Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
「はぁ・・・。」
俺様に用意された客室で、俺は盛大な溜息をついた。
あぁ、今は太陽ですら憎いよ。
俺をそんなギラついた笑顔で見んじゃねぇよ!
「~♪~♪~♪」
嵩宰少佐や唯衣ちゃん、上総ちゃんが見ている中で平然と俺にへばり付くストー。
畳に座る俺の腹部を抱きしめ、猫のように寝ころびながら頬ずりをしている。
注意しなければいけないのだが、この幸福に満ちた顔を壊すことは今の俺には出来なかった。
「あ、あの五六中尉、お茶をご用意しました。」
「あ、あぁ、ありがとう上総ちゃん・・・。」
上総ちゃんも苦笑いで俺にお茶を差し出してくる。
だが、その目は信じられないモノを見ている目だった。
勿論、視線の先はストーだ。
嵩宰少佐も良い物を見たと、笑顔になっている。
だが、やはりここは人様の家でましてや少佐の家だ。
これ以上、この状態で置いておくわけにはいかないだろう。
俺は意を決して、ストーに声を掛けた。
「なぁ、ストー、そ」
「和君♪、和君♪私ね寂しかったんだよ?」
俺がすべてを言いきる前にストーがそれを封じ込める。
「はぁ・・・、ヨイショッ!」
「キャッ!!」
俺は勢いよく腰を引き、ストーの抱き着きを無理矢理剥がす。
すると、ストーは勢いよく畳とキスをしてしまった。
「ひどいよ~。」
ストーが鼻の頭をさすりながら涙目で訴えてくるが、そんな事は関係が無い。
俺はストーの頬に手を添える。
「あっ・・・。」
ストーの頬が一気に桜色に変わる。
嵩宰少佐が「ほぉ・・・」といい。
唯衣ちゃんと上総ちゃんが目を見開く。
そして俺は、頬に添えていた手を顎に持っていき顔を上に向かせる。
部屋全体の空気が熱くしかし軽い物に変貌していく。
そしてストーが何を思ったのか、潤んだ瞳を閉じる。
そんなストーに対し俺は・・・。
ストーの鼻を思い切り摘まんだ。
「ふがッ!」
「いい加減にしなさい。」
「がずぐ~ん・・・。」
「そんな目で見て来てもダメですッ!」
そして、俺が鼻を解放してやるとストーは目に見えて落ち込みペタンと女の子座りをしてしまう。
そして、股と股の間に両手を置く。
それは悲しみを表しているのだろう。
だが、ストーの成長し過ぎた大きな二つの果実が両手に挟まれ潰されることで、より大きさを強調してくる。
コイツ、出来るなッ!
俺が怒った振りをしながらもそんな事を考えていると、唯衣ちゃんがフォローに入ってくる。
「まぁまぁ、五六中尉、ストー少尉も反省していることですし・・・。」
「そうよ五六中尉、部下のケアをするのも上司の仕事よ?」
「嵩宰少佐・・・、ですが・・・。」
すると嵩宰少佐は、聖母のように微笑み言った。
「甘えさせてあげなさい。」
その瞬間、俺の中で危険だとセンサが鳴り響く。
「和君~~♪」
「おわッ!!」
俺は飛び掛かってきたストーに押し倒されてしまった。
時刻は18時、俺達は客室に運んで貰った料理を食べていた。
だがしかし・・・。
「ストー、食べにくい・・・。」
「そんなことないよ?」
俺の右側に座るストーは、俺の右手を器用に抱き締めながら料理を食べて行く。
だが、右手を封じられている俺は料理を食べることが出来ない。
それどころか、ストーの大きな二つの果実に腕を挟まれ大変なことになっていた。
俺は助けを求めようと、目の前に座る唯衣ちゃんと上総ちゃんを見る。
2人とも綺麗な正座をしており、黙々とご飯を食べている。
その姿は大和撫子そのものだ。
嵩宰少佐を見る。
崩して座っているものの、気品が溢れ出し位の高さを嫌でも感じさせる。
そしてストーは甘い空気を作り出す。
俺は色々な意味で疲れていた。
空気が重い・・・。
ご飯が冷めてしまう・・・。
俺は痺れを切らし、ストーに抗議した。
「なぁ、ストー・・・。」
「どうしたの、和君?」
「・・・食べにくい、そんで当たってる。」
俺がそう言うと、ストーは口元をニヤつかせ目を細め挑発するような視線を向けてくる。
「なら、私が食べさせてあげるよ!」
ストーの発言を聞き、今まで目を瞑り黙々とご飯を食べていた三人が、カッ!と目を開く。
「はい、あ~ん!」
ストーが俺の皿から料理を箸で取、俺の口元に持ってくる。
俺は恥ずかしさからプルプル震えてしまう。
「食べないの?」
そんなに可愛く首を傾げないでくれぇ~~~!
唯衣ちゃん、上総ちゃんガン見しないでッ!
嵩宰少佐ニヤニヤ見ないでッ!
でも空腹には勝てない・・・。
俺は意を決して食べた。
「「おぉ~~ッ!」」
唯衣ちゃんと上総ちゃんが歓声を静かに漏らす。
ストーは幸せそうに笑ったままだ。
余程幸福なのか、頬をピンクにしたまま次はどれにしようかと悩んでいる。
その姿を見て、俺は静かに溜息をついた。
「まぁ、今日くらいは良いかな?」
俺はそう言いながら、嵩宰少佐を見る。
すると、それにウィンクで返された。
「なにか言った、和君?」
俺はそう言うストーの頭に手を乗せ優しく撫でる。
「いや、何でもないよ。」
「そ、それでは一番!篁唯衣、やらせて頂きますッ!」
夕飯が終わった俺は、少し悪戯をしてやろうと思い。
また、救助してくれなかった2人に対しささやかながら復讐をしてやろうと考え。
俺がいなかった時期のストーのモノマネをして貰うこととなった。
始めは抗議していた3人だったが、嵩宰少佐がゴーサインを出すと、渋々する羽目となったのだ。
意を決した唯衣ちゃんは立ち上がり、凛と背筋を伸ばし、悲しげな表情を作る。
そして、力無く垂れ下がる左手の肘を右手で支え、首を少し右に向ける。
「・・・私に構わないで。」
「ヒューヒュー!」
「それ言ってましたわ!」
「ストー?」
「か、和君、わ、私は・・・その・・・あの・・・。」
嵩宰少佐が顔を赤くする唯衣ちゃんに声援を送り、上総ちゃんが思い出したと手を打ち、俺がストーに聞き、ストーが顔を赤くしてなんとか言い訳をしようとする。
そして唯衣ちゃんが座ると、上総ちゃんが立ち上がる。
「それでは、二番、山城上総、やらせていただきますッ!」
上総ちゃんは腰を少し横にくねらせ、腰に左手を置き右手を垂らす。
それだけで、出来るキャリアウーマンのように見えてくる。
そして、蔑むようにうっすらと笑みを作る。
「・・・それは、あなた達が弱いからよ。」
「ヒューヒュー!」
「ストー?」
「あぅ・・・あぅ」
「和真さん、これは模擬戦をした時の話でして、ストー少尉だけが悪い訳ではありませんので、ストー少尉を責めないで上げて下さい。」
上総ちゃんが座る。
だが、ホワホワしていた空気は少し重い。
それは何故かと言うと、俺が怒ってますと言った空気をだしているからだ。
「か、和君・・・、あの・・・。」
ストーが俺の服を摘み、上目使いで俺に訴えてくる。
だが、俺は怒ってますと表現するためにあえてそっぽを向く。
プイっと言った感じに。
すると、ストーはシュンとする。
上総ちゃんはそんな俺達をジッと見ており、唯衣ちゃんはどうにかしてストーをフォローしようと考えている。
嵩宰少佐は俺達をニヤニヤしながら見ている。
俺がワザと怒っていると解っているのだろう。
「はぁ・・・、ストー?」
ストーはビクッと肩を震わせる。
「ご、ごめんなさい・・・。」
「謝る相手が違うやろ?」
俺がそう言うと、ストーは三人に向き直り頭を下げた。
「ごめんなさい・・・。」
すると、唯衣ちゃんと上総ちゃんは慌てて頭を上げさせストーに話掛け嵩宰少佐は1人頷いている。
その中で俺は少佐に視線を送る。
すると、少佐も俺が何を言いたいのか解ってくれたようだ。
アイコンタクト成功である。
俺はストーの頭にポフッと手を置く。
「根は良い奴やから、これから仲良くしたってくれへんかな?」
「「はい!」」
「和君、怒ってない?」
脅えながら聞いて来るストーに俺は笑いかけながら答えた。
「あぁ、怒ってないよ。ストーは少し、慌ててただけやろ?でも、俺は言うたよな?周りを頼れって、ストーは1人じゃない、俺は勿論、仲間や友達は作っていかなあかん、心の底から信頼し合える人をたくさん作らなあかん・・・、分かった?」
「・・・うん」
すると、パンパンと手を打つ音が室内に響く。
「それじゃ、時間も良いしお風呂に行ってきなさい!」
嵩宰少佐がそう言うと、上総ちゃんと唯衣ちゃんが立ち上がりストーの手を引く。
「行きましょう、ストーさん!」
「嵩宰邸のお風呂は温泉で大きいよ!」
それにストーは困惑しながらも、手を差出す。
すると、2人に手を引かれ立ち上がる。
「あ、その・・・うん。」
そして、俺達に断りを入れてから部屋から退室していった。
「・・・すみません少佐、気を使っていただいて。」
「あの子達にも友達が出来ることは良い事よ。それに、こんな世の中だからこそ、気を抜いて話合える友人は必要でしょ?」
「はい、本当にそう思います。」
「私達がしっかりしなきゃいけないのだけれどね・・・。」
「子供達が、戦場の空気を知る必要はありませんからね・・・。」
「えぇ、あの子達の世代で終わらせたい所だけれどね。」
「俺達の責任は重大ですね?」
「えぇ、そうね・・・。」
嵩宰少佐はそう言うと立ち上がる。
「私は、これから五摂家の会議があるので退室させてもらうわ。お風呂は、彼女達が上がった後なら好きに使って構わないから。」
「ありがとうございます、少佐。」
嵩宰少佐はそう言うと、部屋を退室していった。
「さて、俺もいこかな。」
俺は鞄からタバコを取り出し、縁側に向かった。
縁側から見る美しい日本庭園と月の風景は俺を感傷的にさせる。
俺は、タバコに火をつけ縁側に座り携帯灰皿を用意する。
「むっ?」
久しぶりに紫煙を体に送り込むと、予想以上にクラクラとしてくる。
俺は久しぶりの感覚に1人笑う。
「くすくすくす・・・、あぁ、本当にいい景色だ。」
煙が月に上って行く。
それは、長い長い階段を、月まで続く階段を作っているように見えた。
「見ているかいニクス、日本から見る月も良い物だろう?」
俺はタバコの先端を月に重ね合わせる。
タバコの火が月に重なり俺の気持ちを表現しているように、弱く照らし出す。
「・・・君は中々難しい約束をしてくれたね。」
タバコを咥え、煙を吸い吐き出す。
煙と共に寂しさを追い出す。
「どうやら、俺は女々しい男らしい・・・。未練タラタラやよ・・・。こっちに帰って来ても君の温もりが恋しくてしかたがない。」
携帯灰皿にタバコを押し付け火を消し、放り込む。
今の気持ちを封印するように―――。
「・・・本当に、俺は情けない男やよ。」
その時、俺の背中を温かいモノが包み込んだ。
そして、手が俺の胸元で交差し後頭部に固い物が当たる。
それがストーの額だと、俺を包む温もりがストーの物だと理解するのに時間はかからなかった。
「・・・そんなことないよ。」
「ストー?」
「和君は情けなく何てないよ・・・。和君は、私を光に導いてくれた。いつもこんな私といてくれた。誰かのために、涙を流せる和君が情けないはずがないよ。」
そして俺は、後ろに倒される。
そしてストーの胸を枕にする形となる。
ストーの甘く優しい温もりが俺を包み込む。
「だから、悲しくなったらいつでも言って?私は、いつも、いつまでもあなたの傍にいるから、私は、私だけは、あなたを置いて行かないから・・・。」
その優しい声を聞いた瞬間に俺の中に何かが満ちる。
それは光り輝く雫となって頭の中に存在する湖に入り込む。
濁り淀む水はそれだけで、少し、ほんの少しだけ清さを取り戻した。
そして、俺は涙が溢れてくるのを理解する。
俺はそれを見られたくないのもあり、慌てて体を起こす。
そして、ストーに向き直り無理に笑って誤魔化そうとした。
だが、それはストーに頭を抱えられることで邪魔をされてしまう。
「・・・無理しないで、私には弱さを見せて・・・、お願い。」
あぁ、ダメだ。
もう耐えられない―――。
俺はストーの肩を掴み胸に顔を埋め、情けなくも泣いた。
ただただ泣き続けた。
ストーは、母親がそうするように、俺の頭を抱え泣き止むまで優しく撫で続けていてくれた。
泣き止んだ俺はストーと共に客室に戻っていた。
ストーはあの後、俺の膝枕でスヤスヤと寝ている。
そして俺は、そんなストーに笑いかけ優しく髪を梳いていく。
サラサラとストーの銀髪が俺の指を流れて行く。
それを繰り返していると、ストーがくすぐったそうな声を出す。
俺はそれが楽しくて、何度も繰り返していた。
「ストーさん、かわいいですね?」
「えぇ、本当に・・・。」
唯衣ちゃんと上総ちゃんがストーの寝顔を覗き込みクスクス笑う。
「これが、ギャップ萌えと言う奴やな!」
「ギャップ萌え?」
唯衣ちゃんが首を傾げ俺に聞いて来る。
「なんだ唯衣ちゃん、ギャップ萌えを知らないのか?」
「え、えぇ・・・。」
「いけない、いけないよ!唯衣ちゃんッ!!」
「え、えぇッ!?」
「仕方がない、俺が講義してあげよう!」
そして、俺は唯衣ちゃんと上総ちゃんにギャップ萌えについて教え込んだ。
だが俺はこの時、予想していなかった。
遠くない未来、唯衣ちゃんがこのギャップ萌えに落とされると言う事を・・・。