Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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受け継ぐ魂

アラスカ租借地ソ連領内ネフレ支社

 窓すらな存在しない暗い室内、四角い箱のような密閉された空間には数人の男が高級な革製のイスに深く腰掛けていた。

 1つの小さなディスプレイの明かりしか存在しないその部屋は、お互いの顔すら識別できないほどに淀んでいた。

 今では高級な嗜好品と化したタバコの煙のせいで、室内の居心地の悪さをさらに加速させる。

 その嗜好品をまずそうに味わう男達。

 室内には、換気扇の音しか聞こえてこない。

 男達のうちの1人がタバコを灰皿に押し付けると、ディスプレイにノイズが走った。

「着弾しましたな……」 

 重い空気をさらに重くする一言が発せられる。

「一発数十億する核ミサイルを五発、それも貴重な戦術機を自ら捨てエヴェンスク基地すら焼き払ってしまった……」

 1人の男が頭を抱えそう嘆く。

「BETA進行に対して、核による殲滅は意味をなさない。何故なら、奴らは次々と溢れ出しますからな……」

 1人の男は髭を撫でながら後の言い訳を考える。

「そして、その事を一番よく知るのもまた、我々だ……。そうですね?同志書記長」

「その通りだ……。だが、エヴェンスクにハイヴが建造されれば我々はより多くのG元素を入手でき、国連の無能共にも言い訳は出来る。なにせ、我々は戦略核を用いてまで、BETA進行を食い止めようとしたのだから。そうですな、同志レオ」

「はい、その通りですよ。……ハイヴ攻略など、今となっては容易い。」

 レオは足を組みそう言い放つ。

 その姿からは、絶対的な余裕しか見えない。

 爆破の余波により、乱れた画面を横目で確認する。

 その瞳は冷め切っていた。

 そこでなにがあるのか、自分にはまったく関係が無い。

 どれだけの地獄が再現されていようとも気にもしない。

 その瞳はそう物語っていた。

「……G弾、確かにあれならばハイヴなどあってないようなものだろうな。だが我々の手元にはG元素もなく技術も無い、G弾を作ることなど現在不可能だ」

「御安心下さい書記長、G弾の開発データは差し上げますよ。なんなら、研究施設を西側にばれることなく建設もいたしましょう。あぁそれと、僅かばかりですがG元素を御譲りいたしましょうか?」

 レオのその言葉に緊張が増す。

「ジ、G元素を一体どこで!?それに、譲るだと!?」

 会議に参加していた別の男が脂汗をにじませ声を荒げた。

「それは、企業秘密です。ですが我々は、それをご提供できる。」

 書記長は深いため息を吐き、脳に酸素を送り込もうと息を吸い込む。

「……そこまでして、なにが望みだ同志レオ」

 その質問にレオはキョトンとし笑顔を作った。

「現在もっとも多くのハイヴを抱えているのは、あなた方だ。そして、BETAによって荒廃させられた国家にたいする影響力もある。BETA対戦後、この世界に君臨するのは、アメリカではない。……あなた方だ。これは、先行投資ですよ書記長」

 そして、レオと書記長はそれぞれ立ち上がり握手をした。

「……」

 書記長はなにも言わない。

 訝しんでいるようで、怒っているようで、それでいて嬉しそう。

 そんな表情をしていた。

「今後とも我社を御贔屓にお願いしますよ。同志、書記長」

 対するレオは、善意しか見えない笑顔をしていた。

 

 室内にいたソ連共産党首脳部は、皆が困惑した顔をしながら退室していく。

 それぞれが、先程のレオの発言の真意を確かめようと何を企んでいるのか探ろうと頭を回転させていた。

 だが、その困惑しきった顔の中には確かな、優越感が含まれていた。

 そして誰もがこうも考えていた。

 これで私の将来は安泰だと……。

 

 室内にいた者達が退室した後淀んだ室内にただ1人取り残されたレオは、先程の笑顔の仮面を脱ぎ捨てる。

 仮面の下には、嫌悪感しか存在していなかった。

「あの程度の技術や情報など、いくらでもくれてやる。だから、せいぜい踊ってくれよ豚共、後一年だ。お前達の時代は……」

 

2001年1月 ネフレ樺太基地

 俺は、絶対防衛ラインとして築かれた要塞山脈を病院の窓越しに眺めていた。

 ネフレ樺太基地……、海を隔て大陸から一番短い所で僅か7kmに位置しているこの島は、常にブラゴエスチェンスクハイヴから訪れるBETAに対し防衛戦を行っている。

 防衛の要をしているのは、樺太を縦半分に分断させている要塞山だ。

 人により作り出されたこの山は全長790kmにも及び、世界最大の前線基地としても有名である。

 そして、この要塞山から放たれる無数の攻撃によりBETAを葬っている。

 俺はその要塞山を安全な太平洋側から眺めている。

 俺は生きていた。

 あの灼熱地獄の中から生還することが出来た。

 代わりに右手と右目を失ってしまったが……。

「はぁ……」

 溜息とともにベッドから立ち上がる。

 素足が床に直接触れひんやりと足裏の体温を下げる。

 満足にシャワーすら浴びていないせいもあり、足裏を床から浮かせれば粘性の音が聞こえて来る。

 少し臭うだろうか?

 そんな事を考えながら、病室に用意された鏡の前に移動した。

 鏡に映る自分を確かめる。

 重度の火傷を負っていた俺の体は元通りになっていた。

 体内のナノマシン、そして新たに体内に入れられたナノマシンにより細胞を無理矢理活性化させ元の状態へと戻していた。

 そのせいなのか、俺の体からは色素がわずかに抜け落ちていた。

 細胞が無理矢理活性化されたことにより伸びきった前髪を見る。

 それは、右目を隠すようにされていた。

 顔半分を覆い隠す前髪を鬱陶しそうに指でなぞる。

 色素を失った俺の髪の毛は、僅かに灰色になっていた。

 黒が混ざった灰色である。

 年老いてしまった自分の髪を眺め俺はさらに深いため息をつく。

「はぁ……」

 そして俺は、無い筈の右手で前髪を掻き上げ、両目で確認する。

 俺の失われた体のパーツは、疑似生体によりなおされた。

 どんどん生まれたままの体から離れていく自分の体を考えると、元の世界の両親に申し訳ない気持ちになってくる。

「そんで、一番驚いたのがこれやんな」

 鏡に映る俺の右目を確認すると、それはすぐに解る。

 俺の本来の瞳の色は黒色だ。

 だが、俺の新たな右目はキレイな緑色をしていた。

 これは、疑似生体の弊害らしいがそれでも本来はうすい色にぼやかして誤魔化しているらしい。

 それが俺の場合、ナノマシンの色が瞳にそのまま出てきてしまった。

 俺は左右で色の違う俺の目を見て呟いた。

「……気持ち悪」

 そして俺は掻き上げていた前髪を元に戻し、ベッドに横になる。

「たまに、海賊みたいな眼帯してる人を見たことがあったけど、納得やわ」

 当初はファッションかなにかだと思っていたが、当事者になって理解した。

「こんな目、人には見せられへんわな」

 そして俺は、白い病室の天上を見つめていることに飽き目蓋を閉じることにした。

 

 同時刻、綺麗に太陽の光を反射する銀髪をなびかせ、病院に入ってくる人がいた。

 病院勤めの男が振り向く程の美人は、慣れた動作で総合受付に向かう。

 そして、受付窓口で仕事をしていた事務員のおばさんに話掛けた。

「あの~、すみません」

「あらストーちゃん、こんにちは!」

 窓口のおばさんも、毎日来るストーとはすでに顔見知りとなっており気軽に話しかける。

「はいおばさん、いつもお世話になってます」

 ストーは、恥ずかしそうに頬をピンク色に染め笑顔で返事を返した。

 すると、ストーが手に持つ物に気が付いた窓口のおばさんはそれを確認するように、ストーに問いかけた。

「あら、それは……」

 ストーは、ハッとし手に持っていた袋の中身を見せる。

「はい、リンゴです。もう大丈夫ですよね?」

 ストーが心配そうに聞くと、おばさんは笑顔で答えた。

「えぇ、大丈夫よ。本当にストーちゃんは、彼の事が好きなのね?」

 そう言われた瞬間、ストーの顔はリンゴに負けないくらいに赤くなった。

「はッ、えっ、その……、はい……」

 手をワタワタさせ、袋をガサガサ鳴らしながらストーは言い訳を考えるが、結局本音を言ってしまった。

「ふふふ、ご馳走様。リンゴの持ち込みを許可します。なにかあれば直ぐにお呼び下さい」

「ありがとうございます!」

 ストーはそう言って頭を下げ、走って目的の病室に向かおうとする。

「院内では走らないでくださ~い!」

 だが、おばさんに静止させられしまった。

「す、すみませ~ん!」

 ストーはそう言うと、走るのを止め速足で向かう。

 だがその足取りはスキップをしているようだった。

 

「お邪魔しま~す」

 ストーは、静かに扉を開け目的の病室内に踏み込む。

 洗面台と鏡、それに花瓶と物騒で不釣り合いなククリナイフが置かれた台。

 後は前面白で覆われた無色な室内にストーが加わることで、室内に華やかさが生まれた。

 個室のベッドのすぐそばにある窓は開けており、風によりカーテンがはためいている。

 ストーが歩みを進めると、カツカツと靴の音が響く。

「もぅ、窓を開けっ放しにしてちゃ風邪を引いちゃうよ?」

 ストーは、仕方がないなぁ、と言いながら窓を閉める。

 そして手に持っていた袋を台の上に置き、ベッドに腰掛けた。

「ねぇ、和君?」

 ストーが名前を呼ぶが返事がない。

「なんだ、寝てしまってたんだね……」

 良く耳を澄ませば、和真の寝息が聞こえて来る。

 ストーはそれを幸せそうに聞きながら、和真の頬に手を添えた。

「心配、したんだからね?」

 そう言いながらもストーの表情は穏やかだった。

 そして、頬を撫でるばかりでは飽き足りないストーは人差し指で和真の頬をつつく。

 そこにある存在を慈しむように、母が子供の寝顔に見とれるように、ストーは和真の寝顔を楽しんだ。

 そして、ストーはふと思い出した。

 ここ最近、あれをしていなかったと……。

 それに気が付いたストーは、誰もいないはずの室内をキョロキョロと見回す。

「……よし」

 胸の前でガッッポーズを小さくした後、ストーはベッドに入る。

 寝る和真の下半身の上に座り込み、ストーは息を整える。

「……この体でするのは、初めて、かな?」

 心臓のバクバクする音を確かめるように大きくなった胸に手を乗せる。

 ほんの一年前ならば、ここまで緊張することはなかった。

 体が小さかったからお互いに意識していなかったと言うのもあるかもしれない。

 私もただ甘えからそうしていただけだったし……。

 そう考えたストーは、同時に別のことも考えた。

 でも、大人の体になってこう言うことをするのは何故だかいけない気がする。

 歯止めが利かなくなってしまうような気がしてしまう。

 そう考えたストーは勢いよく頭を左右に振る。

「そ、そんなことないよ!」

 心臓の音がさらに大きくなる。

「で、でも、大人になった私を和君も意識してくれていた筈、だよね?」

 ストーは、ピンク色の湿った唇に指を添える。

「それに、メルから貰った本にもどうすれば良いか書いていたし……」

 両手を和真の腹部に乗せる。

 和真の暖かさが伝わってくる。

 そして、両手をベッドに乗せ上半身を前に倒し和真の体を這うように移動する。

 その姿は、獲物をしとめた雌豹のようだ。

 和真の顔はストーの顔のすぐ目の前にあった。

 ストーの瞳が潤む。

 唾液の分泌量が増していく。

 体が火照ってくる。

 そして、まともに体を洗っていなかった和真の体臭がストーの思考を鈍らせた。

「……私、どうしちゃったのかな?……もぅ、なにも考えられないよ」

 ストーの銀髪がカーテンのように外界からストーと和真を隠してしまう。

「……和君」

 そして、ストーの顔は和真に近づいて行く。

 湿った口を開け、獲物にしゃぶりつこうとする。

 

そして―――――。

 

「あむっ」

 和真の首元にしゃぶりついた。

「あむっ、あむあむあむ」

 幸せ一杯の笑顔で和真の首元を甘噛みする。

 逆に和真の顔は苦しそうだ。

 和真達を後ろから見れば、見ちゃいけませんよ!な現場だが、前から見れば逆に危ない現場である。

 ストーの喜びを表すように、和真の首筋を唾液が流れ落ちた。

その時――――。

 ストーの両肩が、ガッっと掴まれ体ごと持ち上げられた。

「……入院患者の俺になにをしているんだ、ストー?」

 冷ややかな視線を向ける和真に対しストーは。

「え、えへへへ……」

 笑って誤魔化した。

 

「良いかストー、仮にも俺はケガをしていてだな……」

「……はい」

 ベッドの上ではおかしな現場が出来上がっていた。

 和真とストーはお互いに正座で向かい合っている。

 そして、ストーは和真に説教をされていた。

「仮にもそんな俺にだな――――。」

「はい……」

 かれこれ説教は、一時間は続いていた。

 和真は本気で怒っている訳ではない。

 その事をストーも理解しているようで、お互いに少し演技をしているようであった。

 

「おっじゃましま~す!」

「つ、月子さん!院内では静かに!」

「園子、あんたの声が一番大きいわよ……」

「ち、千夏さ~ん!」

 賑やかな連中が来てしまった。

 俺は額に手を置き言った。

「人の病室の前でなにをしてるんですか、あなた達は……」

 俺の声を聞いた三人は笑いながら入ってくる。

「よっ!元気にしてっかぁ~?」

 月子さんが、片手を上げ言ってくる。

「綺麗な体に戻ったじゃない!」

 千夏さんが、俺の体を嘗め回す様に見て言ってくる。

「本当によかったです……」

 泣きそうになりながら園子さんが言ってくる。

 そんな三人に俺は笑顔で言った。

「お久しぶりです。月子さん、千夏さん、園子さん!」

 すると月子さんがある物を見つけ、紫色の長髪を振り回し駆け寄った。

「あっ!リンゴじゃ~ん、しかもこれ天然物かよ!千夏ー、これ切ってよ!」

 そう言って袋の中をガサゴソ漁り、リンゴを1つ取り出し千夏さんに投げて渡す。

「だ、ダメですよ月子さん!それは、和真さんのですよ!?」

「固い事言うなよ園子!これ食べても良いよな!?」

 月子さんが、ストーにそう聞くとストーもそれに答えた。

「はい、一杯ありますから皆さんで食べましょう!」

「やった~~~!」

「ちょっと待て、それは俺のだろ!?俺に聞いて下さいよ!?」

「ケチ臭いこと言ってっと、モテねぇぞ?」

「別にモテなくて結構ですッ!」

 俺達が口論をしていると、いつもの通り千夏さんが仲裁に入ってきた。

「まぁまぁ、こんなに一杯あるんだし、ねっ?」

 千夏さんにそう言われ、俺は笑顔で返した。

「はい、皆で食べましょう!」

「ちょ、アタシの時と態度ちがくね?」

「そんな事はないですよ?」

「まぁまぁ、ストーも切り分けるの手伝って!」

「はい!」

 

 シャクシャクとリンゴを食べる音が響く。

「うんめぇーッ!」

「本当に美味しいです!」

「うん、さすが天然物は違うわぁ……」

「和君美味しい?」

「あぁ、美味しいよ」

 それぞれがそれぞれ、リンゴに舌鼓を打つ。

 すると、千夏さんが話掛けて来た。

「それにしても良かったわ」

「なにがですか?」

「元気そうだからね?」

「……はい、元気にしてますよ!」

 俺は無理矢理に笑顔を作ってそう言った。

「無理はしないで下さいね?」

「大丈夫ですよ園子さん、俺は無理なんてしていない」

 ストーが俺を心配そうに見つめてくる。

 最後の一欠けらを食べ終えた月子さんが、そんな俺に言ってきた。

「何人の部下を無くしたんだ?」

「つ、月子さん!」

「園子、少し黙ってなさい」

 部屋が静まりかえる中、再度月子さんは言ってきた。

「お前の部下何人がお前の命令で死んだんだ?」

 震える喉を無理矢理押さえつけ声を絞り出す。

「……三人です」

「そっか……、で、和真は成長できたのか?」

「へ?」

「だ~か~ら~!部下のおかげで成長できたのか?」

「はい……」

 俺がそう言うと、月子さんは立ち上がり俺の背中を引っぱたいた。

「だったら、良かったじゃねぇか!そいつらの命は無駄に終わらなかった!」

「無駄じゃなかった……?」

「お前の部下が命を懸けてお前に成長を促した。なら、お前の部下の死は無意味じゃない!」

 月子さんはそう言うと、俺の頭をガシガシ撫でまわす。

「後は和真次第だ!その三人分の働きをするもよし、受け継いだものを誰かに渡すもよし、好きに選べば良い!その三人の魂はそうやって引き継がれていく。

だから、無くすんじゃねぇぞ?」

 それを聞いて、ストンと心が軽くなった。

 知らぬ間に、涙が溢れていた。

「……無くしませんよ。あいつ等の想いを、俺は無くしたりなんてしない」

 そして俺は、いつも通りの笑顔を皆に向けた。

「ありがとうございます!御心配をおかけしました。でも、もう大丈夫です!」

「「「「……」」」」

 だが、返事はかえってこなかった。

「アレ?」

 俺がそう言うと、千夏さんが呟いた。

「……確かに、その笑顔は反則だわ」

「可愛いです……」

「べ、別にアタシはなんとも思ってねぇし!」

「やっぱり、和君にはその顔が一番だね!」

 そして赤い顔をしてそっぽを向いていた月子さんが突然言い出した。

「それよりも和真……、お前臭うぞ?」

「あ、ごめん、俺ここ最近まともにシャワー浴びてなかったから」

 すると、千夏さんの瞳がキラリと光った。

 一瞬、ゾクッと嫌な予感が俺を襲う。

 だが、その時にはすべてが遅かった。

「なら、体を拭かなくちゃね?」

 千夏さんが、俺の右手を抱きしめ動きを封じる。

「拭き拭きですよ~!」

 園子さんが、左手を抱きしめ封じ込める。

「ストー、このビデオカメラで録画しといて!」

「はいッ!」

「え?えっ、えっ、えっ?」

 完全に俺は訳が分からなかった。

 さっきまでの良い雰囲気がすべていつの間にか消え失せていた。

 ストーが構えるビデオカメラが俺を捕える。

 床に座っていた俺は月子さんにより無理矢理足を前に投げ出す形にされた。

「ちょ、ちょいストップッ!ストップッ!!」

 月子さんが俺の上着のボタンをはずしていく。

 そしてその手が、下へと延びて行き……。

「待て待て待てッ、本当にちょっと待てッ!良いから、自分で出来るからッ!?これじゃ俺、アレだよ?男なのに集団でアレされちゃいそうになってるアレだよ!?」

 すると、月子さんが手を止め言ってきた。

「こんな美少女達にされるなら、お前も本望だろ?」

 それに対して俺は言ってやった。

「美少女って、プっ……!」

 すると、月子さんの額に特大の怒りマークが出来上がる。

「よ~し分かった!本当なら、ここで終わらせてからかう筈だったが、もうアレだ。

……下も脱がす」

 それを聞いて俺の顔は血の気が失せて行く。

「ちょ、待って、今の嘘だから!」

「もう遅いッ!」

 そして月子さんの手が俺のズボンに伸ばされる。

「や、止めてーーーーーーーーっ!」

「いい加減にしてくださいッ!」

 俺が叫ぶと同時に病室に乱入してきたのは、看護婦さんだった。

 そして、室内の現場を見てしまった看護婦さんはMPを呼ぼうとしたり、それを俺達が誤解だと言って納得させたり、怒られたりと散々だった。

 

 そして看護婦さんが説教を終え帰って行ったあと、俺は皆に言った。

「……ありがとう」

 照れを隠すように顔を俯かせてそう言うと、乱暴に頭を撫でられた。

「良いってことよ!」

「元気なのが一番だしね!」

「和真さんは、笑顔の方が素的ですから!」

 そう笑顔で言ってくるトイ・フラワーの皆を見ながら俺は思った。

 

 俺はこの人達からしてみれば、まだまだ弟のままなんやな。

 

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