Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
「こうやって2人だけで話をするのも久しぶりやな……」
「あぁ、本当にそう思う」
あれから俺達は2人で外に出て話す時間を作ることが出来た。
帝国国防省戦術機開発研究所の外は荒れた道に禿げた山々が見えるだけの寂れた風景しか存在しない、そんなモノしか目に入ってこなかった。
そんな殺風景な道を2人は歩いていた。
夕暮れが照り付ける中を歩く和真と尚哉の影がより濃さを増していく。
「今までどこにいたんだ?」
尚哉が明るい声で聞いて来る。
だが、その眉間には確かに皺があり久々の再開に喜びを表したいのに、どうすれば良いのか体が忘れてしまった。
今の尚哉からは、そう言った雰囲気が溢れ出ていた。
和真は、そんな尚哉に笑いながら答える。
「俺に会えたんがそんなに嬉しいんか?」
「嬉しいが、少し怒っている」
「まぁ、そりゃそうやろな……」
和真は苦笑いした顔をしながら、空を眺める。
「光州でBETAに襲われた後、俺はオーストラリアにおったよ。そんで、今は国連軍に所属してる。連絡を入れんかったんは、その、あれや……ごめん」
そんな俺に尚哉は溜息をついた。
「そんなことだろうと、思ったよ」
和真は尚哉に顔を向ける。
「俺らしいやろ?」
「あぁ、お前らしいよ……」
そう言って笑い合う2人の笑顔はどこかぎこちなかった。
太陽が鼻先を覗かせる程度の明かりが和真と尚哉を照らしだす。
すでに空には星が見え隠れしており、気持ちばかりの街灯が灯りはじめる。
帝国国防省戦術機開発研究所に帰ろうと足を進めていた2人は、研究所が見えてきたあたりで足を止めた。
「どうしたんや?」
ポケットに手を突っ込み歩いていた和真は立ち止まった尚哉に振り返る。
良く見ると尚哉の拳は固く握り閉められており震えていた。
「和真は、彩峰中将の事を……?」
「あぁ、知ってるよ」
太陽が完全に姿を消し、尚哉と和真の影もどこかへと消え去っていく。
「……どう、感じた?」
やっとの思いで吐き出された言葉は凄く重かった。
「彩峰さんらしくないなと思ったわ……」
「教えてくれ」
「あの人は、優しくても現実から逃げへん人やからな。……あの時、光州がBETAに襲われた時、助けに来てくれて俺は正直嬉しかった。彩峰さんは、どんな命も見捨てない人なんやって、でも軍人になって俺は思った。智将とまで謳われた彩峰さんが、感情を優先するハズがないって、軍人の規範となって道を示してきた人があんな判断をするはずがないって……そう思った」
「和真は報道を信じていないのか?」
「あんなお粗末な報道を信じるハズがないやろ?」
「では、和真は彩峰中将がどうしてあんな行動をとったと思う?」
「まぁ、勝手な考えやけどな、それでも良いか?」
「あぁ、聞かせて欲しい……」
「きっと彩峰さんは、俺達を見捨てるつもりやった、そう思う」
父さんが手紙を書き、来ても無意味だと知らせたにも関わらず助けにきた。
そこには、なにかがあった筈。
「あの当時、ユーラシア大陸をBETAによって追い出された難民は後をたたへんかった。増え続ける難民に対して、各国家は救える命とそうでない命を選別していた。日本にも難民は増える一方で、いくら大東亜連合に要請されたからと言って駄々をこねる人を助ける余裕なんてどこにもなかった筈や。それに、世界中でそんなことが難民の選別がされている中で、助けなかったからと言って文句を言ってくるところはどこにも存在していないはずや」
俺の勝手な考えを尚哉は黙って聞く。
「でも、彩峰さんは助けに行った。なら、そこには日本にとって得なことがあったと俺は思う」
「日本にとって得なこと……」
「まぁ、ネフレに仮所属してるからそんな損得で考えてまうようになったんかもしらへんけどな、続けるで?彩峰さんが、光州の人達を助けに行ったことで日本は孤立せずにすんだ。東南アジアに多くの生産拠点を持つ日本は大東亜連合に恩を売ることができた。これにより、大東亜連合と日本は切っても切れない信頼関係で結ばれることになった。そればかりか、今では大東亜連合軍は多くの日本製の物を扱っている。日本の外貨獲得に大きな影響を与えた。国連軍に対しては文句をつけて来たのは上層部だけ、現場の人間は彩峰さんのことを悪く思ってないのが殆ど、これも当たり前と言えば当たり前で国連軍は国を失った人間でほとんどが構成されてる軍隊やからな。そんでこれが一番でかいかな……」
「それはなんだ?」
「今まで、日本国内で難民による暴動は一度も起きていない。こんな国珍しいで?」
和真はそこで息を整える。
「俺も難民をしてた時期があるから解るけどな、難民になった人ってのは自分のこと以外考えられへんねん。そんで自分が世界で一番不幸やと思い込んでしまう。移り込んだ社会に対して文句に差別アピール、権利の主張ばかりするようになり、自分達が現地人からしたら部外者やと言う事を忘れて、自分達は被害者だと声高に叫んでばかり、自分達に問題があってもそれは見ないふり。これが深刻な社会問題になって暴動に繋がる。まぁ、弱者の権利やな……。でもな、彩峰さんの事件が良きにしろ悪しきにしろ広まったことで主張しにくくなったんわ確かや。誰が、見捨てられるはずだった自分達を助けてくれたのか、知らしめることができた」
「ならば何故、彩峰中将は死ななければならなかった……」
「本来ならば、投獄だけですんだと思う。後は、国連上層部の要求を日本政府が躱しきることが出来るか出来ないかの問題やったはずやからな。でも、BETAは日本に来た。最悪のタイミングで……。これによって今度は日本国民に帝国軍と政府は攻められるようになってしまった。やから、彩峰さんにすべての責任を被せて殺した。こうすることで、国民を納得させて国連上層部も黙らせることが出来、日本は大東亜連合との深い繋がりを得て国連軍の多くの兵から同情を買うことが出来た。この成果は、今の日本を見ればわかるやろ?日本だけで、本州と九州を取り戻すことも、ましてや明星作戦なんて計画すらできひんかった。彩峰さんは、自分が悪者になることで、日本に多大な得を生み出した。唯一彩峰さんが間違ったんは、BETAの進行が大型台風と重なってしまったことやな。本来なら、半島と要塞化した九州で迎え撃つ筈やったと思うわ。うまく抑えることが出来ていれば、日本はもっと良くなってたかもしらへんな……」
そして俺は暗く沈む尚哉を見て軽口を飛ばす。
「まぁ、俺の勝手な推測や!実際にはもっと考えがあっての判断やと思うよ!」
「和真、あの後彩峰中将の奥様や慧がどうなったのか知っているか……?」
「……」
「奥様は何も理解しようとしない国民共やメディアのせいで心を壊され中将の後を追う様に逝ってしまわれた。慧は、誰も信用できなくなってしまったッ!!彩峰中将がこんな事を望んでいたと、本気で思っているのかッ!?」
俺は真っ直ぐに尚哉の目を見て言い返す。
「……思うよ」
尚哉は俺の答えを聞いて髪をかき乱す。
「解らない、私には解らないッ!」
「俺の推測の通りやとは俺も本気で思ってないし勝手な推測やと言うたやろ?でもな、もし、BETAが本州まで進行出来なかったとしても、少なからず彩峰家の皆は苦しんだはずや。彩峰さんは、それだけの覚悟を持ってやった。そう言うことやろ?」
そして俺は尚哉に向け確かな決意を乗せ言った。
「俺は、彩峰中将の行いを無駄にはしない。彩峰中将や皆が生かしてくれたこの命で為さなければならない事がある。尚哉、お前はどうしたい?」
「わ、私は……」
尚哉は自分の掌を見つめそして俺の瞳を見るときには、昔の尚哉と同じ瞳をしていた。
「僕は……僕は、僕の意志で彩峰中将が守ろうとしたこの国を守るッ!」
尚哉がそう言った時には眉間の皺は完全に消えていた。
そして二人で自然に笑い合う。
「頑張れよ尚哉ッ!」
「僕の事を心配するよりも、自分の心配をしたほうが良いのではないか?あの程度の腕ではとてもじゃないが、無理だぞ?」
「ハッ、言ってろッ!」
そして俺達は拳をぶつけ合わせる。
骨と骨がぶつかり合う重い音が夜の静けさを弾け飛ばす。
男にしかわからない言語がその拳には乗せられていた。
研究所へと帰路についていた俺に尚哉が話掛けて来た。
「なぁ、和真」
「なんや?」
「慧に手紙を送っているのだが、返事がこないんだ……」
「そりゃ、お前あれやろ?」
「あれとは?」
「男やろ?」
尚哉に特大の雷が落ちる。
「お前がもっとしっかりしてればなぁ~。お前どうせ仕事ばっかで顔も見にいってないやろ?」
「うぐっ……」
「諦めろ、お兄さん」
「で、ではッ!慧がもし男を連れて来たら、どう言うつもりだッ!?」
「尚哉なら、どういうんや?」
お互いに顔を向けあい、呼吸を合わせる。
「「慧が欲しくば、俺を負かしてみろッ!!」」
そして俺達は馬鹿みたいに笑った。
「ま、そうなるわなッ!」
「慧が連れてくる男がどんな男か楽しみだな!」
将来、慧を連れてくる男よ覚悟していろよ。
俺と尚哉を納得させるにはいささか骨だぞ?
俺達は心でそう通じ合い、肩を組み合って研究所に戻って行った。
研究所の入り口では、レオとストーが待っているのが遠目に見て分かった。
「悪い尚哉、俺はもう行くわ!」
「分かった、最後に1つ良いか?」
「なんや?」
「その髪型似合ってないぞ?」
「イメージチェンジや!」
「まぁ、そういうことにしておいてやる」
「はいはい、じゃあな!」
2人の元に走って辿り着くと、ストーが腕を組んで怒っていた。
「もう、遅いよッ!」
「ごめんごめん」
俺はそう言ってストーに謝るとレオに顔を向ける。
「親友との別れは済んだのかな?」
俺はそれに笑って返した。
「いんや、アイツとはまたどこかで会うやろうからな」
「そう思える人がいると言う事は良い事だ。大切にしなさい」
「はいッ!」
「それでは、一度ケアンズに戻ろうか!」
「「了解!」」
2001年2月
ケアンズ基地屋外演習場
荒れ果てた不毛の大地を荒々しい噴射音が支配する。
噴射音が通り過ぎた数秒後には、爆炎が上がり血だまりを量産していく。
「ストー!三時方向、距離100、要撃級の群れ60体、片づけるぞ!」
「了解ッ!」
藍色の戦術機が二本の噴射線を描きながら移動し要撃級の群れの前に足を付ける。
「ここから先は行き止まりだぞっと!」
戦術機の両腕に握られたG11突撃砲から36mm弾が放たれ要撃級の感覚器を着実に貫いていく。
顔のような感覚器を貫かれた要撃級は、触覚を失った虫のように暴れながらバラバラに移動を始めた。
「残念、そっちは地獄だ」
和真が乗る戦術機の肩部兵装上部に取り付けられた三連装ミサイルポッドから、フェニックスミサイルが二発放たれる。
要撃級の頭上で弾けたフェニックスミサイルは、内包された爆弾をまき散らし瀕死の要撃級をバラバラに吹き飛ばす。
「はぁああああああッ!!」
和真が作り出した僅かな隙間にストーが乗るヴァローナが飛び込み、背部ブレードマウントからフォルケイトソード2を手に構える。
「せいッ!」
フォルケイトソード2を大きく弧を描くように振り抜く。
ヴァローナの周りにいた4体の要撃級は、ヴァローナに気が付くと同時に上半身が切り崩れ血の噴水をまきあげ、ヴァローナの赤い装甲をより赤く染め上げる。
要撃級を殲滅し終わると、通信が開かれた。
「やぁ、その戦術機にも慣れてきたようだね!」
通信を繋げてきたのはレオだった。
「正直な感想を言うけど、このラプターは化け物やわ」
俺は素直な感想を述べる。
俺に与えられたのは、リリアが搭乗していたラプター先行量産型だ。
赤く塗装されていたのを 俺様に藍色の電波吸収塗料に変更されている。
「後、アメリカがなんでYF-23を選ばなかったのかも少し納得した」
「ほう、何故だい?」
「ラプターは、攻めよりも守りに比重を置いてると思うからな。ラプターの性能は広大なアメリカ大陸を守ると言う意味では最適やと思うわ。YF-23は、攻めの戦術機やろ?G弾と言う最大の攻撃手段を持ってるアメリカにとってみれば、戦術機にハイヴを攻める矛よりも、国を守る盾の力を求めたってことやと思うわ。確か、低燃費性と砲撃特性ではラプターの方が上やろ?このことから想像したってところやな!」
俺の推理を聞いていたレオは頷きながら、答える。
「それもあるかもしれないね。G弾などの先進技術を蓄えているアメリカを狙おうとする者は後を絶たないだろうしね。拠点防衛と言う観点からで言えば、YF-23よりもYF-22の方が優れていたと言う事だね」
俺の意見に同意したレオだが、さらに付け加えた。
「後は、YF-23の調達コストが高すぎたのと、アメリカが戦術機市場に見切りをつけた事、さらに当時の大統領の地元にラプターの製造工場を建設した事からも選ばれた理由が想像できるね」
俺はそれを聞きがっくりと肩を落とした。
「……金ですか」
「金と人気取のためだね!」
「でも、良くアメリカがラプターを表で使うことを許可してくれたな?」
「まぁ、このラプターがどう言った経緯で家に存在しているのかを向こうの連中も知っているしね。それに、ペガサスの開発データと、そのラプターの戦闘データを一部譲ってあげる訳だしね。後は、ネフレが技術を漏らさないと言う信頼関係の構築のたまものだね!」
「まぁ実際、技術が漏洩してもアメリカ以外にこんな贅沢な戦術機を作れるところなんて存在しいひんからな」
「私達以外はね?」
「ハハハ、確かに……」
すると、サブウィンドウの先でレオがなにやらカタカタキーボードを叩き始めた。
「何してるんや?」
「JIVESのデータを新しいモノに変更しているのだよ」
「どんなものに?」
「今までの対BETA戦の難易度がREALモードだとするなら、今から君達が体験するのは、HELLモードだね!」
そう勢いよく言い終えたレオはッターンとエンターキーを叩く。
すると、戦域に現れたのは一体の突撃級と要撃級だった。
「はっ?」
「あれ?」
俺とストーは気の抜けた声を出してしまう。
そんな俺達とは対照的にレオは悪戯っ子の笑みを浮かべながら言った。
「私が作ったBETAを舐めない方が良い……。それでは、演習再開だ!」
「レオが何考えてるか解らんけど、ちゃっちゃと終わらぜるぞ!」
「うん!」
ラプターが突撃砲を要撃級に向け放つ。
真っ直ぐに突き進む36mm劣化ウラン弾の雨は要撃級に迫る。
まず一匹、そう思った和真の目の前では信じられない光景が繰り出された。
突撃級が有り得ない程俊敏な動きをして要撃級の盾になったのだ。
突撃級の固い甲羅に36mm弾はすべて弾かれる。
「嘘、だろ……」
「和君、前ッ!」
「おわッ!」
ストーの声により何とかラプターに回避行動をとらせた和真は何がなんだかわからなくなっていた。
「い、今飛んできたのは、なんだ?」
「要撃級の前腕衝角……」
「はっ?」
俺がそう聞き返すと、ストーは頬をヒクヒク引きつらせながら答える。
「要撃級がロケットパンチしてきた……」
愕然とした瞳を二体のBETAに向けると、要撃級の右手が元の位置に戻っていく姿を確認する。
「マジかよ」
すると今度は突撃級が有り得ない速度で突っ込んできた。
「あれ絶対500キロは出てるだろ!?」
砂埃を猛々しく巻き上げながら一直線に突き進んで来る。
「はぁあああああ!」
ヴァローナは突撃級に真正面から突っ込む。
そしてギリギリのところで突撃級を回避し後方から攻撃をしかけようとする。
フォルケイトソード2を振り下ろしたストーは勝利を確信していた。
だが、現実は甘くはなかった。
「ストー!後ろだ!」
ヴァローナはすぐさま跳躍ユニットを使い飛び上がった。
足元を猛スピードの突撃級が通過していく。
「アイツ、ドリフトしやがった……」
突撃級は慣性ドリフトのようにケツを振りストーの一撃を回避、さらにストーのケツを逆に狙ってきたのだ。
飛び上がったストーに要撃級のロケットパンチが迫る。
「このッ!」
和真のラプターはすぐに120mm水平線砲改に持ち替え放ち、何とかロケットパンチの機動を逸らす。
すぐ横をロケットパンチが通過するのを見ていたストーは青ざめながら、元の位置に戻ってきた。
「こ、怖かったよ~!」
「あぁ、俺も怖い、正直怖い。あれは、予想外過ぎた……」
だが、和真の顔はすでに勝を確信していた。
「だが、もう慣れたろ?」
和真の問いにストーが自信満々に答える。
「うん!」
「よし、反撃開始だッ!」
和真のラプターが動かない要撃級に120mm弾を放つ。
感覚器を狙った弾丸は、要撃級が顔のような感覚器をヒョイと移動させることで回避した。
「そ、その程度想定済みだ!」
要撃級に向かう和真を突撃級が阻もうと突進してくる。
回避すればロケットパンチと言う状況で和真は叫んだ。
「ストーッ!」
「うん!」
赤いヴァローナがラプターと突撃級の間に割り込む。
「任せたぞ!」
「うん!」
和真はヴァローナと突撃級を飛び越え、要撃級に向かう。
「あなたの相手は私だよ!」
ヴァローナは真っ向から突撃級に向けフォルケイトソード2を構える。
砂埃を巻き上げながら進んで来る突撃級、ストーの耳には何故だか突撃級の言葉が聞こえた気がした。
「よろしい、ならば真剣勝負だッ!」
ストーはその場にフォルケイトソード2を落とす。
そして、両腕上腕部に装備された新武装ネイル・エッジを展開した。
拳の形をした武装がマニュピレーターを多い隠すように前方に移動、拳が開かれると中から四本の爪が姿を表した。
ネイル・エッジ内部で円柱が高速回転しネイル・エッジ全体を振動させる。
ヴァローナは獅子の爪を思わせるネイル・エッジを前方に構えロケットモーターを最大噴射し突撃級の甲羅を鷲掴みした。
「くっ、ぅうううう……」
確かに突撃級の動きを多少は遅くすることが出来たが、パワーの差から押し返されていく。
ヴァローナの肘関節から火花が飛び散る。
ヴァローナの腕はもう限界まで来ていた。
そして、元居た地点まで押し返された時、突然突撃級はひっくり返された。
「作戦通り♪」
ストーはフォルケイトソード2のロケットモーターが地面に向くように設置していたのだ。
そして、突撃級が通過した瞬間に機動信号を送りロケットモーターを噴射、鉤爪状の刃が突撃級の先端部に引っかかりそのままひっくり返したのだ。
ただし、持ち上げる際にフォルケイトソード2の柄の部分を踏み、てこにしていたため、ヴァローナの右足首も危険な状態になっていた。
ひっくり返り、惨めにも腹を向ける突撃級を赤い悪魔が踏みつける。
「ひ、卑怯だぞッ!」
何故だか、ストーの耳に声が届いた。
「ごめんね、私和君以外には真剣になれないの……」
そしてネイル・エッジは突撃級の腹部をやすやすと斬り裂き肉を引き千切った。
ストーが突撃級を倒し終わると、ラプターが隣に降り立つ。
「もう終わったの?」
「リミッター切って倒した……」
和真の顔は疲れ切っており、苦戦したことを知らせてくる。
「演習を終了します!」
格納庫に戻ってきた俺達を出迎えたのは、レオと兄貴だった。
「やぁ~、さすがだね!私が進化させたBETAを倒すなんて」
「レオこの野郎!変な声当てしてんじゃねぇよ!!BETAがしゃべったと思ってビックリしたじゃねぇか!」
「楽しかっただろう?」
「はぁ……」
俺が溜息を付くと兄貴が話始める。
「今回、こんな馬鹿げた事をしたのはだな、お前達の戦術機に学習させるためだ!」
「学習?」
「そう、知的戦闘制御システム、略してIFCSだ!このシステムはブラーミャリサから搭載していたものだが、予想外の事態も学習させるために今回のHELLモードを体験してもらった訳だ!」
「そのIFCSってどんなの?」
ストーが手を上げ質問する。
「戦術機の被弾、故障、戦闘状況、それらをニューラルネットワークによってリアルタイムで自動的に学習しつつ判断するシステムだ。和真もストーも今では当たり前になっているが、お前達の戦術機は即応性が他の戦術機と比べて段違いだったろ?」
「確かに……」
「これは、戦術機自身が学習した結果、次の行動を何通りも予想していたからなんだ。人間に例えると、ケンカをしてる時に相手がパンチをしてくるって予想を立てることが出来ていれば回避することも、カウンターを決めることもできるだろう?今までは、人間がこれらを行っていたためにワンテンポ遅れて動作していたが、戦術機側も次の行動を予想してくれることでスムーズに事が運ぶ。つまりは衛士のサポートをしてくれている訳だな!後は、被弾しても安全に飛行できるように勝手に普段通りを維持してくれたりする。まぁ、そんな感じのシステムだ!」
それを聞いたストーは大はしゃぎする。
「凄い凄い!このシステムを普及させたら、皆の生存率も格段に上がるよ!」
そんなストーに兄貴は笑顔で答えた。
「あぁ、その通りだ!だが、コイツはまだ実験段階だからな、もっといろんな環境を学習させた結果どうするか決めることになる。だから、頑張ってくれよ?」
兄貴はそう言うとストーの頭をワシワシなでた。
「うん!」
ストーは気持ちよさそうに目を細める。
すると、レオがパンパンと二度手を鳴らした。
「そして、次に君達が向かう場所が決定したよ!一週間後、欧州イギリスに向かってもらう。準備しておいてね」
「「了解!」」
新武装紹介
ネイル・エッジ
戦術機上腕部に装備出来る拳上の振動兵器。
拳の時には盾の代わりを、展開し四本の爪を展開し攻撃と攻防一体の兵装である。
内部に円柱上のモノが入っておりこれが高速回転することで、微振動を起こしている。
ワイルド・イーグルの振動ブレードにF-5E ADV トーネードの鍵爪状固定武装の概念を加えたことで完成した。
ボーニングにペガサスのデータを渡す際の交渉で手に入れている技術を元に開発されている。
イメージモデル:機動戦士ガンダムUC,バンシィ,アームド・アーマーVN
IFCS
元ネタ、F-15IFCS
これからもお付き合い頂ければ幸いです。