Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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想いを一つに

次の日、俺は小隊全員を寝室に集めた。

「すまなかった・・・」

俺は小隊全員に向け頭を下げた。

「「「「・・・」」」」

そんな俺に対して誰も言葉を投げかけない。

重い空気が、部屋中を満たす。

俺はそれを壊すように頭を上げた。

「俺が先の作戦で取ろうとした行動は、小隊長としてやってはいけないことだった。俺は、全然周りを見れていなかった」

そんな俺にたいし、気だるそうにアナが言った。

「で?」

そんなアナに俺は逃げることなく視線を合わせる。

「・・・少し、俺の話しを聞いてくれ」

そして俺は、俺の夢を、俺のすべての始まりを皆に話した。

 

「だから俺は、父さんの遺言である皆を救うことを目標に生きてきた。だから、あの時目の前で誰かが死にそうになっていた時に、俺は自分を止める事が出来ずに飛び出そうとした。・・・皆には、迷惑をかけたと思っている。これは俺なりのけじめだ。・・・すまなかった。」

だが、俺の過去を話しても誰もなんの反応を示さない。

これは仕方がないことだ。

俺が、取ろうとした行動は皆を危険に陥れることなのだから。

「・・・ラトロワ中佐には、これから部隊替えをしてもらうように進言してくる。これで、お前達が危険になることはない。・・・短い間だったが世話になった」

「「「「―――――ッ」」」」

そう言った俺は、寝室の扉を開こうとする。

だが、扉に伸びた手はアナの手により握り止められていた。

「・・・ふざけんじゃねぇぞ」

ギリギリと万力のように締め上げられていく俺の腕は血の流れが止められることにより、太い血管を浮かび上がらせ青白く変色していく。

「ふざけてんじゃねぇぞッ!五六和真ッ!!」

そして俺は、アナに殴り飛ばされた。

力強く殴られた俺は、壁にぶつかり倒れ込む。

「お前の過去は確かに悲惨だろうさッ!俺達のような無理矢理戦わされている奴らとは根っこが違う事も良く分かった!けどな、気にいらねぇッ!・・・お前のその願いは、その想いは、父親の願いであってお前の願いじゃない、断じて違う!ソイツは借り物の願いだ!中身が空っぽなんだよ!そんなモノに命を預けて救われたって、こっちは何も嬉しくはない。そんな独りよがりで自分勝手に満足してんじゃねぇよッ!」

アナが顔を赤くし、本当の怒りを俺に向けてくる。

そしてその瞳には嫌悪感がアリアリと浮かんでいた。

だが次の瞬間には、アナが殴り飛ばされていた。

「お前になにが解るッ!?俺が、どんな思いでこの願いを引き継いだと思ってやがるッ!?俺が今まで1人でどれだけ苦しんだと思っているんだッ!!」

倒れながら口元を拭うアナの襟元を掴み上げ無理やり立たせる。

その瞬間に、俺の脳ミソは激しく揺さぶられた。

アナに頭突きをされたからだ。

「俺達は、仲間だろうがッ!!」

再び殴りかかろうとした俺は、その言葉に固まってしまう。

「なんであん時に、俺達に命令しなかった!?一緒に来いと言わなかった!?お前にとって俺達は、そんなにも頼りない奴らなのかよ!?」

アナは動きを止めた俺を押し倒しマウントを取、殴り続ける。

俺は命の危険が著しく高くなることが分かっていたから、皆を連れて行かなかった。

自分1人の命ならどうなっても構わない。

だが、俺の想いに皆を巻き込む訳にはいかない。

俺はそう思っていた。

そして俺は、自分勝手な行動をしようとしたことに対して皆が呆れているのだと思っていた。

でも、違った・・・。

こいつ等は、そんな事とは別のことで怒っていた。

「そんな借り物の願いのせいで、大切な仲間を見殺しにしろってテメェは言うのかよッ!?そんな重たい物を1人で背負い続けるつもりなのかよッ!!」

「――――ッ!!」

アナは泣いていた。

アナの瞳から流れる涙が、頬を伝い俺の頬に零れ落ちてくる。

力無くされるがままになっていた俺は、振り下ろされた拳を握り止める。

「・・・こんな俺を仲間だと言ってくれるのか?まだ、会って間もない俺を・・・」

俺のその言葉を聞いたアナは、殴るのを止め俺から立ち退く。

恐れるように見上げた俺の瞳に映ったのは、笑顔で手を差し伸べていた皆だった。

「同じ釜の飯を食って、同じ戦場に立ったその時から俺達は家族だ。」

先程までの怒りをどこかへと投げ飛ばしたアナの手を取、立ち上がる。

「・・・一人でなんでも解決しようとするな、俺達をもっと頼ってくれ」

「皆・・・」

あぁ、俺はとんでも無い間違いを犯すところだった。

俺は、恵まれていたんだ・・・。

すげぇよラトロワ中佐、あんたはこうなることを解っていて俺を縛り付けたんだな。

気が付けば俺の瞳からも涙が流れていた。

だが、それは悲しみの涙では無い。

嬉しい感情を処理しきれなかったから流れてしまった涙だった。

俺は久しぶりの嬉し泣きに照れくさくなりながらも、笑顔で皆に言った。

「ありがとう、これからもよろしく頼む」

そんな俺に、皆が笑顔で頷いてくれた。

 

その日の夜、俺はある一室に来ていた。

「夜分遅くに失礼しますラトロワ中佐。」

シャワー上がりなのか、ラトロワ中佐はバスローブを身に纏い大人の女の色香を漂わせる。

そんな姿でありながらも動じない俺は、衛士として女に為れたと言う事だろう。

俺はラトロワ中佐に促されるままに、ソファーに座る。

するとラトロワ中佐は、どこから持ってきたコップにウォッカをそそいだ。

「これは、ダルコ司令官からだ。坊やが訪ねてきた時にくれてやれとな?」

また、あの人は・・・。

俺は、並々に注がれたウォッカをなにも言わずに一気に飲み干す。

「ほぉ・・・」

ラトロワ中佐の口から、驚きの音が漏れる。

「今日は、言いたい事があって来ました。」

「なんだ?」

「中佐は、どうして俺をあの部隊に入れられてのですか?」

「別に深い意味は無い、ただ監視しやすかったからそうしただけだ。」

即答したラトロワ中佐に対して、俺は畳み掛けるように質問する。

「それだけの理由なら、俺を中佐の直属の部隊に入れればすんだ話の筈です」

そう言った俺に、ラトロワ中佐は鷹の様に鋭い瞳を向ける。

それは、俺を値踏みしているかのように感じられた。

「坊やの戦績や過去の出来事は、調べられる範囲で調べつくしている。その膨大で無駄な資料を仕事だからと、嫌々読んでいて私は思ったんだ。コイツは自分に酔った馬鹿だとな・・・」

俺はなんの反応も示さずに目だけで先を促す。

「今や衛士は貴重な人類の財産だ。そんな馬鹿でもいないよりかはいて貰った方が何かと役に立つ。そしてその根性を改めさせるためにあの舞台に坊やを入れた。あそこには、色々と訳ありな奴らが集まっているからな。・・・それで坊や、成長できたか?」

俺はそれに対して首を振った。

ラトロワ中佐の口から溜息が零れ落ちる。

「貴様の願いは、分不相応なのは理解しているか?」

ナスターシャ、さすがに報告がはやいな。

俺は、良くできた副官を思い出し口元をニヤケさせる。

「自分の願いでなくたって良いんです。生ぬるい感情に流されたって構わないんです。それでもこれが、俺の夢だから・・・」

俺はそう言うと席を立つ。

「ありがとうございます中佐、あなたのおかげで俺はあいつ等と出会えた。」

それだけを言い残し、部屋を退室しようとした俺の背中に中佐が言葉を吐いた。

「・・・いつかお前は、心も体も腐って朽ちて、人では無い物になり果てる。」

「大丈夫ですよ中佐、俺には仲間がいますから」

そして俺は扉を閉めた。

 

次の日の朝、俺は訓練兵達の前にいた。

隣には、スルト中佐もいる。

「よ~し、テメェ等喜べ!今日はシミュレーターを使っての訓練だ!」

スルト中佐がそう言うと、訓練兵達からは歓声が上がる。

そして訓練兵達はこぞってスルト中佐に意気込みを言って行く。

この光景がどれだけスルト中佐が訓練兵達から慕われているのかを、物語っていた。

その中で一際スルト中佐を慕っているのが、ヤーコフだ。

「今日こそは、あんたを倒してやるからな!?」

「良く言ったヤーコフ!俺に地面の味を教えてくれ!」

本当の親子のようだ。

すると、スルト中佐は俺の方を見る。

「これからは、五六中尉も加わるからな?皆、技術を盗めよ?」

その言葉を聞くと、訓練兵達の目がぎらつく。

この間のことをまだ根に持っているんだろうか?

これは、鍛えがいがありそうだ。

俺は、訓練兵達に見せつける様に悪い笑顔を作った。

 

それから一週間、俺は毎日のように訓練兵達に付きっきりで教導をしていた。

「ヤーコフ、お前は状況判断が悪いぞ?味方を助けようとする気持ちはよく解るし素晴らしい事だが、もっと周りを見ないと」

「あいよ」

「キール、お前は出すぎだ突撃砲は単なる飾りか?モターブレードを使う時と場合を見極めろよ?」

「はいはい」

「トーニャ、お前は緊張のしすぎだ。もっと落ち着きなさい」

「わ、解ってるわよ!」

訓練兵用のPXで飯を食べながら、各自の問題点を上げていく。

こんなことが出来るのも、俺が訓練兵達に認められたと言う事なのだろう。

「じゃ、俺は行くわ!」

そう言って席を立つ俺にPXにいた訓練兵達が野次を飛ばしてくるが俺はそれを華麗にスルーした。

 

「教導お疲れ様、ゴリン!」

「ありがとうワンコ、なんだか昔の自分を見ているようで恥ずかしいけれど楽しいよ」

俺は03小隊を集めブリーフィングルームに来ていた。

それは、これから皆で模擬戦をするからだ。

「さて、チーム編成はどうしようか?」

そう言った俺になっちゃんが溜息をつく。

「そうだろうと思って、こちらで決めてきた。」

「小隊長はどこか抜けてるものなぁ~!」

「アナ、お前もだろ?」

「なんだってー!」

「ふふふ、アナ×ゴリン、良いわね」

「オイオカマ、変な妄想してんじゃねぇよ!」

俺達はいつもの俺達に戻っていた。

本音でぶつかり合ったあの夜から、俺達の絆はより深い物になっていた。

皆が雑談を交わしながら、ああでもないこうでもないと言い合う。

俺はその中で確かな充実感を味わっていた。

その時―――。

「コード991発生、コード991発生!各員は所定位置について下さい!」

狭いブリーフィングルーム内を、圧倒的な音量で鳴り響くサイレンが緊急事態だと知らせてくる。

だが、俺達にはなんの焦りも不安も存在していなかった。

「お前達の力を俺に貸してくれ!」

「「「「了解!」」」」

 

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