Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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約束

俺は知らない場所に立っていた。

そして、なんだか体が軽くどこにでも飛んで行けそうに感じる。

この感覚を俺は知っていた。

「・・・ここは、夢の中?」

だがあの頃とは違い、体の自由がきかない。

そして俺の視界は劇場の幕が上がるように移り変わった。

そこは、どこかの病院だろうか?

だがそれにしては、異常なのが分かった。

ベッドを中心にビニールシートで壁を作られ、さらにその外からシートを被せている。

それは、ベッドに眠る少女を縛る籠にも見え、そして盾にも見えた。

ベッドで眠る少女は人工呼吸器を取り付けられている。

身体中には無数にコードが伸びており、機材にそれは伸びている。

まるで、実験装置だ。

だが、少女の小さな命はこれらの装置により生き永らえていた。

その時、病室に唯一1つしかない扉が開かれる。

「なっ!?」

そこから現れたのは、若い姿をしたまだ青年と呼べるほどの年齢の博士だった。

「・・・パパ?」

「元気そうで良かったよ、ニクス。」

そして博士は、ニクスと呼ばれた少女のすぐそばまで歩み寄る。

そして、お互いに手を伸ばしそして触れ合う。

だが、その間には幾重にも重なるビニールの壁が存在していた。

「パパ?私は、お外にまた行けるかな?」

少女はその虚ろな瞳を博士に向けそう聞いた。

「あぁ、お医者さんも良くなってるって言っていたから、しばらくすれば、また前のようにお外に行けるようになるよ。」

博士の答えに少女は満足そうに笑う。

だが、その笑顔は今にも壊れてしまいそうな程に脆かった。

「・・・うれしぃ。」

少女の絞り出すような声が病室に響く。

「また、来るからね?」

博士はそう言って少女に愛していると言い、病室を出て行く。

だが、俺は見ていた。

博士の掌から、拳を強く握り閉めたために流れ落ちる血を・・・。

 

そして場面が切り替わる。

そこには悲しみが溢れていた。

「10時25分・・・、残念ですが・・・。」

そう医師が言うと、シートが取り除かれていく。

父親が久方ぶりに触れた娘の手は冷たかった。

それを確認したのだろう博士は、泣きじゃくる。

「ニクス、ニクス、ニクス・・・、うわぁああああああああッ!!!!」

そして、医師が1人また1人と病室を退室していき残されたのは、物言わぬ少女と絶望に沈む男が1人・・・。

だが、博士はまだ諦めていなかった。

「・・・私は、パパはね?直ぐにでもニクスの傍に行ってやりたいけれど、少し待って欲しい。もう二度と、ニクスのような子を出さない。こんな悲しみは今日で最後にする。ニクスのような子達をお外で遊ばせてあげれるように、パパは頑張るよ。・・・だから、待っていてくれ。」

そう言って博士は立ち上がった。

その瞳は決意に満ち溢れている。

「こんな悲しみは、これっきりだ・・・。どこかの誰かが言っていたな、これも神の御意志だと・・・。なら、私はその神に反逆しよう。例え生命の神秘に触れ神の怒りを買う事になったとしても、それでも―――、私はッ!!」

 

そして、俺は目を覚ました。

「今のは、いったい?」

そして俺はぼやける目を擦る。

すると、そこには水が付いていた。

「泣いていたのか、俺は・・・?」

頭の中では昨日の事の様に夢の内容が繰り返し流れる。

俺は起こしていた上半身を勢いよくベッドに横たえる。

「・・・くそっ、これじゃあ、あんたを憎むことなんか出来ないじゃないか。」

博士、あんたもただ必死だっただけなんだな。

ただ、死んだ娘のために、自らに降りかかった不幸を世界から無くすために。

「アナタは・・・。」

そして、俺は思い出す。

「ニクスッ!」

だが、俺の呼び声に答えある者は誰もいない。

それだけじゃない、何かがおかしかった。

「音がしない・・・?」

鳥の声も、風の音も、なにもしていない。

俺は既視感を覚えながらも素早く充電が切れただの全身タイツと化した衛士強化装備服を着その上から服を着込む。

そして、すべての準備を済ませてから外に飛び出した。

そして、俺の目の前に姿を現したのは死んだ世界だった。

丘からはいつもの風景が流れる。

だが、死んでいた。

俺にはそう感じられた。

「この感覚、光州の時と同じだ・・・。」

そう、まさに俺の人生が根底から覆されたあの時と同じ―――。

「まさか、BETAッ!!」

そして俺は町に向け駆けだした。

町に到着すると、昨日の事が嘘のように皆が慌てていた。

「おばちゃん!」

「和真君!良いかい、落ち着いて聞きなさい。今さっき緊急避難警報が流れたさね、町の人間は女子供から、船に乗って逃げることになっているわ。だから、早くニクスちゃんに知らせて上げなさい。」

だが、慌てながらも冷静に情報を教えてくれたおばちゃん以上に俺は落ち着いていた。

「分かった、ニクスには俺から知らせる。おばちゃん達は早く船に乗って避難の準備をしておいて、・・・誰かいない人がいるからって町に戻っちゃ駄目だよ?まずは、自分の安全を確保してからすべては始まるんだ。いいね?」

そして、俺は走り出した。

向かう先は小屋だ。

博士から聞かされた情報が真実なら、ニクスはおそらく戦場にいる。

そして、その通達があったのは昨日・・・。

俺が浮かれている間に、ニクスは戦場に行く事を知らされていた。

俺の脳裏に泣きながら謝るニクスの顔が蘇る。

「・・・ちくしょう。」

そして小屋に到着した俺の目に飛び込んで来たのは、信じられない光景。

「トム・キャット?」

だが、トム・キャットにしては少し異色を放っている。

肩部がスラスター化され、腕部にもカーボンブレードが取り付けられていた。

だが、問題はそんなところでは無い。

小屋のすぐそばに胸部のコックピットブロックを地面からギリギリ守る様に墜落していたトム・キャットは、至所から煙を吹き出し、そして傷ついていた。

その傷跡は目に焼き付いている。

BETAにつけられた傷跡だ。

俺は、開け放たれたコックピットブロックの傍に走り寄る。

そして、中にいるであろう衛士を助けようとした。

だが、そこには誰もいなかった。

嫌、なにか卵型の大きなカプセルが横たえられているだけであり、操縦席にはそれしかなかった。

「なんだ、これは・・・?」

突撃級に突進されたのか歪んだコックピットによりカプセル自体も歪んでいた。

すると、突然それは開き出す。

淡い光を漏らしながらゆっくりと開いて行くカプセル。

俺は何が合っても良いように、筋肉をすべて立ち上がらせる。

すると、生まれ出たのは衛士強化装備を身に纏うニクスの姿だった。

「ニクスッ!!」

ニクスの頭部にはコードのようなモノが痛々しく刺さっている。

「ぅっ、あ・・・、和君?」

そう呼ぶニクスは、手を伸ばし俺を探す。

俺はその手を取り握り閉める。

「ニクス、お前目がッ。」

ニクスの瞳は完全に光を失ってしまっていた。

「す、こし・・・、ドジしちゃった。」

そう言って力無く笑うニクスの姿を俺は直視できないでいた。

「クソッ!なにがどうなってんだよ!?なんで、なんでニクスがこんなッ!」

俺の中では、昨日までの幸せな色が塗り替えられていく。

そして、ニクスの痛々しく無理に笑う顔を見たくなかった俺が視線を変えると見つけてしまった。

「な、なんで・・・?」

それは、緑色に輝く結晶。

太陽の光を吸収し輝くそれは、ニクスの命ですら燃やしているように思えた。

「ニクス、お前も俺と同じ力を・・・。」

俺がそう問うとニクスは首を振るう。

「わた、しは・・・、和君の、ような、力は・・・、ハァ、使えないよ。これは、時間が来ただけ・・・。」

そう言うニクスは、苦痛に顔を歪め瞳からは涙を流し、汗が流れ口から洩れる息がか細くなっていく。

俺の中で様々な感情の波が押し寄せる。

だが、1つだけ解っている事があった。

―――このままだと、ニクスを失ってしまう。

俺は自分の中の動揺をニクスに悟らせないために、冷静を装う。

「・・・ニクス、ここは危険だ。頭についているプラグはどうやって外せばいい?」

俺がそう問うと、プラグは何もせずに抜け落ちる。

ニクスの意志で取り外しが出来るようだ。

それを見た俺は、出来るだけ優しくニクスを抱き上げる。

そして、戦術機から十分に距離を取った所でニクスを横にした。

その間にもニクスの体からは、結晶が際限なく生まれて行く。

「ニクス、薬を飲んでくれ、これを飲めば大丈夫なはずだから・・・。」

俺はそう言ってニクスの頭を抱え楽な体制にし、薬を取り出し飲ませる。

「良し、良い子だ。」

薬を飲み込んだニクスの頭を優しく撫でる。

これで一先ず安心だろう。

―――そう、思っていた。

だが、結晶は自らが生まれ出でるために母体のニクスの生命の泉を吸収するのを止めはしなかった。

「そんな・・・、なんで・・・。」

その瞬間に、俺の心の光は闇に覆われてしまう。

「しかた、無いよ・・・。この、薬は、私様には作られていないのだから・・・。」

「でも、それでもッ!同じナノマシンなら、これで抑えられる筈なんだッ!」

俺はそう叫ぶ。

認められない、認めてたまるかッ!

その思いが俺を支配している。

そして、俺はさらに薬を取り出そうとするがニクスにそれを止められてしまう。

「ありがとう、大分楽になったから、大丈夫だよ?」

嘘だ、だってお前はそんなにも辛そうな顔をしているじゃないか・・・。

今も、痛みのせいで泣いているじゃないか・・・。

「でも、良かった・・・。間に合って・・・。もう無理だと思ったから。」

ニクスはそう言いながら手さぐりで腕を動かし、震える両手で俺の頬を包む。

「あぁ、間に合ったさ。だから、博士の居場所か、施設の場所を教えてくれ、そこならニクスを直す事も可能なはずやからな。」

俺はそう言って汗で額にへばり付いている髪を優しく整える。

博士にニクスを見せる事が出来れば、どうにかなるかもしれない。

俺はそこにすべてを賭けていた。

それと、同時に何も良い案が浮かばない自分の脳ミソが憎かった。

「ううん、もう間に合わないよ・・・。」

だが、ニクスから突き付けられたものは俺がもっとも聞きたくない事だった。

「・・・いい加減にしやんと、怒るぞ?冗談に付き合ってられる程に今の俺には余裕がないんや。やから、早く教えてくれ。そんで、そこで早く治療してもらうッ!」

だが、俺の要求はニクスのキスにより遮られてしまった。

こんな時に何をしているッ!

俺はそう言い、このままでは話が先に進まないため他の可能性を模索しようとし、逃れようとするが、ニクスがそれを許さない。

俺の頬に添えていた手に力を籠め顔を固定する。

そして、ニクスの舌が俺の口内に無理矢理入りこんできた。

唾液と唾液が交じり合う音が鳴る。

ニクスの苦しげな息は、いつしか喜びに変わっていた。

そして、俺もそれを受け入れた。

この時、俺は予見していたのだ。

―――これが、最後かもしれないと。

「チュっ、はぁ、はぁ、はぁ・・・。えへへへ♪」

「ニクス、お前は・・・。」

「ねぇ、和君・・・。私の話を聞いてくれる?」

あぁ、そうか・・・。

もう、間に合わないんだな。

「なんや?」

「私ね、本当は和君が好きな私じゃないんだよ?」

ニクスは泣きながら笑い、そう言った。

「なにを、言って・・・。」

「私達はね?時間が決まっているの、体内にナノマシンを入れられてから時間が立つと体が結晶化してしまう。だからね、その前にお仕事に行くんだ。」

その事実は俺を驚愕させた。

「・・・だから、私は和君と出会ってから三人目のニクスなの。」

だから、あの時ニクスは俺の事を忘れているような素振りを・・・。

「だからね、和君が好きになったのは私じゃないの・・・。」

ニクスの表情がさらに苦痛に歪む。

俺は、先程からのニクスの表情や涙は痛みのせいだと思い込んでいた。

だが、違っていた。

ニクスは、懺悔していたのだ。

その罪に涙を流し心を痛めていた。

「でも、それでも、私は好きになってしまった。記憶が上書きされたからだけじゃないッ!私は、私達は、和君を大好きだったッ!」

ニクスが叫ぶ。

その叫びには、苦しみしか乗せられていない。

「ひっく・・・、ダメなのに、うぅ、好きになっちゃいけないのにッ・・・。」

気が付けば俺はニクスを抱きしめていた。

「馬鹿野郎・・・、好きになっちゃいけないって、誰に言われたんだよ。」

何故だろうか、俺の瞳からも涙が流れ落ちる。

もっと、しっかりニクスを見ていたいはずなのに、感情をコントロールできない。

「でも・・・。」

「でもじゃねぇッ!!俺は、ニクスだから好きになったッ!この感情は誰かの物じゃねぇッ!俺自身の物だッ!俺は・・・、俺は、ニクスだから好きになったんだッ。だから、お前の感情も誰の物でもない、お前自身の物だ。・・・そうだろ?」

ちくしょう、うまく言葉にできねぇ。

それに泣いてんじゃねぇよ。

ニクスにカッコ悪い所を見せる訳にはいかないんだよ。

俺はそれらを知られたくないのもあり、無理に気取る。

「そ、それにさ・・・、俺は三人もの女の子に好かれているって事だろ?や、やべぇな、モテモテじゃないか?」

ニクスの体はもう半分近く結晶化していた。

「だ、だからさ・・・。おま、お前は・・・、ニクスは誇って良いんだ。俺みたいな、モテモテの男を惚れさせたのだから。」

すると、ニクスはポカンとし、そして笑い出した。

「くすくすくす・・・。そうだね、私はそんな和君が大好きになったのだから・・・。ねぇ、和君?」

「うん?」

「私はね、この町が好き。」

「あぁ・・・。」

「空も海も山も風も人も、大好き・・・。」

俺達の間に風が流れる。

俺の膝の上に頭を置くニクスは穏やかな顔をしていた。

「だから、守りたい・・・。ここに広がる私のすべてを・・・。」

「そうだな。」

「でもね?私も女の子なんだね。一番大好きで、何よりも守りたいのは、和君になっちゃった。」

「・・・あぁ。」

喉が震える。

嗚咽を出さないために、堪えようとするがうまく出来ない。

「泣いているの?」

「馬鹿、泣いてねぇよ。」

「ウソだぁ~。泣いているでしょ?」

「なんでそんな事が解るんだよ?」

「解るよ、だって和君の事だもの・・・。」

その言葉に俺も笑う。

「なら仕方ないな、白状するよ。俺は泣き虫で寂しがり屋なんやで?」

「・・・やっぱり。」

ニクスの声に力が入らない。

いや、抜け落ちて行く。

もうニクスの体の殆どは結晶化していた。

「和君、約束して欲しいの?」

「なんだ?なんでも言ってくれ、ニクスとの約束は絶対にやぶらねぇからよ。」

「・・・約束だよ?あのね、幸せになるって約束して欲しいの。」

「・・・なんだよ、それ?」

「和君は、幸せになる権利があるんだよ?だから、好きな女の子を作って、その子と幸せになってほしいの。」

「・・・さすがに、その約束は出きひんわ。」

「約束、絶対にやぶらないんだよね?なんでも言ってくれって言ったよね?」

ニクスの意志の固さが俺にも伝わってくる。

「・・・努力するよ。」

「じゃあ、見張っていなくちゃね。」

ニクスはそう言うと、俺の首元に噛みついた。

おそらくナノマシンを俺の体内に入れると見せたかったのだろう。

噛みつくにしては、優しすぎるそれは俺の体では無く、心に刻み込まれた。

ニクスの思いが、俺の心に深く深く刻まれていく。

「約束、やぶっちゃ嫌だからね?」

「・・・。」

「返事。」

「・・・はい。」

「ふふ、よろしい。」

そして、また膝の上に頭を置いたニクスは、優しい母親のように笑う。

「ねぇ、和君・・・。キスして?」

「いくらでもしてやるよ。」

そして、俺達は唇を重ねた。

俺の冷たい涙は、ニクスの涙と重なり暖かくなる。

それが大地にこぼれ、俺達の思いを刻み込む。

「かず、君。ごめん、なさい。あんな、約束の後に卑怯だと思うけれど言わせて?」

「あぁ・・・。」

くそっ、泣くな。

泣くんじゃねぇ。

ニクスの言葉だ。

俺が聞いてやらなくちゃいけないんだ。

「・・・私は、あなたを愛しています。心の底から、愛しています。」

「俺も、愛している。今までニクスほどに惚れた良い女なんていなかった。」

「ふふ、うれしいな・・・。」

そして、ニクスは結晶に包まれ砕け散った。

それは俺の腕からこぼれ、風に流される。

緑に輝く風は俺の周りを飛び包み込む。

―――「ずっと、一緒だよ。」

俺の耳に、そう届いた。

俺は、自らの手に残った僅かなニクスの欠片を抱きしめる。

「あぁ、ずっと、一緒だ。」

そして、爆撃機が頭上を飛んで行く。

レーザーヤークトが成功したのだろう。

これで、ニクスが守りたかったこの町は大丈夫だ。

 

その時、後方から音がした。

それは、手を鳴らす音だった。

「いやはや、素晴らしい。兵器に感情を持たせるとこのような悲劇を見ることができるのですね?」

「今、なんて言った?」

俺は振り向きながらそう問う。

瞳には怒りの色しか見えない。

「おぉ~、怖い。兵器の事を兵器と言ってなにが悪いのですか?人間である私にはわかりませんね。あぁ~、なるほど、あなたも兵器でしたか。これは、失礼しました。」

「取り消せ・・・。」

「はい?」

「俺の事は何と言っても構わない、だがニクスを侮辱するなッ!ニクスは兵器なんかじゃねぇッ!アイツは人間だ、心があるんだよッ!」

「こころ・・・?アハハハハハハ、ナイスジョーク!そんなモノあるわけないでしょ?何を言っているのですか?そもそも、彼女たちの出自を知っているのですか?それを知ってもなおあなたは、あれが人間であると?」

その瞬間に俺の目の前は赤くなった。

怒りで血管が千切れてしまっていた。

「てめぇぇえええええええッ!!」

そして、殴りかかろうとした俺に一発の銃弾が撃ち込まれる。

その瞬間に全身の力が抜けて行く。

これは、昨日と同じ。

「それは、あなた達兵器の首輪として開発された特別製ですよ。さぁ、眠りなさい。」

だが、和真は止まらなかった。

倒れかけた体を、ギリギリの所で足を出すことで支える。

そして、一歩前に進み出た。

「な、何故?」

そして、和真が殴りかかろうとした瞬間には和真の体は蜂の巣になっていた。

「・・・ちく、しょう。」

 

忌々しげに和真を見下ろす男。

彼は和真に唾を吐きかける。

「・・・大丈夫なのだろうな?」

「はい、問題ないかと。」

男は、スポンサーから送られた特殊部隊の隊長に確認をとる。

「これを見ても、そう思うのかい君は?」

男が指差す所は、先程蜂の巣に変えたゴミ。

だが、そのゴミは人の形を取り戻していく。

「これは・・・。」

「だから、兵器だといったんだ。気を付けて運んでくれよ?大切なモルモットなのだから・・・。それと、迎えはいつ来ると?」

「・・・明日明朝には。」

「わかった。」

そして、和真はわらわらと蟻のように出てくる兵士にニクスがいたカプセル内のデータと共に連れ去られていった。

雨が降る。

まるで、今この場で起こったことを消し去る様に・・・。

だが、その雨には確かに悲しみの色が混ざり込んでいた。

 

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