Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
翌朝、港に着いた俺は共について来てくれた人達に別れの挨拶をしていた。
「お世話になりました嵩宰少佐、例の件はこちらで話しておきます。」
「よろしくお願いします。・・・何か困ったことがあったらいつでもいらっしゃい、出来る限り力になるわ!」
「はい!」
俺は次に唯衣ちゃんに向き直る。
「唯衣ちゃん、次はお手玉で驚かせてあげるよ!」
「はい!楽しみにしています!」
最後に1人暗い顔をしている上総ちゃんに向き直る。
「か、和真さん!」
上総ちゃんは必死に言葉を述べようとしていた。
俺はそれに気が付いていたのもあり、娘に接する父親のように先を急がずに優しい表情を作り、話を聞く体制に入る。
「うん?」
「わ、私は・・・、私は強くなります!あなたのように、誰かを守れるように、・・・ですからッ!!」
上総ちゃんが勢いあまり一歩踏み出して話そうとしたとき、上総ちゃんは足元の石に躓き体制を崩す。
そして、体制を崩してしまった上総ちゃんは俺に昨晩の再現のようにもたれ掛る。
俺はそれを優しく受け止め、上総ちゃんの成長を喜んだ。
そして、昨晩と同じように優しく頭を撫でる。
「あぁ、君は強くなれるよ。上総ちゃんは優しい子だからね!皆の支えになってあげてくれ・・・。」
すると、上総ちゃんは俺の胸元にある腕を握りしめ腕の間に顔を隠してしまう。
「・・・はい。」
照れてしまったのだろうか?
上総ちゃんは、顔を俺の胸元に押し付けたまま離れない。
その時、他の2人の視線に気がついた。
「五六中尉。・・・さすがに、犯罪よ?」
嵩宰少佐、俺にはそんなつもりはありません!
「うわぁ~。」
唯衣ちゃん、赤くならないでくれ・・・。
「す、すみません!私・・・。」
「ハハハっ、別に気にしやんといて?これも役得やからな!」
すると、ネフレの職員の人が船の出向準備が整った事を知らせに来る。
「それじゃ、失礼します!」
俺はそう言い船に乗り込んだ。
「山城さん?」
「なんですの篁さん?」
「あの後、なんて言おうとしたの?」
「あぁ、その事・・・。」
私は話そうか少し迷う。
これは私の我儘、それに実現するかどうかも解らない。
「それは・・・。」
「それは?」
妙に篁さんの食いつきが良い。
よほど、その手の話に飢えていらっしゃるのね。
そんな気持ちは持っていないのだけれど・・・。
この感情は多分、憧れ・・・。
京都の初陣で死ぬしか無く、大切な友人に辛いことをさせてしまうところだった私を、救ってくれたヒーロー・・・。
だから・・・。
「・・・秘密でしてよ。」
「えぇ~~~。」
だから私も、あなたのようになりたい。
そして、いつの日かあなたの隣で誰かを救いたい。
そうすれば、あの時、朦朧とする意識の中で確かに見たあの人の幸せそうな、逆に自分が救われたと泣いていたあの人の思いが解るかもしれない。
「2人とも、そろそろ戻るわよ!?」
恭子様が呼んでいる行かなければ、でもその前に・・・。
「篁さん。」
「???」
その前に、この呑気な顔をする私の友人を守れるように強くなってみせる。
「・・・なんでもありませんわ。」
「???」
「やっと到着したぁ~!」
第一町についた俺は大きく伸びをする。
時刻はすでに深夜の二時を過ぎている。
俺は荷物を持ち直すと会社に向かった。
会社に到着した俺は受付嬢の、メアリーさんとミアリーさんに呼び止められる。
「「五六イケメン中尉。」」
「はい?」
変な言葉を聞いた気がしたが多分空耳だろう。
そんなことよりメアリーさんとミアリーさんについて説明しておこう。
この2人、双子である。
いつも眠たそうな顔をしている二人を見分けるポイントはピンク色の髪だ。
ツインテールにしているのがメアリーさん。
ポニーテールにしているのがミアリーさんだ。
そして、練習でもしているのではないかと言う程に息の合った連携をとる。
因みに、この2人は忍者ではないかとネフレ社内で噂になっている人物でもある。まぁ、実際にネフレの受付嬢をしているだけあり、かなりの肉体派である。
強引にナンパをしに来たキングコングを息の合った回し蹴りで気絶させたのは良い思い出だ。
「「社長がお呼びです。」」
「了解しました。」
俺は返事を返すと社長室に向かった。
「五六和真中尉です!」
「入りなさい。」
「失礼します!」
俺が部屋に入るといつものレオが待っていた。
「やぁ、まっていたよ!セイカーはどうだった?」
「解ってる癖に・・・、売れんかったよ。」
「まぁ、そうだろうね!では、本題の方に入ろうか・・・。嵩宰家当主は・・・、嫌、日本帝国は我々に何を求めてきた?」
俺はレオに日本の現状とそして、今すぐにでも援助が必要なことを伝えた。
「そして、日本はレオとの話し合いの場を求めています。」
「ふむ・・・。」
レオが腕を組んで考え込む。
「予想通りだな。・・・いいだろう、その要請を受ける事にするよ。」
レオが予想していたのは俺にとっても予想通りだったが、この展開は予想がつかなかった。
会談をする・・・。
言葉にすれば簡単で実際会って話合うだけだ。
だが、今回はその話合いをすると言った時点で結果は決まっているようなものだ。
少なくとも相手にとっては・・・。
わざわざ会ってまで、援助の話を断れば日本との関係は一気に冷え込む。
いままで関係を良くしようと進めていた事がすべて泡となってしまう。
「いいんか?日本には悪いけど無い袖は振れんやろ?」
「期限付きで援助をするだけだよ。物資は第一町、第二町、それにケアンズから搾り出すさ。皆、食卓から一品無くなったくらいで文句は言わないよ。医療品に関しては裕福な国から集めればいい。彼らも日本に貸しを作るいい機会だからね。それに、頭が変わるんだ。付け込めると思う連中がいても可笑しくない。まぁ、そこまでは面倒を見てやるつもりは無いからね。益虫の中に混じった害虫をどうするかは宿主自身の問題だ。」
俺はその答えを聞いてほっとした。
正直な所、今回の件は断られて当たり前だと思っていた。
それが、こんなにもあっさり決まったからだ。
「後の事は部下に任せておくよ。そんな事より、日本で良い思いをしたみたいだね、イケメン君?」
「は?」
突然の問いに俺は固まってしまう。
「イヤァ~、羨ましいなぁ~!若い女の子二人と同じ部屋で長時間過す事が出来て、しかも親しい関係になるなんて、・・・爆発すればいいのに。」
俺の背中に嫌な汗が吹き出し流れる。
「な、なんのことや?」
「とぼける気かい?・・・心外だね。我々を舐めないで貰いたいね!日本にも良い言葉があったろ?壁にミアリー障子にメアリーだよ!」
「それを言うなら壁に耳あり、障子に目ありやよ!」
そこまで、言ってから気が付く。
まさか―――ッ!
「まさか、ホンマにあの二人がおったんか?」
「そんな事よりその二人とはどこまで行ったのか詳しくだね!!」
そ、そんな・・・。
皆に自慢しようと思っていたのに、こんな返しをされてしまうなんて!!
そこから長時間質問攻めにされ、結局真相を聞くことは出来なかった。
「まったく、何時間拘束する気や・・・。」
時間を確認すると、すでに三時間は質問攻めにさらされていた。
「はぁ・・・。」
でも、これで一先ずは安心して眠ることが出来る。
「本当に良かった・・・。」
暗い廊下を歩きやっと自室に辿り着く。
「なんか今日は疲れたな。」
主に最後の質問攻めが一番効いた。
本当に勘弁して欲しい。
「今度飲み物にタバスコぶち込んどいたろ!」
俺は良い事を思いついたとニヤつきながらベッドに倒れ込む。
天上を見上げながらストーに明日何を話してやろうか考える。
「・・・温泉に・・・入ったこと・・・でも、はな・・・したろ、かな。」
そして、俺は眠り慣れたベッドにすべてを委ねた。
「和君がいる気がして、来ました!」
私は和君の部屋の扉を開け放ち堂々の宣言と共に入る。
でも、自室はすでに真っ暗で何も見えない。
「あれ?和君、いないの?」
おかしいな、今日帰ってくるってレオが言っていたのに。
すると、ベッドの布団が膨れ上がり微かに上下に動いているのを見つける。
「なんだ、寝ちゃってたんだ・・・。」
私は少し寂しく思いながらもベッドに近づく。
「一杯話したいことあったのにな。」
布団を首元まで被っている和君の顔を見ながら呟く。
そこで、私はピンとくる。
「別に、甘えても良いよね?」
私は和君の布団をゆっくり捲りベッドに入り込む。
ギシッ―――。
ベッドが軋む音がして一瞬和君が目を覚ましてしまうと思い身を固めるが、和君は寝息を立てている。
ほっ、と安心した私は和君の上に跨りながらその顔を眺める。
「ふふっ、かわいいなぁ~。」
和君の寝顔は口を少し開き普段からは想像も出来ないゆるみきった顔をしている。
その顔は母親に抱かれる赤ちゃんのようでもある。
「この顔はこの場所でしか見せないから、知っているのは私くらいかな?」
私は少しばかりの優越感に浸る。
「ふふ、和君・・・。」
私は和君に抱き着きいつもの場所に顔を移動させる。
すぐ上を見れば和君の顔がある。
だが、和君の首元で甘い匂いを楽しもうとしたときに私は気付いてしまった。
「・・・知らない匂いがする。」
それは、和君の甘い匂いとは別の甘い匂い。
これは女の匂いッ!!
私の中に特大の雷が落ちる。
「そ、そんな・・・。」
私はショックを受けながらも怒りが湧きおこる。
「お仕置きだよ・・・。」
私はそう言いながら和君の首元に遠慮無く噛みつく。
ガリッ―――。
室内に、肉を突き破る音が響く。
私の口の中に和君の血が流れ込む。
だが、直ぐに傷口も塞ぎ始める。
私は少しでも和君を自分の中に入れようと傷口を舐め続ける。
「うっ・・・。」
和君が少し苦しそうにするが関係が無い。
ここで寝ている時だけは、和君は無防備だ。
完全に安心できる場所だと認識しているのだろう。
ちょっとやそっとじゃ起きないのは、日頃から共に寝ているだけあり確認済みだ。
「はぁ・・・。」
私が口を離すと自然と口から音が漏れる。
あの時とは時間も場所も状況も違うが、和君の味はあの時と同じだった。
「うん♡」
私は和君の口元に再び噛みつく。
今度は優しく味わう。
そして自分の匂いを上書きしていく。
「やっぱり、ここが一番安心する・・・。」
私は寂しくなり和君を力一杯抱きしめる。
あの時と同じように、光を逃がさないように抱きしめる。
すると、和君は私をその暖かい腕で抱きしめる。
「また、私を守ってくれるの・・・?」
私の問いに和君は返事を返してくれない、でも抱きしめる腕をさらに強くすることで返事を返してくれた気がした。
「やっぱり、和君は暖かいね・・・。」
そして、私は暖かいぬくもりに包まれながら眠りについた。
翌朝目を覚ませば俺の上には、いつものごとくストーがいた。
しかも今度は俺が抱きしめている。
まるでお気に入りの抱き枕を抱くみたいにだ。
「とうとう、俺は真正のロリコンになってしまったのか・・・。」
俺は頭を抱え込む。
すると、ストーが目を覚ました。
「・・・う、ん。おはよう、和君。」
ストーが俺の顔をその長くキレイな銀髪で包みながら言ってくる。
「おはよう、ストー。でもな?近すぎるやろ・・・。」
俺とストーの顔の距離は文字通り鼻が当たる距離だ。
「えへへへ!」
ストーはそう言って笑いながら再び抱き着いて来る。
「なんや、今日はえらい甘えん坊やな。・・・なんかあったんか?」
「ううん、なんでもないよ!」
そう言ってストーは俺を力一杯抱きしめてからその体を離した。
「それじゃ、着替えてくるね!」
「おう、わかった!」
そう言って出て行くストーを見送り俺も準備を始める。
「まずは、シャワー浴びよ。」
俺とストーは準備を済ませてからPXに向かう。
PXに俺が到着すると何故か朝の賑わいは一瞬で影を潜める。
「な、なんや?」
心なしか皆が俺を見ている気がする。
俺は嫌な予感に襲われながらも席に着く。
「一体なんなんや?」
ストーのほうを向いてもストーはニコニコするばかりだ。
「訳がわからない・・・。」
俺がそう呟くとPX内にヒソヒソとした言葉の波が広がる。
なにか俺の陰口をしているのは、皆の様子から解るのだが俺が一体何をした?
「それはだね!君がついにロリに目覚めたと噂になっているからだよ。しかも、日本でその毒牙に2人も落としたらしいじゃないか?イケメン君?」
「朝から最高の情報をありがとうよ、メル。」
「で、実際の所はどうなんだい?一部の噂ではやるところまでやったとなっているよ?」
「やってねぇよ!それに俺はロリに目覚めてねぇ!!」
「必死に否定するところがさらに怪しいねぇ~。」
俺は助けを求めようとストーを見るがすでにタエと食事を始めていた。
「はぁ、なんなんだよ・・・。」
「まぁ、諦めたまえ!人の噂も45日と言うしすぐに元に戻るさ!」
「はぁ・・・。」
俺は肩身が狭い思いをしながら食事を始めた。
「ここなら、大丈夫やろ。」
俺は1人で格納庫に来ていた。
ここは、噂好きな連中が少ない。
俺の最後の安住の場所だ。
「よぅイケメン!どうしたよ!?」
ここでも侵食されていた・・・。
「オイ皆!我らがイケメンが来たぞ!!」
「なに、本当か!?」
「ロリを手籠めにする力を伝授して頂く時が、来たァ――――ッ!」
「ふっ、俺はそんなモノに興味はないがな。話しくらいは聞いてやる。」
「我らがヒーローのお出ましだ!」
さまざまな連中が俺を囲み情報を聞き出そうとする。
「もう、勘弁してくれ・・・。」
すると、困り果てていた俺に救いの神が現れた。
「てめぇら、和坊が困っているじゃねぇか!さっさと持ち場に戻りやがれ!!」
兄貴が怒鳴ると蜘蛛の子を散らしたように男共は離れて行く。
「兄貴・・・。」
俺は少し涙目になりながら本当のヒーローを見る。
「悪ぃな和坊、あいつらも暇な時間を過す話がほしかったんだ。」
「いや、俺も解ってるから・・・。」
そう言うと、兄貴は肩を組んで来る。
「あぁ、でも俺は違う!アイツらみたいに暇つぶしの道具としての情報なんていらない!!」
兄貴は拳を握りしめ話す。
「・・・和坊、今度その子らと合コンをしよう!」
「兄貴ッ!?」
結局俺の安息の地なんてどこにもなかった。