Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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始めようか

けたたましく鳴る音を聞きながら、俺はその時を待っていた。

「大型ブースター所定位置に着きました。ヴァローナ取り付け作業を開始します!」

ケアンズ基地司令部からの指示に従い、赤く塗装されたヴァローナが大型ブースターに飲み込まれていく。

「やりたいことをやる・・・、自分を信じる。」

過去の世界での言葉を思い返す。

「あぁ、信じるよ・・・、君が信じてくれた俺を。」

操縦桿を握り閉め、遥か遠く大海原の先を睨み付ける。

そして俺は目蓋を閉じ数刻前の事を思い出す。

 

 

俺が目蓋を開くと、すでに別の場所に移動していた。

そこは、暗く広大な場所であり明かりは後方から射している。

振り返りそれを確認すると、その明かりの正体はGコアだった。

「・・・帰って来たのか?」

すると、俺の後頭部に声がかけられた。

「おかえり、和真君。」

それに俺は、苦笑いしながら答えた。

「ただいまレオ・・・。ほんまに律儀やな?」

「仲間が相手なら当然だろ?」

「たしかに・・・。」

「それでは始めようか・・・。」

真剣な顔つきでそう言うレオに俺も真剣な顔つきになる。

「確認させて貰う、レオ、俺の目を見ろ・・・。」

そして、俺はレオに催眠術を掛け約束を守っているかを確かめた。

その結果―――。

「・・・レオ、ありがとうございますッ!!」

俺はレオに深く頭を下げた。

レオは約束を破っていなかった。

俺はそのことに深く感謝した。

それに対しレオも辛そうな顔をする。

「私も今の君になら話せる、嫌話さなければいけないことがある。」

俺はなにを言われても大丈夫なように気持ちを切り替えた。

「・・・君を過去に飛ばすために、君に関係する未来を私は変えていない。

そして、和真君も気付いていると思うが、リリアとザウルもこの件は知っていた。」

「あぁ、だいたい予想は出来てた・・・。」

俺の中に2人の情報が入っているのが何よりの証拠だ。

京都で俺の中に無理矢理ナノマシンを入れたのは、恐らくリリアとキスをした時で間違いないだろう。

「だが、信じて欲しい。私は出来うる限りで未来を変えようとした。二人の友人を死なせないために努力した。

・・・だが、未来は変わらなかった、むしろ悪い方向に行ってしまった。」

「・・・リリアとザウルは自分が死ぬのが解っていて、俺を?」

「あぁ、君を育てた・・・。

ザウルからタバコを受け取っていただろう?あれは、体をナノマシンに馴染ませるための物だ。」

「そっか・・・。」

俺は心の中で2人に感謝した。

本当に、二人とも必死やってんな・・・。

「・・・私を恨まないのか?」

それに対し俺は首を振った。

「恨みなんかしやんよ。

俺は、ザウルやリリアの覚悟を知っただけや・・・。

あの人達は本当の英雄やった。

それに、今のレオを見ればどれだけ二人の事を大切にしていたか解るからな。」

レオの瞳からは涙が流れていた。

本人も気が付いていなかったのだろう。

俺がそう指摘すると、慌てて涙を拭いさる。

「俺は俺を信じた人達を信じる。

やから、俺はレオを信じる。

むしろ、聞きたい。

今の俺は、過去に飛んでデータを渡すと言うことが終わった、ただの衛士になった・・・。

そんな俺をまた前のように使ってくれるんか?」

俺の問いかけにレオを語気を荒げた。

「当たり前だ!君が私を信じてくれるのなら、私はそれに最大限応えよう!」

そしてレオは、逆に俺に問いかける。

「・・・だから私は、もう一度和真に問おう。

君はその手を赤く染めて外道と悪魔と呼ばれようとも。

・・・人類のために働く気はあるかい?」

その問いに俺は、あの頃と同じように答えた。

「あります!この身はすでに外道ですが、人を救えるなら悪魔にだってなってみせます!」

そして俺はレオの前で跪いた。

これは契約だ。

俺が俺の意志でレオの玩具となり、その手助けをする。

ザウルがそうであったように、リリアがそうであったように―――。

俺もこの男を信じ自らの意志で進むと。

 

その後、俺は南極基地で精密検査をされどこにも異常がないか確認された後、

ケアンズ基地に向かいその足で格納庫へとレオに連れて行かれた。

「和坊・・・、テメェ久しぶりじゃねぇかッ!!」

「兄貴痛いよっ!」

格納庫に到着した俺を見つけた兄貴は一目散に走り寄り、俺の首をその太腿のようにゴツイ腕で抱きしめる。

正直、首が閉まって苦しい・・・。

「機付長、そのあたりで勘弁してやってくれないかい?」

「オッと、そうだな。和坊、ついてきてくれ!」

兄貴とレオの背中を追いかけ格納庫の奥へと進んでいく。

格納庫の床を踏みしめると同時に懐かしさが全身を襲ってくる。

怒声にも似た声を発する整備兵の皆、格納庫の床が鳴らす靴の音、装甲の色付けを行うためのシンナーの匂い、そして気分が悪くなるほどの油の匂い。

懐かしい。

普段なら気分を害するモノが、今では俺の心を躍らせる。

その感覚に酔っていると、目の前に戦術機が姿を現した。

「ヴァローナ・・・。」

そこには、赤く塗装されたヴァローナが威風堂々と立っていた。

「ギャンブル中隊用のヴェルターが全機配備出来たのでね。

ヴァローナを表に出す事になった。

このヴァローナはザウルが乗っていた戦術機だ。

もちろん、ステルス性は皆無だからね?」

俺は生まれ変わったヴァローナを見上げる。

今目の前にいるヴァローナは、俺が知る物とは少し変わっていた。

肩部装甲のスラスターが小型化され、その変わりにガンマウントを搭載されている。

背部スラスターは取り外され、ブレードマウントに変更されており、跳躍ユニットも別物になっている。

ラプターと同じ物だろうか?

そして、射撃兵装がすべて見たことが無い物に変更されていた。

「射撃兵装に関しては、リリアの発案を元に開発された物になっている。

そして、それを扱えるように、ヴァローナも改造されている。

・・・つまり、この戦術機はザウルとリリアの子供のような戦術機だ。」

「あぁ・・・。」

レオの説明に俺は生返事を返すしか出来なかった。

「この戦術機はストー君様に用意した戦術機なのだけれどね。

今は、日本で経験を積ませている最中なんだ。

だから、和真君にストー君が帰ってくるまでの間に色々とデータを取って欲しくてね。」

「了解!」

すると、レオと兄貴は急にニヤケ顔になる。

その顔を見た瞬間に俺の体から冷や汗が噴き出す。

「では機付長、準備を始めてくれ・・・。」

「はっ!了解であります!」

そのやりとりを見ただけで、俺はどうなるのかが想像出来てしまった。

「・・・ハァ。」

その時、どこから現れたのかメアリーさんが姿を現しレオに何かを話だす。

そして、その話を聞き終えたレオの表情がどんどん険しくなっていく。

「・・・すまない、機付長、パーティーは後日で頼む。」

その空気を感じとった兄貴は、レオに聞く。

「用意しますか?」

「30分で頼む。」

「了解しました。」

そして兄貴は指示を飛ばしながら走り去って行った。

「・・・なにかあったんやろ?」

「あぁ・・・、今日本にいる職員から緊急連絡が入った。

隠岐諸島にいたBETA群が大陸からのBETA群に押し出され、共に日本に向かっているそうだ。出現予想場所は米子市周辺だろう。」

「でも、それだけなら日本政府に伝えれば済む話・・・。そんな簡単にいかんか。」

「そう言う事だ。

元々隠岐諸島にいたBETAは大陸に逃げて行くBETA群、つまり敗走群だった訳だ。

これが、大陸から来たBETAに無理矢理方向転換させられ再び日本に向かっていると考えて良いだろう。

・・・その数は推定2万だ。

しかも、タイミングの悪い事に、今あそこに駐留している部隊は消耗が激しく、とてもじゃないが太刀打ちできないだろう。

それだけなら、まだ良かったのだが・・・。

そこには、ストー君もいる。」

「なら、早く行くことにするよ。」

「すまないね・・・、疲れている筈なのに無理を言ってしまう。」

レオが弱弱しく言うのに対し俺は笑いながら答えた。

「どちらにしろ、その情報を聞いた瞬間に俺は行くことを決めてたよ。

それになレオ・・・。

俺はお前の玩具でお前は俺のバイヤー、やから言うてくれ。

レオはどうしたい?」

俺のその問いにレオは目を見開きハッとする。

そして、それが収まるといつものレオに戻っていた。

「・・・すまない、私の方が少し疲れていたみたいだ。

・・・では五六中尉、急いで日本に向かいBETA共を蹴散らして来てくれ!」

「了解ッ!」

 

 

そして俺は、目蓋を開く。

脳のリミッターは切っている。

相変わらず、湖の中の腕は俺を締め上げてくる。

だがそれでいい、この痛みが俺に教えてくれる。

忘れるなと、これまでの事を、これからの事から決して目を逸らすなと。

そして、その時が来た。

「和真君、君は出来るだけ暴れて時間を稼ぐんだ。掃除は樺太のネフレが行ってくれる。」

「いつも通りやな!」

俺がそう言うと、レオも満面の笑顔を作る。

それは、お互いにこのやりとりが懐かしかったからだ。

何も変わらない。

ザウルとリリアがいた時から何も変わらない俺達の関係。

「力を見せつけてきなさい!」

「了解ッ!」

レオと入れ替わる形で管制官から通信が入る。

「準備整いました。タイミング並びに大型ブースター操縦権を譲渡します!」

「アイ・ハヴ・コントロール!」

「御武運を・・・。」

さぁ、行こう!

「五六和真中尉、ヴァローナ・・・、行きます!!」

 

 

ソニックムーブを生み出しながら、ヴァローナを取り付けた大型ブースターが進む。

空気の壁すら煩わしいと、邪魔をするなと、突き進む。

空は暗闇に包まれ夜の静けさを作り出す。

その安息の時間すら、轟音と共に吹き飛ばす。

「5から8小型ブースター点火ッ!」

一回限りの小型ブースターの5番から8番のブースターが火を噴き出し無理矢理方向転換させる。

身体に9G以上のGが掛かる。

肺が胸が腹部が押しつぶされそうになる。

だが、俺の口は確かに笑っていた。

「まったくよ、笑っちまうよな?」

ヴァローナを取り付けた大型ブースターは、速度をそのままに瀬戸内海に侵入する。

山々の向こうから、閃光が見え業火が夜空を照らしているのが確認できる。

「俺と関わり合った連中は不幸になる。

父さんやくまさんのように、ザウルやリリアのように、・・・ニクスのように。

だったらさ、何もしない方が良い、俺なんていない方が良い。」

廃墟と化した街を飛び越え、光線級の脅威を忘れたかのように山を飛び越える。

「ハハハ、そんな事を考えていたんやで?

この俺が!

けれど、それは違うと教えられた!

前に進めていないと諭された!

あぁそうさ、もうぶれない・・・、やりたいことをやる!

皆には悪いが、許して欲しい。」

頭の中の湖では、ザウルがリリアがそしてニクスが呆れた顔で俺を見ていた。

それに俺は、語りかける。

「我儘か?我儘やな!・・・さぁ、始めようかッ!!」

そして俺は大型ブースターをパージし、小型化された新型の120mm水平線砲を構え、二発放つ。

一発は触覚を弾き飛ばし、もう一発は要塞級にめり込み爆ぜる。

だが、要塞級は倒れない。

「なら、このままいくしかないだろッ!?」

俺の叫びを聞いたザウルとリリアとニクスは呆れ顔から、笑顔に変わる。

「「「ブチかましてやれッ!!」」」

「オウさぁッ!!」

背部ブレードマウントからフォルケイトソード改を右手に装備する。

「ブチかましてやらァアアアアアアッ!!!」

フォルケイトソード改はロケットブースターを点火し、今の俺達の想いを乗せているかのような重い一撃を要塞級に叩き込んだ。

倒れる要塞級を背に、噴射跳躍し360°すべてを意識する。

「派手に、大盤振る舞いだッ!」

そしてすべての方角に120mm弾をプレゼントする。

それらは、BETAの波を吹き飛ばし赤い道を作り出す。

「こちらは、国連太平洋方面第九軍、五六和真中尉だ!

この戦域にいる全部隊につげる!

6分後に、ネフレ軍による爆撃が開始される!

この地に光線級は確認されていない、繰り返す光線級はいない!

全機後6分頑張ってくれ!

武器弾薬は、今送った地点に補給コンテナを用意している。ネフレからのプレゼントだ!」

俺は通信をしながら、BETAの波に呑みこまれそうになっていた戦術機に逃げ道を作り出す。

その時、嵩宰少佐から通信が入った。

「五六中尉!日本はネフレに対し要請を出していない!正規のルートを通さずに我が国の戦争に割り込む事は、我が国の主権の侵害だ。説明願いたい!」

右手のフォルケイトソード改をソードマウントに収め、右肩部ガンマウントから新突撃砲G11を取り出し、36mm弾をばら撒く。

「日本政府にはすでに話は通してあります!それに、俺はただしたい事をしているだけですよ!」

俺の話を聞いた嵩宰少佐は一瞬驚いた顔をするが、すぐに元の凛々しい顔つきに戻す。

「・・・すまない、感謝する。」

「感謝するついでに、ストーの事をよろしくお願いします!それと、嵩宰少佐も補給が必要でしょ?補給が必要な者達を連れて行ってください!」

「ここを、任せても?」

嵩宰少佐は挑発的な顔で俺に問う。

それに俺も同じ顔付で返した。

「舐めないでいただきたい!」

「・・・すぐに戻る。」

「了解!」

そして、嵩宰少佐との通信を切ると今度はストーがスクリーンに写り込む。

だが、その姿は俺が知るストーよりも成長しており、俺は一瞬困惑してしまう。

「和君」

「話は後だ、ストーは嵩宰少佐と共に補給地点に移動するんだ。なに、すぐに済むさ!」

俺の笑顔を見たストーは、涙を溢れ出させる。

「待ってる、待ってるからね?」

「あいよ、待ってろ。」

そして、ストーとの通信も切る。

時間を確認すると、後3分だ。

なんとかなるだろう・・・。

見据える先には、BETAの群れ。

悠然と進む姿は潔ささえ感じさせる。

だが、この土地はお前らの物じゃない。

「侵略者ってぇのは、最後には尻尾を巻いて逃げるか、跡形も無く吹き飛ばされんだよ。昔見たSF映画の最後は、ほとんどがそんな終わり方だ。お前らも例外じゃないだろ?」

ヴァローナは己が力を誇示するかのように、突撃砲を構える。

「・・・好きな方を選ばせてやるよ。さぁ、終わらせようか!」

 




新しい射撃兵装の説明をさせていただきます。

120mm水平線砲改
新しい材質と構造を作りかえ差動原理をライトガスガンにすることで威力をそのままに、小型軽量化に成功した。
これにより、強度と装弾数が下がるものの取り回しを向上させることが出来、片手で撃つことが可能となった。
見た目イメージモデル:ゲパード対物ライフルGM6 LynX

36mm突撃砲:G11
120mm弾を撃てなくする代わりに、36mm弾の装弾数を増している。
発射速度は他の国で扱われている突撃砲の中で随一である。
また、三点バースト機能を持つ。
これは、要撃級の顔のような感覚器に弾を当てやすくするためである。
見た目イメージモデル:ヘッケラー&コッホG11

今後ともよろしくお願いします!
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