Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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家族

 俺は、容赦なく自分を照り付ける太陽の光と寝苦しさから目をさます。

「眩しい、苦しい……! 寝みぃ~。」

 眩しさの正体は皆の朝のお母さんこと太陽さんで、苦しさの原因は今俺の胸の上で丸まって寝ている猫、タエである。

 この猫、俺が築地先生の助手になった後ベッドに戻った俺の後をついてきて今のように寝だしたのである。

 初めは良かったが毎日やられると、こちらも辛い。

 まぁ、良い目覚ましであることには違いないが……。

「タエ、起きろ! もう朝だぞ!」

 そう言うとタエはゆっくりと起き上がり、一回伸びをしてからベッドに降りて俺の頬に頭を擦り付ける。

 正直な話、毎朝のこれが一日の元気の素である! これがあるから、タエを俺の上で寝させることを止めさせていない。

「タエ築地先生を起こして来てくれ、俺は朝ごはんを作りに行ってくる」

 そう言うと、タエはベッドから飛び降り築地先生の部屋に向かう。

 俺は最近良く思う。

 あの猫賢すぎるだろ! と、猫の皮を被った犬なんじゃないだろうかとさえ思わせるほどタエは頭が良い。

 そんなことを考えながら、俺は服を着替えてリビングに向かう。

服は築地先生のお下がりだ! あのUFOのシャツはあの話合いの翌日に燃やした。

 手元にあるのも恐ろしい物だからだ。

 リビングにつくとすぐにキッチンに向かい、キッチンにある冷蔵庫から食材を取り出す。

「今日は、合成食パンと合成スクランブルエッグと合成ハムで良いかな?」

 そう言って料理を始める。

 この合成というのは本物の食パンやハムでは無いということだ。

 ユーラシア大陸はほとんどBETAの勢力下にある。

 そのせいで、食糧が足りないのだ。

 この問題を解決するために合成食品が開発された。

 何を使っているのか知らないが、食べられるのだから問題ないと割り切ることにしている。

 料理を作り終えて配膳し終わると築地先生がリビングに入ってきた。

「おはよう! 和真。」

「はい! おはようございます。築地先生」

「和真今日の予定は?」

「先生、今日は薬品や消耗品を買い溜めるために夜の便で日本に向かうんでしょ?」

「あぁ!そうだった! 久しぶりに多恵に会えるのだった! 楽しみだなぁ~! 絶対美人になっているよ!」

「はいはい。」

 多恵の名前から解るように、猫のタエと同じ名前である。

 この人は物凄く親バカである。

 一度写真を見せてもらったが、娘の多恵は10代前半であり、先生はどう見ても20代前半だったのでビックリした。

 そのことを聞いたら先生は30歳なのだそうだ。

「この見た目で30歳やもんなぁ~」

「うん? 何かいったかい?」

「いえ! 別になんでもないですよ?」

「そうかい? それじゃ、いただきます!」

「いただきます」

 この言葉を聞くだけで、ここが光州でも日本にいる気にさせてくれる。

 まだ、俺は帰りたいと思っているのか……女々しいなと内心で愚痴る。

「タエおいで。」

 そう言うとタエは俺の膝の上に座り口を開ける、そこに俺はタエ用のご飯を入れていく。

 その光景を見ていた先生が「ラブラブのカップルみたいだね……。」と呟くが俺は、「毎日の日課ですしね」と苦笑いで言葉を返した。

 ごはんを食べ終え食器を片づけると、日課の掃除をするために箒を持って外にでる。

 外に出るとご近所の人達が声をかけてくれる。

「おはよう。今日も精がでるねぇ~。」

「おはよう! おばあちゃん! 腰痛くない?」

「えぇ!和真君のおかげで全然痛くないよ。」

「でも、週に一度は診察にきてね?」

「はいはい。ありがとうねぇ~。」

 そう言うとおばあちゃんは、掃き掃除を始める。

 俺も始めようかとすると今度は元気な男の子と女の子が声をかけてくる。

「「お兄ちゃん、おはよう!」」

「はい、おはよう! 今日はどこに遊びに行くんや?」

「今日は、友達の家に行くの!」

「そうか、気を付けていくんやぞ?」

「「はぁ~い!」」

 子供たちが走っていき、掃除を始めあらかた終わったところで先生が声をかけてくる。

「お疲れ様! それにしても馴染んだね!」

「もうここに二か月もお世話になっていますし、それに皆さん良い人達ばかりですから。」

「言葉も大分話せるようになったしね?」

「それは、先生のおかげですよ!」

「いやいや! 和真には色々世話を焼いてもらっているからね、それくらい当然さ!」

 色々お世話とは、俺のここでの仕事は主に雑用と事務である。

 先生はそのあたりがかなりずぼらで、俺がやることになった。

 他には、たまに医療にも携わっている。

 俺に特技みたいなのがあったのは驚きだが、それを見抜いた先生も流石だし、うまく俺の力を使ってくれているので俺も町の皆に感謝されてうれしかったりしている。

 俺の特技とは、催眠術である。

 これが分かったのは俺が落とし物をして泣いている子を助けた時だ。

 俺はただ、泣いている子を泣き止ましてその子の目をじっと見てお母さんが子供に言うように「どこに落としたのかな?良く思い出してみようか?」と言ってその子が探し物を落とした記憶まで導いただけである。

 これを、見ていた先生が催眠術の一種だと見抜いて後はこれの活用法を教えて貰った。

 例えば、催眠効果で痛みを和らげたりなどである。

 この力を知った時俺は嬉しさが爆発していた。

 何もできないと思っていたのに先生の仕事の手伝いができるとまさに、爆発していた。

「それより、そろそろ港に行かないと船に間に合わないよ?」

「それを先に言ってくださいよ!」

 俺は、急いで用意を済ませ先生の運転する車に乗り港を目指す。

「病院を空けてしまってよかったんですか?」

「大丈夫だよ! どこかのだれかさんのおかげで皆元気だからね!」

「ははは・・・。まさかあんなに効果が出るなんて思いもしませんでしたよ。」

「それは、僕もだよ! 病は気からと言うけどこんなに効果があるとは驚きだよ!」

 そうなのである。

 患者の人達には俺の催眠術で痛みがなくなる、や病気が治ると暗示することにより皆徐々に回復していっているのだ。

「それに、日本から配達を頼むとものすごくお金が掛かるんだよ! なら、自分達が動くしかないだろ?」

「でも、荷物持ちは俺でしょ?」

「当然!!」

 その言葉を聞いて「解っていたけど少しは手伝って……」と俺は肩を落とした。

「あっ! 船が見えてきたよ!」

 先生の指差す方を見ると、大きな船が見えてきた。

 でも、装飾などはされておらず荷物を大量に運ぶためだけの貨物船に見えた。

「築地先生あの船ですか?」

「そうだよ! じゃあ、時間も余り無いしちゃっちゃと乗っちゃおうか?」

「はい!」

 その後、車ごと船に乗り入れ乗船する。

「先生、俺甲板の方に行ってきます」

「あぁわかったよ。後、1つ注意しておくね? 海に落ちないでよ。」

「わかってますよ。」

 俺は先生にそう言うと甲板に向かい歩きだした。

 外に出てみると、外は真っ暗で空も海もすべてが1つになっていて不思議な感じがした。

 俺もその1つになれば元の世界に帰れるのではないだろうかと海を眺めていると、「にゃ~」と鳴き声が聞こえた。

 タエである。

 タエは基本俺と行動を共にしているので、今回の小旅行にも連れてきていた。

 そんなタエはカゴの中から心配そうにこちらを見ている。

「大丈夫だよ。タエ、俺はどこにも行かないから……。」

 そう言って頭を撫でるとタエは満足したのか、カゴの中に帰っていく。

「さて、そろそろ体も冷えてきたし俺も中にはいるか!」

 俺は、一度も外の景色を見ないで船の中に入っていく。

 もう一度見てしまうと今度こそあの真っ暗な世界に吸い込まれてしまいそうだから・・・。

「築地先生、今戻りました。」

「おかえり和真、外はどうだった?」

「もの凄く寒かったです。」

「そりゃ、そうだろうね!」

 そう笑顔で話す先生が急に真面目な顔になる。

 その顔を見て俺も姿勢を正す。

「和真……1つ君に提案があるのだが?」

「はい、なんですか?」

「僕の家族にならないかい?」

「すみません、もう一度お願いします。」

「和真、僕の息子にならないかい?」

 俺は、先生のいきなりの提案に頭の中が真っ白になった。

「ダメかい?」

 先生が心配そうに聞いてくる。

「あの、ダメとかじゃなくて、なんでいきなり?」

「前々から考えていたのだけどね……。多恵に会う前に決めてしまおうと思ってね!」

「はぁ……。」

「それで、答えをくれるかい?」

 俺は、築地先生から俺が並行世界に来てしまったのかも知れないと話を聞いたあの日から、この世界のことについて色々調べていた。

 その結果、この世界は俺の元居た世界ではなく、日本は俺の知る日本ではなかった。

 俺は、その日から家族とは無縁だと思っていた。

 もう甘えたり甘えられたりすることができる人はいないのだと思っていた。

 だから俺は、先生にそう言われ目に涙をためた。

 この何も知らない何も無い世界で家族が出来たそのことがたまらなく嬉しくて目に溜めていた涙は次々に溢れ出してくる。

「はい! こちらこそよろしくお願いします、先生!」

「違うだろ、和真? 僕達は家族になったのだから」

 俺は、泣きながら笑いこの世界では二度と使うことがないと思っていた言葉を言う。

「はい!……父さん!」

「うむ、それじゃ息子よ! そろそろ夜も遅い、寝るとしよう!」

「はい!」

 父さんと俺は、船内の床に寝転がり毛布を被る。

「おいでタエ!」

 俺が呼ぶとタエはカゴから出てきて俺の胸の上で丸くなる。

 俺は、それを優しく抱きしめるようにして寝た。

 次の日の朝、俺はいつものように苦しさから目を覚ます。

 珍しいことに父さんはすでに起きていた。

「おはよう和真!」

「おはよう父さん!」

 俺は、このやりとりが嬉しくてついにやけてしまう。

「何だ? 朝からうれしそうだな?」

「ううん。なんでもあらへんよ!」

 父さんもにやけていたから同じなのだと思いそう返事をした。

「もう日本の港についているから僕は、車で買いにいってくるね?」

「あれ? 荷物持ちはしやんでいいの?」

「あぁ、向こうの従業員さんが手伝ってくれるらしいからね! それと、多恵が港に来ているから話し相手になってくれ、和真の妹になるんだ。優しく接してくれると僕もうれしいよ。」

「当たり前だよ、父さん! 妹を大切にしない兄は存在せえへんねんよ!」

「ハハハ! それを聞いて安心したよ。今日の夕方には戻るから、その後は光州までトンボ返りだけど構わないかい?」

「OK! わかったよ。」

「それじゃ、僕は先に行くね?」

「あれ、多恵とは会っていかへんの?」

「あぁ……。会いたいのだけど時間が無くてね、仕事を終わらせてから会おうと思うんだ。」

「わかった! それまで多恵の話し相手になってるわ!」

「よろしくお願いするね。それじゃ、行ってきます!」

「いってらっしゃい!」

 そう言って父さんを見送り俺は、自分の荷物とタエの入っているカゴを持ち外に出る。

 陸に上がると、写真で見た姿から少し成長した多恵がいた。

「あ、あの……。あなたが和真さんですか?」

「うん、そうやで?」

「わ、私は 築地 多恵(つきじ たえ)です。」

「うん、知ってるで! 俺は今日から君のお兄ちゃんになる築地 和真や! よろしくな!」

「・・・へ?」

 




三話でやっと原作キャラ登場です!
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