Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
エヴェンスク基地の戦術機格納庫には、大勢の衛士が集まっていた。
それは、これから仕事をしに行くからだ。
「アナ、お前達の戦術機は確かラーストチカだったよな?」
月曜日に出勤するサラリーマンのように、やる気の抜けた顔で歩くアナに問いかける。
「うん?あぁ、そうだぜ。俺達の刃だ!」
「俺は、ラーストチカに関してはカタログスペックしか知らへんから、詳しく聞きたいんやけれど、良いか?」
「そんくらい、何時でも聞いてくれよ小隊長?」
「その呼び方は、なれやんな・・・。ゴリンで頼むわ。」
俺はラトロワ中佐に第03小隊小隊長をするように命じられていた。
これも、俺を好き勝手にさせないためだろうか?
まぁ、副官にナスターシャ嫌、なっちゃんが付いていてくれているから慣れないながらもなんとかやれている。
「アナ~、ゴリン~!」
格納庫で話す俺達の元に尻尾をブンブン振っていそうな雰囲気で駆け寄ってきたのは、ワンコだった。
その後方から頭を押さえた、なっちゃんと、オカマが歩いて来る。
俺は全員の顔を見渡し、深呼吸した。
初めて他人の命を任されたのだ。
今まで感じたことのないプレッシャーが俺を襲う。
「しっかりしていてくれれば、それでいい。後のフォローは私がする。」
俺の緊張が伝わったのか、小隊の面々の前に立つ俺に向かって、なっちゃんがそう言ってきた。
俺は心の中でなっちゃんに感謝し、気持ちを切り替える。
「これから俺達が行う任務の内容だが・・・」
「警戒任務なんてつまんないにゃ~!」
「もう、そんなこと言っちゃだめよ、ワンコ?」
「そうそう、これもお仕事だからな!」
三機のラーストチカが辺りを警戒しながら、通信越しに雑談を行う。
だが、それも最後方にいるジュラーブリクに阻まれてしまった。
「貴様等、なんど同じことを言わさせるつもりだ!?」
「まぁまぁ、これくらいええやん。なっちゃんは、ピリピリしすぎやで?」
「ゴリン!あなたは小隊長として部下を教育しなければいけない立場のはずだろう!?」
俺達小隊に与えられた任務は、前回の戦闘位置から西に20kmに位置する平野部警戒任務だった。
平野部と言ってもヴェルホヤンスクハイヴから来るBETAがここに到達するには、山岳を越えて来なければならず、BETAがここに来るには地中進行しかありえない。
だが、その地中進行の可能性がゼロでないためこうしてエヴェンスク基地から一日に一回のペースでローテ組んで一小隊が警戒任務を行っていた。
それが、今回俺達の小隊の番になっただけの話である。
俺達は周囲とセンサに気を使いながら、広い平野を歩行で移動する。
「――――ッ!」
その時、エヴェンスク基地のHQから緊急連絡が入った。
「こちらHQ、応答願います!」
俺のジュラーブリクE型の回線は、小隊全員にオープン回線で繋いでいる。
HQからの緊急回線を聞いた小隊の面々は、先程までの遠足気分をどぶに捨て去り彼ら本来の衛士の顔つきになっていた。
「こちらジャール大隊所属03小隊、いったいなにがあった?」
一体なにがあったなんて解りきった事を聞くのも、小隊長として小隊の皆と情報を共有しなければいけなかったからだ。
「第03小隊現地点より、西に12㎞の地点に旅団規模のBETA群を確認、カズィクル地雷原を突破してきたことから、地中進行してきたモノと司令部は判断しています。」
旅団規模、大体5000くらいの数か・・・。
機甲部隊が展開してくれているなら、少し苦戦する程度の数だな・・・。
「俺達はどうすればいい?」
「第03小隊は、今渡したポイントに向かって下さい。ポイント到着後、現在迎撃態勢を整えているジャール大隊と合流の後に、BETA迎撃を機甲部隊と連携して行います。」
「了解した!直ちに行動に移る。」
通信を終えた俺は、HQから渡されたデータを小隊全員にデータリンクを使い流す。
「小隊各員聞いていたな?」
俺が全員の顔を網膜投影システムの画面に映しながら問うと、全員が返事を返してきた。
「こちら、04!私は、いつでもどうぞ~、ですにゃ~☆」
ワンコがげっ歯類のように、八重歯を煌めかせながら笑顔で答える。
「こちら、03!奴らの体に穴を開けてやればいいんだろ?」
アナが、ウキウキしながら答える。
「こちら、05!激しい事は、大好きよ♡」
オカマがデスウィンクを飛ばしながら答える。
「こちら、02!準備は整いました。・・・命令をお願いします。」
なっちゃんが緊張を隠すように、強面で答える。
第03小隊の面々の顔を見ながら、俺は皆にばれないように鼻で深呼吸する。
初めての小隊長としての戦闘、自分1人の命で無く4人もの命が肩に圧し掛かる。
だが俺は、それを重みに感じることを無視した。
世界を救おうとしている人間が、たかだか四人程度の命の重みに潰される訳にはいかないからだ。
「今回がこの第三小隊初の実戦だ。小隊長として未熟な俺だが、これだけは言っておきたい・・・。」
言葉に含みを持たせた俺を真剣な眼差しで皆が見つめる。
「俺は、戦術機の操縦の腕に関しては誰にも負けるつもりは無い。国連軍の阿修羅の名前は伊達では無いと言う事を、皆に伝えておく。」
これは、俺なりの激励でもある。
まぁ、緊張の余り大ぼらを吹いてしまったのだが・・・。
「俺は、皆の腕をまだ知らない。お前達は・・・、俺に付いてこられるか?」
ジュラーブリクE型が持つガンブレードを地面に付き刺し偉そうに皆に向き直る。
だが、俺のそんな態度にも皆はなにも変わらなかった。
「わ~お!カッコイイにゃ~!」
「・・・惚れてしまいそう♡」
「そんなに肩肘張らなくても、俺達の実力はすぐに解るぜ?」
「はぁ・・・、緊張しすぎだ。ゴリン」
「違うってなっちゃん!ゴリンは、隊長になって天狗になってんだぜ?そうに違いねぇ~よ!」
「アナ、私のゴリンを天狗扱いする気?・・・そのケンカ、買ったわ!!」
「いつも、賑やかで良いにゃ~!」
「はぁ・・・」
俺の目に写る皆は、勝手にワイのワイの騒ぎながら好き勝手言ってやがった。
本当なら、ここは注意しなければいけないのかもしれない。
だが、こいつらは変人で俺も変人だ。
お互い変人どうしこれくらいの方がやりやすいのかもしれないな。
そう思った俺は、先程までの緊張から来る行動を放り捨て。
小隊長の演技をしたまま、肩の力を抜いて皆に命令した。
「これより、俺達第三小隊は所定ポイントに向かいジャール大隊と合流後、BETAと殺し合うことになる。皆、盛大に暴れてくれて構わない。俺に皆の力を見せてくれ!ただし・・・、慎ましくな?」
俺の命令に皆は、満面の笑みを見せてくれた。
「「「「了解!」」」」
ジャール大隊と合流後、俺はラトロワ中佐と通信を繋ぎ作戦の内容を聞いていた。
「ジャール大隊は、BETA斥候を叩き後続のBETA群の道を閉ざす。その後、BETAを機甲部隊が待つパーティー会場にエスコートする。」
「了解しました!」
ラトロワ中佐のチェルミナートルを中央に隊形をウェッジワンで待機する。
その時、CPから通信が入る。
「BETA斥候を確認、ジャール大隊作戦行動に移ってください!」
遠方には、砂埃を巻き上げながら突撃級が姿を表す。
「聞いていたなジャール大隊の精鋭達、下等生物共に部を弁えさせろッ!」
ジャール大隊のビッグママの号令の元、1つの矢は三つの矢に分かれた。
各中隊ごとにわかれた矢は、それぞれの的に向かって飛翔する。
「俺達は左翼を食らうぞ!」
そして、左翼を任された俺達が所属する中隊の中で最初に攻撃を放ったのはアナだった。
「風穴を開けてやるぜ!」
背部の突撃砲二門を展開しながら、突撃級を反転しながら跳躍で躱し両腕の突撃砲も構える。
そして逆さを向いたラーストチカから放たれた弾丸は、三体の突撃級の尻に風穴を開けた。
36mm弾を数発ずつくらった突撃級は、死ぬことすら出来ずに倒れ込む。
「綺麗に穴を開けてやんよッ!」
それに続くように、ワンコが飛び出す。
「見つけた!」
一体の要撃級に狙いを定めた獅子は、滑り込むように要撃級の右側面に回り込む。
ワンコの存在に気が付いた要撃級は、右衝角で殴ろうとするが出来なかった。
何故なら、その腕はすでにラーストチカの右腕で封じ込められていたからだ。
「いただきま~す!」
ラーストチカは、握り込むように要撃級の顔のような感覚器を左手で掴み逆上がりの助走をつけるように左足を振り上げる。
そして、暴れる要撃級を嘲笑うかのように両足の大型モーターブレードを展開し左足を叩きつけた。
モーターブレードに要撃級の体は削られ、どす黒い赤をまき散らす。
要撃級は、それで力無く倒れ込む。
「お残しはダメだよね!」
だが、興奮状態の野犬をだれも止めることが出来ない。
今度は右足を振りかぶり、要撃級の右手を付け根から切り落とした。
それだけでは、満足できないのか今度は腕部のモーターブレードを展開し左手を斬り落とす。
「ごちそうさま~!」
血まみれのラーストチカは、次の獲物を求めて飛び出した。
「ほらほら、捕まえてごらんさない♡」
オカマは、要撃級の攻撃が当たるか当たらないかの絶妙な距離を保ちながら、砂浜でおいかけっこを楽しむカップルのように、要撃級を巧みに誘導していく。
だが、今度は対面方向から別の要撃級が姿を表し狙いをつけてきた。
後方の要撃級が攻撃を放つ。
前方の要撃級も攻撃を放つ。
逃げ道何てどこにも存在しないかのように思われる状況にあってもなお、オカマは役に嵌り切っていた。
「モテるオカマは辛いわね。」
一瞬の跳躍ユニットロケットモーターの噴射で華麗に飛び上がる。
すると、要撃級の攻撃は右ストレートを打ち合ったボクサーのようにお互いの体に
めり込む。
「あなた達、なかなか素敵よ?」
そして優雅にストンと着地したラーストチカは両手に装備された突撃砲を、二体の要撃級の顔に向け36mm弾を放つ。
「でも残念、あなた達じゃ私とは釣り合わないわ・・・。」
オカマはそう言い残すと、パパラッチに追われる女優のようにその場を後にした。
「くっ!」
前方から向かってくる突撃級を訓練のお手本のように跳躍ユニットを使用し躱したなっちゃんは、訓練通りに突撃砲を撃つ。
「私は、この程度でやられはしない!」
着地と同時に飛び掛かろうとしていた戦車級を、これも教本通りに肩部ブレードベーンで斬り殺す。
「その程度、想定済みだ!」
遊んでいるかのような皆の様子を見ていた俺は、度胆を抜かれていた。
「あいつら、やるじゃないか・・・。」
周りに集ってきた戦車級を、スラッシュアンカーを使い細切れに変える。
「俺も負ける訳にはいかないな!」
ジュラーブリクE型は、ガンブレードを振りかぶる。
すると、刀身が二つに裂け大型モーターブレードが姿を表した。
跳躍ユニットに火を灯し、流れるようにホバー移動、そして向かってきた要撃級の攻撃を回るように紙一重で躱し、特大のチェーンソーで斬り裂く。
それと同時に、肩部四つの突撃砲を四方に向け苦戦していた他の部隊の衛士を援護する。
側面から向かってきた突撃級をガンブレードを地面に付き刺しサーカスのように跳躍ユニットを使用し機体を持ち上げる。
そして、体がガンブレードを軸に逆さを向いた所で跳躍ユニットの向きを変える。
ガンブレードが地面から外れ、大きく円を描くように機体と縦軸に回転する。
そしてガンブレードを叩きつけたときには、突撃級は血まみれになっていた。
その時、戦域右翼から新たなBETA群が姿を表した。
「新手ッ!?」
その数は、ざっと見ただけでも数千はいる。
BETA群本体まで、まだ時間があるはずである。
つまりは、また地中進行で出てきたことを意味していた。
新たに現れたBETA群は、右翼を任されていた中隊を包囲しようと詰め寄る。
味方を示すマーカーが、どんどん包囲されていく。
「クソッ!」
俺は、助けに行こうと跳躍ユニットに火を灯した。
だがその時、アナから通信が入る。
「ゴリンなにをする気だ?」
「助けに行くッ!」
そう叫ぶ俺に、アナは信じられないモノを見たと言った目をした。
「・・・お前、本気でいっているのか、それ?」
「本気も何もないだろッ!?俺はッ!!」
その時、俺とアナの通信に割って入るようにラトロワ中佐が姿を表した。
「少しは分を弁えろと言ったはずだが?」
「中佐ッ、右翼の部隊が敵に包囲されようとしています!俺にただちに向かわせて下さい!」
「・・・それは出来ないな。」
その言葉に、俺は目を見開いた。
「あなたの部下が、仲間が危ないんですよッ!?」
そう吠える俺に、ラトロワ中佐は溜息を吐いた。
「もっと、賢い人間だと思っていたのだがな・・・」
「どういう意味ですか!?」
「もっと、大局を見ろ」
「はぁ!?あなたは何を言ってッ」
俺は、こんな所で言い合いをしている暇は無いと中佐を無視して向かおうとするが、その時、別の聞きなれない声が聞こえてきた。
「盛り上がっている所、すまねぇな!」
サブウィンドウで新たに現れたのは、金髪のワカメヘアのおっさんだった。
「こんなこともあろうかと、待機しといて正解だったな嬢ちゃん?」
「その呼び方は止めて下さい、スルト中佐。」
ラトロワ中佐を嬢ちゃん扱いした男、スルト中佐は豪快に笑う。
「ハハハハハハッ、どこまで行こうと嬢ちゃんは嬢ちゃんだ。右翼の事は任せときな、嬢ちゃんの子供は、俺達がしっかりと守ってやるからよ!」
「・・・お願いします。」
そして、俺達の頭上を飛んで行ったのは、ブラーミャリサの部隊だった。
ブラーミャリサの肩部には、フェニックスミサイルが搭載されており、包囲しようとしていたBETA群をフェニックスミサイルで吹き飛ばしていく。
それを茫然と見ていた俺の網膜投影システムには、いつのまにか皆がいなくなっていた。
そして、無事に作戦は成功した。
その翌日、俺は別任務を与えられた。
それは、ここエヴェンスク基地内に存在する訓練学校の、講師をするというモノであった。
あれから、アナとは話していない。
そんな状態の俺をどう思ったのか、ラトロワ中佐は俺に講師をするように命じた。
「はぁ・・・」
溜息を付きながら、グラウンドを走る訓練兵達を見る。
まだ、体が出来上がっていない子供達が戦争をするために日々訓練に励む。
その姿が、さらに俺の気持ちを暗くさせる。
「景気が悪いな坊主?」
俺の隣で共に、訓練兵を眺めていたのはスルト中佐だった。
「・・・いえ、別に」
そう素っ気なく返す俺に、スルト中佐は怒ることなく笑顔を作るだけだった。
「なぁ、少し付き合ってくれないか?」
スルト中佐は、そう言うと訓練兵に後20周をプレゼントし歩み出す。
後方から大ブーイングの雨が降り注ぐが関係なしにと進むスルト中佐の背を俺は慌てながら追いかけた。
俺がスルト中佐に連れてこられたのは、PXだった。
「なぁ坊主、俺の名前おかしいと思わねぇか?」
スルト中佐は、いきなりそんなことを言い始めた。
「スルト、北欧神話の魔人の名前だ。キリスト教徒の俺の親がなんでこんな名前をつけたのか、俺にも解らない。この名前のせいで昔は散々いじめられたものだ。」
スルト中佐の突然の昔語りに俺は頷くことしか出来ない。
「でもな、そんときに俺をいじめっ子から救ってくれたのが、フィカーツィアだった。あぁ、フィカーツィアってのは嬢ちゃんの夫な?
こいつがまた、馬鹿な野郎でよ!俺の名前をなんて言ったと思う?
良い名前じゃないか!世界を作り変え人間を世界に生み出す切っ掛けを作った者の名前なんて!
なんていいやがったんだ。
まぁ、そこから長い付き合いになるんだがある時、そんな俺達の仲を斬り裂く出来事が起こった。
キリスト恭順派による爆弾テロ・・・。
これのおかげで、フィカーツィアの部下が死んでしまった。
それが切っ掛けでキリスト教だった俺は、奴と距離を置くようになった。
それから数か月すぎた時だ、急にフィカーツィアの野郎が俺に殴りかかってきやがった。
当時の俺は、キリスト教でありスルトなんて魔人の名前をしているのだし、殴られても仕方がないなんて思っていた。
でもさ、フィカーツィアの野郎はな泣きながら俺にこう言ったんだ。
寂しいじゃないかッ!てな?
笑えるだろ?大の大人のそれも男が寂しさの余り殴りかかってきやがったのだから、そんで色々話しあって俺も考えを変えた。
アイツみたいに馬鹿でも良いやって思えるようになった。
馬鹿だから、自分の名前を誇りに思って信じる神のために戦おうって思えた。
恭順派のような、すべてを受け入れる思考停止の馬鹿共とは違う。
俺は、スルトとなって神の試練を超えて新しい世界を作ろうと夢を得た。
なぁ、坊主どんな付き合いの奴らだって意見が合わなかったりちょっとした行き違いで勘違いしたりするものだ。
そう言う時は、腹割って話合ってみるのも良いんじゃねぇか?」
俺は、スルト中佐の話しを聞きモヤモヤしていたモノが晴れた気がした。
グジグジしていても埒が明かない。
まずは、お互いに話し会ってみるべきだ。
俺は自然とイスから立ち上がり、深々と頭を下げていた。
「ありがとうございます!」
「こっちこそ、悪いなつまんねぇ話を長々とよ」
「いえ、ためになりました!」
「そうかい?それじゃ、行こうか。」
俺は再びグラウンドに戻るスルト中佐の背中を見ながら思った。
スルト大隊―――。
その名前に込められた想いを・・・。
グラウンドに戻った俺達を待っていたのは砂まみれになっていた訓練兵達だった。
「おう!やってるな?偉い偉い!」
すると、1人の訓練兵が突っかかってきた。
「遅ぇんだよ!俺達を殺す気か!?」
「ハハハハッ、まぁそう言うなヤーコフ。皆はそう思っていないはずだぞ?」
「・・・キールもトーニャも、睨んでるぞ?」
ヤーコフが後方を指差すと、確かに睨んでいた。
「ハハハハハ、こいつは分が悪いな。まぁ、安心しろ!次の時間は、コイツがしてくれるからな!」
スルト中佐はそう言うと、俺の背中を引っぱたいた。
そんな俺も見ていたヤーコフは俺にこう言った。
「・・・誰だよ、この不細工」
プチッ・・・
コイツは言ってはならない事を言った。
俺のコンプレックスを言いやがった。
俺は一歩前に踏み出す。
「俺の名前は、五六和真。今日一日、お前達の講師を命じられた哀れな男だ。そんで、これが歓迎の印だ受け取ってくれ」
俺はそう言うと笑顔でヤーコフのこめかみを片手で握り閉め宙に浮かす。
属に言うアイアンクローだ。
「ギニャアアアアアアアアッ!」
ヤーコフの叫びを聞き、訓練兵達の顔が青ざめて行く。
そして俺は気絶したヤーコフを放り投げた。
「ヤーコフが・・・、ヤーコフがッ!」
「止めるんだトーニャ!殺されるぞ!!」
「でも、キールッ!」
そんな、叫びを上げる訓練兵に笑顔を向けながら俺は言った。
「夜・露・死・苦・な?」