Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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新たな出会い

俺は、帰還後直ぐに精密検査を受けその後、レオに謝罪に向かった。

「・・・すみません、ヴェルターをあの様な姿にしてしまって。」

「別に構わないよ、むしろ取りたいデータが取れた。こちらが感謝したいくらいだよ。」

「ですが・・・。」

「先の実戦テストでヴェルターの改修点が見つかった。あの機体は、今の和真君でも扱うのには命を駆けなければならない。なら、唯の人間であるトイ・キングダムの衛士に扱える代物ではないだろ?次はそこを見直していく予定だ。それに、唯暴れただけで測定するのが馬鹿らしくなる量のBETAを撃破、しかも遮蔽物の少ない場所で重光線級を倒している。我々の希望通りの戦果だ、もしあの性能を制御し扱えたら、文字通り最強の戦術機の完成だ。」

「はい・・・。」

「それと・・・、横浜の事は聞いているかい?」

「・・・はいッ。」

横浜は俺との戦闘から外れたBETAが進行し壊滅してしまっていた。

俺があの場ですべてのBETAを殺せていたら・・・。

皆は無事だろうか・・・。

そう考えると気分が悪くなってくる。

俺はそれをきつく腕を握りしめることでごまかした。

「あれは、君の責任ではない。君が行こうが行くまいが結果は変わらなかった。それだけは理解しておくのだよ?」

「・・・。」

「それと、これから先行量産型ヴェルターを完成させるために全力を出すことになる。本当に危なくなるまでは君を戦場に出させる事は出来ない。飛び出して行ったりしないでくれよ?先のテストが出来る環境作りをするだけでも、大変だったのだからね!それに、あれは今表に出てはいけない機体だからね・・・。」

その通りだ、ヴェルターは対人・対BETA最強の機体をコンセプトに作られている。

つまり、ヴェルターが表に出なければいけない状況と言うのは、人類同士が戦争を始めた場合と今の前線国家がBETAに滅ぼされかけた時・・・。

今回がまさにその時だった。

日本がBETAに滅ぼされかけていた。

だが、俺が伊豆半島で暴れたことでBETAの進行は一時停滞している。

その変わり横浜が壊されてしまったが・・・。

それでも日本は、時間を得た。

この短時間で、どれだけの事を日本が出来るかでヴェルターが出撃することになるのかが決まる。

出来るだけ、そうなって欲しくない・・・。

 

あの出撃以降、俺は荒れていた。

毎日何かに追い立てられているかのようにただ我武者羅に己を鍛え続けていた。

毎日血反吐を吐くまでヴェルターのテストを行い、新たな概念の兵器テストも同時に行った。メルに泣かれ兄貴に殴られても俺は止めようともせずに逆に自分自身で壁を作り、必要なこと以外は誰とも話す事をしなくなった。

―――そして、そんな俺を変える出会いがあった。

 

 

1998年12月

第一町地下ではまるで巣を突かれた蜂のように、ネフレの職員が走り回っていた。

「出来るだけ情報を集めろッ!見えにくかってもいい!兎に角確証を得るんだ!!」

「上層部に伝える資料はどうする!?情報が少なすぎるぞ!!」

「日本の魔女との連絡は!?何、回線を傍受される恐れがあるだと!?馬鹿野郎!!樺太に呼び出せ!!こっちはスポンサーだぞ!!」

皆が皆血相を変えている、それはある1つの衛星が捉えた物が始まりだった。

そこに移されていたのは、どこからか連れてこられた人間が建造されている最中の横浜ハイヴに連れて行かれている写真だった。

こんな事はいままで無かった事だ。

そして、急遽計画の幹部すべてと連絡を取り合い協議することとなった。

そして、俺達がもっとも恐怖しているある仮説が皆をここまで慌てさせている。

それはBETAが人間を研究していると言う仮説だ。

―――まさに最悪だ。

これがもし当たっていたなら、BETAが俺達に興味を持ちだしたことになる。

人間に対して有効な光線級以上のBETAが生まれてくる可能性が出来た。

俺が考えうる最悪のBETAとは人間の目では視認できないくらい小さいBETA、細菌級とでもいったところか、もしコイツが完成しばら撒かれたら本当の意味で細菌兵器だ・・・。人間に対処する時間すら与えてはもらえないだろう。

それにもし、捕えられた人間の中に軍の関係者がいた場合、俺達の戦術や戦略に対してBETAが対処してくる可能性もできた訳だ。

正確な情報を得るために、皆徹夜で頑張っている。

何日何時間起きているのか皆ももう解っていないだろう。

レオ達幹部の協議自体がすでに半日以上続いている。

それほどまでに、異常なことなのだ。

衛士である俺には何も手伝えることが無い。

俺は、1人自室に戻る事にした。

 

部屋の中でタエを撫でながらタバコを吸っていると、部屋をノックする音が聞こえた。

俺はそれを聞き、扉を開ける。

「五六中尉、社長がお呼びです。」

「・・・了解しました。」

俺は返事を返しすぐに向かった。

 

社長室には兄貴とレオが待っていた。

「五六中尉、只今参りました。」

「楽にしてくれ・・・。」

「はっ!」

重苦しい空気が部屋を満たす。

唾を飲み込む音でさえ部屋に響き渡る。

「まず、協議の結果から言うよ?横浜ハイヴは攻略することになった。」

―――ッ!!

ついに来た!遂に、BETAに対する反攻作戦が始まるんだ!!

俺は自然と口角が吊り上って行く。

「だが今回はヴェルターを出す訳には行かない・・・。」

「何故!?」

「和真君も解っているだろう?あれはまだ表に出すことは出来ないのだよ・・・。」

俺は、悔しさから自然と唇を噛み締める。

「そして、今回の攻略作戦では現代の兵器でハイヴ攻略が可能かどうかを確認する意味合いもある。日本帝国は世界に先んじて第三世代機を多く投入している。つまり、今後の戦術機・兵器がどれだけBETAに通用するのかを計るいい機会なんだ。この攻略作戦はすでに日本の魔女を通して帝国軍に伝えてある。来年には行われるだろう。」

データを集めるために多くの人を見殺しにすることになる。

それが解っていながら、俺もレオも兄貴も何も言わなかった。

「日本の魔女?」

俺は気になるその呼び名をレオに聞いてみた。

「オルタネイティブ4計画は知っているかい?」

「おとぎ話レベルの計画ですね?確か、因果律量子論とかでしたっけ?」

「あぁ、我々はそれのスポンサーでもある訳だね。でも、実際Gコアの兼があるんだ。彼女の計画に金をつぎ込む価値はあるよ。」

ネフレが深く関わる人物であるなら、俺達の仲間なのだろうか?

「魔女は、我々の計画について知っているのですか?」

俺の問いにレオは苦笑いを浮かべながら答える。

「嫌、知らせていないよ。そもそも彼女は一科学者でしかないからね。彼女の計画から出来た技術が欲しいだけだ。もちろん、彼女を技術部にスカウト出来ればこちらとしても大助かりだが、少し問題があってね・・・。」

「どんな?」

「彼女はオルタネイティブ5計画が心底気に入らないらしくてね、それだとこちらとしても困る訳だよ。それに、彼女は彼女でいろんなパイプを持っている。天才が考える事は我々には理解できない、そんな危険分子を計画に参加させる筈がないだろ?」

「たしかに・・・。でも、俺達がオルタネイティブ5計画にも深く関わっているのを知ったら魔女はどうするのでしょうね?」

「その心配は必要ないよ。知ったとしても何も出来ないし、仮に何かをしようとしたら消えて貰うだけさ。」

「で、俺を呼び出した訳は?」

俺がそう聞くとレオは、今まで忘れていた、とでも言いそうな顔で話始めた。

「あぁ、新しい仲間を紹介しようと思ってね。・・・入って来てくれ。」

レオがそう言うと扉が開き新しい仲間が入ってくる。

「なっ―――ッ!!」

俺はその人物を見た瞬間に言葉を失ってしまう。

部屋に入ってきたのはリリアだった。

嫌、リリアの面影があるだけの子供だ。

だが、その星のように煌めく銀髪と雪のような肌、それにその瞳は間違いなくリリアと同じ物だった。

「彼女の名前は、ストー・シェスチナ、リリアと同じ第三計画の生き残りだ。」

ストー・シェスチナ、第6世代100番か。

とことん第三計画の奴らは腐っていたらしいな・・・。

俺は腸が煮えくり返りそうになる。

すると、俺の心を覗いたのかストーは涙目になり後ずさった。

「こらこら和真君、ストーを驚かせてどうするんだい。彼女はこれから君とエレメントを組む事になる。・・・良いね?」

「・・・了解。」

俺がしぶしぶ頷くと兄貴が手をパンパンと二回鳴らす。

「それじゃ、和坊!ストーの世話を頼むぞ!!こちらでも、色々と手伝ってやるからな?」

「はぁ!?俺が世話を見なくちゃいけないのか!?」

俺は突然の事に驚くが兄貴は何をバカなことを言っていると呆れた表情で言ってきた。

「当たり前だろ?」

レオの顔を見る、レオは唯俺の瞳を見るだけで何も言わない。

どうやら、選択肢は1つしか用意されていないらしい。

「チッ―――、了解。」

俺はそう言いながら、兄貴の後を着いていく。

ストーも俺の後を付いて来る。

だが子供の歩幅では歩く速度が自然と遅くなる。

「早く来いッ!」

俺の怒鳴り声にストーが脅えビクつく。

クソッ、俺は何をイラついているんだ!

相手は子供だぞッ!

だが、俺の中で重なってしまう。

リリアとストーが重なって見えてしまう。

「クソッ!!」

俺はストーが俺と一定の距離を取って付いて来るのを確認しながら歩いて行った。

 

なんでここなんだよ・・・。

「ここが、ストーの新しい部屋だ!」

そこは、リリアとザウルの部屋だった。

「必要な物は全部そろっていると思うが必要な物があったり不備があったら和真に言え、いいな?」

兄貴は優しく孫にたいする祖父のようにストーに言い、部屋を後にした。

無言の時間が俺とストーの間を過ぎて行く。

ときおりストーは何かを言いたそうにしているが、俺はそれを無視する。

そして、ストーが痺れを切らし机の上に置かれていた向日葵の人形とアルバムに手を伸ばそうとして俺は叫んでしまった。

「それに触るなッ!!」

俺の叫びにストーは、震えながら涙目でこちらを見てくる。

その顔ですら、リリアと重なってしまう。

違う、コイツはリリアじゃない!リリアじゃないんだ!!

「・・・ごめん、俺はもう行くよ。」

まだ、俺に何か言いたい事があるのかストーは脅えた目で俺を見るが俺はその瞳から逃げるように部屋から出て行った。

 

1999年1月

ストーとの出会いからさらに日がたったが、俺達の関係は依然変わらなかった。

嫌、ストーはどうにかして話そうと試みているようだが、俺が逃げに徹しているせいで距離が短くなることは無かった。

PXで食事を共にする時も無言。

共に移動するときも無言。

タエとストーが遊んでいる時も無言。

メルに俺が注意されても俺はこの距離を狭めることが出来なかった。

だが、唯一話す時がある。

それは戦術機を使っての教導をしている時だ。

教導と言っても、俺の知識を教えているだけであり後はひたすらにJIVESを使っての演習のみだ。

本当なら、冗談を交えたりしながらリラックスさせながらザウル達のように鍛えて行くのが良いのだが、俺にはそんな事が出来ない。

それでも、俺はリリアに似たストーに死んで欲しくなかったから俺の持っている力をすべて授けて行った。

時には厳しく叱りつけたりもしたが、ストーは何故か俺に叱られた後には決まって笑顔だった。

しかもコイツは、俺にどれだけ邪見にされようとも俺の後を小鴨のように着いて来る。

まったく訳がわからない・・・。

そしてそんな俺達を変える出来事が起こった。

それはいつものように、俺がヴェルターの試験を南極基地で終え第一町に帰ってきたときの事だ。

「やっぱし、ヴェルターは反応速度が機敏すぎる。あの世界でだとまともに戦う事ができないな、未だにリミッターを切らないと扱えないピーキーすぎる機体なんて・・・。」

そう言いながら脳のリミッターを切る。

すると、世界が止まって見える。

「こんな世界でじゃないと、扱えない戦術機なんて実戦では役立たずだぞ・・・。」

「和君・・・。」

すると、後方からストーの声が聞こえた。

俺は先程までの顔を不機嫌顔に変え向き直る。

「・・・五六中尉だ。」

「ご、ごめんなさい、―――ひっ!!」

すると、ストーは目に見えて俺に脅えだす。

いつもビクビクしている奴だが今回は違った、本当に心の底から脅えている。

だが、今の俺には心当たりがあった。

コイツは今の俺の中を覗いたのだろう。

今の俺の中身は傍から見たらホラー以外の何物でもない。

無数の腕が湖から伸び俺を締め上げているのだから・・・。

「・・・。」

俺は、脅えるストーを見た後に逃げるようにその場を後にした。

 

「すぅ~はぁー・・・。」

部屋で1人タバコを吸う。

いままで溜まったストレスを煙と共に一気に吐き出す。

「ケホっ、ケホっ・・・。」

俺の部屋の扉を無断で開け中に入ってきたのはストーだった。

だがストーは部屋に充満する煙のせいで咳き込む。

俺は不機嫌を隠そうともせずにストーに声をかけた。

「・・・何だ?」

「あの・・・、ご飯の時間・・・。」

なんでこいつは俺に構う、何で?俺が怖いのじゃなかったのか?わからない、コイツがわからない。

その思考回路は俺を掻き混ぜ不安にさせる。

俺はその恐怖に負け怒鳴りつけてしまった。

「なんでお前はいつも俺に構うんだッ!どうして!?俺なんかと同じ部隊に入れられてお前も迷惑しているんだろうッ!!レオや兄貴に言えよッ!今すぐに部隊を変えてくれって!」

俺は叫ぶと廊下に飛び出す。

ストーは何も言わずに俺の後を着いて来ようとする。

「付いて来るなッ!!」

そして俺は走り出した。

俺は外に出て走る、雨が降っていたが関係ない。

とにかく走って今のこのモヤモヤした気持ちを元に戻したかった。

「はぁ、はぁ、クソッ!」

最近クソと呟く回数が増えた気がする。

アイツに当たっても仕方がないのに、俺はどうしてこうなんだ!

レオにストーの部隊変えを申請してもすべて却下されている。

レオは俺達のやることにあんなガキまで巻き込むつもりなのか。

確かにアイツの衛士としての才能は本物だ。

磨けば磨くだけ輝きを放つ宝石だ。

俺みたいな石ころとは訳が違う。

それでも、俺はあんなガキを仲間として迎え入れたくなかった。

アイツの顔が表情が仕草がすべてリリアと同じに見えてきてしまう。

そんな事は無いはずなのに、重ねてしまう。

俺はまたリリアを失うかもしれない恐怖に負けていただけで、俺の態度を見かねたレオがストーを別の部隊に変えてくれるかもと、子供染みた考えを押し付けていただけなのだ。

「・・・明日もう一度レオに言いに行こう。もし、それでダメなら・・・。」

ダメなら俺はどうすればいいのだろうか・・・。

俺は結局答えを得る事が出来ないまま戻ることにした。

部屋に戻るとそこにはタエがいた。

「タエごめんやけど、今日は遊ばれへんで?」

俺はそう言いながらベッドに寝転がる。

すると、タエは俺の顔面を引っ掻き始めた。

「イタッ、痛い!なんやねんッ!」

顔の引っ掻き傷も直ぐに治癒する。

だがタエはそんなのも関係なしに引っ掻き続けた。

俺は観念し起き上がる、するとタエは外に飛び出して行く。

「ついて来いってことかい・・・。」

俺は、嫌々タエの後を着いていく。

到着したのはリリアとザウルの部屋、今はストーの部屋となっている場所だ。

タエは扉をガリガリ削り中に入りたそうにしている。

俺は先程怒鳴ったことを謝るいい機会だと思い、扉を開けた。

だが、そこには誰もいなかった。

「なんや?おらへんやん。」

俺は部屋の中を見回す。

ここを紹介してからは一度も入っていない。

だが、あれから部屋は変わっていなかった。

唯一違うのはベッドに向日葵の人形が置いてある程度だ。

「俺がリリアとザウルにあげたやつか・・・。」

「にゃーにゃー!!」

タエが俺に訴えるように鳴きつづける。

「・・・ストーに会いたいんか?アイツなら、今頃PXやろ?」

俺はタエを抱き上げPXに向かう。

途中でタエがまた引っ掻き始めたため駆け足で向かった。

「和真?どうしたんだい?」

PXではメルが食事を取っていた。

「あぁ、ストーを探していてな。」

「和真ッ!とうとう仲直りするんだね!」

小躍りしそうな程に喜んでいるメル、俺達の関係を一番心配していたのは、おそらく彼女だろう。だがメルは技術部に缶詰でストーとも2度しか会っていない。

それなのにこれだけ心配するんだ。そうとう俺の態度には問題があったのだろう。

「それよりも見かけなかったか?」

「イヤ見かけてないよ?ここには一時間位いたけど来なかったよ?」

それを聞き、嫌な予感が俺を襲う。

俺はタエをメルに渡しPXを飛び出す。

どこだ、どこにいる!?

嫌な予感はさらに募る。

俺は走り回り探すがストーの行きそうな場所に心当たり何て無い。

「どこにおるんや!?」

そこで俺は思い出す。

アイツは俺の後ろを何故か着いてきた、どれだけ邪見にされようとも俺の傍にいた。

「―――まさかッ!!」

俺は外に飛び出す。

俺が外に行ったのは2時間前だ。俺の考えている通りなら・・・。

「はぁ・・・はぁ・・・。」

全力で走る。

俺が我武者羅に走った道を雨に濡れながら再び走り抜ける。

――――いた!

ストーは雨に濡れながら地面に座り込んでいた。

「ストーッ!!」

俺の声が聞こえたのかストーが転んだのだろう、泥だらけの顔を向ける。

そして、俺の姿を確認すると大粒の涙を目に溜めそれが決壊すると同時に立ち上がり抱き着いてきた。

ストーの温もりが俺の濁った氷を溶かしていくのを感じる。

「ふぅぇぇええええ、ふぅぇええええ~~~。」

俺は一度それを離し、膝をついて真正面からストーを見る。

「たくっ、どろだらけじゃないか・・・。それに、膝まで擦りむいているしよ・・・。」

俺はストーの雨に濡れた前髪を掻き上げ、服の袖で泥を拭いていく。

「お前は、どうして俺なんかに付いて来るんだよ・・・。」

すると、ストーはまた俺に抱き着いてきた。

離さない、二度と離さないと腕に力を籠める。

「もう、1人は嫌だぁ!寂しいのは嫌だぁッ!ふぅぇぇえええ~~~!!」

俺はストーをそのまま抱き上げる。

「帰ろう、このままやったら風邪ひくで?」

ストーは俺の言葉にさらに強く抱き着き俺の首元を噛むことで、返事を返した。

「・・・噛むなよ、まぁええわ。」

俺はストーを優しく抱きしめ帰路を急いだ。

俺が会社の入り口に入るとメルとタエが待っていた。

「あッ!・・・ストーちゃん!」

メルは血相を変えて向かってくる。

「ごめんメル、ストーを風呂に入れたって。」

「分かった!でも、和真もだよ!」

俺はそれに自然に笑い答えた。

「そうするよ、ありがとう、メル。」

「和真・・・、うん任せなさい!」

メルも満面の笑顔で返してくれた。

「タエもありがとうな。・・・本当にいつも、ありがとうな。」

「にゃ~!」

俺にはタエが、当然、と言っているように聞こえた。

「それじゃ、頼むわ!」

そう言ってストーを渡そうとするが・・・。

「ほ、ほらストーちゃん?私とお風呂に行こうか?」

「うぅぅぅぅぅ・・・。」

ストーが俺から離れたがらない。

「ストー、俺はどこにもいかないから、なっ?」

そう言うと渋々ストーはメルに着いて行った。

「よし、俺も久しぶりにシャワーじゃなしに風呂にゆっくり入ろかな!タエ久しぶりにどうよ?」

「にゃ~!」

「そうかそうか!じゃ、行こうか!」

 

その後俺とストーはPXに来ていた。

メルは明日も忙しいらしくもう寝るとの事だ。

タエはメルに抱き枕にされるために拉致された。

すでに夜も遅くPXも空いていないが、キッチンを使わせて貰えたので俺は久しぶりに料理することにした。

「ほら、晩飯まだやろ?」

俺はストーの待つテーブルに二つ料理を運ぶ。

「これは?」

「うん?これは、焼きそば言うんや!おいしいから、食べてみ?」

すると、ストーは食べだそうとする。

だが途中で何かに気が付いたのか動作を一度止め手を合わせた。

俺はストーがいただきますをしようとしているのに気が付いたが、同時に何時誰が教えたのか疑問に感じた。

だが、そんなことは棚に上げておくことにした。

「「いただきます。」」

ストーには、箸はまだ扱えないだろうと思いフォークを渡している。

焼きそばを必死に食べるストーを見ながら俺も自分の作った焼きそばを食べる。

すると、ストーがまた泣き出した。

「どうしたんや?口にあわんかったか?」

心配し聞く俺に首が飛んで行ってしまいそうになるくらいに横にブンブン振り、それを否定する。

「暖かい・・・、すごく暖かいよ。それに・・・懐かしい。」

涙を流しながら焼きそばを必死に食べるストーを見ながら俺は、そうか・・・、と呟いた。

食べ終えたストーと共にご馳走様をした後、俺は意を決して聞いてみた。

「ストー、どうして邪見に扱ってた俺の傍におったんや?自分で言えることやないけど、俺のお前に対する態度は人としては最低の部類に入ることやぞ?」

すると、ストーはモジモジしながら話始めた。

「最初は凄く怖かったよ・・・。でも、和君の中にパパとママがいたから・・・。」

「パパとママ?」

「わ、私が勝手にそう思っているだけ・・・だけど、和真の中で向日葵に囲まれて笑っている女の人と男の人がいたから・・・。パパとママをもっと見ていたかったから・・・。」

「そう、なんや・・・。」

2人とも、俺の中で笑顔でいてくれたのか・・・。

まだ、こんな俺の傍に・・・。

「でも、その後は違うよ?私・・・、和君が私の事を心配して必死になっているの、知ってるよ?」

俺がレオを相手にストーを別の部隊に移動させるために口論していたのも知っていたのか・・・。

「和君が私を死なせたく無いからって、必死に生き残る術を教えてくれて私、嬉しかったよ!それに、安全な部隊に移動させたいって思っていてくれてたのも・・・。」

本当に何でも知っているんだな・・・。

「それに・・・、私は和君の傍にいたかったの!私の事を人として見てくれる和君の傍に・・・。ずっと、ずっと前からそう思ってたの・・・。」

なら、俺も答えをださなければダメだ。

やっぱり、ストーはストーでリリアじゃない。

俺は、ストーをリリアのようにしないために全力を持って生かそう。

ストーから死を遠ざけるために俺の今出来ることをなそう。

「ありがとうな?ストー、俺なんかで良かったらこれからもよろしくな?」

すると、ストーはリリアとザウルが良くする笑顔で、うん!、と言ってくれた。

本当に2人に似ている。

もし、二人が生きていたならストーを可愛がり過ぎて大変だっただろうな。

 

今日はストーが眠りにつくまで傍にいてやることにした。

それと言うのもストーがそれを望んだからだ。

俺は今までの穴埋めが出来るならとそれを承諾した。

「それじゃ、おやすみ。」

そう言って俺が頭を撫でるとストーは目を細め気持ちよさそうにし眠りについた。

ストーの枕元の両側にはザウルとリリアに送った向日葵の花の人形がある。

俺にはそれが、家族三人で川の字で眠る本当の家族のように見えた。

「さて、そろそろ俺も部屋に戻るか。おやっ?」

良く見るとリリアが俺の服を掴んでいた。

「たく、しかたないな・・・。」

俺はストーが眠るベッドを背もたれにし今日は座って眠ることにした。

 

「あの後どうなったんだろ?やっぱり気になる。」

「何だ、メル?ストーの部屋の前でうろうろして。」

「あ、兄貴!実は昨日さ・・・。」

「ほうほう、そんな事があったのか。そりゃ気になるわな!良しなら実際に見て確認しよう!」

「ちょ、兄貴!」

兄貴は勢い良く扉を開ける。

「・・・良きかな良きかな。」

「なに、1人で納得してるのさ!」

私は兄貴を押しのけ部屋の様子を窺った。

「なんだ、ちゃんと仲直りできたみたいだね!」

私が見た光景はベッドを背もたれにして眠る和真と和真の組んでいる足の上に乗り、眠っているストーの姿だった。

そして、ストーの上には向日葵の花の人形が二つ寄り添っていた。

 

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