Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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オスロ

太陽が照りつける。

暖かい、昔多恵が父さんの家に泊りに来た時と同じすべての時間が緩やかに過ぎて行き、鳥の囀りが聞こえ、水の流れる音が聞こえて来る。

何だか、とても嫌な夢を見ていた気がする。

父さんが死んで、俺が訳のわからない宇宙人と戦うそんな夢。

だが、ここは違う。

空気で解る。

これで、俺が目を覚ましたらいつもみたいにタエが俺の上で寝ているんだ。

まったく・・・、俺の上がそんなに寝やすいのかよ。

まぁ、別に構わないのだけれど。

そんなことより早く起きないと、今日は誰の検診の日だっけ?

父さんを早く起こして準備しないと、あの人はいつも寝坊するからな。

俺は、眠い目をこすりながら起き上がる。

この夢の内容を父さんとくまさんに相談してみるか?

いや、止めておこう。

たるんでるとか言われて、訓練の量を増やされるかもしれない。

さすがに、これ以上増やされたら死んでしまう。

「う、・・・くっ。」

まずは朝ごはんを作ろうかな?今日はなににしよう。

中々開かない目蓋を無理矢理こじ開け、太陽の光を強引に捻り込む。

そして、俺の瞳が色を捉えるとここがどこなのかを情報として俺の脳内に現実を突き付けてきた。

まず俺の目に飛び込んで来たのは火が燃える暖炉。

そしてその横にキッチンらしき物。

木彫りのイスにテーブル。

そして、それらを外界から隔離する木造の壁。

昔テレビで見たヨーロッパの民家、絵本の世界から飛び出して来たような家の中に俺はいた。

「ここ、は・・・?」

すると、俺は見つけてしまった。

机の上に置かれている物を・・・。

「あれ、は・・・。」

それは、衛士強化装備服にヘルメット、それとククリナイフだった。

それを見た瞬間に頭に激痛が走る。

今まで夢だと思っていたこと、すべてが走馬灯のように出ては消えて行く。

「は、ハハハハハハ・・・。そうか、あれは現実やったんや。」

ならここは、どこだろうか?

こんな場所は見たことがない。

なら俺は捕まったのか?

それも、ありえないだろう。

捕虜をこんな所に1人で置いておくはずが無い。

それとも、俺を油断させるため?

・・・わからない。

こんな高待遇な捕虜の話なんて聞いた事が無い。

すると、部屋に1つだけある扉が今にも壊れてしまいそうな音を出しながら開かれていく。

―――マズイ。

俺の頭の中では、ただ1つの事がすべてを支配していた。

貴重な情報を持っている敵兵士を捕えた相手にすること、それは拷問だ。

昔元の世界で見た戦争物の映画で、たしか主人公がそうされた。

俺にもされるかもしれない。

嫌な汗が噴き出してくる。

唾を飲み込むことすら出来ない。

極度の緊張で心臓が壊れてしまいそうな程に脈打っている。

―――逃げなければ。

そうと決まれば、行動するしかない。

俺はククリナイフを手に取り、頭の中のスイッチを切り替える。

そして、扉を開いた相手が部屋に入ってきたと同時に飛び掛かった。

「・・・はじめましてッ。」

俺は相手を押し倒し、喉元にククリナイフを押し当てる。

「声を出すな・・・。俺を出口まで連れて行け。」

俺は辺りを警戒する。

声からして女だし、どうやら仲間はいないらしい、好都合だ。

このまま外に出てしまえば後はどうとでもなるだろう。

「・・・寒くないの?」

「しゃべるなと言った。」

「・・・別に、寒くないのなら構わないけど。」

「だから、しゃべるなと言っている。」

「・・・だって、あなた裸だから。」

「・・・は?」

「裸。」

そして、俺は自分の体を確認する。

確かに裸だ、全裸だ、フルチンだ。

すると、目元を綺麗な銀髪で隠している女は、首元にナイフが押しつけられているのを関係が無しに、俺の下半身を見る。

「―――フッ。」

わ、笑いやがった・・・。

コイツ、俺の息子を見て笑いやがった。

「わ、笑うな!!」

「・・・参考資料のよりも小さい。」

その瞬間、俺の中で何かが崩れた気がした。

主に男の尊厳とかその辺りが・・・。

「・・・服を持ってきた。」

服・・・だと・・・?

何故だ!もしやあれか?拘束服とかそう言う類の衣類か?

だが、廊下に散らばるのは男性用の服だった。

これだけの騒ぎをしているのに誰も来ない。

つまりは俺は連れ去られた訳ではないと言う事か?

そう考えてくると途端に恥ずかしくなってくる。

「す、すまん・・・。」

「・・・別にいい。」

そして、俺は無言のまま服を着た。

「まずは、すみませんでした!」

そう言って頭を下げる。

「別に構わない、本物も見れたし・・・。」

オイ・・・、そいつはどう言う事だ。

コイツは感情が読みづらい。

前髪で目元を隠してしまっているのもあるが、声に感情が乗っていない気がする。

「それよりも、説明してほしいのだけれど。」

「あなたは、外で倒れていた。部屋の中に連れ込んで服を脱がせて寝かせた。」

「出来ればそこは、介抱するために服を脱がせたと言って欲しいな・・・。でも、そう言う事ならありがとう。君のおかげで助かった。俺の名前は五六和真だ。」

「・・・私の名前はニクス。」

「ニクス・・・、雪か。うん、らしい名前だね。」

「・・・今、安直な名前だと思った?」

「いやいや、そんなことあらへんよ!?」

「・・・そう。」

思いましたすみません・・・。

だって、見た目がそのままだもの。

粉雪を思わせる髪、白く透き通るような肌、細く長い指、か弱く今にも消えてしまいそうな雰囲気が、雪そのものだ。

だが、その胸だけは別だけどな!

もうそこだけ豪雪だ。

「それよりも、ここはどこかな?」

「・・・オスロ。」

「・・・はっ?ごめん、もう一度頼むよ。」

「オスロ。」

「・・・本当?」

「うん。」

オイオイ、どう言う事だよ。

オスロは確か1993年にBETAに落とされた筈だぞ。

冗談で言っているようには思えない。

嫌な予感がするが、聞いてみるか。

「今年は何年かな?」

「???、1990年だけれど・・・。」

その瞬間、俺は眩暈がした。

どう言う事だよ、俺はまた過去に帰って来たって事かよ・・・。

そこで、俺は思い出した。

Gコアに触れた研究員が未来に飛ばされた話を。

なら、俺は過去に飛ばされたと言う事か・・・。

その時俺の腹が勢いよく鳴りだす。

「す、すまない・・・。」

「別に構わない・・・、用意してきた。」

ニクスはそう言うとキッチンから何かを持って来た。

それはスープだった。

「・・・こんな物しかないけど、良かったら食べて。」

「あ、ありがとう!でも、ニクスは何で俺にそこまで良くしてくれるんだ?」

「・・・。」

何か言いたくないことなのだろうか?

だが、腹が減ってはどうしようもない。

ここは、素直にいただくとしよう。

考えるのは、それからでも遅くは無い筈だ。

俺は両手を合わせる。

「いただきます。」

すると、ニクスは俺の動作を首を傾げながら見ている。

「うん、どうした?」

「・・・何をしたの?」

「あぁ、これは食い物になってくれた生き物に対して感謝をしている、でいいのかな。まぁ、癖だよ。」

「・・・そぅ。」

そして俺は渡されたスープを食べる。

だが―――。

み、見られている・・・。

か、感想か?感想を言って欲しいのか?

「お、おいしいよ?」

「・・・そぅ。」

だが、まだ見てくるニクス。

―――食べづらい。

その時、可愛らしい腹の音が聞こえる。

その音の主であるニクスを見ると俯いている。

恥かしいのだろう。

それに俺は笑いながらスープを皿ごと差し出した。

「・・・お腹が減っているなら、俺の事は気にせずに食べればよかったのに。」

「いらない。」

「そう言わんと、ほらっ。」

「いらない。」

こいつ、意外と頑固だな・・・、なら!

「ほらっ!」

俺はそう言いながらスプーンでスープを掬いニクスの口元に運ぶ。

ニクスは一瞬驚きスプーンと俺を交互に見るが観念したのかスプーンに口を近づけた。

なんだか、ストーの相手をしているみたいだな。

ストーは元気にしているだろうか・・・。

心配しているだろうな。

帰れたら謝らないと・・・。

俺がそんな事を考えていると、ニクスがワタワタし出す。

「どうした?」

「・・・いただきます、していなかった。」

「くくくくっ、なら次から気を付けたらいいよ。」

そして、俺達は奇妙な食事を続けた。

 

次の日の朝

「良し、まずは情報を集めよう。」

俺はククリナイフを腰に巻き付け、外に出ることにした。

外に出てみると本当にここが地球なのかと感じさせる景色が広がっていた。

俺が寝ていた小屋は丘の上に建てられており周りには何もない。

だが、小屋の周りを背が低い草が覆い丘から町に向かって一本の道がある。

そして、町には人の伊吹がしっかりしており青々とした山があり、優しく流れる水があり、空気が美味い。

流れる時間が遅く眩しく、暖かい太陽が照らし出す。

「あっ・・・。」

忘れていた、今の今まで忘れていた。

これが地球なんだ。

これが、本当の世界なんだ。

俺はほんの数年前の景色ですら、遠い過去のように忘れてしまっていた。

「呆けている場合じゃないな・・・。ニクスの事が信じられない訳では無いけれど、今は少しでも何かが欲しい。」

そして、俺は町に行くことにした。

歩く事30分、町は結構賑わっていた。

市場が開かれ海からとれた魚や山菜が並んでいる。

バーがあったり、レストランがあったりしている。

俺はそれらを見ながら町を歩く。

すると、前方から叫び声が聞こえた。

「泥棒―――ッ!!」

人波を掻き分けて来たのは、腕一杯に山菜を抱えた男の子だ。

見た所15歳くらいだろうか。

だが、来ている服は訓令兵のそれで、違和感を醸し出している。

そう言えば、欧州も兵士の数が足りずに徴兵の年齢を下げていたのだったか・・・。

俺は、無性に悲しくなった。

そして、これも何かわけがあるのだろうと泥棒を見逃そうとしたが、あろうことか俺に突っ込んできやがった。

これじゃあ、捕まえるしかないじゃないか・・・。

「はなせ、離せーーーッ!!」

「コラッ!盗みなんてしたらダメじゃないか。」

「うるせぇ、このジジィ離しやがれ!!」

「なっ、俺はまだジジイなんて歳じゃない!」

「ジジイはジジイだ!!いい加減に離しやがれッ!」

そして、この泥棒ガキは俺の息子に右ストレートをくらわしやがった。

「はうぁ!」

その場で跪く俺を泥棒ガキは見向きもしないで去って行った。

俺は1人跪いた状態で呟く。

「やれやれ、これであのガキを逃がす事が出来たし、俺も悪くない。完璧な作戦だ。」

そして、俺が1人ドヤ顔をしていると息を切らしたおばちゃんが走ってきた。

「ぜぇ、やっと、はぁ、捕まえられると、ぜぇ、思ったのに!」

「すみません、俺が気を抜いたばっかりに・・・。」

良し、これでいい・・・。

この流れでは、あんたは別に悪くないよ、的な流れになるはずだ。

「本当にその通りさね!だから、あんたが弁償しな!」

なん・・・だと・・・。

さすがに、この返しは想定外だ。

「で、ですが、俺はお金なんて持っていませんし・・・。」

「なら、その分体で払いな!」

そして、俺は引きずられていった。

「何故だ!」

気が付けば俺はおばちゃんと店番をしていた。

「良いかい?あの子が盗っていった分をきっちり返済するんだよ?」

ふっ、ならば仕方あるまい・・・。

見せてやるさ、元の世界で培った日本式接客術を!!

「あ、いらっしゃいませ~!」

 

もう太陽が沈みかける時間帯、俺は腕に大量の山菜を抱え小屋に向かっていた。

「まさか、あそこまで売れるとはな・・・。恐るべし、日本式接客術!」

そして、欲しい情報も少し手に入った。

ここは、各欧州国家、特にイギリスやグリーンランドに逃げることが叶わなかった人達の最後の楽園つまり、難民達と元々住んでいた人達の折り合いがうまくついていると言う事だ。

だが、実際は戦う必要のなかった人達も兵士にされている。

それなのに、これだけの活気があり町も機能している。

その大きな要因が、この地を守る戦術機部隊の存在。

そして、国連を通して膨大な物資を運んでくるネフレの存在だ。

「たしか、ニンフ連隊だったっけ・・・。彼らがいる限りこの地は安全ね・・・。」

はっきり言って考えが甘すぎる。

だが、そう思わなければやっていけないのも事実。

そして、ネフレの存在。

この時期に最前線の国家の町に物資を大量投入する理由も解る。

だが、この町を見ていると思う過剰ではないかと。

「・・・ネフレはこの土地の治安を出来るだけ守りたい?計画にとって重要な何かがここにはある?」

考えても答え何て出ない。

なら、そんな事より他の事を考えた方がましだ。

俺は今までの考えを頭から追い出し帰路についた。

俺が小屋に戻ると中にはニクスが待っていた。

「・・・おかえり。」

「ただいま、それより見てくれよこの山菜!友達になったおばちゃんが譲ってくれてさ!それというのも・・・。」

俺は今日の出来事をすべてニクスに報告していく。

ニクスはただ、俺の話しを黙って聞いていてくれた。

俺の話が一通り終わるとニクスは何かを考えるように、首を傾げている。

「どうかした?」

「・・・友達とはなに?」

「いきなりやな・・・、う~ん、今の俺らみたいな関係?」

「・・・わからない。」

「まぁ、俺がニクスのこと友達やと思ってるし、ニクスもそう思ってくれたら友達やよ!」

「・・・そう。」

ニクスは数度頷くと微かに笑った。

目元が見えなくて良く解らなかったが、俺は確かにニクスの笑顔にドキリとしていた。

すると、ニクスは立ち上がる。

「もう帰るんか?」

「・・・うん、仕事があるから。」

「なんの仕事してるか聞いていい?」

俺の問いかけにニクスは何も答えない。

「・・・バイバイ。」

俺は、何故だかそれを聞いた時二度とニクスに会えない気がした。

「ニクス、なんかバイバイは嫌ややから、またねに言い直して!」

「・・・バイバイ。」

だが、ニクスは俺の我儘を聞かずに、小屋を出て行った。

 

 

暗い部屋の中には複数の影、その内の1つはニクスの物である。

そして、複数の影の中から1人の男性が一歩前に出る。

「もう、説明の必要は無いと思うから君の意志だけを聞かせてくれ・・・、本当に構わないのだね?」

「・・・はい、博士。」

そして、ニクスは卵型のカプセルにその身を横たえる。

「ねぇ、博士・・・。」

「なんだい?」

「私、友達が出来たよ・・・。」

「ッ・・・、そう、か。なら、そのお友達も守らないとな・・・。」

「うん。」

そして、まるで棺桶のようにカプセルは完全に閉じられてしまった。

 

深夜寝ていると、聞きなれた爆音が響き渡る。

「この噴射音は戦術機、まさかBETA!」

俺は慌てて外に飛び出す。

すると、一機のトムキャットが俺の頭上を飛び去って行った。

そして一瞬だが俺は感じた。

「あのトムキャット、俺を見ていた?」

まぁ、こんな所に人がいれば見もするかもな。

それにしても、避難誘導も行われていない。

BETAが攻めてきた訳ではないのか?

「まぁ、明日ニクスに聞いて見るか。」

そして俺は、再び小屋の中に戻って行った。

 




読んでいただきありがとうございます。
今回の話は難産でした(汗)
ここから、主人公が成長する話を書いて行きたいと考えていきます!
今後ともお付き合い頂けたら幸いです!!
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