Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
1998年8月20日
俺は、あれから寝たきりの生活をしている。
あれから、第一町に戻った俺は直ぐに手術をするはめになった。
それと言うのも、俺が死にかけていたからだ。
全身の筋肉がズタボロになっており、骨も疲労骨折、眼球さえ動かすのが痛かった。
ネフレの医師が言うには、俺のジュラーブリクでの戦闘データと衛士強化装備服からのデータを見たところ、かなりやばかったらしい。
本当なら全身を激痛が走り、戦闘なんて出来る状態ではなかったそうだ。
そして、答えを見つけ出した。
ごくまれに、前線に出ている衛士にあることらしいが、脳が命の危機に対しリミッターを外すことがあるのだそうだ。
これにより、痛覚が鈍くなり本来なら出来ない事が出来るようになるとのことだ。
俺は、それを知らず知らずの内に何度も行っていたそうだ。
その結果が今に至る訳だ。
俺がベッドの中で考えていると、扉を開ける音が聞こえる。
「少し良いかな、和真君。」
どうやら、来たのはレオのようだ。
俺はそれを声で判断した。
と言うのも、今の俺は何もすることが出来ない。
飯を食う事も出来ないし、目も開けない。
今の俺は、ミイラ男の様に全身を何かで包んでいる状態だからだ。
「はい。」
感情の籠らない、電子音の声が部屋に響く。
声すら出せない俺は、頭に変な機械を取り付けられているのだろう。
そこから、俺の言いたい事をコンピューターが判断して声を出している。
「まずは、良く生きて帰って来てくれた・・・。」
「・・・。」
「ザウルとリリアについては、何て言えば良いのかな?言葉が見つからないね・・・。」
「すみませんでした。」
「謝らないでくれ、それに君も理解しているだろ?君の京都での戦闘は2人のそれと同じだった。つまりは、君の中に2人は今も生きているんだ・・・。そうだろ?」
レオは、そうであってくれと願うかのように俺に問いてくる。
レオからしてみれば、二人は友人だった。
戦場に出ることができないレオは、俺よりも辛いはずなんだ。
「はい、二人は俺と共にあります。」
俺にはそれしか、言えなかった。
「そうか・・・。じゃあ、本題に入るね?和真君は、脳のリミッターを切る事で、普段を超える力を見せた。そして、おそらくリリアのプロジェクションの力だろう、それで、二人の戦闘の経験値が君に上書きされた。私達はそう仮定している。だが、それは2人が辿り着いたその分野での超一流の力だ。君の体は、その両方にも耐えられる体の作りをしていない。つまり、頭では出来ると思っていても、体が付いてこない。だから、君の体はリミッターを切ることでそれを補った。そして、その代償が今の君の現状となっている。厳しい事を言うが、君は器用貧乏だ。リリアやザウルの様に超一流にはなれない。それは理解しているね?」
「はい。」
それは、俺も薄々理解していた。
俺の中では、訓練を終え衛士となり前線に立てて三流、死の八分を乗り越えて二流、何度も戦場を乗り越えて見に着いた力を扱えて一流、そしてザウルやリリアの英雄と呼ばれても可笑しくない力を身に着けた者を超一流としている。
俺なんかは、良くて1.5流が妥当な所だろう。
超一流にはなれないし、なれたとしても時間がかかるだろう。
「リリアとザウルが先に逝ってしまった今、我々には余裕が無くなった。タイミングが良いのか悪いのか、ヴェルターも完成した。・・・そこで、1つ提案がある。」
「提案?」
「あぁ、私は悪魔になってでも夢の世界を作ると言ったね?これは私なりの答えでもある。・・・和真君、人間を止めないか?」
1998年8月27日
あれから、さらに月日がたち俺はリハビリを終え衛士に戻る事ができた。
リハビリと言っても、体を改造されていく死にたくなるほどの苦痛と検査だけだが・・・。
俺の体は、すでに大分改造されている。
単純に言えば、体の内部を別の物に変えられた。
疑似生体技術のさらに上、強化疑似生体と言った所かな・・・。
これにより、体が前の俺より数段頑丈になった。
後は、脳のリミッターのオン・オフが自分の意志で切り替える事が可能となった。
まぁ、頭の中を散々弄られ変な機械を入れられたからなのだが・・・。
俺は、自分の体を確かめるために頭の中のスイッチをオフにする。
頭の中の湖から伸びてきた腕が俺を締め上げる。
だが、痛みは感じない。
そして、俺は近場にある大きな岩を右手で掴みそれを削り取る。
砂山から砂を取るように簡単にだ。
そして、握り取った岩の破片を放り手を広げそれを見る。
岩の固さに負けた指は、骨が肉から飛び出していたり、変な方向を向いていたりズタボロだ。
そして、流れ出る血の色に混じり綺麗な緑色に輝く液体が傷口から溢れ出す。
この緑色の液体の正体はナノマシンとか言う物らしい。
コイツのおかげでまるで逆再生をしているように傷が元に戻って行く。
これが、今の俺の体だ。
どれほどのケガをしようが一瞬で治ってしまう。
限界を超えた力を安易に出すことが可能となり、それにより壊れた体も直ぐに治る。
だが、もちろんこんな力をなんのリスクも無しに得る事など出来る筈が無い。
医者が言うには、俺の寿命もそう長くないそうだ。
そして、どれだけ体を酷使するかでさらにマイナスされていく。
もう1つは薬だ。
この、プラスチック容器に入っている錠剤を定期的に飲まなければ体の中のナノマシンが暴走して俺は死んでしまうらしい。
だが、飲んでいない。
それは、これが最後の試験だからだ。
「バイタル変化していきます!危険数値まで後、五秒!」
試験室内でアナウンスが響く。
そして、それは直ぐに起こった。
「グッ、く、はぁ、あぁぁぁっぁあああッ!!」
身体の中から、何かが暴れているのが解る。
血管内をゴリゴリ削りながら暴れている。
「痛ぅう、あ、かぁぁあああ!!」
そして、それが遂に俺の体を食い破る。
先程回復したばかりの所から、上に向かって緑色に輝く結晶が皮膚を突き破って出て行く。
「あぁぁぁああああッ!!」
どれだけの時間を駆けてこの結晶化が進むのかが最後の試験。
俺が危なくなるまで、これは続く。
「注入開始して下さい!急いでッ!!」
そして、後ろで待機していた医師数人が俺を押さえつけ、注射器を刺し薬を注入する。
すると、俺の体から出ていた結晶は粉々に砕け散って行った。
「はぁ・・・、はぁ・・・、はぁ・・・。」
俺はその場で力付き、倒れるように座り込む。
「暴走を始めて2時間・・・。これがタイムリミットだね。・・・良く耐えてくれた。」
レオが俺に話掛けてくる。
俺はそれに頷き返した。
実験室から出る事を許可された俺は、久しぶりの太陽の光を浴びる。
そして、その足で社長室に向かった。
「まずは、良く耐えてくれたね・・・。ありがとう。君の体は、無理矢理超一流達と同じことが出来る体にした。それでも、常に出来る訳ではないけれどね。普段の君の実力では対処できない時にだけその力を使うように、良いね?」
「はい。」
「そして、君は今日から中尉になった。それも良いね?」
「はい。」
「・・・良し、では今から一時間自由に過ごすと良い。」
「・・・感謝します。」
俺はそう言うと、社長室を後にする。
扉を閉めるときに、すまない、と言うレオの声を聞いたが俺は別に何とも思っていない。
この力を手に入れたのも、俺の意志を尊重してくれたレオの事をむしろ感謝している位だからだ。
本当に悪魔なら、何も言わずに無理矢理に体を改造して言う事を聞かせる筈だ。
それが出来ないのなら、まだ彼は悪魔になりきれていないのだろう。
そして、俺はザウルとリリアの部屋に辿り着き中に入った。
部屋の中には殆ど何も無い。
もう片付けられた後だった。
それでも、俺に気を使ってなのか机の上にはアルバムが置かれていた。
俺は、それをベッドに腰掛けながら捲って行く。
それは俺達の記録だった。
先代のトイ・ボックスの人達、兄貴やレオ、そして俺が写っていた。
「ははははは、こんな恥ずかしい写真まで撮ってたんか・・・。」
それを捲って行くと、最後のページで向日葵畑の中で笑顔で写真に写る2人を見つける。
懐かしい笑顔、もう見る事が出来ない笑顔・・・。
俺は、そのアルバムを膝の上に乗せ、笑顔の2人に見せるように向日葵の人形を取り出す。
「ほら、俺2人にこれをプレゼントしようと思ってな・・・。不細工な出来やけど、精一杯作ってんで?・・・二人とも向日葵好きやろ?やからな・・・、でもッ!」
俺の涙が二人の写真に落ちて行く。
俺は、二人が泣いているように見えそれが嫌だからアルバムを閉じる。
「なんで、死んでしまったんやッ!!どうして、俺を残して・・・ッ!!」
涙を止める事が出来ない。
だが、この部屋には誰もいない。
誰にも聞かれないなら構わないと、俺は弱音を吐いていく。
「寂しいやんか・・・!胸が、痛いやんか!!」
泣き叫ぶ、本当ならリリアが抱きしめ、ザウルがそのリリアごと抱きしめてくれる。
だが、その温もりはもうない。
俺は、自分の体を人形ごと抱きしめる。
「リリア、ザウルッ!!」
部屋には、俺の泣き叫ぶ声が響いた。
部屋を出ると、タエを抱いたメルと出くわした。
「久しぶり、ごめんな?タエの面倒見て貰って。」
俺は努めて明るく話しかけた。
タエはメルの腕から俺に飛び乗り、俺の涙の後を舐め始めた。
俺には、まだ私が付いているから、とタエが言っているような気がした。
「和真・・・。」
メルが辛そうに話始める。
メル自身も二人が死んだ事は知っている。
なのにメルは俺を気遣った。
「こ、今度!また、ケーキを食べに行こうか!?わ、私はタエの面倒を見続けたからね!これくらい当然の報酬じゃろ?そうだ!社内皆の分も買いに行こう!和真は給料をまったく使っていないからね!余裕じゃろ!?」
「メル・・・。」
「そ、それに・・・。」
涙目になりながらも必死にそれを堪えながらメルは努めて明るく話す。
「メル、ありがとう。」
俺は心からそう感謝した。
俺だけが辛いはずが無い。
皆辛いんだ・・・。
それでも、気遣ってくれるメルの優しさに俺は感謝した。
「――――ッ!!」
俺の言葉を聞き、メルは俺の胸に飛び込んできた。
俺の胸元の服を力強く握り閉め皺が出来て行く。
その中でメルの声を押し殺す音が聞こえてくる。
「和真・・・ッ!リリアさんが、ザウルさんがぁ!!」
俺はメルを抱きしめようと手を伸ばすが途中で止め、それを元の位置に戻す。
あの時、何も出来なかった俺の手でメルを抱きしめる事は出来ない。
俺は誰にも甘えちゃいけない。
2人の死に立ち会えた俺がメルの辛さを理解したつもりになってはいけない。
何も出来なかった俺が、メルにもその辛さを押し付けてはいけない。
そして何より、俺がメルに甘えてしまって、もしメルに何かあったら、俺は壊れてしまう。もう直す事ができない位に・・・。
俺は、メルが泣き止むまで立っていることしか出来ない自分に情けないと思っていた。
泣き止んだメルは、俺から離れる。
「す、すまないねぇ~!はははははっ、今のは見なかった事にして欲しいにゃ~!」
「メル、俺頑張るよ。頑張るからね!」
俺は、無理矢理作った笑顔でメルにそう言った。
「えっ・・・。和真・・・?」
「それじゃ、時間だからもう行くね?すまないけど、タエの事をよろしく頼むわ。」
俺はそう言って、何故か俺から離れたがらないタエを無理矢理引きはがしメルに渡し、その場を後にした。
俺は、潜水艦に乗り込み南極大陸の地下に来ていた。
南極大陸自体が、ネフレの資源採掘場になっており国連や各国家に売り払っている。
潜水艦から降りた俺は、レオに着いていく形で暗い道を真っ直ぐに突き進む。
途中で道が移動する音が聞こえるが、特に気にもしない。
そして重い扉の先に七色に光り輝く大広間にでた。
その中央には、機械で出来た大きな柱がありその柱の中間位置、透明になっている箇所にそれはあった。
「なんや、あれは?」
それは様々な色が交じり合った結晶体であった。
それが高速で流れる光の粒の中に浮いている。
そして、良く見ると柱から伸びたホースの様なものが大樹の根のように広がっている。
まさに、ファンタジー世界の世界樹のようだ。
「G元素は聞いた事があるだろう?」
「はい・・・。」
G元素・・・、BETA由来のそれは、人間の科学を飛び越えた性質を持っている。
それらは未だに解明されていない物質。
カナダに落着したハイヴを、アメリカの戦略核の集中運用で破壊しそのハイヴから見つかった物質だ。
「これはね、そのG元素が核の集中運用で出来た突然変異の物か、もしくわ元々あった物だよ。そして、私達の計画を根底から覆したモノでもある。」
「私たちの計画・・・?」
「あぁ、そもそもの計画は各国家に送り込んだ者達を政府の中枢に添えて、そこから時間を駆けて世界を1つにする計画だった。そして、世界が1つとなると当然そこから零れ落ちる人は出てくる。その者達、我々に賛同できない者を殺し、我々に賛同した者達を守るために出来た部隊がトイ・キングダムであり、彼らの隠れ蓑としてのネフレだ。だが、これの存在が私達を慌てさせた。」
「一体何故?」
「1974年7月6日、カナダに落着したハイヴ、このハイヴは現在地球上に唯一存在するオリジナルハイヴと同等の物であると推測している。
核の炎に焼かれたハイヴ内を我々は、どこよりも先にトイ・キングダムに侵入させた。そこで出会ったのが重頭脳級と我々が呼んでいる存在だ。
ほとんどの今地球上で確認されているBETAが死骸となり果てている中でも、そいつは生きていた。
そして、当時師団規模を誇り世に出ていなかったF-4を配備されていたトイ・キングダムは、コイツに壊滅的な打撃を受けた。
死んでいてもおかしくない状態でだ。
最後は、トランプ隊長が核により自分の命と引き換えにコイツに止めを刺した。
その中から取り出したモノ・・・、嫌違うね、そいつの地下に伸びる体から採取した物だ。
まぁ、我々がこれを秘密裏に運び出せたのも、アメリカに居る我々のメンバーが手引きしてくれたからなのだがね・・・。
いつか、和真君も会う事があると思うよ?
話しが脱線したね。
そして、それをここに運び出し本格的に実験を開始した時にそれは起こった。
実験に参加していた科学者、当時その場にいた計画の幹部がこのクリスタルに触れた時に姿を消した。
そして、皆が帰還した時にある事実を待っていた者に告げた。
その内容は、インパクトがあり過ぎた。
2004年6月・・・。
その世界を、未来の世界を見てきたと言うのだから・・・。」
「未来!?」
「そう未来だ。当初我々は信用していなかった。だが、1人の科学者がたまたま録画機を持って飛ばされ、それの録画映像を見て我々は信じることにした。それは、地球が塩に覆われ人類同士が戦いBETAすら滅ぼす事ができていない。
まさに、我々が描いた最悪の世界がそこには広がっていたそうだよ。
これを見せられたのは、私の父だから私は見ていないけどね?
そして、その原因は未だ不明だ。
その者達が言うには、その世界に居られたのは一日足らずだったらしい。
ただ、タイムリミットは解った。
そして、呑気に時間を駆けて改革していくことが不可能であることも分かった。
だからこそ、トイ・ボックスが設立され確実に対人、対BETA最強の機体を作ることになった訳だ。ここまでは良いね?」
「・・・はい。」
「そして我々はこのクリスタル、Gコアが何なのか解らないが、利用方法は解った。
そして、ある仮定を立てた。
それは、このGコアが他の世界、並行世界か、未来、過去の世界か解らないが、それらの世界からエネルギーを集め、許容値を超えると他の世界に渡す。
世界と世界を繋ぐパイプの役割を果たしているのだと。
そして、我々はその無限とも言えるエネルギーを抜き取る事に成功した。
あれを見てくれるかい?」
俺はレオに指差された場所を見る。
それは、根の様な物の先だった。
それは大きな壁のような物に繋がっていた。
そしてその壁には無数の穴が開いており、円錐の物が取り付けられている壁にホースから流れ込んできた光が蓄えられていた。
「あれが、我々が作り出したGドライブだ。」
「Gドライブ?」
「あぁ、あの物質を無害な物に変える、まぁ万能な物質を閉じ込めたエンジンとでも思っておくと良いよ。あれを取り付けた戦術機がヴェルターだ。そして、ヴェルター自体すでに完成している。」
「それじゃ、俺はこいつをテストしてやればいいんですか?」
「あぁ、そうなるね。ついて来てくれ。」
俺は、その部屋を出てまた別の部屋に移動する。
「こいつが、我々が作り上げたヴェルターだ。」
そこには、悪魔が聳え立っていた。
俺は、完成したヴェルターを見上げる。
前に一度見ているので知っていたが、見た目は相変わらずに全体が細いラインで出来ており、猫背で顔が胸部装甲より前に出ている。
そして、その細い体に取り付けられた装甲は厚く体を動かす事が出来るのか疑問に思わせる。
そして、一番目につくのがその顔だ。
この戦術機には口が付いていた。
俺はそれを、見上げながら思った。
この力が悪魔の力かと・・・。
「これは、まだ試作型ヴェルターだ。トイ・キングダムに配備させるには、新たに装備を作り量産させる必要がある。君には今までの戦術機との違いを確認しつつバグ取をして貰う。」
「では・・・、早速?」
俺は挑発的にレオに投げかけた。
「あぁ、今からこの機体に為れて貰う。そして、日本で最初の実戦テストだ。」
読んで頂きありがとうございます!
とんでも物質が登場しました。
Gドライヴですが、イメージはガンダムOOのGNドライヴです。