Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
ケアンズ基地市街地演習場には二体の獣が牙を突き付けあっていた。
町を再現するために作られたビル群は次々と獣が暴れることにより、倒壊していく。
新たにストーに与えられた力、ヴァローナが背部ブレードマウントからフォルケイトソード2を手に取る。
すると、柄の部分がドリルの様に回転し新たな柄が姿を表す。
それは柄の長さが倍になったのもあるが刃の部分そのモノが倍近い大きさになっており、刀というより大鎌のようだ。
ヴァローナは、倒れてしまいそうな程に前屈みになり刀身を天に向け構える。
その姿は、アイスホッケーの試合でシュートを決める時のようだ。
準備が出来たのか、跳躍ユニットに静かに火が灯る。
それと同時にフォルケイトソード2のロケットスラスターにも火が灯る。
ヴァローナが足を浮かせた瞬間、第三世代の名に恥じない加速力を出しながら一直線に三本の炎の線を引きながら突進してくる。
「はぁああああああッ!」
ストーの雄叫びが管制官の耳を振るわせる。
突っ込んで来るヴァローナに対し、和真は肩部装甲に取り付けられた四本の腕が握る突撃砲を射撃する。
それらの腕はまるでそれぞれが別々の意識を持っているかのように動き回る。
弾丸の雨がヴァローナを襲う。
だが、それらはヴァローナに当たることはなかった。
天に掲げた刀身から噴き出すロケットの向きをヨットの帆の種類であるラテンセイルのように動かし微妙に向きを変えることで弾丸の直撃を回避していた。
ストーの口元が喜びに歪む。
「これなら、このヴァローナならいける!」
ストーがそう言った瞬間、ストーと和真の間のビル群の壁が突然破裂した。
一m先すら確認することが出来ない煙の中にヴァローナは包み込まれる。
「・・・粘着榴弾、遠近すべての120mm弾の弾着タイミングを合わせてくるなんて」
すると、今度はヴァローナのセンサー類すら使い物にならなくなる。
「センサーキラー!」
外部モニターは煙で閉ざされ、センサーも使い物にならない。
ヴァローナはその場に足を止めてしまう。
「くっ、それなら!」
ストーはESPの力を使用した。
すると、それはすぐに見つけることが出来た。
「上ッ!!」
和真の考えを知ったストーは、フォルケイトソード2のロケットを噴射し掬い上げるように切り上げる。
それと同時に、重い一撃が機体全体を襲う。
フォルケイトソード改とフォルケイトソード2が刃先を擦り合わせ火花を散らす。
和真が乗るジュラーブリクE型の全体重+重力+フォルケイトソード改の推力の一撃をヴァローナは受け止めるどころか逆に押し上げる。
「ESPを使うのは卑怯やろッ!」
和真がすかさず通信を繋げそうぼやく。
「持てる力をすべて使って勝にいくだけだよ!」
そしてフォルケイトソード2のロケットの噴射をもう一段上げ、先端にある鎌のような鉤爪で斬り裂こうとする。
「ならッ!」
ジュラーブリクE型は、フォルケイトソード改を手放すと同時に煙の中に姿を消す。
「そんな事をしても意味が無いよ!」
ESPの力を使い、和真の次の行動を読もうとする。
だが、代わりにストーの瞳に映ったのは死の世界だった。
暗い暗い湖の中心で空を見上げる和真、それを締め上げる数多の腕。
そんな死の世界をストーは見てしまう。
和真はリミッターを切った。
こうなってしまっては思考を読む事は出来ない。
ストーは即座にESPの力を使うことを止め、全神経を張りつめる。
そして、センサーキラーの効果が無くなり煙が風に流されようとした時、煙の中から脚部大型モーターブレードが姿を表した。
ギラついた刃を回転させ、胴部を真っ直ぐに両断しようと迫る。
「このッ!」
ヴァローナはフォルケイトソード2を捨て両腕部モーターブレードを展開、それを受け止める。
そして、跳躍ユニットを噴射し押し切ろうとする。
だが、押し返しはしたものの抵抗が無かった。
それもそのはずである。
受け止められた右足を軸に左足で踵落としをすでに繰り出していたのだから。
ヴァローナは半身を前に出す事でそれを回避する。
ジュラーブリクE型の踵が地面のコンクリートを粉砕する。
だが今度はその足を軸にし、腕部モーターブレードで襲い掛かってきた。
横薙ぎに振るわれたそれを跳躍ユニットを使用しヴァローナは回避する。
そのころには、煙は完全に晴れていた。
「やぁあああああッ!!」
ヴァローナは跳躍ユニットを巧みに操り、爆破から生き残っていたビルの壁を足場にジュラーブリクE型に襲い掛かる。
和真のジュラーブリクE型はそれを真っ向から受け止めた。
格納庫に収容されたジュラーブリクE型を俺は見上げる。
その姿はまるで俺と共に戦えることを誇っているようにも見えた。
そしてそれは、俺が再びコイツと共に戦えることへの喜びなのだと理解した。
「やっぱり、コイツの方が良いか?」
ジュラーブリクを見上げる俺に兄貴が話掛けて来た。
「ヴァローナと違い、俺の癖をコイツは知っているからな。やっぱり、共に戦ったコイツは俺のことを理解してくれてるよ。」
俺がそう言うと、兄貴は俺の背中を勢いよくバシバシ叩く。
「そりゃそうだ。コイツもきっと喜んでいる筈だ!」
ジュラーブリクE型は、確かに死んだ。
明星作戦で最後まで俺をBETAから守り貫いてくれた。
だが、生まれ変わって俺の元に帰って来た。
内部を殆ど改造され跳躍ユニットを本来ヴァローナに搭載されていた物に変更したジュラーブリクは、2.5世代なんて呼べる代物では無い。
正真正銘の第三世代機だ。
俺は自信を持ってそう答えることができるだろう。
「それにしても即応性がかなり上がってんな?操縦してみてかなり驚いたよ!」
俺がそう言うと、兄貴はいかつい顔を笑顔に変える。
「ジュラーブリクに積んだコンピューターの情報処理能力が優秀だからな。因みに今まで蓄積されたデータを効率良く運用するためのOSを開発したのはメルの野郎だ。」
「へぇ~。」
「なんだ、余り驚かないんだな?」
「メルなら、これくらいは出来ると思っているしね。それと、次に何を奢らされるのか考えていたから・・・。」
俺はそう言うと、肩をがっくりと落とした。
「ハハハハハハハハッ!盛大に奢ってやれ!」
「そうするよ」
「じゃ、俺はジュラーブリクとヴァローナに新しいおもちゃを取り付けてやるとするわ!」
「カッコよくしてやってや!」
歩き去る兄貴の背に俺がそう言葉を投げると、兄貴は片手を上げて答えた。
「それじゃ、俺も行くとするか!」
そして俺は格納庫を後にしある場所に向かった。
俺が待ち合わせ場所の喫茶店に入るとすでに待ち人はそこにいた。
「やぁやぁ待っていたよ和真!まぁ、適当に座りたまへ!」
「なんでここにいるんだよ、メル!」
メルの前にはストーが座っており、俺はストーの横の席に腰掛ける。
ストーはタエを抱いており俯いている。
「まぁまぁ、そんな事は良いじゃないか!そんなことより、言う事があるんじゃないかな?」
「ぐぬぬぬぬ・・・。」
メルのニヤケ面を前にして俺は悔しそうな顔をわざと作る。
こんなやりとりも懐かしいな・・・。
「さぁ、さぁさぁさぁ!!」
「・・・今回はなにをお望みだ?」
「いやぁ~、悪いね和真!そうだな~・・・。」
「はぁ・・・。」
そんな馬鹿をやり合っていてもストーは俯いたままだ。
「どうしたんや、ストー?」
すると、ストーはぽつりと呟いた。
「・・・悔しい。」
「は?」
ストーは勢いよく顔を上げて頬を膨らませる。
「悔しいッ!また、和君に負けた!!」
俺は一瞬ポカンとし、それから少しの間笑う。
「く、くくくく・・・。」
「もう、なにがおかしいの!?」
そう言ってさらに頬を膨らませ、まるでリスのようになったストーの頬を俺は笑いながら掴んだ。
「ポピ!」
勢いよく口の中に溜めた空気が吐き出され間抜けな音が出てしまう。
「~~~~~ッ!!」
ストーは顔を真っ赤にし、プルプル震える。
「あっはははははははは!!」
メルは腹を抱えて笑っている。
俺は震えるストーの頭に手を乗せワシワシ撫でた。
「それでも、今回は俺も危なかった。あそこで力を使わへんかったら負けてたのは俺かも知らんからな。やから、俺は嬉しいで?ストーがそこまで強くなってくれて!」
これは本当のことだ。
ヴァローナの性能が飛びぬけて良かったとしても、腕が伴ってなければ宝の持ち腐れだ。
ストーはその力を十分に使いこなしていた。
なら、それだけ生き残る術を手に入れたことと同義だ。
これを喜ばずしてなにを喜べばいいんだ。
「う~~~~!」
俺に頭を押さえつけられ撫でられるながらも、私不機嫌ですと全力でアピールしてくる。
「しゃ~ないな、ストーもなんか奢ったるから・・・な?」
俺がそう言うと、ストーは瞳を輝かせる。
「本当!?」
「あ、あぁ・・・。」
あれ、俺間違えた?
「やったーーーッ!」
もしやこれはストーの作戦なのか!?
俺は戦慄してしまう。
そしてそのまま、メルの顔を見るとしてやったりと言った顔をしていた。
コイツの入れ知恵か・・・。
そして俺達は喫茶店を出ることにした。
「~♪~♪~♪」
俺は鼻歌を歌いながら上機嫌で歩いていた。
それと言うのも、タエとこうして触れ合えているからだ。
タエは俺の頭に乗っている。
この重みが懐かしくて嬉しい。
俺はポケットに手を突っ込み歩いていた。
「・・・和真、別に鼻歌を歌っても構わないけれど。君って意外と音痴なんだね?」
「・・・ほっとけッ!」
すると、ストーが近寄り腕を組んできた。
「えへへへへ。」
「ちょ、ストー!?」
俺が驚き引きはがそうとすると、ストーはさらに腕を抱く力を強める。
すると、今度は反対側の腕にメルが抱き着く。
「メルッ、お前までなんや!?」
「気にしない事だよ和真、私は気にしないッ!」
「気にしろよ!!」
両手を塞がれた俺はどうすることも出来ずにそのまま、町を歩いていくこととなった。
そろそろ昼時となり、俺達は目の前にあったホットドッグ屋ですませることにした。
「両手に花とは、羨ましいねぇ~!」
出店の親父が俺達を見てそう言う。
「良いだろう?」
俺が勝ち誇ったようにそう言うと、出店の親父は鼻を鳴らした。
「へっ、最近の若い奴と言ったら。」
ここまで二人の女にからかわれ倒してきたのだ。
少しくらい優越感に浸っても罰は当たらないだろう。
すると、1人の男の子が出店に走り寄ってきた。
「パパ~ッ!」
「ごめんなさいね、あなた・・・。この子がどうしてもあなたの働く所が見たいって言うから。」
出店の親父は嬉しそうに子供を抱き上げる。
そしてその横に美人の奥さんが笑いながら立つ。
その光景を見た瞬間に俺の中で特大の雷が落ちた。
「さ、妻子持ちだと・・・。」
そう言う俺に気が付いたのか出店の親父は俺に見せつけるように奥さんの腰に手を回し抱き寄せる。
「どうだ、羨ましいだろう?」
「う、羨ましい・・・。」
俺はその場に膝をついてしまった。
落ち込む俺の隣でストーが頬を赤くし、頬っぺたを両手で包み込む。
「か、和君は子供が欲しいの・・・・?え、でも心の準備がまだ・・・、そんな恥ずかしいよぉ!」
ストーはイヤンイヤンしながら、妄想を膨らませる。
勝ち誇った顔をしている出店の親父、落ち込む俺、妄想を膨らませ暴走しているストー。
その光景を1人冷静に見ていたメルは言った。
「早くホットドッグを下さい。」
色々と女物の服などを買わされ財布が軽くなり、両手が重くなっていき。
そろそろ、帰ろうかと話していたところメルが行きたい店があるからと言うのでそこを最後にしようと俺達は向かった。
そこは、いかにもブランドショップです言わんばかりのオシャレな店だった。
「ブッチって、こっちでもあるんだ・・・。」
そこは、元の世界でも有名なブランドの店だった。
オシャレやブランド物に興味がなかった俺でも知っているほどの店だ。
メルはその店に入って行く。
俺もその後を追いかけて入った。
すると、メルはモジモジしながら話掛けて来た。
「ね、ねぇ和真・・・。男の人はどんな物を貰ったら嬉しいかな?」
俺はその一言を聞き閃く。
「はは~ん、さては手紙をやりとりしている男のために買うんだな?」
「ばっ、その通りだけれど・・・。」
俺はそう言うメルにこんな一面もあるんだなと思いながらなにが良いか考えることにした。
「う~ん・・・。」
プレゼントか、なにかないかな?
これはあれだよな?
好意を寄せている相手に対してのプレゼントだよな?
そんな事したことないからな・・・。
そこで俺は思い出した。
元の世界で先輩がバレンタインデーの返しにサイフをプレゼントしたのを。
たしか、そう言うのを男は喜ぶとネットで書いてあった気がする。
「サイフなんて良いんじゃないか?」
「・・・サイフか」
メルはそう言うと考え込む。
「うん、君がそう言うならそれにするよ。」
メルはどんなサイフにするかは自分で選びたいからと1人で悩み始めた。
俺は特になにもすることがなく店の外に出ることにした。
ストーは、目を輝かせ店内を見て回っている。
なんだかんだ言っても女の子なんだな。
俺は1人笑いながら店の外でタバコを吸い時間を潰した。
俺達は会社に戻った後に解散した。
俺は女共の荷物を置いてから格納庫に移動を始めた。
格納庫内には装備を換装し終えたジュラーブリクとヴァローナが立ち並んでいた。
ヴァローナは腕部が変更されており、黒く拳のような固定武装が上腕部に装備されていた。
そして、俺のジュラーブリクは上腕部にモーターブレード収納部に00式近接戦用短刀を刃をむき出しにして取り付けたようなものに変わっており、背部兵装担架には、騎士が持つようなロングソードが取り付けられていた。
戦術機の全高程の大きさを誇るそれを背部に無理矢理取り付けているので、柄の部分は頭上のさらに上にある。
取り回しが大変そうであり、機体重量が大変なことになっていそうだ。
だが、それだけではない。
そのロングソードが銃、しかもMk57であることが直ぐに見て分かった。
なぜなら、柄なのだろうそこは完全にMk57と同じだったからだ。
どちらかと言えば、Mk57の銃身をロングソードにした感じだ。
しかもこれが切るよりも突撃用なのが解る。
それは、キャリングハンドルがフォートスレイヤーの鍔とおなじだったからだ。
あそこを掴んだ状態で要塞級にでも突っ込めということなのだろうか?
まぁでも、男心をくすぐる装備であることには変わりない。
俺は1人満足して寝室に戻ることにした。
だが、そこにはストーがいた。
ストーは、二つの向日葵のぬいぐるみを抱きしめ潤んだ瞳でベッドに横たわっていた。
「わ、私はいつでも良いよ・・・。」
そう言うストーに俺は無言で近づく。
そしてストーの額を軽くたたいた。
「イタッ!」
「なにをやっとるか・・・、早く自分の寝室にいきなさい。それと、自分の年齢を考えなさい。俺はストーをそんな子に育てた覚えはありませんよ?」
俺がそう言うと、ストーはいそいそとベッドが退く。
「はぁ~い・・・。」
ストーが部屋から出て行くと俺は盛大な溜息をついた。
「アイツ、どこであんな知識を身に着けたんだ?」
そして俺は眠ることにした。