Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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変人の集まり

俺は、ラトロワ中佐のチェルミナートルを支えエヴェンスク基地に向かっていた。

 

このような事が出来るのは、国連・ネフレ・ソ連軍の連合軍が防衛戦を押し上げてくれたからだ。

 

そのため、十分な時間を得ることが出来た。

 

「・・・」

 

ラトロワ中佐は、何も話さずに前を見据えている。

 

俺は少し眠る様に進言したが一蹴されてしまった。

 

たった一人で数万のBETAを相手にしていたはずにも関わらず、ラトロワ中佐からは疲れた様子が感じられない。

 

嫌、見せないように努めている。

 

――――意地

 

ただの意地を貫き通しているだけなのだ。

 

俺はそれが解ると、もうこの人になにを言っても無駄だろうと判断し通信を閉じることにした。

 

その後、俺はエヴェンスク基地に到着し滑走路に足を付けると同時にチェルミナートルを支え直し、ラトロワ中佐が降りやすいように固定する。

 

すると、俺達から少し離れた位置にその姿はあった。

 

「中佐ッ!!」

 

俺に助けを求めてきた栗色の髪の毛を持つ女の子は、中佐が歩みを始めると同時に走り出し抱き着いた。

 

ラトロワ中佐は、優しく抱き留めると我が子にするように優しく頭を撫でる。

 

そしてその後方には、ジャール大隊の面々だろう人達が笑顔で見ていた。

 

それだけで、ラトロワ中佐が部隊の皆からどれだけ信頼されているかが手に取る様に分かっ

た。

 

俺はその光景をジュラーブリクの瞳から見つめ笑みをこぼし、そして周囲を見渡す。

 

基地に帰投するときから見ていたがこの基地は俺が今まで見て来た基地とは明らかに違っていた。

 

 

エヴェンスクはその独特の立地から防衛には最適である。

 

それは、このエヴェンスク基地の周囲には山と海しか存在しないからだ。

 

後ろはオホーツク海、前は岩肌が露出した山々、唯一の開けている所は山々の間にある谷のみ。

 

だがそこには川があり、BETAにとって攻めにくい場所にこの基地は存在している。

 

そして、エヴェンスクを守るように高さ30mの分厚い壁がぐるりとエヴェンスクを囲み外界からの侵入を拒絶していた。

 

この基地は言わば前線の後方基地的な役割があり、最前線基地は各所に設けられている。

 

そこに機甲部隊や戦術機部隊が待機しているのだ。

 

だが、今回のBETA進行によりその最前線基地の内ほとんどが機能しなくなっている。

 

俺は、外界とエヴェンスクを閉ざす大きな壁を見ながら、更新された情報に目を通していき、静かに息を吐いた。

 

 

数時間後、俺はエヴェンスク基地司令官室にいた。

 

「国連太平洋方面第9軍から参りました、五六和真中尉であります!」

 

俺は軍人として完璧な姿勢をとりエヴェンスク基地司令官に敬礼する。

 

「態々こんな寒いだけの場に来てくれたこと、感謝する。私は当基地の司令官を任されているダルコだ。」

 

ダルコ司令官は、凄く人の良さそうな顔をしている。

 

要するに常時笑顔だ。

 

なにを考えているのかまったくわからない。

 

だが、人が良さそうなのは顔だけであり、体は歴戦の戦士そのもの。

 

もうなんと言うか、熊だ。

 

ホッキョクグマだ。

 

この人にケンカを売れば、その毛むくじゃらの丸太のようにゴツイ腕で絞殺される様が容易に想像出来る程だ。

 

「さて、五六中尉」

 

「はッ!」

 

「貴官もすでに知っていると思うが、もう一度確認の意味も込めて言わせて貰う」

 

「・・・」

 

「この基地に住む住民のカムチャツカ移住が済むまでの一か月間、貴官はジャール大隊ラトロ

ワ中佐の指揮下に入る。良いな?」

 

「はいッ!」

 

俺が返事を返すとダルコ司令官は立ち上がり俺に手を差し伸べた。

 

「こちらの要請に応えて頂いたこと、感謝している。我々は今や猫に追い詰められた鼠だ。厳しい戦いが続くだろうことは容易に想像できる。・・・それでも、力を貸してほしい。」

 

俺は初め驚き固まってしまったが、その顔を笑顔に変えダルコ司令官のゴツゴツとした大きな手を握り閉めた。

 

「最善を尽くします。」

 

そう言う俺に、ダルコ司令官も笑って返してくれた。

 

ただ、握手をしていたはずなのにいつの間にか握力勝負になっていたのには驚いたが・・・。

 

手がひしゃげるかと思った・・・。

 

ダルコ司令官と俺との男の意地を賭けた握力勝負の後、俺は司令官室のソファーに座らされていた。

 

ダルコ司令官は、俺から見えない所でなにやら取り出している。

 

「五六中尉、なかなか良い握力をしているじゃないか?」

 

「いえ、ダルコ司令官に比べればまだまだですよ」

 

俺はそう言いながら笑う。

 

だが、心の中では・・・。

 

「こっちは、現役なんだ!そうやすやすと負けを認める訳にはいかないんだよ!」

 

なんて事を考えていた。

 

すると、ダルコ司令官は両手に何かを持って俺の前のソファーに腰掛けた。

 

「若さと言うモノはいいものだな・・・」

 

ダルコ司令官がテーブルの上に置いたのは、ウォッカのビンとレモンとコップ3つだった。

 

俺は不思議に思い尋ねる。

 

「1つ多いようですが?」

 

俺がそう言うと、ダルコ司令官は思い出したかのように言った。

 

「あぁ、後1人酒の席に招待していてな」

 

すると、それと同時に司令官室の扉がノックされる。

 

「入ってきてくれ」

 

ダルコ司令官がそう言い、中に入ってきたのはラトロワ中佐だった。

 

ラトロワ中佐はダルコ司令官に挨拶を終えると、俺には見向きもしないで隣に腰掛けた。

 

「それでは、君達が生き残れたことを祝して贅沢をしようじゃないか」

 

笑顔でそう告げるダルコ司令官に対しラトロワ中佐はなにも言わない。

 

不満そうにもしていない。

 

おそらく今回の作戦で生き残った者達にもなにかしらの褒美を与えたのだろう。

 

こういった気配りが、末端の人間にまで好かれるコツなのかもしれないな。

 

まぁ、あくまで俺の憶測でしかないが・・・。

 

すると、ダルコ司令官は新たに野球ボールのような氷を3つ持ってきた。

 

俺はそれをコップにそのまま入れるのだろうか、それにしては大きいな?

 

などと考えていると、ダルコ司令官は、突然その氷を殴った。

 

拳骨をするように左手に持っていた氷を右手で殴ったのだ。

 

「ファ!?」

 

俺は余りにも唐突な行動に奇声を上げてしまう。

 

「どうした、五六中尉?」

 

ダルコ司令官は、俺なにか変なことした?と言った顔をしている。

 

俺は隣に座るラトロワ中佐を見る。

 

すると、中佐は俺にギリギリ聞こえるくらいの小声で言った。

 

「・・・慣れだ」

 

俺はそれに頷くことしか出来なかった。

 

・・・慣れか。

 

ダルコ司令官はウキウキした様子で粉々に砕けた氷をコップに入れる。

 

そして用意してあったレモンに手を伸ばすと、それをそのまま握り閉めた。

 

紙パックを握り閉めるように簡単に・・・。

 

コップに入って行くレモンの汁を見ながら俺は思った。

 

ダメだ、この人には勝てない・・・。

 

そして、並々と注がれたウォッカを見て俺は頬が引きつった。

 

「ダルコ司令官・・・」

 

「なんだ、五六中尉?」

 

「私の酒は少量でお願いします・・・」

 

「酒に弱いのか、中尉?」

 

「えぇ、まぁ・・・」

 

「なら、慣らせばいい!」

 

俺の発言を聞いてもダルコ司令官は、そんな事を言い俺のコップに溢れそうなほどにウォッカを注いだ。

 

そして俺達は、無言でコップを持ち上げ視線を交わしコップに口を付けた。

 

えぇいままよ!

 

 

ガンガン痛む頭を押さえながら司令官室を出ると、そこには本日三度目に目にした栗色の髪をした女の子が待っていた。

 

「お待ちしておりました中佐!」

 

「待たせたなイヴァノワ中尉」

 

「いえッ!」

 

イヴァノワ中尉は、そう言うと俺に向き直る。

 

「ナスターシャ・イヴァノワ中尉です!先の戦闘での救援感謝します。」

 

「五六和真中尉です。よろしく!」

 

俺達が挨拶を終えると、ラトロワ中佐はイヴァノワ中尉と俺に視線を向ける。

 

「後で他の者達にも伝えておくが、五六中尉は本日よりしばらくの間、我がジャール大隊の一員となる。イヴァノワ中尉は五六中尉とエレメントを組め、粗相のないようにな?」

 

ラトロワ中佐がそう言うと、イヴァノワ中尉は驚きに目を見開く、それは俺も同様だった。

 

「で、ですが、中佐ッ!」

 

だが、ラトロワ中佐はそれに対し冷たく言い放った。

 

「イヴァノワ中尉、これは決定事項だ。今さら覆すことなど出来ない。」

 

「り、了解・・・」

 

イヴァノワ中尉は、そう言うと黙りこんでしまう。

 

だが、俺はそう言う訳にはいかなかった。

 

「待って下さい中佐!」

 

ラトロワ中佐は、俺が次に何を言うのかが解っているかのように鬱陶しそうに顔を向ける。

 

「中佐の指揮下に入ると言っても、俺は作戦に支障が無い限りでの単独行動権が与えられています。」

 

「それは重々理解している。現実を見ようともしない馬鹿共から散々言われているからな」

 

「ならッ!」

 

「少しは分を弁えたらどうだ、坊や?」

 

俺はその発言にカチンとくる。

 

「貴様が私の隊に入れられた時から、貴様の生き死にはすべて私のモノだ。

・・・先のような馬鹿な行為を許す訳には行かないのでな」

 

ラトロワ中佐は、そう言うと1人でどこかに歩いて行った。

 

俺の話をこれ以上聞きたくないのだろう。

 

ラトロワ中佐の言いたい事は解るつもりだ。

 

だが、それでは俺がここに来た意味がない。

 

正直に言えば、この基地に俺のジュラーブリクとまともな連携が取れる衛士はいないだろう。

 

それに、俺を無理矢理縛ることは、出来ないはずだ。

 

なら、ラトロワ中佐の命令は口だけのものと言う事になる。

 

「あぁ、くそッ!」

 

俺は無意識のうちに苛立ちを口に出してしまっていた。

 

「・・・」

 

それを聞いていたイヴァノワ中尉の眉間に皺が寄って行く。

 

「すみません・・・」

 

「ふん、ついて来い」

 

 

その後、俺はイヴァノワ中尉に連れられある一室に来ていた。

 

「あれ、ここは俺に用意された部屋だった筈だが?」

 

「ここに小隊の皆が集められている。それと、なにを勘違いしているのか知らないが、ここは

贅沢が許されている後方とは違う。我々小隊用の寝室だ。」

 

まぁ、それもそうか・・・。

 

前線に1人一部屋なんて贅沢が許されるはずないしな。

 

イヴァノワ中尉は、不機嫌そうに鼻を鳴らし扉を開いていく。

 

「小隊傾注ッ!」

 

イヴァノワ中尉がそう叫ぶと室内にいた三人は即座に敬礼し俺達を出迎えた。

 

俺達を待っていたのは、八重歯が目立つ犬のような元気娘と垂れ目の男、それと身体をくねらせている長身の男だった。

 

室内に入った俺は敬礼を返す。

 

「国連から派遣された五六和真中尉だ。これからこの地に住む人達の避難が完了するまでの間、共に戦っていくことになるが、よろしく頼む。」

 

俺がそう言うと同時に、俺に敬礼をしていた小隊の皆は即座にだらける。

 

それを見ていたイヴァノワ中尉は、反射的に怒声を飛ばした。

 

「貴様ら、上官を前にして何だその態度はッ!」

 

だが、そんな怒声はどこ吹く風状態の面々は、言いたい事を言い出す。

 

「ハハハハハハッ!なっちゃんはいつも元気だにゃ~!」

 

八重歯を光らせる元気娘が、イヴァノワ中尉に抱き着く。

 

「そんなにいつもカリカリしてるとお肌に悪いわよ?」

 

身体をくねらせながら、長身の男が自分の頬に手を添える。

 

「そろそろ、なっちゃんを解放してやれよ、アンナ?国連の中尉殿がびっくりしているだろう?」

 

「お~、こりゃ失礼!」

 

元気娘がイヴァノワ中尉から離れると、俺に対して怠けた敬礼をしてくる。

 

「私はアンナ少尉、皆からはワンコって呼ばれてるから中尉もそう呼んでくれると嬉しいにゃ~!」

 

「いや、でも語尾がにゃ~だし、ネコでは?」

 

「細かいことは気にするにゃ~?」

 

「よ、よろしく・・・」

 

すると今度は、垂れ目の男が敬礼してきた。

 

「俺の名前は、アナトリーだ。皆からは、アナって呼ばれてる。よろしくな?」

 

「穴?穴が好きなのか?」

 

「あぁ、好きだぜ!なぁ、ワンコ?」

 

アナがそう言うと、ワンコは頬を赤くした。

 

「もう、なに言ってるのよッ!」

 

そして強烈な右ストレート。

 

「グハッ!」

 

それは、アナの腹部にクリーンヒット!

 

アナは吹き飛ばされた。

 

それを茫然と見ていた俺に長身の男が近づく。

 

「私の名前は、ボリスよ。皆からは、オカマって呼ばれているわ。」

 

おい、まんまじゃねぇか・・・。

 

すると、オカマは俺の首筋を指でなぞり始めた。

 

「ヒッ!」

 

「あなた、良い体してるわね?・・・食べちゃいたい」

 

俺は緊急回避を行い、イヴァノワ中尉の後ろに隠れた。

 

「た、助けてくれなっちゃん!」

 

「私はなっちゃんでは無いッ!」

 

「もう、逃げなくても良いのに・・・、気持ちいいわよ?」

 

するとオカマは、アナに手招きされているのに気が付き部屋の隅に移動する。

 

そして、ワンコ、アナ、オカマの三人でコソコソ話を始めた。

 

「よ~し、決定ッ!」

 

アナが突然叫びだすと、俺に向かって指指す。

 

「中尉のあだ名が、今決定した!中尉の事はこれから、ゴリンって呼ばせて貰う!!」

 

なんだ、そのオリンピックみたいなあだ名は・・・。

 

俺が黙っていると、それを了承ととったのかワンコがなっちゃんの手を引き俺の前に横一列に並ぶ。

 

「それじゃ、これからよろしく頼むぜ?ゴリン!」

 

アナが俺に手を差し出す。

 

だが、俺と皆の間には二歩分の空間が開いており一歩前に踏み出さないと握手ができない。

 

これは、俺とソ連軍との距離を表しているのだろう。

 

どちらかが、一歩前に踏み出さなければ手を取り合うことは出来ない。

 

でも、相手は手を差し伸べてくれた。

 

ソ連は俺からしてみれば、良い印象の国では無い。

 

第三計画なんてふざけた事をして、人の命をなんとも思わないことを平然とこなす。

 

そう言った負の情報が俺は慣れ合うことなど出来ないと思っていたのかも知れない。

 

それでも、こいつ等は俺に手を差し伸べてくれた。

 

いきなり現れた俺に対して、仲間になろうと行動で示してくれた。

 

なら、俺は答えなければいけない。

 

ソ連にいる人達全員が悪い人ではないのだ。

 

俺達の方が、彼らからすれば悪なのかもしれない。

 

それを相手も理解した上での行動。

 

俺は、壁を超えるように一歩前に踏み出した。

 

「こちらこそ、これからよろしく!」

 

そして、俺達は手を取り合った。

 

今は、一衛士の小さな団結でしかない。

 

でも、それでもいつか。

 

これが切っ掛けとなって世界が1つとなれば良いのになと、その時俺は考えていた。

 

 

その日の晩、俺は男としての恐怖を味わうことになった。

 

「・・・ゴリン、やっぱりあなたは魅力的よ」

 

室内に存在する二段ベッドとは別に用意されたベッドの上では、無意味な繁殖行為が行われよ

うとしていた。

 

「や、やめろ・・・、来るんじゃないオカマ野郎!」

 

乱れるシーツ、熱い吐息、滴る汗。

 

和真を逃がさない様に、覆いかぶさろうとするのは鼻息を荒くした長身の男。

 

「もう、食べちゃう♡」

 

「や、やめ・・・」

 

もうダメだ・・・。

 

俺がそう覚悟した瞬間、オカマは蹴落とされた。

 

「いい加減にしろッ!」

 

オカマを蹴落としたのは、なっちゃんだった。

 

「な、なっちゃ~んッ!」

 

涙目で喜ぶ俺に、なっちゃんは厳しく言い放つ。

 

「ゴリンも静かにしていろッ!今何時だと思っている!?」

 

だが、今度は別のベッドから騒がしい奴らが這い出してきた。

 

「なっちゃん、ゴリンって言ったよな?」

 

「言ったにゃ~!」

 

「痛たた、言ったわね。」

 

イヴァノワ中尉ことなっちゃんは、顔を赤くし自分のベッドにそそくさと逃げ出した。

 

だが、簡単に逃がしてくれないのがここの連中だ。

 

「なぁ、言ったよな?言ったよな?」

 

「言ってない、言ってないッ!」

 

「ねぇ、今どんな気持ち?どんな気持ち?どんな気持ちだにゃ~?」

 

「うぅぅわぁあああああ!!!!」

 

なっちゃんは、布団で頭を隠し外界を途絶してしまった。

 

だが、おもちゃを見つけた亡者共からは逃げられない!

 

ワンコとアナは、なっちゃんを布団の上から口撃しまくっていた。

 

「熱が冷めちゃったは、じゃあまた明日ね?ゴ・リ・ン!」

 

バチコーンと飛ばされたウィンクを枕で跳ね飛ばした俺は、思った。

 

 

俺、大丈夫だよな?

 

色々な意味で・・・。

 

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