Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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変わる世界、変わらない日常

俺は今社長室でレオと向かい合っている。

空気が重い、汗が額から流れ落ちる。

今まで感じたことの無いレオの威圧。

世界を変えるためにその身を捧げた男が俺の前にいた。

 

「俺の答えを言わせていただきます。」

「あぁ・・・。」

「俺は、ストーをトイ・ボックスに迎え入れることにしました。」

「そうか。」

「ですが、1つ条件があります。」

「これは決定事項だ、君がとやかく言おうとも変わらないが?」

「それでも、話だけでも聞いていただきたい。」

「・・・許可しよう。」

「ありがとうございます。結論から言います。ストーを戦場に出すのは俺の許可を得てからにしていただきたい。」

「何故?」

「それは、俺がまだ弱いからです。俺が強くなりストーを気に掛けながらでも戦えるようになって、そしてストーを戦場に出しても大丈夫なくらいに強くしてからにしたい。・・・許可願えますか?」

室内を沈黙が支配する。

さらに空気が重くなる。

時を刻む秒針の音でさえ大音量に聞こえる。

「・・・分かった、許可しよう。」

だが、答えは直ぐに帰ってきた。

「ほ、本当ですか!?」

喜ぶ俺にレオが先程までの空気を四散させながら話す。

「あぁ、もともとそのつもりだったしね!」

「よかった~!」

すると、レオは顔を今から悪戯しますよ!とニタァと歪める。

その顔を見て俺はもの凄く嫌な予感がする。

「それよりも、随分ストーと仲良くなったらしいね?あれかい?君もロリータに目覚めたと言う解釈で良いのかな?」

「ちがうわ!ど阿呆!!」

「なんだ、違うのか・・・。君には期待していたのに・・・、がっかりだ。」

「・・・なんでやねん。」

「それにしても、やっと前の和真君に戻ったね?」

「・・・そうですか?」

「あぁ、君とストーをこの時期に会わせたのは正解だったようだ。」

 

俺は社長室を後にすると、ストーの部屋に向かった。

俺が今まで縮めることを拒否し続け出来た距離を少しでも、無くすためだ。

「ストー、起きているか?」

扉を開け中に入るとストーはすでに起きていた。

「和君っ!!」

ストーは俺を見るや笑顔になり走り寄ってくる。

すると、突然目の前で急停止し服の裾をその小枝の様な指でつまむだけだった。

少しではあるが、俺達の距離は短くなった。

今はそれで構わない。

これから、この距離を狭めて行けばいいだけの話だ。

それくらいの時間ならまだ残されているだろう。

「それじゃ、飯食いにいこか?」

「うん!」

 

1999年4月

世界は緩やかに変わっていた。

まず、オーストラリアの大統領にネフレの息が掛かった人物が二度目の当選を果たした。

彼は、白豪主義撤廃を唱え難民をオーストラリア市民として認めようとする活動家である。

俺が知る難民街はすでに、その兆候が見えていたらしいが俺はネガティブな所しか見ていなかったらしい。

だが、やはり市民権を得るには難民はそれ相応の努力をしなければならない。

一番手っ取り早いのが軍属になることだ。

次に結婚し子供を作って、10年間その場で生活すること。

他にも多々ある。

これらをクリアし一応市民権は与えられ、職場も提供されて行き難民街は徐々に無くなって行った、その場にいた人達はオーストラリア各地にバラバラに生活をさせている。

これによる差別などの問題は人権活動家達により、表立って言う人間は減ったがやはり、差別はされるものだ。

それらは、自らの実力で覆せと言うのが難民達の暗黙の了解となっているらしく皆今を生きるために精一杯頑張っている。

つまり、今まで難民が嫌われる原因になっていた弱者の権力が使えなくなった事を意味している。その代わりに彼らは籠の中ではあるが自由を手に入れた。

このような人権活動家達に資金を渡していたのは勿論ネフレだ。

そして、オーストラリア国民もメディアを通してコントロールされている。

殆ど本当のことしか伝えていないが、その手法は危機感を煽るように放送されている。

このため、オーストラリア国民は直ぐにでも自分達が住むオーストラリアが戦場になる可能性があると思い込み、軍備増強のデモがあちこちで進み、また国力増強を唱え出した。

そして、軍需産業を始め各種の産業が活気づきオーストラリアの生活水準も高くなってきている。

これだけの事が起こっているのだ文句を言う人は殆どいない。

また、租借地を借りる事が出来ずに難民街に臨時政府を立てていた各国政府はオーストラリア人になることにより、国政に出ることが出来る様になった。

もちろん、彼らが元居た国はBETAから取り戻した後はオーストラリアになる。

つまり、奪われた国を取り戻すのにオーストラリアが全力を出すと言う事だ。

その事が、難民達を暴発させないことにもつながっている。

それに生活が潤えば犯罪は減るモノだ。

オーストラリア各地での犯罪率も低下しているそうだ。

そして、そこに目を付けるのがネフレだ。

さらなる軍備増強の煽りを受けオーストラリアと契約し、セイカーファルコンを次期主力機に置く話が持ち上がった。

アメリカからスーパーホーネットを購入する話も進んでいる。

2.5世代機を2004年までに、すべてのオーストラリア軍で運用させると現大統領は言っており、これがうまく行けば軍事面でもオーストラリアは強国の仲間入りを果たすこととなる。

また、アメリカから戦術機大型空母を買う契約も現在進んでいる。

これらは、財政面でアメリカを除く他の国家よりも頭1つ飛び出しているからこそ出来ることだ。

 

そして、今俺がいるのはケアンズ基地ネフレビルだ。

今回ここに俺がいる理由は、オーストラリア陸軍に渡されるF-16Eセイカーファルコンの実力を見るためだ。

この模擬戦をする羽目になったのも、ボーニング側からF-15Eストライクイーグルの方が整備性が良く強い、だからこっちを買えと言ってきたからだ。

さすがボーニングやることがえげつない。

だが、値段ではこちらの方が安い。

そこで、どちらが良いか決めるために今回の模擬戦をする羽目になった。

ロックウィード・マーディンからは、必ず倒して欲しいと言われている。

元々、セイカーファルコンの試作機であるF-16XLはストライクイーグルに負けお蔵入りとなった戦術機だ。

ネフレがその技術を買い取強化して出来たのがセイカーファルコンだ。

ロックウィード・マーディン側としても何か思うところがあるのだろう。

「と、言っても実際ストライクの方がアフターパーツが多いし発展性もあるし良い機体なんだけれど・・・ね。」

ストライクイーグルは全体的に良くバランスの取れた優秀な戦術機だ。

それは、未だにアメリカの主力機であることからも解る。

それに比べこちらのセイカーはまだネフレ内でも配備を始めて間もなく経験値と信頼性を見れば圧倒的に負けている。

「さすがにこれで負けてもうたら大目玉食らうな・・・。」

その変わり、こちらは安価でストライク並の戦術機であると言うところが売りだ。

「だけど、装甲がガチで紙やからな、もしかするとパンチ一発で小破してまうかもな・・・。」

だが、この戦術機は対人戦よりも対BETA戦を主眼に置かれている。

BETA相手では、どのみち一発喰らえば速お陀仏だ。

なら、あたらないように機動力を上げるのは当たり前のことだ。

これは、アメリカ製の戦術機全般に言えることでもある。

当たれば終わり、当たらないように逃げろ。

空力やらなんやら考えて機体重量を増し整備性を低くするなら、その分軽くして弾を持て。

継続戦闘能力?そんな物銃弾が尽きた時点で勝敗は決まっているだろうが!

「やからな・・・。まぁ、言うてることは御もっともなんやけれど。それやと、レーザーヤークトがしにくいからなぁ~。」

それに、重光線級には手も足も出ないなんて事もありうる。

あれはまさに規格外の強さを誇っている。

120mm弾を食らおうとも立っている姿は今でも俺を振るえ上がらせる。

「アメリカは別の視点で現実を見てる言う事かな。」

ただの光線級なら、後方から絶え間ない援護射撃の下レーザーヤークトを行う事ができる。

だが、重光線級が姿を現した時点でそれも終わる。

つまり―――。

「それだけの準備が出来てない状態でレーザーヤークトをするのは間違いと言う事。そして、アメリカは現段階でのハイヴ攻略は不可能と考えていると言う事やな。」

だからこその、間引きのためのバランスの良い戦術機であり、それらで持ちこたえられない場合は逃げに徹するための薄い装甲による機動性。

危険な近接戦闘能力なんて鼻から考えていない。

人を生かすための戦術。

「それでも前線国家は国を捨てる何てできひんから、継続戦と近接戦に主体を置いた戦術機を前線に送り込む。どちらが正しいかなんてわからんわな。」

それにG弾も完成したらしいし、それをハイヴにぶち込んで残ったBETAを安全な後方から撃ち殺す。

なら、アメリカが近接重視にならないのも納得が行く。

オルタネイティブ5も理解できる。

「それでも世界はアメリカの1人勝ちを嫌ってそれを妨害、夢物語なオルタネイティブ4で時間を稼ごうとしている。・・・そんな悠長にしてられる程、時間も無いし人もおらんねんけどな。」

それに、この世界ではアメリカの1人勝ちはすでに決定しているようなモノだ。

 

そんな事を考えていると模擬戦が開始される。

「さて、どうなることやら。」

俺が見つめる画面の中では、二機の戦術機が縦横無尽に市街地演習場を動き回りお互いに引く気配が見られない。

両方の戦術機から凄まじいまでの気迫が感じられる。

お互いに一定の距離を保ったままの戦いとなっている。

だが戦闘開始から30分過ぎたあたりで戦況は動き出す。

二機は円状に広がる広間に出てしまったのだ。

これだけの広さがあれば俊敏性で勝るセイカーファルコンの方が有利になる。

ストライクイーグルは的確に相手の先を読み狙撃するが、セイカーファルコンには当たらない。

距離を詰められたストライクイーグルはたまらずナイフを抜くが、その選択は間違いだった。

ナイフを突き出すストライクイーグルの目の前でセイカーファルコンは姿勢を低くすることでそれを躱し、膝部の尖ったカーボンブレードによる膝蹴りで勝負はついた。

「どうだった?」

隣で俺と一緒に試合を観戦していたレオが俺に聞いて来る。

「あのまま、市街地で戦っていたらセイカーが負けてたと思うわ。今回はうまくストライクを広間に誘き寄せる事が出来からこその勝利やな!」

俺の批評を聞いてもレオは満足そうに笑顔になる。

「それでも、これでセイカーの優位性を示す事が出来た。今後の商談もスムーズに行くだろうね!」

それに俺も満足して頷く。

「やな!・・・けど、ストライクは良い機体やな。あれを内で改造してやったら化けるんとちゃうか?」

「そうかもしれないけどね。戦術機のお得意さんはロックウィード・マーディンだからね。」

「それと、海軍にノースロック・グラナンやろ?」

「まぁ、それらの戦術機をこちらが買う事による見返りが大きいからね。」

「アメリカ議会を黙らせてノースロック・グラナンから大型戦術機空母を買った兼の話?」

「それもあるけど、一番大きいのはアメリカと良い関係が築けることだね。つまり彼らにとっても私達が必要で私達にとっても彼らが必要だと、外に見せることが出来るからね。」

「俺達のバックにはアメリカ軍がおるぞ~ってこと?」

「それだけで十分に抑止力になるしね!それに、国連軍も私達の味方で合成材料製造所を守るための自衛軍を持つことも許されているしね!」

「会社の癖に国とケンカ出来るだけの軍備持ってるしな・・・。ホント異常な会社やで。」

「まぁ、本当の所は裏で皆繋がってたりするのだけれどね。」

「そういやG元素の開発・研究にはネフレも加わってるんやったっけ?」

「まぁね!G弾も完成したしね。・・・世界には時間が残されていないんだ。」

「そのための俺らでそのためのヴェルターであり、スピリットやろ?」

「あぁ、出来る事ならスピリットが完成するまでには世界を1つにしたいところだね。」

「そのための下準備は出来てるやろ?」

「まぁね・・・。」

「それより、俺が呼ばれた訳は?」

「直に君に会って話したかった事なんだが、来週行われる佐渡島の間引き作戦に参加しなさい。」

「はぁ?ヴェルターは?」

「順調だよ、先行量産型も順次ロールアウトしていく予定だしね。つまりは、君の仕事は当分の間無いと言う事だ。」

「・・・ストーの初陣もすませる言う事ですか?」

俺は少し言葉に重みを乗せて問いかける。

「ストーを君に任せてから随分時間がたったしね。それに君も見ただろ?ストーはすでに、初陣に出しても良いレベルに達している。」

俺は眉に皺を寄せ表情で拒否を示すがそんな事は意味をなさない。

今回の模擬戦でセイカーに乗っていたのはストーだ。

ストーは俺の予定よりも強くなり過ぎた。

もう、庇い続けるのは無理だろう事は俺が一番理解している。

「・・・了解しました。」

俺はその後少しレオと話し合い、格納庫に向かった。

 

俺が格納庫に到着すると、兄貴とストーが話合っていた。

「和君!」

ストーは俺に気が付くと走り寄ってくる。

「良くやったな、ストー。ESPは使って無いか?」

「和君が使うなって言ったから使ってないよ!」

胸を張ってそう言うストーに俺はもう一度良くやったと良い頭を乱暴に撫でてやる。

「はわわわわわわッ!」

俺がストーで遊んでいると、兄貴が俺に話掛けて来た。

「よっ!和坊!!」

「お疲れ様、兄貴!悪いんだけど整備班の皆をPXに集めてくれへんか?今日の晩飯は俺が奢るよ。」

「てぇ~事は、ストーのデビューが決まったってことか?」

「・・・そういうこと。」

「分かった!盛大にふんだくってやるよ!今月は生きていけなくなる程に使ってやるから金の準備はしておけよ!?」

「了~解!」

俺と兄貴が話しているとストーが俺の裾を引っ張る。

「和君、何かするの?」

俺はそれにもう一度ストーの頭に手を乗せて答えた。

「ストーの初陣の日取りが決まったって事や。準備は出来てるか?」

俺はストーに問いかけた。

身の回りの準備では無く、気持ちの準備が出来ているかと・・・。

それにストーは胸の前に腕を持ってきて頷いた。

「うん!大丈夫だよ!!」

俺はそれに少し寂しさを感じつつもそれを悟らせないためにストーの頭をもう一度乱暴に撫でることでそれを誤魔化した。

 

夜PXに鮨詰め状態で集まった多くの人達と共にパーティーが開催された。

ストーは乾杯の音頭をとるために皆の前に立っている。

「―――これから皆さんのお世話になることが多くなると思いますが、精一杯頑張りたいと思います!よろしくお願いします!!―――乾杯ッ!」

「「「「「「「ヤーーーハーーーーッ!!ストーちゃ~~~ん、乾~~~杯ッ!!」」」」」」」

そして繰り返される地獄絵図・・・。

呼んでない連中までいるPXはデパ地下のように歩くだけでも一苦労しそうな程に人がいる。

その中で繰り広げられる祭り・・・。

「ハハハハハっ・・・。俺、貯金全部使ってまうことになるかも・・・。」

そう言って肩を落とす俺をタエを抱いたストーが必死に慰める。

「だ、大丈夫だよ和君!!私がついているよッ!」

よく解らないがその気持ちだけで俺は救われるよ・・・。

「飲んでいるかにゃ~!?」

そう言って俺に絡んできたのはメルだった。

・・・こいつもすでに出来上がってやがる。

顔を真っ赤にしたメルは酒臭い息を振り撒きながらストーを抱きしめる。

「うっふふふふ、お肌スベスベモチモチだにゃ~!いいなぁ~!」

ストーはされるがままだ、余程酒臭いのだろう涙目で俺に助けを求めてくる。

だが、俺はそれを無視した。

「か、和君~~ッ!」

俺が人波を掻き分けて行くと、何やら盛り上がっている場所を見つけた。

それを覗き見るとテーブルの上の大量の札束と上半身裸の男。

何をしているのだろう?

すると、人波の中から1人男が出てくる。

そして、その札束のに札を投げ入れ上半身裸になる。

「何故服を脱ぐ?」

俺の声は周りの歓声に掻き消された。

そして、男がテーブルに着くとテーブルに肘を付ける。

どうやら腕相撲をしているようだ。

「その金は俺がいただくぜ?」

「取れるモノならとってみろ・・・。」

そして、レフェリーらしき男が合図を出すと両者一気に力を入れる。

お互いがお互いマッチョなのに挑戦者の方が顔を苦しそうだ。

その筋骨隆々とした背に汗が噴き出している。

「・・・この程度か?―――終わりだ!!」

先に座っていた男がそう言い目をカッと開くと勝負はついていた。

「さぁ!さぁ!この男に勝つことが出来ればこのお金はすべてあなたの物だ!挑戦者はいないのかぁーー!」

レフェリーをしていた男が煽ってくる。

「アイツには勝てねぇよ・・・。」

「お前行けよッ!!」

「馬鹿言うんじゃねぇ!中東のキングコングに勝てる訳がないだろう!!」

周りの男達からそんな声が聞こえて来る。

だが俺はある一点にノミ視線が集中していた。

「あの金が手に入れば・・・。」

俺に迷いは無かった。

俺は無言で上半身裸になり札を放り投げる。

「次はあんたか・・・。」

「精々手を抜けよキングコング!」

両者引くことをしらずに火花を散らす。

「和君頑張ってーーー!」

いつの間にかストーも来ていた。

「ふっ・・・、負けられないな・・・。」

心を鎮める。

頭の中には勝利の方程式、手に掴むのは勝者の証(金)、もう何も怖くない!

「レディーーーー、ファイッ!」

 

「しくしくしくしく・・・。」

「よしよし、よく頑張ったねぇ。」

負けた・・・。

これでもかと言う程に負けた。

開始一秒で負けた。

小細工とか作戦とか心の力とかそんな物まったく意味がなかった。

三角座りをして泣く俺をストーは慰めてくれる。

「みっともない所を見せちまった・・・。」

「そんな事無いよ、和君・・・。和君はカッコ良かったよ。」

「ストー・・・。」

「和君・・・。」

見つめ合う俺達、ほんのりとストーの頬が赤い気がする。

それは俺も同じだろう。

そして、見つめ合っていると―――。

「君も等々こちら側の人間になったのだね・・・。」

レオが俺の背後から話しかけてきた。

「私は嬉しいよ・・・。同志が増えたのだから・・・。」

「ち、違、俺は・・・。」

「自分の心に嘘をつくのは止めるんだ和真君ッ!さぁ、共に語ろうじゃないか!ロリータを!!」

「ち、違うんだぁあああああ!!うわっ!」

立ち上がって逃げようとする俺は、何か固い物にぶつかる。

「オィオィ、気をつけろよ和坊!」

「あ、兄貴・・・。」

「それよりも、お前アレに負けたんだって?」

兄貴が指差す先には中東のキングコング。

俺はそれにシュンとする。

すると、兄貴が俺の肩を二回叩き俺の横を通り過ぎる。

「任せときな・・・。」

兄貴が歩みを進めると人波は勝手に割れて行く。

今の兄貴には何かがあった。

そして、テーブルの前に立つ。

「班長・・・、次はあんたか。だが、手は抜かない。そこに金を出せ・・・。」

「ふっ、その必要はない。」

「何だと?」

「俺が勝つんだ、なら態々金を出す必要もないだろう?」

そして、兄貴は上半身の服を脱ぎ棄てる。

そこには、鬼がいた。

筋肉で出来上がったその背中はまるで鬼の顔を書いているみたいだ。

「・・・良く言った。」

キングコングがそう言うと兄貴は椅子に座る前にその場で立ち止まり口が微かに見える位置まで顔を後ろに向ける。

そして、PX内が静寂に包まれる中で俺には聞こえた。

「―――ついてこれるか?」

「あ、あ・・・。」

「「「「「「「「「「兄貴―――――――――ッ!!」」」」」」」」」」

PX内に男共のむさ苦しい叫びが溢れかえる。

「俺はどこまでも付いていくぜ兄貴―――!!」

「・・・畜生、惚れ直しちまったぜ。」

「兄貴になら掘られてもいい!!」

「最高だ、最高だぜあんた!!」

そして、割れんばかりの歓声の中で男の意地と意地を賭けた決闘が始まった。

 

結果は兄貴の勝利。

お互いがボロボロになる程の熱い戦いだった。

そして、大量の金を手に俺の所に来る兄貴。

「これで、お前は破産せずに済むな・・・。」

「ありがとう、兄貴!・・・兄貴?」

俺に金を渡した兄貴はその場で倒れ伏す。

「兄貴ッ!!」

俺は兄貴の頭を抱きかかえる。

「へっ・・・、かっこうがつかねぇな。・・・和坊この金で今度飲みに行こうや・・・。」

「兄貴・・・?兄貴、兄貴―――――ッ!!」

 

「このコントいつまで続くのかなタエ?」

「にゃ~~。」

「そうだにゃ~、バカばっかりだにゃ~。」

 

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