Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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第27話

1998年10月

遂にその時が来た。

日米安保条約は、榊首相を始めとする閣僚人によって何とか破棄させないように、日本を見捨てないで貰おうと先延ばしにしてきたが、佐渡島にハイヴが建造された知らせを受け破棄される形となった。

先の大戦で消耗した樺太ネフレは樺太を守るだけの余力しか無く日本に援軍を出すことができない。

それは他の国も同じことであり、唯一日本に残ったのは国連軍のみとなった。

そして佐渡島ハイヴ建造が終了したのか、BETAが東進を開始し日本帝国軍、在日国連軍の奮戦空しく、BETAは後数日で東京に辿り着くところまで来ていた。

 

俺は南極大陸地下基地で出撃の時を待っていた。

1からすべてネフレで作られたヴェルターは、何もかもが既存の戦術機・兵器とは違う異色を放っている。

まず、コックピット内が丸い。

これはコックピット自体を小さくしヴェルターのスペース取らないためだ。

だが、この構造のために脱出装置などは取り付けられていない。

次に見た目だ。

全身は人型だが、とにかく細く長い。

その癖にアホ程重いためそれを支えるためにハンガーも特別製だ。

また、このヴェルター自身には跳躍ユニットなどはついていない。

装甲の隙間にある切れ目の線から粒子を出すことによってその代わりとなっている。

次に頭だ。

胸部装甲よりも前に出ている頭部。

全体的に猫背なのもあり、円錐の形をしたGドライブを保護する四角すい状装甲が斜め上を向いている。

そして、このヴェルターには口が付いている。

その口には獣を思わせる長く尖った歯が並んでいる。

こいつに口があるのには訳がある。

それは、人間の攻撃方法をすべて行わせるためだ。

つまり敵を噛み千切ることを可能としている。

そして、これらの異形の形には意味がある。

被弾面積を低くするためでもあるがもう一つの理由が、人間に対する恐怖心を刺激するためだ。

人とは考え想像する生き物だ。

戦う前からそれは行われている。

新任の衛士が、死の八分を越えるか越えられないかはこの恐怖心に勝てるかどうかで予め決められている。

その姿を初めて見た時、その姿を見て人は考える。

もし、あの口で噛み千切られたら・・・。

もし、あの腕で貫かれたら・・・。

そう考えることで初めから勝敗は決まるのだ。

だからこそ、昔の兵器は禍々しい姿をしていた。

あれで殴られたらどうなるのかを当たる前から想像し、畏縮してしまう。

そこを狙ってのこの姿だ。

今回の装備は単純なものだ。

背部の四角すい状の装甲に取り付けられたミサイル。

右肩には、120mm水平線砲。

弾帯は、肩上部に装備されている。

そして、腕と同じ程の長さの刃を持つ格納近接長刀Gソード。

展開の仕方は上腕部前面にある固定ブロックシールドの部分が外側に迫り出し、刀身が外側を回るように移動、移動し終わると固定ブロックが元の位置に戻り固定する。

そして、今回初めてG粒子を使った兵器でもある。

刀身が高温の熱を帯びることにより、敵を溶かし斬ることが可能となった。

 

俺はそれらを考えながらタバコを吸い、そしてタバコを携帯灰皿に入れ、容器から錠剤を取り出し飲み込む。

そしてコックピットに乗り込む。

やっと、この時が来た。

久々にBETAを殺す事が出来る。

皆の仇をとることが出来る。

俺は人には見せられないような、淀んだ瞳を歪め笑みを作る。

その時通信が入る。

「和真君、準備は良いね?」

通信の相手はレオだった。

「いつでも・・・。」

「我々も太平洋沖の潜水艦内から様子を窺っているからね。作戦内容をもう一度説明するよ?現在、東進を始めたBETA群は東京に一直線に進んでいる。

君は伊豆半島にBETAを引き寄せそこで叩いてくれ。作戦時間は一時間だ。

それ以上は、何があっても認められない。解っているね?」

俺は、それに獰猛に歪めた顔で返事を返した。

「時間内であれば、いくら殺しても構わんのやろ?」

レオはそれに満足そうに頷く。

「あぁ、その通りだ。全力で殺戮してくれ!」

「了解!」

するとコックピット横から器具が姿を現し、俺の腕、足に装着される。

その装具には、針が付いておりその針が俺の体に突き刺さる。

「ぐ、痛ぅ・・・。」

そしてフルフェイスのヘルメットからも針が飛び出し俺の首に突き刺さる。

「がっは・・・ッ!」

一瞬ではあるが、これは何度やろうともなれない。

俺の視界は切り替わり体が麻酔に掛けられたように感覚を失っていく。

そして、Gドライブが機動し七色の光はドライブ内で無害な物質に変更され、黒い光がヴェルターの体の各部装甲に刻まれた線から溢れ出していく。

そして、感覚が元に戻ると俺の感覚はヴェルターと同一化していた。

「注水開始します!」

発進カタパルトは、南極の極寒の水に満たされていく。

「冷たッ!!」

俺の神経は完全にヴェルターと同化していた。

これにより、既存の関節思考制御を大幅に上回る即応性を出す事が出来る。

そもそも自分の体が大きくなったようなものだ。

そのため海水の温度でさえ感じることが出来る。

もっとも、実際にこんな温度の水の中に何時間も浸かっていたら体温が低下して死んでしまうが、それはコンピューターの方で適温に保ってくれている。

この海水も少し冷たい程度だ。

そして、海水が満タンになり準備が整った。

「発進どうぞ!」

俺は、自分の体になったヴェルターの腕を上下に振るい動作に誤差が無いか確認する。

どうやら、本当に俺の体になったようだ。

うずうずしているのが、目で見て解る。

そして目蓋を閉じ、脳のリミッターをオフにする。

湖の中の無数の腕が俺を締め上げるの実感し、そして頭の中からリリアとザウルの情報を引き出す。

2人の温もりが俺を満たす。

目蓋を開けると準備は整っていた。

「ヴェルター、出撃する。」

そして、俺は大海原へとその身を投げ出した。

 

俺は、駿河湾で身を隠していた。

作戦開始まで、後10秒だ。

時計の針が動くのが遅い、俺の耳には海の中の生物の息遣いさえ聞こえてきそうだ。

そして時間が0を示すと俺は伊勢半島沼津市に姿を現した。

雨が降りしきる中、海から現れたそれは怪獣映画に登場する怪獣を思わせる。

白い、ただ白い装甲を纏う怪獣の隙間から黒い光が溢れ出す。

そして、深海の奥深くから現れた獣は天に向かって吠えた。

その声は雨を弾き飛ばし、それを聞くだけで誰もが死を覚悟する。

そんな音だった。

その音に引き寄せられるように東京に向かっていたBETAはこちらに向かってくるのを確認する。

俺は、ヴェルターを浮かせ移動させる。

そう浮いて移動したのだ。

まるで、重力なんて物が存在しないかの様に浮き上がり黒い光をまき散らしながら下田市に向かって行った。

「ほぼすべてのBETAがこちらに接近中・・・。」

伊豆半島を覆い尽くさんばかりのBETAは真っ直ぐに向かってくる。

「残り時間45分、そろそろ始めるか。」

その声と共に黒い光はさらに量を増やしヴェルター自身を包み隠してしまいそうになる。そして、悪魔は解き放たれた。

「くらいやがれッ!」

背部のミサイルコンテナからミサイルを全弾打ち込む。

それらは、真っ直ぐに飛んで行きBETAの上空で破裂、中から飛び出した爆薬により戦域地図にポッカリと丸い穴が開く。

その円の中心に黒い流星となって体をねじ込ませる。

「オィオィ、なんちゅう瞬間速度出すんや・・・。一瞬で景色が変わったぞ。」

リミッターを切った状態でも、やっと周りを理解できるほどの速度を叩き出した。

「でも、これなら行ける!余裕や!!」

俺は左手のGソードを展開する。

その刃は外側を刃先が回り前方に到着すると、固定され刃にエネルギーが送られ刃が赤く発熱し刃に付着していた雨が蒸発していく。

俺は、目にも止まらない速さで突撃級の群れを切り刻んだ。

突撃級の血は瞬時に蒸発し気化していく。

その時頭の中のリリアの経験が警報を鳴らす。

俺は、移動を始め右肩の120mm水平線砲を装備する。

そして、見つけた。

光線級の群れを・・・。

俺は、それに向け連続で発砲する。

砲弾は真っ直ぐに飛んで行き、何発か外しながらも光線級に命中した。

まだリリアのようにはいかないようだ。

「くくふふふ・・・、ハハハハハハハハハハハハッ!ゴミの様だ!BETAが、ただの廃棄される玩具のようだ!これなら、この力なら!あははははははははははははははははははははははははははははははッ!!」

俺は壊れていた。

余りにも一方的な力に酔いしれていた。

そして、それらはどす黒い憎しみの渦となって俺を飲み込んだ。

前方から突進してくる突撃級を甲羅ごと斬り裂く。

地面から飛び出してくる要撃級をバク転で躱し120mm弾を至近距離で放ち吹き飛ばす。

地面を赤一色に変えてしまう程の戦車級は足を振り回すだけで弾け飛ぶ。

「お前たちはこんなもんじゃないだろッ!リリアとザウルを殺したお前たちが、俺に一方的に虐殺される程弱くないだろッ!!なんとか言ってみろッ!!」

只々憎い、こいつらが存在するだけで怒りで頭が破裂しそうだ。

要撃級の腕の攻撃を右手で握り止め、Gソードで切断する。

そしてすぐに跳躍し移動する。

だが、着地すると機体の重みに地面が負け足が埋まる。

待ってましたと言わんばかりに突撃級が突進してくる。

俺はそれを右手で受け止めた。

既存の戦術機のマニュピレーターでは絶対に出来ないことを平然とこなす。

「コイツを舐めんじゃねぇよ・・・。ヴェルターなんだよ!!」

そして、右足で蹴り上げ突撃級を浮き上がらせ左足で蹴り飛ばした。

虐殺を楽しく憎しみを込めて行っていく。

BETAは恐怖心が無いかのようにわざわざ向こうから来てくれる。

だが来てくれるのが遅すぎる。

俺は待つことが耐えられずに自ら移動し殺して回る。

地面は血で赤くなり、海に流れ込む。

そして、海自体が血の赤に染まって行く。

もう視界には赤しかない。

数えるのが馬鹿らしくなるBETA群はその数を減らしていく。

すると、遠くのBETAの群れが開けて行く。

それはまるで王のために道を開けるかのような動作だった。

そして、その後方のBETAの数が少ない箇所では中心にいる者を守るように要塞級が周りを固めていた。

初期照射警報が耳障りなほどに鳴り響く。

背筋に何かが走る。

ヤバい――――。

俺は手直に壁となるBETAを探すが、殺し尽くしてしまっており辺りには盾になりそうなBETAはいない。

俺は少し離れた位置にいる突撃級を盾にするためにヴェルターを向かわせる。

人間の目では捉えることが不可能な速度でだ。

だが、相手はその速度すら苦も無く狙い撃った。

突撃級の前に躍り出た俺は右手で受け止め盾にしようとする。

すると、左側を何かが通り過ぎた。

「ぐぅ、わぁぁああああああああ痛ぅ、くぁッ!!」

ヴェルターと一体化している俺には、ヴェルターの痛みはそのまま俺の痛みとして体に刻まれる。

良く見ると、左手が無くなっていた。

Gソードも跡形も無い。

血が噴出したように、ヴェルターの肩からは黒い光が噴出していた。

これほどの出力のレーザーを放てるBETAは一種類しかいない。

「重光線級ッ!クソがぁぁぁぁぁぁ!!」

怒りに血走った目で突撃級を盾にしながら相手を見据える。

巨大な体に巨大な瞳、それが俺を睨み付けるように見ていた。

BETAに感情があるのか知らないが、俺には相手が虐殺をする俺に怒っていると感じた。

だが、そう感じた瞬間に頭に一瞬で血が上る。

「ふっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

俺は先程と同じように突撃級を蹴り上げ盾にし、サーフボードのように両足を突撃級の腹部に押し付け、加速させ重光線級に向かう。

右手の120mm砲を構え重光線級を巨体で守る要塞級を狙撃し殺していく。

弾数がもう残り少ない。

要塞級を殺し終えた俺は、盾を失った重光線級に狙いを定め狙い撃つ。

一発―――。

身体を突き抜けた弾丸の事など気にもしない様子で、未だにこちらにその暗い瞳を向けている。

二発―――。

先程と変化は無く、まるで根を下ろした大樹のようにその場に踏みとどまる。

三発―――。

少しよろめくが直ぐに持ち直す。

四発―――。

瞳に狙いを定めて撃つが、目蓋を閉じることで弾丸が瞳に届くことは無い。

突撃級は高速で地面に削られていたため死んでしまう。

重光線級が目蓋を開け初期照射のアラームが鳴る。

距離はまだ、100mほどある。

だが、ヴェルターにはその距離はあってないようなモノだった。

「はぁああああああああああああああ!!」

俺は腹の底から声を張り上げ突き進む。

だが、重光線級の目の前でレーザーが照射される。

重光線級に体当たりし射線を変えようと試みるが右肩から下が持っていかれた。

だが、俺は止まらない。

体当たりしたまま、至近距離でレーザーを照射されたまま突き進む。

至近距離でレーザーを照射されているためにヴェルターの頭部装甲が溶けて行く。

Gドライブは先程から全力で稼働しており、壊れそうになっている。

だが、山にぶつかると同時に照射は終わっていた。

俺は、重光線級を膝で押さえつける。

辺りにはBETAはいない。

殺るなら今しかない。

俺は口を開ける。

するとヴェルターも口を開け、その悪魔の牙が重光線級の瞳に写り込む。

その姿は、満身創痍になりながらも獲物にありつけた獣のような姿だ。

太古の昔、人が狩りをしていた頃の人間のようでもある。

「ザウルとリリアはお前たちに食い殺された・・・。」

重光線級は、もう殆ど瀕死の状態で痙攣さえしている。

「今度は、俺がその痛みを教えてやるよ・・・。」

そして、餌を前にして待つほど俺には余裕がなかった。

 

雨が掛からない陰になった部分で肉を抉る音が響く。

それは、ライオンが獲物の腸を食い漁る時と同じ音だった。

グチャ、グチャといった音が響き渡る。

そして無残に食い荒らされた贄を立ちながら見つめるヴェルターの姿は、人が見たら失神してしまう程に恐ろしいものだった。

顔すべてが血で赤く染まっている。

嫌、体全体が赤く染まっていた。

「・・・恐いだろ?これが、食われる恐怖なんだよ・・・。お前たちが人間にしてきた事を今度は俺がしてやった、それだけの事なんだ。痛いだろ?でも、父さん、くまさん、ザウル、リリア、皆この痛みをお前達から受けたんだ。・・・ほら、何とか言えよ、死んでんじゃねぇよ!!そのでかい目から涙を流して謝れよ!皆に謝れよッ!!」

両肩から黒い血を吹き出しながら、踏み砕いていく。

「ザウル、リリアッ!俺は、力を手に入れたんだ!!この力があれば、俺達の邪魔をする存在はいなくなるんだ!夢が叶うんだ!笑って、笑ってよ!良くやったって言ってくれよッ!!」

だが、頭の中の湖にいるザウルとリリアは悲しそうな顔をするだけで笑いかけてくれない。

「なんでだよッ!?どうして笑ってくれないんだよッ!!うぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

ヴェルターは天に向かって吠える。

血を吹き出しながら、ヴェルターのメインセンサーからは、敵の血が流れ落ち涙を流しているようだった。

「ぐぅうう、あっかぁあああッ!!」

俺の体からは、緑色に輝く結晶が至るところから突き出してくる。

俺は、知らず知らずの内に体を破壊しつくしていたようだ。

再生の余裕すらなくなった体からは、俺を罰するように憎しみを封印するかのように、結晶が支配していく。

「・・・どうやら、限界のようだね。」

レオから通信が入る。

「操縦権をこちらに譲って貰った。直ちに帰投させる。速く薬を飲みなさい・・・。」

俺は、錠剤ケースを取り出し震える手でそれを何粒も飲み込む。

「ウッ、はぁはぁはぁ・・・。」

徐々に結晶は四散していく。

そして、ヴェルターは勝手に帰投を始めた。

「くそ・・・、クソッ!クソがぁああああああああああああああッ!!」

 

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