Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
「おじゃましま~す。」
俺は、恐る恐る門扉を潜り家の中に入っていく。
門扉から続く道の先に家があり家の横に道場のような建物が建っている。
前を歩く沙霧さんは、背筋を真っ直ぐ伸ばし前を真っ直ぐに見据え、これぞ日本男児を字で行く男だ。
「沙霧さんは、彩峰さんとお知り合いなんですか?」
「僕は、彩峰中将の部下だよ。それと、君は軍に所属していないのだろう?なら、 そんなに固くならなくてもかまわないよ。」
俺は、ほっと安心して緊張の糸を切る。
「それは、助かるわ!改めてよろしく!」
「こちらこそ!」
俺と沙霧はどちらかともなく握手をする。
家の扉を沙霧が開け中に入っていく、俺もつられて中に入る。
家の中は、普通の家とそう変わりは無い感じだった。
「おじゃまします!!」
俺は、気を引き締めなおし声を出す。
すると、廊下の奥から多恵と同い年位の女の子が出てきた。
「誰?」
その子は、俺の方を見て聞いてきた。
「俺は、築地 和真って言うんやよろしくな?今日は彩峰さんに手紙を届けに来たんよ?」
「私に?」
「へ?君が父さんの知り合いの彩峰さん?」
「さぁ?」
「さぁ?って……。」
俺が、この子不思議系か!と考えていると横から咳払いが聞こえてきた。
「ゴホン!この子は彩峰 慧(あやみね けい)彩峰中将の娘だ。そして、君の手紙を渡す相手は慧じゃない。」
「彩峰 慧 よろしく。」
「俺は、築地 和真や!よろしく。」
「尚哉兄さん、父さんを連れて行くから客間まで案内してあげて。」
慧は、そう言うと廊下を走って行った。
「行くぞ、彩峰中将を待たせる訳にはいかないからな!」
尚哉は、さっさと歩いて行く。
「あ、おい置いてくなよ!!」
俺と尚哉が客間で待っていると彩峰中将が部屋に入ってきた。
「話は築地から聞いているよ。君が和真君だね?」
彩峰中将は、表情は柔らかく良いお父さんを絵に描いたような人だが纏っている空気が普通の人とは明らかに違う。尚哉に感じていた軍人の空気もあるがそれ以外にも色々な空気を纏っていて、その空気がこの人を大きく見せていた。
「お初にお目にかかります!彩峰中将!自分は築地三郎の息子、築地和真です。」
「はははははは!そんなに畏まらなくて良いよ?君はお客さんだ。客は持成さなければならない、そうだろ?それに、私のことは中将なんて呼ばなくて良いよ。君は軍人ではないのだから。」
「ありがとうございます!それじゃ、彩峰さんと呼ばせてもらいます。それと、これが父さんからの手紙です。」
俺は、うんうんと頷いている彩峰さんに手紙を渡す。
「確かに受け取ったよ。和真君、三郎は元気にしているかい?」
「はい!俺が困ってしまう程に元気ですよ!」
「そうか・・・。良かった。アイツは体が弱いくせに人助けがしたいんだ!と何も言わずに日本を出て行ったから心配していたんだ。」
「父さんは頑固ですから……。」
それから、色々と話をした。
尚哉は、部隊で女子から人気があるとか、尚哉はメガネ萌えとか、尚哉の友達になってくれとか、慧が最近かわいくてしかたがない!とか、慧が最近甘えてくれないとか、慧が最近乙女の顔になるこれは男ができたのだろうか?とか、私はその男を殺してしまうかもしれないとか、そもそも尚哉は慧のことをどう思っているのか?とか、色々である。
あれ?後半ほとんど慧のことじゃね?と思っていると空が夕焼けになっていることに気が付く。
「ずいぶん、長く話込んでしまったね。すまないね、和真君。君にも予定があっただろうに……。」
「いえ、気にしないで下さい!俺も色々話せて嬉しかったです。」
「そうか、そう言って貰えると助かる。そうだ!今日は泊って行きなさい!そして、慧について話合おうじゃないか?」
「えっ!!」
「そうだ!それが良い!そうと決まれば妻に言いに行かなければ!」
彩峰さんがそう言うと、尚哉が巻き込まれる危険を察知しいち早く行動に出る。
「それでしたら、僕はこの辺りでお暇します。彩峰中将、本日はありがとうございました!」
敬礼して部屋を出て行こうとする尚哉を俺が引き留める。
「彩峰さん!尚哉も一緒に良いですか?」
「あぁ!そのつもりだよ!尚哉、今夜泊って行きなさい」
「で、ですが!?」
「大丈夫!君の家には私が連絡しておこう」
そう言われると尚哉は反論ができない。
「それに、君とは慧のことについて話合わなければいけないからね?」
彩峰さんの怖い笑顔を見て尚哉の顔が青くなる。
尚哉は俺のそばに来て耳元で話始めた。
「覚えていろよ!和真!此度の件いつか報いを受けさせるからな!!」
「大丈夫やって、尚哉!地獄には一緒に行ったるから、安心し!!」
「ははははは!何だ?もう仲良しじゃないか!」
その光景を扉の隙間から見ていた慧は「何このカオス……。」と呟いた。
その日の夕食の時間、俺は泊めてもらうのだから晩御飯くらいは作らせてくれと奥さんに相談し許可を貰ってキッチンを借してもらった。
「そいじゃ、今日は人数おるし焼きそばつくろか!」
冷蔵庫の中を見てみると材料は十分にそろっていた。
俺が、鼻歌交じりに作っていると慧が近づいてきた。
「何、作っているの?」
「何?って焼きそばやで?食ったことないんか?」
俺がそう聞くとコクリと頷く。
「じゃ、楽しみにしときメッチャおいしいから!」
「わかった。待ってる。」
慧はそう言うとキッチンから出て行った。
俺は、料理を作り終え大量に作った焼きそばをテーブルに運ぶ。
俺の料理を見て奥さんが褒めてくれた。
皆、席につき彩峰さんの号令で食べ始める。
皆、おいしいと言ってくれたのだが慧 だけ反応が無い、俺は不安になって聞いてみた。
「慧?口に合わんかったかな?」
俺がそう聞くと、慧は目にも留まらない速さで俺の横に来て俺の手を取る。
そして、一言……。
「貴方が神か!!」
「へ?」
「今、私の中で何かが目覚めた!あなたの事はこれから親しみを込めて神と呼んでも良いですか?」
俺は喜んでもらえて良かったと思う反面、神は無いやろと思っていた。
そこで、ふと尚哉のことを思い出す。
そう言えば、兄妹ちゃうのに尚哉のこと兄さんと呼んでたな!俺にもそうしてもらおかな!!
「慧?神は大袈裟やって!やから、親しみも込めてこれからは、和真兄さんと呼んで?」
「分かった!和真兄さん!!」
その時俺は、周りから視線を感じてそちらの方を見る。
奥さんは、「あらあらまぁまぁ!」
尚哉は、なぜか俺に向かって手を合わせ「南無阿弥陀仏」と呟いている。
彩峰さんは、「ふふふふふふふ・・・!そうか和真君、君も私から慧を奪うつもりなんだね?」
ダークサイドに落ちていた。
「ふふふふ!出る杭は打たなければならない……!」
「え、いやこれは・・・」
「さぁ、和真君!少し道場までお付き合い願えるかな?」
恐い、めっちゃ怖い!今まで仏の顔やったのに今は修羅の顔になっとる。
俺は、助けを求めるために尚哉に視線を送るが。
「尚哉、君もついてきてくれ。和真君とお話しするのを手伝ってほしい……。」
「は!若輩の身ですが、精一杯殺らせていただきます!」
先手を打たれた。
それに尚哉!やるの字が違うやろ!
「け、慧!兄さんを助けてくれ!!」
俺は最終兵器を使をうとするが
「……」
焼きそばに必死でそれどころではない感じであった。
「か、神は俺を見捨てたもうたのか・・・。」
俺は、そのまま引きずられて逝った。
道場についた俺は尚哉と並んで正座をし彩峰さんに向かい合っている形になっている。
尚哉は、あれ?俺こっち側なの?みたいな顔をしている。
「さて、尚哉に和真君いや和真!君達は慧に相応しい男になってもらわなければならない!しからば、私が直に無理やりに相応しい男にしてあげよう。さぁ!木刀を取ってきなさい……。」
その後、俺と尚哉は気絶するまで鍛錬をさせられた。
もっとも、俺は開始後すぐに力尽きたのだが……。
あの二人、体力が鬼である。
ほぼ同時に起き上がった俺達は周りを見ると、すでに外は真っ暗で彩峰さんの姿も無かった。
「貴様のせいで僕も酷い目に合わされたじゃないか!!」
「いや、そこはお互い様やろ?それに、慧に相応しい男て……。俺は慧のこと妹としか見てへんのやけどな?」
「それは、僕も同じだ。だが、慧をどこぞの馬の骨にやるのは気に入らない!」
「そこは、共感するわ。けど、尚哉って慧の許嫁やろ?」
「な、なぜ知っている!?」
「稽古の最中彩峰さん叫んでたやん。慧の許嫁になろう男がその程度でどうする!って。」
「た、たしかに……。」
「でも、慧はメガネせんのやろ?じゃ、尚哉のストライクゾーンに入らんか……。」
「め、眼鏡は関係ない!!」
「でも、メガネ萌えなんやろ?彩峰さんが言うてたから間違いないやろ。」
「うっ……。確かに眼鏡をかけた女性が好みだが……。そういう和真の好みはなんだ!?」
「俺か?俺は、乳がデカい女性がええなぁ、そんで、年上なんが良い!!」
「そうか……。お前は巨乳派か。慧は、まだ成長期だから可能性があるが。」
「でも、俺は年上が良いからな。慧はストライクゾーンには入らへんよ。」
「そうか……。お前なら、とも思ったのだがな……。」
「なんや?今日会ったばかりの奴を信用してええんか?」
「あぁ、お前は芯がしっかりしているからな。他の男よりましだ。」
「それはおおきにな!俺は、尚哉と慧はお似合いやと思ってんけどな?」
「そうか、慧が眼鏡っ子なら良かったのだが……。」
「まぁ、メガネ美人もええもんな?」
「あぁ、巨乳もありだと思うぞ?」
「だが、巨乳よりも眼鏡のほうが良い。」
「やけど、メガネよりも巨乳のほうが良い。」
「「────ッ!!」」
「今、なんと申した?」
「今、なんて言った?」
「眼鏡系美女が巨乳に劣るだと?」
「巨乳系美女がメガネに劣るやと?」
俺達の間に一発触発の空気が流れる。そして、どちらかともなく木刀を手にゆらりと立ち上がる。
「貴様には、眼鏡のすばらしさを体に教えてやらんといかんな。」
尚哉が構える
「メガネなんて飾りに心奪われとる奴には巨乳のすばらしさを余すことなく教え込んだるわ。」
「「かかってこいや!!」」
男のプライドを賭けた戦いの火蓋が切って落とされた。
もの凄く気合を入れていた俺だが、呆気なくボコボコにされ気を失った。
気を失う瞬間に見た尚哉の顔が憎たらしくて、俺は次こそは勝つと心に決めた。
朝、目を覚ますと俺は、布団で寝かされていた。
「くそ!尚哉に巨乳のすばらしさを教えることができんかった……。」
俺は、自分の不甲斐無さに涙した。
そして、あれ彩峰さんて単身赴任ちゃうかったっけ?
と思い出したが、あぁ一家の皆着いてきたんか!と納得することにした。
その後、朝飯をすませお別れをすることになるのだが尚哉の顔を見ると勝ち誇ってやがったのでイライラしてつい言ってしまった。
「次会う時は俺が勝たせてもらう!」
「貴様に負けるほど僕は弱くない。いつでも来るがいい……。」
「そうだな、和真は自分を鍛えるのにいつでも道場を使ってくれて構わないよ!」
「ありがとうございます!彩峰さん!!」
俺達が別れの挨拶をしていると慧が何かを言いたそうにしていた。
「慧、次に来たときも焼きそば作ったるからな?」
俺がそう言うと慧は凄く綺麗な笑顔をしてくれた。
「うん、待ってる!」
「おう!じゃ、お世話になりました。」
俺は、後ろ髪引かれる思いだったが一度も振り返ることなく彩峰宅を後にした。
「さて、大阪に向かうか……。」
俺は、何を見ても耐えられるように心を強くもとうと決めた。
大阪駅に着くと若干違和感があるが、見慣れた景色に懐かしさが込み上げてくる。
「いかん、心を強く持つと決めたやんけ!泣いたらあかん。」
もう一度決心しなおして俺は、列車を乗り継いで自宅に向かう。
片田舎にある小さな駅を降りて見た景色は、俺が小さかった頃の近所の風景そのままだった。
俺は、逸る気持ちを抑え足早に自宅に向かう。
「この階段を上った先が家か……。よし!!」
俺は、自分に大丈夫大丈夫と言い聞かせ階段を上る。
一段一段上るごとに足が重くなる、見てしまって良いのか?家族がいるのか?俺のことを覚えているだろうか?そういや、この年には俺ガキやったな、そう考えると足が鉛のように感じる。
その一方で早く会いたい、会って今まで帰るのが遅れたことを謝りたい、親孝行を一杯したい、一杯甘えたい。
そんな気持ちが鉛の足を動かしていく。
そして、階段を上りきり下を向いていた顔を持ち上げる。
そこに、何があっても耐えられる耐えてみせると心に誓い頭を上げる。
そこには……。
何も無かった。
そう何も無いのである。
そこには、家なんて物は無く空地すらないそこだけが世界から忘れられたように何もなかった。
俺は、その景色を目の当たりにして口を開けたまま崩れ落ちてしまう。
「─────ッ!!な、何でなんもないんや?俺は、確かにここに住んで……。並行世界やとしてもガキの俺がおるはずやろ?なのに、なんで……。」
俺は、心を強く持つと大丈夫だと決めていたのに目から涙が溢れてくる。
今まで耐えていたものが器から溢れ出すように、余分な物を押し出すように涙が溢れてくる。
「うっぐぅぁぁああああああああ!!」
とうとう、抑えきれずに俺は泣き叫ぶ。
ここに俺はいない、家族もいない、思い出も無い、すべて無くなってしまった。
俺は、この世界でただ一人なのだと考えてしまうと涙を止めることができない。
そんな時、誰かが俺をそっと抱きしめる。
壊れ物を扱う様に大切な物を守る様に強くけれど優しく包み込むように俺を抱きしめる。
誰なのかは解らないが、俺はこの太陽の様に暖かい存在を手放したくなくて、子供の様にただ縋りつくことしかできなかった。
どれだけの時間泣いていたのか知らないが、この太陽はずっと泣き止むまで抱きしめてくれていた。
俺は、落ち着くと急に恥ずかしくなり慌てて太陽を遠ざける。
その時、太陽から声がした。
「もうよろしいのですか?」
「あ、あのすみません……。お恥ずかしい所をお見せしました。」
「別に良いのですよ?私の胸を貸すだけであなたの気持ちが紛れるならば……。」
「ありがとうございます。」
俺は、太陽の姿を見るために顔を上げる。
そこにいたのは、儚くて、でもすべてを包む太陽のような少女だった。
俺は、女の子に縋り付いて泣いていたのかと恥ずかしくなり顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「まだ御加減がよろしくないのですか?これも何かの縁、力になりますよ?」
「い、いえ!大丈夫です!」
「そうですか……。ところで、どうしてこのような所でそなたは泣いておられたのですか?」
なんだかこの子の前だと隠しごとができないような気がして、俺は話すことにした。
「自分の居場所が無くなった……。この世界で1人になってしまった。そんな気がしてしまって……。」
「それで泣いておられたのですか?」
「はい……。」
俺が、返事を返すと女の子は少し考えてから提案してきた。
「少し、私とお話しをしませんか?」
「え?」
「まだまだ微弱の身ですが、話をお聞かせください。もしかすると気が楽になるかもしれません。」
俺は、その案に乗ることにした。
いや、断ることが出来なかった。
この子にはそんな力が人を惹き付ける力があるのだと俺は無意識に理解していた。
俺達は、近くの公園のベンチに座り話をすることにした。
「まずは、自己紹介をさせていただきます。私は 煌武院 悠陽(こうぶいん ゆうひ)です。」
「俺は、築地 和真です。さっきはみっともないとこ見してごめんな?」
「別に構わないのですよ?そなたは、1人で抱え込んでしまう、時に人に甘えることを知るべきです。」
俺は、この短時間で俺の心をを見ているこの子の観察眼に少しばかり驚いた。
「俺は、ここでは人に頼ってばかりやよ?俺1人じゃ何もできひん、きっと死んでたはずや……。」
「ですから、人に甘えてはいけないと?」
「これ以上迷惑はかけられへん……。」
「そなたは、少し勘違いをしているのかも知れません。」
「な!俺は別に勘違いなんか……。」
「そなたは、人に頼っていると申しました。それは、その人に甘えていると言うことではないのですか?」
「───ッ!」
「この世に生きる物すべて、誰かに甘えていると私は思います。誰かに甘えられ甘える、そうすることで世界は、人は、そのことを認識するこができ孤独になることなく回っているのだと……。それは、頼ることと違いがありますか?そなたは、誰かに頼られたことはないのですか?」
「ある……。あるよ!町の皆も父さんも多恵も俺のことを頼ってくれてる。」
「でしたら、そなたは1人ではありません。そなたも世界の一部です。決して孤独などではありません。それに、そなたは私に甘えて下さいました。そなたが覚えていて下さることで私は孤独にはなりません。それに、私もあなたのことを忘れません。ですからあなたが、この先孤独になることは無いのです。」
俺は、その言葉を聞いてまた泣き出してしまった。
今度は見られない様に顔を手で隠しながら、声がでるのも抑えて、それでも悠陽は俺の頭を横から抱え、また抱きしめてくれた。
俺は、二度目の嬉し泣きを体験することになった。
「なんどもごめんな?」
「御気になさらず。民の事を第一に考え行動するのが私の務めですから。」
俺は、この歳でこのようなことが言えるのは凄いことなのか、それとも悲しいことなのか答えがだせない。
「それより、和真?」
「なんや?なんでも言うてや?」
「それでしたら遠慮なく言わせていただきます。そなたに甘えさせていただいてもよろしいですか?」
「おう!俺ばっかりじゃ不公平やしな!ええで!!」
「この辺りを案内してほしいのです。」
少し恥ずかしそうに悠陽が言う。
「任しといて!!それじゃ行こか?えぇと、煌武院さん。」
「呼び難いのでしたら悠陽で構いません。」
「それじゃ、改めて案内任せて!悠陽。」
「はい、任せます!」
やっと、年相応の笑顔を見せてくれたと内心ガッツポーズをした。
「それじゃ、まずはこの公園を案内するで?」
「はい!」
そこから、公園を散歩しながら色々話をして出店の合成クレープを食べたりした。
初めてクレープを食べたのか悠陽は食べ方を知らず、ナイフとフォークを店の人に頼んだりしていた。
その時店の人が驚いていたが、俺は食べ方を知らないことに驚いているのだと余り気にしないことにした。
最後に立ちよったのが、俺がガキの頃によく来ていた駄菓子屋である。
悠陽は駄菓子屋が珍しいのか、キョロキョロしていた。
そんな悠陽に俺は、何かほしい物があるかを聞いた。
「和真、これは何ですか?」
「これは、キナコ棒言うてなお菓子の部分を食べて爪楊枝の先が赤く塗ってあったらもう一本もらえるんよ?」
「それは、素晴らしいですね!?」
「じゃ、それ買おか!」
「よろしいのですか?先ほどのクレープも出していただいたのに・・・。」
「甘えてって言うたやろ?これくらい出させて?」
「分かりました。そなたに感謝します。」
「そんな、堅苦しくせんでええよ?俺達友達やろ?」
「友達……、ですか?」
「そ、名前で呼び合って一緒に遊ぶ!十分友達や!」
「そう……、ですか……。」
「あれ?もしかして嫌やった?」
「そんなことはありません!和真、そなたは私の友達です!」
「うんうん!」
俺はつい嬉しくて頭を撫でてしまう。
悠陽は驚いていたがされるがままになっていた。
「おっと、ごめんな?それじゃ買ってくるわ!」
悠陽は手が頭から離れると少し寂しそうな顔をしていたが、俺は深く追求しなかった。
キナコ棒を俺と悠陽の二つ買い1つを渡す。
「げっ!俺のは外れか~。悠陽は?」
「か、和真!当たりました!当たりましたよ!」
もの凄く喜んでいた。
俺は、その姿に微笑みながら駄菓子屋のおばちゃんにもう一つ貰うために店の中に入っていく。
「おばちゃ~ん!当たったで!もう1つ頂戴?」
「ごめんね?もう売り切れなのよ。別の子がさっき買って行ったので最後だったの。」
「そっか……。それやったら、しゃ~ないか。」
「お詫びに、そこにある人形上げるから!」
「ほんまに?おばちゃんおおきにな!」
俺は、悠陽に選んでもらうために店内に悠陽を連れてくる。
「キナコ棒の代わりにこの中から1つ人形くれるって、どれにする?」
悠陽は悩むが決められないようだ。
「和真が選んでください!」
「俺が選んでええの?」
「はい!」
「じゃ、これにしよか!」
俺は、猫の人形を手渡す。
だいたい普通の猫と同じ大きさ位の人形である。
やっぱり、大きいのが得やんな!という考えからこれを選んだ。
俺が、渡した人形を悠陽は大事そうに抱え込む。
「和真、そなたに感謝します。この子は大切にします。」
「そうしたって、その方がそいつも喜ぶはずやで?」
俺は、そう言って人形を指差す。
すると悠陽はクスクス笑いながら、「はい!」と見惚れる様な笑顔をしてくれた。
俺達は、そのまま俺達が出会った場所まで戻る、そこには、碧色の髪の女性が待っていた。
「悠陽殿下!どちらに行かれていらしたのですか!?探したのですよ!?」
「すまないことをした。真耶、私なら大丈夫です。この方が良くしてくださいました。」
悠陽がそう言うと真那さんは、俺の事を睨み付けてくる。
「貴様!殿下に何もしていないだろうな!!」
俺は、本能でこの人に逆らっちゃいけないと思い。直立不動で返事をする。
「べ、別に何もしていません!少し、遊んでいただけです。」
俺の答えを聞いて真耶さんの眉毛が吊り上る。
「貴様……、殿下と遊ぶだと?身の程をわきまえろ!!」
俺は、その物言いに言い返そうとするが悠陽が待ったを掛ける。
「真耶!良い、私が許した。この者に責は無い。」
「で、ですが!」
「くどい!!私の言が聞けぬと申すか!!」
俺は、悠陽のさっきまでとの違いに目を白黒させていた。
「和真、そなたの御蔭で民の生活を知ることができました。そなたに心より感謝します。」
「え?えと、どういたしまして……。俺は、悠陽に出会えてよかったで?あのままやったら、俺は気付くことができひんまんまやったからな。やから、俺の方が感謝せなあかん……。
ありがとうな!悠陽!俺は、お前に救われた!お前と友達になれてほんまに良かったで?やから、また会うことがあったらそん時はまた遊ぼな!」
俺の言葉を聞いて悠陽は驚いていたが、すぐに笑顔になり「はい!こちらこそ、良かったです。」と返事をしてくれた。
今度は、真那さんが目を白黒していた。
「それでは、私達はこの辺りで失礼させていただきます。和真またお会いしましょう。」
「あぁ!またな悠陽!!」
悠陽はその言うと高そうな車に乗り込む、真耶さんも一緒に乗り込むが最後まであの人は俺の事を睨んでいた。
俺は、何かしたかな?と思いつつも、あの知的メガネ美人は尚哉にストライクど真ん中ちゃうか?と考えていた。
後に自分がどれだけ無礼な態度をとっていたのか知ることになるのだが、それはもっと先のことである。
今回は、大分長い話になってしまいましたが、最後まで読んで頂きありがとうございます。少し話の補足説明をさせて頂きます。
大阪にクレープ屋が存在するのは、出店の店主がアメリカで食べたクレープに感激し、日本でも流行させようと頑張っている設定です。
悠陽が頭を撫でられてされるがままになり、手を離すと寂しそうな顔をしたのは、ナデポなどでは無く、昔父親に撫でられていた事を思い出していたからです。