Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
ジルがいる研究室内は、蜘蛛の子を散らしたように慌てていた。
「と、特殊部隊B班からの更新途絶ッ!C班も殲滅された模様です!」
「クソっ、直ちにD班を呼び戻せ!あなた方も、早くしてくれ!」
特殊部隊隊長が焦りを露わに叫ぶ。
ジルは理解出来ていなかった。
今自分たちがどのような状況に置かれているのかを。
だが、乾ききった口で部下たちに指示を出していく。
「す、すぐにデータを改修しろ!1分で用意出来る物だけで良い!」
「で、ですが、解除コードがなければ・・・。」
「そんな物は、後でどうにでもなる!急げッ!」
「ジ、ジルッ!」
「今度はなんだ!?」
「全システムが、乗っ取られていきます!こちらからのアクセスを受け付けません!!」
部下の1人がそう叫ぶとすべてのシステムが強制ダウンされていく。
「な、なんだこれはッ!」
だが、それと同時に扉が勝手に開かれていく。
そして始まる銃撃戦。
室内には、煙幕が撒かれ何も見えない。
ジルは恐怖の余り、その場に縮こまってしまう。
震える体を抱きしめジルは思う。
何故だ!?
何故、このタイミングで来た?
ここまで来るのに、まだ時間が掛かる筈だ!
後少し、後少しだったのに!
「ガぁ―――ッ!」
発砲音が無くなった瞬間にジルは地面に押し付けられた。
「全エリアの制圧完了です。―――博士。」
「あぁ、すまないな。君達の手を煩わせてしまった。」
「いえ、我々はこのような時のために存在しているのです。御気になさらず・・・。」
ネフレ特殊部隊に押さえつけられたジルが、怒りを乗せて博士に問いかけた。
「何故だ!?何故解らない!人類はこのまま進めば、滅びを迎えてしまう!時間が無いんだ!我々の技術を外に流し、人類の力の底上げをしなければ人類は後10年もたないかもしれないのだぞッ!」
その叫びは、博士の心を震わせる。
皆がそう思っていてもおかしくなく、博士自信がそう思っていた。
だが・・・。
「ジル、人類は10年後の世界でもバカを行っているのだよ。」
博士の発言にジルの瞳が見開かれる。
「・・・何故そのような事がわかる?博士、妄想はやめて頂きたい。」
ジルには想像出来なかった。
10年後の世界で、人類にそのような馬鹿をしていられるほどの余裕があるとは思えなかった。
「妄想では無い、そしてその証拠が彼だ。」
そう言って博士が、和真が写るモニターを指差すと同時に産声が響いた。
「もう嫌だ、嫌だ、嫌だ・・・。」
そう言って泣く俺を、ノイズで顔を隠された化け物が抱きしめる。
何かを言っているが何を言っているのかすら解らない。
すべてが雑音に消し去られていく。
すると、化け物が俺の頬を優しく包み込み持ち上げ額を合わせる。
暖かい・・・。
俺は、化け物相手にそう思ってしまった。
そして、俺はこの温かみに対し懐かしいと感じた。
すると、ノイズの化け物は額を離し俺の後方を指差す。
そこには、向日葵の絨毯が広がるだけ。
だが、俺にはそこに、誰かがいる気がした。
俺は頷くと、何故だか理解出来ないが二体の化け物に対し、いってきますと言った。
すると、その二人は微かに笑いながら、いってらっしゃいと言ってくれた気がした。
そして、俺が一歩踏み出すと景色が変わる。
そこは、あの崖だった。
夕陽に照らされ、潮の香りがし、海を見守る木が優しく風を感じさせる。
そして、木の影から1人の女の子が姿を現した。
俺はそれを見た瞬間に走り出す。
ただ我武者羅に走る。
涎が垂れようが叫び、涙で前が見えずとも走り、そして抱きしめた。
「ニクスッ、ニクス、ニクス・・・。」
「和君・・・。」
俺はニクスの温もりを体で味わいながら、抱きしめ続けた。
すると、ニクスは泣きじゃくる俺を優しく抱きしめ、そして頭を撫でてくれる。
あぁ、ニクスだ。
もう二度と会えないと思っていたニクスだ。
そして、俺は抱きしめるのを止めニクスの顔を正面から見、そしてキスをした。
「ニクス、俺は・・・。」
「和君、大丈夫だよ。」
ニクスはそう言って自分の髪留めを取り俺に手渡した。
「私は、私達は、いつも一緒にいるからね?そう言ったでしょ?」
そして、ニクスは太陽すら包み込むような笑顔を見せた。
「・・・自分を信じて。」
ニクスがそう言った瞬間に世界が砕ける。
まるで、ガラス細工を叩きつけたようにひび割れ砕け散る。
そして、ニクスも俺も砕け散った。
何も無い世界で、1人思う。
何も無くなった世界で、今まで何をしていたのかもわからない、その思いが俺を孤独にする。
だが、俺の耳には届いていた。
誰かの優しい声が確かに残っていた。
「自分を信じて―――。」
その瞬間、世界が色を取り戻す。
そして、今までの出来事が映像として俺の脳内から溢れ出る。
溢れ出た映像は、逆再生された映画のように俺に過去を見せつける。
思い出せと、ここで終わるなと、1人じゃないと皆が俺に言ってくる。
次の瞬間には、俺は様々な思い出の波に呑みこまれた。
「あぁあああああああああああああああ!!」
強引に和真に繋がれていたパイプが外されていく。
そこから漏れ出た緑色に輝く液体は即座に固まり結晶と化す。
そして、結晶が織りなす城の中から王自らが這い出てきた。
「ふざけるなよ、クソっ、ふざけてんじゃねぇ!人の中を覗いてんじゃねぇ!無くさねぇんだよ!無くしたくないんだよ!皆にその汚い手で触れんじゃねぇよ!そこにしかいないんだ!思いでからすら、失う訳にはいかねぇんだよッ!」
カプセルから這い出た和真は、震える体を立ち上がらせる。
そして、いつのまにか握られていた結晶で出来ていた髪飾りを握り閉め、まるで誰が見ているか解っているかのように、監視カメラに向かい指差した。
「待ってろよクソ野郎!泣いて謝ろうともテメェだけは、ぶん殴る!」
「その必要はないよ。」
その声は良く知る声だった。
俺は驚きながら、そちらを見る。
そこには、一つしかない扉から数人の護衛をつけたレオがいた。
「やぁ、君が噂の人物だね?初めまして、は可笑しいか・・・。久しぶりとでも言えば良いのかな?五六和真君。」
「レ・・・オ・・・?」
「あぁ、私はレオ・ネフレだ。それよりも、その必要が無いと言ったね?何故ならジルは、ここに連れてきているからさ。」
すると、ニクスを馬鹿にした男、ジルが俺の前に放り出された。
「さぁ、好きにすると良い。」
「あぁ、好きにさせて貰う・・・。」
そして俺は歩み寄る。
「ひっ、あっ・・・。」
ジルは俺を見た瞬間に脅え這いずり逃げようとする。
そんなジルの目の前に俺は立ち、拳を振り上げた。
「ヒッ!」
ジルが目を瞑る。
俺が殴ればどうなるのか理解しているのだろう。
だが、俺は拳を振り上げ殴りつけた。
ゴンッ!
鈍い音が響く。
だが、ジルには特に変わったところは無かった。
1つ違う点があるとすれば、凄く痛そうにしている点だけだ。
それもその筈だ。
拳骨をしたのだから。
「謝れ。」
俺は、しゃがみ込みジルの目の前に髪飾りを見せる。
「ニクスに謝れ。」
「ヒッ、ご、ごめんなさい・・・。」
「よし、分かった。ニクスも許してくれるはずだ。」
俺はそう言って立ち上がる。
すると、レオが驚いた顔をしていた。
「それでいいのかい?」
俺は視線をレオに向ける。
「いや、グチャグチャになるまで殴るのかと思っていたからね?君は、彼に蜂の巣にされたのだよ?」
それにたいし俺は笑いながら答えた。
「なら、問題ないな。俺は生きているし、記憶もある。失ったモノは、コイツ1人の責任ではない。・・・コイツを殺したりしても誰も喜ばへんからな。」
すると、今度は足元から声が聞こえた。
「な、何故だ?何故殺さない・・・。私はッ!」
それに対し、俺は溜息を付きながら答えた。
「1つ言うとくぞ?俺は、お前を殺すことで多数の人が救えるなら、迷わず殺してる。でもな、今回は違うやろ?」
俺はそう言いながら、レオの方を見た。
「データは流れていないし、悪用されたりしない。他のニクス達も、保護している。そうやんな、レオ?」
それにたいし、レオは満足したように頷き答えた。
「あぁ、その通りだ。もし、そうだと思われていたなら心外だな。」
そして、俺は再びジルに視線を移す。
「そう言う事や、お前の計画は失敗した言う事や。・・・それより、俺はなんでネフレにおる人間がこんな事をしたか、そっちの方が気になる。教えてくれへんか?」
「わ、私が嘘を言うかもしれないのだぞ?」
ジルも俺が何故このような事を聞いたのか理解しているのだろう。
うまく行く確率なんて限りなくゼロだが、俺は少しでもジルの印象をよくしようとそう切り出した。
建前はそんな所で、本音を言えば、単純に気になったからだ。
「その心配は無い。」
俺はそう言うと、ジルの瞳と視線を合わせる。
「俺の目を見ろ・・・。」
そして、俺は久しぶりの催眠術を使用した。
ジルの口から漏れ出た言葉、現代に生きる人間ならば当たり前に持っている感情だった。
そして、それを聞いた俺は笑いながらジルに言った。
「10年後も人類は生きてるよ。そんで、馬鹿みたいな策略とか陰謀とか繰り返しとる。やから、直ぐに人類が根絶やしにされるなんて事は無いから安心し。・・・証拠は俺自身や!」
俺がそう言うと、ジルは瞳に涙をためる。
「良かった・・・、良かった。」
すると、ジルは部屋から連れ出されていった。
「と、まぁ、こんな動機やった訳やけれど・・・。どうするよ?」
「そうだね、彼は有能な人材だったから惜しいな。彼の今後についてはこちらに任せて貰う。」
「・・・分かった。」
すると、レオは視線を鋭くし俺を見る。
「さて、和真君。教えて貰えるのかい?」
それに対し、俺も視線をするどくし答えた。
「取引をしようやないか?」
俺はあの後、施設から移動し博士と合流した。
その時に、押収されていた俺の装備一式を返して貰った。
そして、俺は今、第二町社長室にいる。
「それで、取引と言うのは?」
俺はそう言われヘルメットから取り出したデータチップを見せる。
「これは、未来のレオから渡された物や。おそらく、今のレオが困っていることのデータがこんなかに入ってる。」
「・・・それで?」
「これを渡す代わりに約束してほしい。」
「・・・なにを?」
「まず、ニクス達・・・、彼女達の自由を!すべての子達に、自分で好きな人生を歩めるようにしてほしい。ナノマシンの研究は俺のデータを使えば良い、たんまりとあるやろ?」
「・・・約束しよう。」
「先に言う解くけど、この約束やぶるなよ?俺には確かめる術があることをさっきも見たやろ?」
「あぁ、解っている。」
「次に、今から俺が知る限りでの未来の情報を教える。・・・出来る限りで良い、未来を変えて欲しい。」
「あぁ・・・。」
そして、俺は俺が経験してきたこと、そして情報をレオに伝えた。
「君の情報は無駄にはしないと、誓うよ。」
「それを聞いて安心した。」
俺はそう言ってレオにデータチップを手渡した。
「君は、この中身について知っているのかい?」
「知らん、けどだいたい想像出来てる。」
俺はレオにそう言うと、部屋を退出しよとする。
「どこに行くんだい?」
「彼女達の様子を見に行こうと思ってな。・・・もう時間が無いみたいやから。」
俺はそう言って左手を見せる。
俺の左手は、少し透き通っていた。
「・・・そうかい、君とはもう少し話したかったのだけれど残念だね。」
「また、すぐに嫌でも話せるさ。・・・じゃあな、レオ。」
俺はそう言って社長室を後にした。
廊下には博士が立っていた、俺が何をしたいのか解ってくれていたみたいだ。
そして、つれてこられたのは大きな公園。
緑溢れ、風が通り過ぎ、様々な人の憩いの場となっている。
その中には、銀髪を揺らし楽しげに走り回る子達の姿も見えた。
「博士、彼女達のことよろしくお願いします。」
「解っている。」
すると、俺はふと見つける。
1人で木陰に座り遊ぶ人達を見つめている子を。
「あの子は?」
「彼女は、唯一の第六世代の子だ。彼女はESPの力が強すぎてね、あぁやって孤立してしまうのだよ。」
俺はそれを聞き、博士に別れを告げ歩み出す。
「こんな所でなにをしているのかな?」
俺がそう問うと、その子は俺に視線を写した。
そして、その視線を見た瞬間に理解した。
「ストー・・・。」
「私の事を知ってるの・・・?そっか・・・。」
そして、ストーはまた俯いてしまった。
「なぁ、俺と遊ばん?」
だが、ストーは反応を返さない。
俺が困っていると、今度はストーから話掛けて来た。
「ねぇ、なにをしたいの?」
その問いは一体なにを差しているのかいるのか解らなかった俺は、目標を伝える。
「そうやなぁ~、俺は皆を笑顔にしたい!やから、まずは君からや!」
俺はそう言って、ストーの手を取り走り出す。
「そんな暗い所におらんと、こっちの明るい所の方がえぇやろ?」
ストーは困った顔をしていたが、俺が柄にも無くはしゃぐ姿を見て笑い、共に遊ぶようになった。
そして、遊んでいる内に俺は気が付いた。
もう時間が無い事に―――。
だから俺は、ストーの頭を優しく撫でる。
「ごめんな、俺もういかなあかんわ。」
すると、ストーは目に見えて悲しそうにする。
俺はそれに笑いながら、クシャクシャと乱暴に頭を撫でる。
「大丈夫、ストーは良い子やからな。俺以外の子とも遊べるよ。」
俺はそう言って、ポケットに入っていた髪飾りを取り出す。
それは、ニクスに渡した髪飾りがナノマシンに触れることで結晶化した物だった。
俺はそれをストーの髪につけてやろうとする。
すると、それはストーの頭上で砕け散る。
始め驚き悲しんだ俺だったが、その結晶の粉がストーに降り注ぐのを見て思った。
ニクスがストーに勇気を上げているのだと。
そして、俺の事を不思議そうに見ていたストーに俺は笑い、ストーの後方を指差す。
そこには、ストーの姉妹達が遊んでいた。
そして、ストーがそちらに振り向くと同時に俺はもう一度、ストーの頭に手を添える。
「・・・またな。」
「・・・またな。」
私はその声を聞き、振り返るとそこには誰もいなかった。
私の事を知っていた不思議な人、その人の考えが解らなくて中を見た。
すると、楽しそうに不思議な人と遊ぶ私と似た人が見えた。
そしたら、突然私は手を引かれ遊ぶことになった。
しかも、殆ど私は置いてけぼりであの人は1人で遊んでいた。
それが悔しかった私は、追いかけるように共に遊んだ。
始めはつまらなかった。
でも、一緒に遊んで行く中でしだいに楽しくなっていった。
あの人は私に言った。
暗い所よりも明るい所の方が良いと。
私は、あの人に光を見せてもらった。
あの人が輝いて見えた。
別れは寂しい。
突然現れて、突然消える。
本当に不思議な人だ。
でもあの人は、またなと言ってくれた。
なら、また会いに来てくれるのだろう。
そう思うと、自然と口がニヤける。
それに、不思議と勇気が湧いてくる。
今なら出来るかもしれない。
そして、私は勇気を出して声を掛けた。
「あの、一緒に遊んでも良いですか?」
長くなってしまいましたが、これで過去編は終わりになります。
ここまでこの話を読んでいただき、ありがとうございます!
これからも、お付き合い頂ければ幸いです。