Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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俺はここにいる

まるで、世界が変わった気分だ。

見える景色はすべてが線。

唯一知覚できるのは、前方の野球ボールくらいの大きさの円から見える景色のみ。

その他すべてが、線で出来上がった世界に俺はいた。

「ぐぅぅぅぅうううううッ――――。」

もともと、この大型ブースターはファンデーションの開発途中に出来上がった物だ。まだ、今のようなハイヴ攻略方法が確立されていなかった時、単機で核爆弾を大量に抱えハイヴに突っ込む人間ミサイル。

そのために搭乗者の安否は二の次で、ただ加速性能のみを追い求めたこれは、その非人道的で実用性の無さからお蔵入りとなっていた。

それを、今回の作戦のために埃を被っていたのを取り出してきた。

グチャ―――。

体内で何かが押しつぶされた音が聞こえる。

そこから溢れた液体が喉を逆流し口から飛び出そうとするが、体に予想以上にかかるGの影響で口を開く事さえ出来ない。

痛みは無い。

身体のどこかが潰れようとも関係が無い。

到着するまでの間に完治していれば問題無い。

藍色の阿修羅は、海上を進む。

彼が進んだ後には、まるで何かから逃げるかのように海が割れる。

「陸地到着まで、カウントします。」

CPから通信が入る。

「5」

全身に力を込める。

「4」

作戦内容を再び思い返す。

「3」

大量のファンデーションが、陸地から放たれるレーザーを受け止め爆ぜる。

「2」

陣形も俺のために変更されている。

「1」

「ここまで、されちまったら!失敗なんて出来る訳ねぇだろ!!」

陸地に蔓延るBETAは俺が上空を通りすぎた後に砂煙と共に吹き飛ばされる。

ファンデーションが、レーザーの盾になってくれている。

「S-11ミサイル着弾地点確認!!」

CPから着弾予定地点に友軍機がいないことを知らせてくる。

「了解!!」

そして、光線級がいるBETA内部まで後少しと言うところでファンデーションすべてが撃ち落とされた。

「急いで下さいッ!!」

予想よりも早いファンデーションの撃墜速度に、CPから焦りが窺える。

「解ってる!!全弾発射!」

大型ブースター内部より、生まれ出たミサイルは意志を持っているかのように予定地点に向かう。

一番近い、後方で最初の爆発が巻き起こる。

後方から大地をひっくり返して叩きつけたような音が聞こえて来る。

だが、そんなモノに構っている暇は無い。

「大型ブースター、パージ!!」

俺のジュラーブリクをその巨体に縛り付けていた装甲が、俺事迫り出す。

そして、そのまま大型ブースターの腹部に移動させられる。

もう少しで地面とキスをしてしまいそうだ。

アラートが鳴り響く。

初期照射を受けているのだろう。

だが、幸いなことに前方からのみだ。

アラートを感知した大型ブースターは俺を切り離す。

だが、その時にはレーザーがすぐそこまで迫っていた。

あぁ、あれはもうダメだ・・・。

誰が見てもそう思うだろう。

事実その通りであり、鋼鉄の巨大芋虫は光の矢に穿たれ内部から破裂してしまった。

赤と黒の花火が出来上がる。

だが、その爆炎の卵の内部から飛び出してくる藍色の悪魔。

「ウォォアアアアアアアッ!!」

俺は、大型ブースターに取り付けられていたフォルケイトソード改二本を取り外し、ブースターを全開で噴かせ、チャージ中の光線級を回転しながら横薙ぎに切り捨てながら、地面を削りながら周りの光線級諸共、他のBETAを肩の突撃砲すべてを使い蹂躙する。

その姿は、まるでフィギュアスケートをしているように美しかった。

BETAの群れの中、単身で斬り込んだ阿修羅が重い体を立ち上がらせる。

「ただいま、クソ野郎共ッ!!」

俺はそう言いながら戦域地図を確認する。

すると、いたる所にポッカリと大穴が空いていた。

どうやら作戦は成功したらしい。

陣形も元に戻っている。

それらを、確認し終えた俺は、思いを乗せて宣戦布告した。

「―――ここからッ!人類のッ!人のッ!俺のッ!反撃開始だッ!覚えてやがれ下等生物共ッ!!―――俺が、俺達がッ!テメェらの天敵種様だッ!!」

そして、蹂躙劇の幕が上がる。

 

「篁さんッ!」

「えぇ、今の声は和真さんよ!」

私達は歓喜していた。

もしかしたら、と内心思っていたが、まさかあんな方法で登場して、しかも突破口まで開いてしまうなんて。

「・・・さすがと言うべきかしらね。」

恭子様ですら、驚かれることをやって見せたあの人は、やっぱり凄い衛士なのだと思い知らされた。

「この機を逃す訳には行かないッ!作戦通り我々はレーザーヤークトを行う。今こそ、我ら斯衛の矜持を見せる時だ!全機、私に続けぇぇえええええッ!!」

「山城さん!」

「えぇ、いきましてよ!!」

いつか、届くのだろうか・・・。

嫌、届いて見せる!

私は、私達は、彼の後ろ姿ばかりを見ている訳にはいかないのだ。

 

「しゃらくせぇぇええええ!!」

俺は目の前に現れた戦車級の群れを突撃砲で薙ぎ払う。

「はぁ・・・はぁ・・・。」

どれだけ、殺したのだろうか・・・。

俺は、単機で突撃を掛けレーザーヤークトを行った後、体制を立て直すために再び東京湾方面に向かっていた。

だが、それを邪魔するかのようにBETAの群れは襲い掛かってくる。

一匹を殺してもその後方から襲い掛かってこられ。

それを、躱しても後方から攻撃される。

それを、跳躍ユニットを使い横に滑るように突撃砲を撃ちながら躱すが、今度は四方から攻撃される。

先程からこれの繰り返しだ。

「俺はバーゲンの品で、お前達はそれを奪い合う客と言ったところやな・・・。」

俺は笑いながら戦い続けた。

辺りはBETAの死体の山と血の川で出来上がっている。

残弾も残り僅か、フォルケイトソード改の燃料も後三回使えば終わってしまうだろう。

このままなら、確実に挽肉にされ、ミンチにされ、刺身にされ殺される。

だが―――。

「それがどうした?」

そんな死に方をするくらい、とうの昔に知っている。

覚悟なんて大それたものでもない。

戦場に立ったその時に皆がそう成長するだけの話だ。

だから、それがどうした。

俺達はただ、戦って地上げ屋からこの土地を奪い返すだけだ。

最後のロケットブースターを使い要塞級を叩き切る。

それと同時に、フォルケイトソード改も折れてしまう。

何百匹と切り殺したのだ、良く持った方だろう。

肩部の突撃砲二門を腕に持ち替える。

俺は、それらの120mmキャニスター弾を足元の戦車級の群れに撃ちこんだ。

まるで、水風船が破裂したかのように血飛沫が上がり世界を赤一色に染め上げる。

「いらっしゃいませお客様!当店では、冷やかしは御遠慮願っております。」

足の大型モーターブレードで要撃級を削り殺す。

「生きてこの店を出たいお客様は、急いで馬鹿な男をお買い上げ下さい。」

ダンスを踊っているように、楽しそうに削り撃ち殺す。

「じゃないと・・・。」

両手、両肩合わせて四門の突撃砲をそれぞれ、向かってくる客に向ける。

「馬鹿な男に食い殺されるぞッ!!」

すべての砲門から弾丸の雨と言う接客が行われた。

 

ニミッツ級戦術機母艦の艦上では、ボムキャットの補給が行われていた。

「俺達の次の任務は、あの滅茶苦茶な衛士の救出だ。」

ボムキャットに積み込まれるミサイルを見ながら、ボマーズの衛士が呟く。

「そんで、その馬鹿は今どこにいるんだ?」

「BETA群の中の中だ。」

「うへぇ~!良くそんな事が出来るな。英雄志願者か?」

「どちらかと言えば自殺志願者だろう?死ねば英雄だ。」

「へっ、違い無い。」

すぐ目の前が戦場だと言うのに、彼らはいつも通りだった。

それは、彼らが歴戦の衛士であるからだ。

常に戦場にいる。

それらを、体現した存在だからこその自然体なのだ。

「モンスターズの連中は?」

「俺達と同じで、自殺志願者に生還への道を作ってやるんだとさ。」

「ほんと、ご苦労なこった。」

そう言いながら、補給終了の知らせを受け愛機に乗り込む。

「そんじゃあ、その馬鹿は今どこかなぁ~。」

データリンクを使い救出すべき、愛する馬鹿を探す。

すると、それはすぐに見つかった。

「へぇ~。」

そこには、単機で次々とBETAを葬り続けるマーカーが1つ。

「やるじゃねぇか。」

それは、異常とでも言えば良いのか。

その殲滅速度はあきらかに可笑しい、瞬く間に押し寄せるBETAを殺している。

まるで、後ろに目が付いているかのように全方位の敵を着実に殺していた。

すると、隊長から通信が入る。

「モンスターズの準備も整ったようだ。これが、本日最後の任務となる。全機心して任務に当たれ。」

「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」

そして、爆弾魔達は戦場へと再び向かって行った。

 

「はぁ・・・、はぁ・・・。」

戦闘を始めた時は太陽は真上だったのに、今ではその姿が消えてしまいそうにか細くなっている。

夕陽に照らされながら、藍色の機体色が赤一色になるほどの戦闘を繰り広げていた。

「まだ、来る。」

弾薬はすでに無い。

推進剤も残り僅か、それでも俺は未だに補給に向かう事が出来ずにいた。

「数が多すぎる・・・。本当にフェイズ2かよ。」

さすがに、何時間も作業のように戦い続けていれば愚痴の1つでも言いたくなる。

「でも、俺の作戦がうまく行ったおかげで大分BETAの数を減らせた。後は、オービットダイバーズを待つばかりってな。」

それまでに俺が帰れればの話だが。

最悪、空から落ちてきた再突入カーゴに押しつぶされて死亡じゃ、ダサすぎる。

「後、もう少し・・・。」

地図上では後少しなのだ。

だが、その少しが遠すぎる。

俺が少し気を抜いた瞬間、目の前に要塞級の鞭が迫る。

「くそッ!!」

迫りくる触覚を俺は側転するように躱す。

だが、着地と同時に地面から戦車級の群れが溢れ出してきた。

「なッ!!」

ジュラーブリクは足を取られてしまう。

そして、待ちわびたと戦車級が飛び掛かってくる。

ここまでか・・・。

俺がそう思った時、俺の周囲のBETAは爆風に弾け飛ばされた。

「良い所邪魔するぞ、自殺志願者。」

BETAを弾け飛ばした正体、それはボムキャットが手に持つバズーカから放たれた砲弾だった。

「そうそう、お前は俺達がエスコートしてやるから邪魔だけはすんじゃねぇぞ?」

要撃級を引き千切りながら現れたのはナイトホーク。

「全機、好きなだけ食らって行け!!」

「「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」」」

ボムキャットから次々と放たれていくフェニックスミサイルは、遠方から向かってくるBETAを根こそぎ吹き飛ばす。

その光景は、隕石が衝突しているのではないかと言う程に派手だ。

「・・・さて、日本の八咫烏に習って俺達夜鳥の群れが道案内してやるよ。」

ナイトホークは、その大きく長い腕を使い近場にいるBETAを切り裂く。

「あら、私達はモンスターなのだから、ついてきたら食べられちゃうかもよ?」

そう言いながら、ナイトホークは前面の装甲を開け中から砲身を覗かせ戦車級を蜂の巣に変える。

「ビックリした?ウエポンベイを搭載してる戦術機を見るのは初めてかしら?」

「無駄話をしている暇は無いぞ?・・・トイ・ボックスの衛士、ついて来い。」

俺はナイトホークとボムキャットに援護されながら戦場を移動していく。

だが、やはりBETAの数が多すぎた。

「くそッ!こいつらどこから湧いてきやがる!!」

「バズーカ、弾切れだわ・・・。どうしよ?」

その様子を黙って見ていられなかった俺は、加わろうとする。

だが、それは阻止されてしまった。

「だから、邪魔だっつってんだろ!?」

「今の貴様に何が出来る?弾はもうないのだろう?まさか、モーターブレードだけでどうにかするつもりか?」

その言葉は、俺の事を気遣ってくれているのだろうが要するに邪魔だから引っ込んでろと言う事だ。

たしかに、溢れてくるBETAはすでに俺達の周りだけで優に2000は、越えている。

それにモーターブレードだけと言うのは無謀と言うものだろう。

だが、それは普通の衛士ならの話だ。

「・・・先に助けに来て頂いた事は礼を言います。ですが、これだけは言わせて頂きます。・・・俺が邪魔やと?逆に言ってやるよ!俺の邪魔をすんじゃねぇ!!」

俺は、すべてのモーターブレードを展開し戦線に加わった。

「俺には、近接最強の経験が入ってんだよ!!これくらい、越えて見せてやるよ!!」

「アイツ・・・。」

作戦を妨害された。

これだけで、ボマーズの隊長は普段なら頭に血が上りBETA諸共、護衛対象を殺していたかもしれない。

だが、彼はそうならなかった。

なぜなら・・・。

「遅ぇんだよ!!」

要撃級の攻撃を紙一重で躱し、顔のような感覚器を切断し、突撃級を飛び越え頭上から急降下し裂断する。

戦車級が集れば回転し、なます切りにする。

「・・・自殺志願者では無かったようだな。」

彼は思った。

彼のような若者がいるなら、人類はまだ負けないと・・・。

「全機!なんとしても、あのバカを連れて帰るぞ!!」

そして、爆弾魔はその馬鹿に見せつけるように本来の実力を遺憾なく発揮した。

 

 

ロイヤル・スウィーツ艦内で俺は1人座り込んでいた。

「生きて帰ってこれたのか、俺は?」

未だに実感がわかない。

俺はそれを確かめるように、何度も腕を握っては開きを繰り返していた。

 

「良く、生きて帰ってくれたな。」

「艦長・・・。」

「ジュラーブリクはもうダメだな。」

「・・・はい。」

俺のジュラーブリクE型は、艦に着いた時に死んでしまった。

無理な機動をとらせ続け戦い続けた結果だ。

「良く持ってくれました。」

「君の事が余程好きだったのだろうな、良い機体じゃないか。」

「はい、本当に・・・。」

「話は変わるが、社長が呼んでいる。通信室に向かいなさい。」

俺はそれに、立ち上がり敬礼をした。

「はっ!」

 

「オービットダイバーズのハイヴ進行も難なくいったらしい。君の活躍は勲章ものだね!」

「それなら、今回の戦場にいる皆に勲章を渡さないと。」

「君は、自分がどれほどの事をしたのかを理解するべきだと思うけれどね?光線級103、要塞級40、その他BETA測定不能、これだけの戦果を出しているのだから!」

「それは、S-11ミサイル含めてやろ?そんなことより、この調子ならG弾は必要ないのか?」

「どうだろうね、正直解らない。横浜ハイヴは他のハイヴとは違いあきらかに異質だ。それに相手がBETAである以上切り札は用意しておかないと。」

「それもそうやな・・・。」

「あぁ、そして戦術機を失った君はもうそこには必要ないからね。すぐに、ケアンズに帰投しなさい。」

「・・・了解。」

 

1999年8月6日

「横浜ハイヴがフェイズ4相当やと!?」

俺は社長室で驚愕していた。

「やってくれるよ、本当に・・・。」

レオは苦虫を噛み潰したような顔をしている。

それだけたちが悪いことなのだ。

「・・・どうやっても、歴史は変えられないのか。」

「?」

「日本軍、大東亜連合、国連の連合軍は今や恐慌状態だろう。G弾投下の時刻まで持つか解らない。・・・そこで、ジョーカーを切ることにするよ。」

「・・・と、言う事は。」

「あぁ、ヴェルターを出す!」

 

南極基地

俺は、新たな力の前に立っていた。

「セラフヴェルター、全規模量産型の武装として現在開発中の内の1つ、近接格闘型のヴェルターだ。」

その姿は、元のヴェルターの姿をさらに禍々しくした姿をしていた。

元々白かったヴェルターの装甲は、赤色をしている。

その赤色は、綺麗な夕陽の様な赤ではなく紅蓮のマグマの様な見るだけで死を連想させる暗い赤色だ。

そして、Gドライブの下。

人間で言うところの尾骨の位置には、要塞級の触覚を思わせる尻尾が付いている。

そして、腰部から後方に天を突き刺すように突き出している二つの両刃の剣。

最後に右腕に取り付けられている巨刀。

すべての武装が近接一色で固められた異質な機体。

「セラフ・・・、熾天使か。天使にはまったく見えやんけどな。」

「人類救済の戦術機なんだ。天使様だろ?」

「・・・フッ。」

俺はレオの脾肉を鼻で笑う。

「ストーはどうしてる?」

「ご立腹だね・・・。まぁ、その内会えるよ!そんなことより・・・。」

レオはそう言いながら、俺に何かを手渡してくる。

それは、何かのデータチップと大量の薬だった。

「これは?」

薬の方は解る、俺の体内のナノマシンを抑える薬だ。

だが、何故このタイミングでデータチップを渡すのか理解出来ない。

「今は知らなくてもいいさ!ヘルメットを貸して?」

俺は素直にヘルメットを渡す。

すると、レオは後頭部にいつの間にか作られていた場所にそれを刺し込んだ。

「ここを押せば取り出せるからね?」

「あぁ・・・?」

俺は不思議に思いながらもヘルメットを受け取る。

「さぁ、行ってきなさい!」

「了解!!」

 

セラフヴェルターに乗り込み、一体化する。

G弾が発射されれば多くの人が死ぬ。

それだけは回避しなければ・・・。

俺が今から行ってどれだけの事が出来るのか解らない。

それでも、俺は出来る限りの事をするだけだ。

心を落ち着かせるために深呼吸をする。

「良し・・・。セラフヴェルター出撃します!」

そして俺は再び戦場に向かった。

 

「くっ、来るなぁあああ!!」

「ヒィアアアッ!」

「だれか、タス・・・。」

戦場は、人々の叫びで埋め尽くされていた。

和真さんの働きでBETAを押し返し後もう少しと言うところでそれは起こった。

地面から這い出してくるBETA。

地中を移動することは知っていたし、警戒はしていた。

だが、数が多すぎるのだ。

数千増えた程度なら何とかなっただろう・・・。

だが、奴らは万単位で這い出してきた。

いきなり、自陣の真ん中に数万のBETAが飛び出して来たのだ。

連合軍は瓦解し、逃げ出す者すら現れすでに負け戦になっていた。

それでも、ここで横浜ハイヴを攻略しないと日本は終わる。

その一心で皆恐怖に震える体を動かし戦っていた。

そんな中で私達は海岸沿いで戦闘を行っていた。

「ちぃ・・・。」

腕を振り上げた要撃級をナイフを展開し切り殺す。

だが、側面から別の要撃級が向かってきていた。

「山城さんッ!!」

篁さんが叫ぶ。

だが、私は理解していた。

今さら何も出来ないと、それほどに取り返しがつかない距離にBETAがいた事を気付けなかった私の不覚なのだと。

和真さん・・・。

「私は、あなたのようになりたかった・・・。」

要撃級の腕が振り下ろされる。

篁さんが向かってくるのが見える。

持ち場を離れたらダメじゃない・・・。

私は、他人事のように考えてしまっていた。

でも、生きたい・・・。

死にたくない・・・。

まだまだ、やりたい事がたくさんある。

死にたくない・・・。

その時、走馬灯のように京都での事が蘇る。

暗闇の中で震えていた私を救ってくれた光・・・。

彼が、いないのは解っている。

それでも、頼りたくなってくる。

そんな人なのだ。

あの人は・・・。

もう要撃級の腕は目の前だ。

後はこれに貫かれて終わり。

自然とその人物の名前が口からこぼれてしまった。

「・・・和真さん。」

そして、私は目蓋を閉じた。

だが、衝撃も何も来ない。

私は不思議に思い、恐る恐る目蓋を開ける。

すると、要撃級の姿がどこにも無かった。

その代わりに血の雨が機体を濡らす。

何が起こったのか解らない私は、その雨を降らせている存在を確かめようと空を見た。

すると、海の中から伸びる一本の蔓のような物に要撃級は持ち上げられていた。

そして、それは私の上で両断され血肉の雨を降らせる。

私は混乱する頭のままで蔓を辿り海を見る。

すると、そこだけ墨を撒いたように黒くなっていた。

海中から黒く照らしているように輝く海・・・。

まるで、地獄の入り口が開いたようだ。

だが、私はその光の中に温かさを感じた。

「山城さん!!」

「篁さん・・・。」

篁さんが目に涙を溜めて無事を確認してくる。

「篁さん、あれは・・・?」

「私にも、解らない。」

要撃級を両断した蔓は、まるで意志を持っているように動き回り海中に消えて行く。

「新種のBETA?」

篁さんが聞いて来る。

「それは、無いと思いますわ・・・。」

「それは、何故?」

「だって、私を救ってくださったのですから・・・。」

その時、海が爆ぜる。

地獄の入り口を通って出てきたモノは悪魔だった。

全身を寒気がする赤に身を包み、隙間からは死を連想させる黒が滲み出している。

「あれは・・・。」

その時、悪魔が吠えた。

「くぅううう!」

「耳が・・・ッ。」

それは、まるで自己主張しているように、俺はここにいると世界に叫んでいるみたいだった。

 

俺は海中の中で飛び出す箇所を確認する。

ヴェルターはBETAを誘き寄せることは前の実戦で判明している。

出来るだけ、人がいない所に出た方が良い。

俺はGテールの先端についているカメラを海上に出し、その場を探した。

すると、白い瑞鶴が要撃級に攻撃されようとしていた。

「間に合えぇえええええ!!」

俺はすぐさまGテールを向かわせる。

Gテールは、海蛇のように移動しBETAを貫いた。

そして、そのまま持ち上げると同時に斬り裂く。

「見つけた!」

BETAが急に移動を開始しても被害を出さない箇所を見つける。

それを理解すると同時にセラフを向かわせる。

そして、陸地に上がり見たのは地獄だった。

逃げる戦術機を追いかけ轢き殺し、単機で奮戦する戦術機を徐々に喰らい、仲間を助け出そうとした戦術機もろとも貫いて溶かす。

その光景を目の当たりにした俺は、負の感情を乗せて叫んだ。

 

「俺はここだぁぁぁぁぁああああああああああッ!!!」

 

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