Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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マイ・ホーム

暗い室内では、プロジェクターの光のみが挿しておりその光は壁に彩を生まれさせ動画を映し出す。

部屋全体が暗く、息遣いから数人いることが確認できる。

そしてプロジェクターが切られ、蛍光灯に光が灯り室内を照らしだす。

室内にいたのは、戦乙女の部隊章を身につけた複数人の軍人。

そして、白衣を身に着けた1人の女性だった。

「これが、先の模擬戦の映像よ。」

1人の女性が一歩前に進み出る。

「副指令。」

「なに、速瀬?」

「ネフレ社がアメリカと合同で開発したと言うあの戦術機は、本当にソ連のSu-47とは別物なのですか?」

「えぇ、Su-47の方が実質は後に作り出されたそうよ。」

その質問を終えた副指令と呼ばれた女性、香月夕子は速瀬と入れ替わり前に出た。

女性に視線を向ける。

「では、ネフレ社はなぜあれほどの高性能機を今まで発表しなかったのでしょうか?」

その質問に香月夕子は薄く笑う。

「簡単なことよ。ネフレ社はあの戦術機を特別としていた。つまり、A-01のような部隊様に開発されたと言う事でしょうね。」

「ネフレ社が、私達と同じような部隊を?」

「そりゃ、そうでしょ?国連傘下の企業と言っても実質は一国と同じ、もしくわそれ以上の権限を有している企業よ?特殊部隊の1つや二つ持っていて当然だわ。」

なにが可笑しいのか薄く大人の女性特有の色香を漂わせながら笑い香月夕子は説明を終え、今度は自ら質問を投げつけた。

「伊隅、A-01部隊長としてなにかない?」

「はい、青い武御雷に乗っていた衛士は機体特性をうまく生かし未来予測と気転をきかせた判断能力、今回の模擬戦では相手の土俵に無理矢理上げられましたが、優秀であろうことは疑いようがありません。さすが、五摂家と言ったところでしょう・・・。」

「それで?」

香月夕子は、そんなおべっかは必要ないと先を促す。

伊隅は、そんなつもりでは無かったが副指令の性格を理解していたのもあり促されるままに言葉を紡いでいく。

「ですが、ヴァローナの衛士は異常だと感じました。」

「それは何故?」

「はい、戦術機とは間接思考制御により人間の動きをそのまま機体にフィードバックします。ですが、ヴァローナの動きはそれとはかけ離れていた。かと思えば、人らしい動き、戦術をとる。」

そこで、伊隅と呼ばれた女性は一息つく。

「・・・副指令、ヴァローナに搭乗していた衛士は本当に人なのでしょうか?」

 

横浜基地でヴァローナをネフレの戦術機運搬トラックに乗せるまでの時間、俺は自由に過ごして良いと言われ、ストーを引き連れ廃墟と化した街を歩いていた。

「それでな、この辺りで鑑さんが隣にいた男を殴り飛ばしたんだ。もう凄かったで!?大の男が空に舞う程の威力やからな!」

身振り手振りで話す俺の隣でストーがニコニコしながら歩いている。

廃墟と化した街の中で俺の声だけが空しく響く。

それでも俺は過去の記憶を手繰り寄せ話す。

俺の思い出を誰かに共有して欲しかったから・・・。

するといつの間にか住宅街らしき場所に来ていた。

さらに歩くこと数分、俺は撃震が倒れ半壊状態の家を見つける。

「・・・」

この地にだけは、戦場を運ばないと誓ったことを思い出す。

俺は自然とその家に足を向けた。

そして、俺はその家に対して頭を下げた。

別に許しを乞うている訳ではない。

ただ、出来るならば安らかに眠って下さいと黙祷を捧げた。

そして顔を上げた俺はこの付近では珍しく家の形を残したままの民家を見つける。

「へぇ・・・、この惨状の中でもこんなにも綺麗に家の形が残されているなんて。」

それは半壊した家の隣の家だった。

俺はその家に近づきただの好奇心から表札を見る。

「・・・白銀(しろがね)、珍しい苗字だな。」

俺は戦場跡でありながらも、力強く立つ家を見上げる。

「・・・ここに住んでいた人は運がいいな、帰る場所がまだあるのだから。」

すると、弱く俺の服を引っ張られているのを感じ振りかる。

そこには、悲しげな表情をしたストーがいた。

俺が呟いた声が聞こえていたのだろう。

俺は誤魔化すように笑い、ストーの頭に手を乗せる。

「俺にも帰る場所はあるよな?」

すると、ストーは花が咲いたように笑う。

硝煙の匂いがしてきそうな場所であろうとも、周囲の空気に彩を取り戻させることが出来るストーは俺なんかよりも強い人間なのだと感じさせられる。

「・・・帰ろうか?」

「うん!」

そして俺達は横浜基地に向け足を向けた。

 

基地に到着した俺は嵩宰少佐の見送りを終え余った時間をどうやって過ごそうか考えていた。

ストーは、ヴァローナの様子をネフレの関係者と見に行っておりここにはいない。

プラプラ歩き暇を潰していると、グラウンドを走る訓練兵の集団と激を飛ばす教官の姿を見かける。

「風間(かざま)、余裕がありそうだなぁ?喜べ10周プレゼントだ!嬉しいだろう?」

「はいッ、教官ッ!」

「早く走れッ!」

「はいッ!」

俺はそれを微笑ましく思いながら見る。

「くまさんも鬼教官やったからなぁ~。ハハっ、懐かしいな~。」

昔くまさんに扱き倒されていたことを思い出す。

ゲロを吐こうが、無理だと泣こうが厳しく接してきたくまさん。

当時は、自分から鍛えてくれと言った癖に良く腹が立っていた。

なんでこんなに、俺を虐めるんだ!そう思ったことも数えられない程だ。

だが、今ならそれらがどれだけ意味のあるモノだったかを理解している。

あの地獄があったからこそ、今の地獄に耐えることが出来る。

体力や精神面の下地がどれほど大切かを、身を持って理解出来た。

今の俺があるのは、すべてくまさんのおかげなのだ。

それらを思い出していると、体が疼いて来るのが理解出来た。

「・・・そう言えばここ最近、まともな訓練してないな。」

重い腰を持ち上げると、訓練兵達は、担いでいた兵装を倉庫に直しに行くのが見えた。

「ダメもとで聞いて見るかな?」

そして、俺はグラウンドに足を進めた。

 

装備の後片付けを終えクタクタになりながら、隊舎に戻る訓練兵に激を飛ばし終えた教官が倉庫に鍵を掛けようとする。

俺は待ってもらうために教官に声を掛けた。

「少し待ってもらっていいかな?」

今にも倉庫の鍵を閉めようとしていた教官は振り返ると即座に敬礼をした。

「はッ!なんでありましょうか中尉殿!」

その完璧な上官に対する返事に俺は少しばかり苦笑いをした。

「そんなに畏まらなくていいよ。あぁ、自己紹介がまだだったね。俺は国連太平洋方面第9軍所属、五六和真中尉です。」

「自分は、国連太平洋方面第11軍所属、神宮寺まりも軍曹であります!」

「うん、神宮寺軍曹、実は折り入ってお願いがあってね。」

「はッ!」

ピシっと立つ神宮寺軍曹の後方、倉庫に俺は指を差す。

「そこに置いてある訓練兵の訓練道具を少し貸して欲しくてね。構わないかな?」

「中尉殿、それは・・・。」

そこから、少し色々と話合いなんとか道具を貸して貰えることとなった。

そして砕けて話て貰う事も可能となった。

「中尉、こちらが訓練兵用で一番重い装備です。」

「ありがとう軍曹」

そう言って俺が上着を脱ぐと軍曹はなにも言わずにそれを受け取った。

「それじゃ、ヨイショッと・・・あれ?」

息込んで装備した物の、人の体位でかいリュックをうまく体に装着できない。

そう言えば、俺はこんな贅沢な装備を装着した訓練はまったくしていなかったな。

これは・・・やばいな・・・。

仮にも上官の俺が、こんなことも解らないなどと思われるのはいただけない。

「ここを、こうして、こうで・・・。」

ふむ・・・、出来ないッ!

仕方がない、このまま行くとしようか。

「あの中尉、間違っておられますが・・・。」

「なに、どこがだ!?」

俺がそう勢いよく聞き返すと、神宮寺軍曹は苦笑いを浮かべる。

「・・・すべてです。」

「oh・・・」

すると、神宮寺軍曹は溜息を1つこぼし俺に近づきテキパキと装備を整えてくれた。

「これで大丈夫ですよ、中尉。」

「は、ハハハハハッ!長らく使ってなかったからな・・・、まったく歳は取りたくないな、物忘れが激しくて困る。」

冷や汗を掻きながらそう言う俺に、軍曹は少し疑うような目で言ってきた。

「中尉はまだお若いでしょうに・・・。」

「・・・では、少し走ってくるとするよ軍曹。装備は後で返しておくから君は仕事に戻ってくれて構わないよ?呼び止めて悪かったね。」

場が悪くなったと即座に理解した俺はすぐに話を切り替えた。

だが、そうそううまく事が運ぶわけも無く・・・。

「いえ、今日の私の仕事はこれが最後でしたのでお付き合いします。」

俺の監視のためか?

まぁ、見るからに怪しい男が傍にいたんじゃ仕方がないか。

俺は心の中ですみませんと呟き訓練を開始した。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

だいたい今で50kmくらいは走ったかな?

大分飛ばしたから、汗を尋常じゃないほど掻いてしまった。

けれど、体力は格段に上がっている。

俺の心配は杞憂だったようだ。

「それじゃ、次ッ!」

そして俺は腕立てを始めた。

「998・・・999・・・1000ッ!」

そしてまた走り出す。

久しぶりの感覚に俺は喜びを感じ、とことん体を苛め抜いた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、ハハハハハっ、体を動かすのは気持ちがいいな。」

俺は装備を外し、地面に寝転がる。

「お疲れ様です、中尉」

「神宮寺軍曹、すみません我儘を言ってしまって。」

「いえ、お気になさらないで下さい。私も時折同じことをしていますから。」

「そう言って貰えると助かるよ。」

そして俺は装備を倉庫にしまいに向かった。

 

装備をしまい終えた俺は、グラウンド横のベンチに座り息を整える。

すると、神宮寺軍曹が水の差し入れを持ってきてくれた。

「ありがとう、神宮寺軍曹」

「いえ・・・」

俺はそれを一気に飲み干す。

「プハァ、生き返る~。」

まるで酒を飲む様に水を飲む俺を神宮寺軍曹が上品に口元に手をやり笑う。

「クスクスクス」

「こんな時間まで付き合わせてしまってすみません」

「いえ、構いません。」

そこで俺は時間を確認し、そろそろ良い時間なのを知る。

「すみませんが、俺はこれで失礼します。」

その時、神宮寺軍曹が俺を呼び止めた。

「あっ、すみません。お名前を教えて頂いてもいいですか?」

「?」

俺は不思議に思いながらも、素直に答えることにした。

「五六和真です。」

「私は、神宮寺まりもです。また、当基地にお越しになる際は声を掛けて下さい。また、お付き合いさせていただきます。」

「ありがとうございます。・・・でも、それだけじゃないですよね?」

「・・・中尉の都合が良ければで構わないので、訓練兵の者達にご指導ご鞭撻をお願いしたく思いまして。」

「俺は、そんなに有能な人間ではありませんよ?」

「それでも、国連軍の阿修羅と謳われるあなたの力をあの子達にも授けてやって欲しいのです。」

「・・・解りました。機会がありましたら、俺の出来る限りの事をさせて貰います。」

「ありがとうございます。」

「では、俺はこれで・・・。」

 

五六中尉はそう言うと、走ってどこかに行った。

「夕子は、彼と接点を持ちなさいと言っていたから、向こうから声を掛けて来てくれたのは、正直助かったわ。」

神宮寺軍曹はそう言うと溜息を1つこぼす。

「あんな子供が、阿修羅だなんだと、祭り上げられ戦場に送り出される・・・。」

神宮寺軍曹はそう言うと、星空を見上げた。

「彼が一分一秒でも長く生き残れますように、お願いします。」

神宮寺軍曹の呟きは、風に運ばれ正門の桜並木にまで流された。

 

港からケアンズに向かうネフレ社所有の船内で俺は座り込んでいた。

神宮寺軍曹、訓練兵から任官する際教導隊に声を掛けられるもそれを蹴り大陸の前線に赴き戦い生き残った正真正銘の猛者。

その後、香月夕子に引き抜かれ国連軍横浜基地で教官をしている。

香月夕子とは、高校の時からの付き合い・・・。

オルタネイティブ4の関係者と考える方が自然かな。

「う~ん!」

俺は腕を頭上に掲げ大きく伸びをする。

「運動したから、気分がええな!」

すると、物凄い睡魔が俺を襲った。

「ふわぁ~、ケアンズまでは時間がたんまりあるし、今日はもう寝るか。」

そして俺は、深い闇に自らの意識を落とした。

 

ケアンズに到着した俺は、船を下り身支度を整える。

「~♪~♪」

ストーは先程から鼻歌を歌いながら俺の隣で俺と同様に身支度を整えている。

余程気分が良いのだろう、表情が緩んだままだ。

「なぁ、ストー?」

俺が声を掛けるとストーの肩が大きく跳ねる。

「ひゃ、ひゃいッ!どうしたの和君?」

「いや・・・、そろそろ会社にいかへんって声かけようと思ってな?」

「そ、そうだね!早く行こう!」

俺はストーを不審に思いながらも会社に向かった。

「ね、ねぇ和君PXに行こう!」

ストーは胸元に手を置き、俺にそう言ってくる。

「いや、先にレオに報告に行かんと・・・。」

「社長もPXにいるから、ね?早く行こう!?」

「あっ、おい!」

社長室に向かおうとしていた俺の手を無理矢理引っ張りストーは足早にPXに俺を連れて行った。

一体なんなんだ?

だが、その答えは俺のすぐに目の前に用意されていた。

PXに到着した俺達を迎えたのは社長や兄貴やメルにタエ、それと俺が日頃お世話になっている皆だった。

PXのテーブルはすべて移動されており大人数が立つスペースを作っている。

そして俺達と皆の間の天上には大きなくす玉。

皆が笑顔で俺達を見ている。

「???」

俺はなにがなんだかわからなくて頭に特大の?を何個も浮かべてしまう。

すると、俺の隣にいたストーが俺から離れ皆の中に加わる。

そして大きなくす玉が割れると中から、おかえりなさい、の文字が垂れ下がり綺麗な紙吹雪が舞う。

そしてストーが「せ~の!」と言うと・・・。

「「「「「「「「「「「「おかえりなさいッ!馬鹿野郎ッ!!」」」」」」」」」」」

皆が笑顔で俺にそう言った。

俺の中に温かい何かが満ちる。

皆の笑顔が染み渡る。

メルの腕から飛び降りたタエが俺に飛び乗り頬に頬ずりをしてくる。

「・・・」

俺の瞳には涙が貯まり始める。

だが、それをおちょくる人間なんていない。

皆笑顔だ。

暖かく見てくれている。

そして、俺は一度天井に顔を向け涙を戻す。

俺が皆に再び顔を向ける時には涙は無くなっていた。

そして、代わりに特大の笑顔に変わっていた。

「ただいま!大馬鹿野郎共ッ!!」

 

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