない、偶然会う可能性だってある。

「解った、すべて片づけたら会いに行く。」

俺がそう言うと雅美ちゃんは笑顔になる。

「約束ですからね?」

「あぁ、約束や!」

そして、俺は京塚食堂を後にする。

待ち合わせ場所に戻りしばらくすると、一台の車が来る。

俺は車の中に滑り込むように入る。

車の中から離れて行く町を見る。

俺が必ず守る、ここだけは必ず、俺の最後の故郷を必ず守り貫いて見せる。

俺は、そう思いながら町を見続ける。

町が見えなくなると、急に空しくなってきまた涙が溢れだす。

「うぇ、ぐす・・・ふっ、うっく・・・。」

俺は後部座席で声を出さないように涙を流す。

すると、俺の隣に座っていたリリアが抱きしめてくれる。

前の席からザウルの声が聞こえた。

「俺達で、守ろうな・・・。」

続いてレオの声が聞こえる。

「あぁ、これ以上世界に悲しみを増やしてはいけない・・・、私達の責任は重大だね。」

最後に耳元でリリアの声が聞こえた。

「和真、大丈夫だよ、きっと大丈夫だから・・・。」

俺は、流れる涙をそのままに信じてもいない神に心から祈りを送る。

神様、お願いします。

ここだけは、この世界だけはお守り下さい。

俺のすべてを捧げても構わない、だから俺の大好きな街を守ってください。

お願いします・・・。

車はエンジンの音をリズム良く出しながら、東京に向かって行った。

 

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