Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
2001年2月
朝霧の靄の中を一台の車が走り去る。
肌寒い気温に濃い霧がさらに肌寒さを加速させた。
ウェストミンスター橋を歩きながら渡る和真とストーの足元は、昨日の雨の影響かすべりやすくなっていた。
「和君、和君、見て見てビッグベンだよ!」
霧に負けない白い息を吐き出しながら、ストーはウェストミンスター宮殿の時計塔を指差した。
「転ぶんじゃないぞ~!」
和真は口元に手を当て声を通らせる。
だが、和真の注意などどこ吹く風とばかりにストーは、テムズ川を横断するウェストミンスター橋と霧の中から見えるビッグベンの幻想的な風景の観光を楽しむ。
「アイツ、任務だってことを完全に忘れてやがる……」
そう嘆く和真の隣から軽快な声が飛ばされる。
「良いではないか五六中尉!」
「ですが、オルソン大尉」
オルソン大尉、国連広報部隊の広報官でありグアドループ基地の責任者でもある。
そんな彼が今回派遣されたのは、俺達の任務と関係していた。
俺達が与えられた任務それは、マリア・ヴィクトリア・メアリー王女、英国王位継承権第4位の彼女の護衛だ。
各地を視察なさる王女様を護衛するのに、国連軍から俺とストーが選ばれ後はドイツとフランスから1人ずつ選ばれているらしい。
まぁ護衛と言っても衛士である俺達に出来ることなんかたかが知れている訳で、実際はイギリス近衛軍が周りをガチガチに固めている。
ならば何故、俺達が護衛をしなければならないのか。
それは昨年ここイギリスで起こったキリスト恭順派によるテロのせいである。
そのテロで欧州連合の闇が公にされ、欧州連合は空中分解してしまうところだった。
だがそうならなかったのは、イギリス女王の存在とネフレの存在が大きい。
国民を女王が支え、各国家をネフレが裏から操った。
今となっては、欧州連合の重要ポストの殆どがネフレの息が掛かった者達で構成されている。
そして、一度信用を失った欧州連合は主要国家の関係回復はすでに出来ていると言うパフォーマンスのために、今回の視察を決めた。
そのパフォーマンスを世界に配信するために、国連から広報官が派遣されたという流れだ。
和真は緩やかに流れるテムズ川からロンドンの町を見渡す。
「それにしても、復興のスピードが凄まじいですね」
「一度BETAに破壊され、再興したにも関わらず今度は人間の手により壊された。今あるこの景色は欧州の人々の意地と誇りの結晶でもあるのだよ、五六中尉……」
オルソン大尉は手に持つハンドカメラでロンドンの街並みを録画しながら、そう呟いた。
俺はオルソン大尉の話を聞きながらも別の可能性も考えていた。
今回の復興事業により、数多くの人達に金をいきわたらせることが出来た。
さらに、汚職まみれの連中を排除し都合の良い連中を添えた。
そして、まるで見せつけるかのような完璧な復興。
ネフレの仕業なのは誰の目にも明らかだ。
もしかすると、そのテロをけしかけたのはネフレなのか?
そこまで考えた和真は頭を振るう。
嫌、考えるのはよそう。
俺はレオを信じている。
レオの進む道が正しいと信じた俺を信じている。
なら、何も迷う必要はないじゃないか……。
和真は手に持っていた資料に目を通す。
「フランスとドイツから来る衛士は一体どんな人なのだろう?」
資料には、双銃士としか書かれていない。
「なんでも、ここロンドンでテロ組織を切り崩す切っ掛けを作ったのが二人の戦乙女なのだそうだ。そして、彼女達の類まれな銃捌きからその二つ名が与えられたそうだ」
オルソン大尉が、どデカイサングラスに暑苦しいケツ顎と胸毛を和真に近づけ資料を見ながらそう教える。
和真は嫌そうな顔をしながらも、一体どんな衛士なのか楽しみにしていた。
その時である。
「うわッ、キャっ!」
「等々やりやがった……」
前方を走り回っていたストーが顔面から地面に突っ込んでいた。
額を抑える和真はオルソン大尉が静かになったことに気が付きそちらを見る。
すると、オルソン大尉はストーを撮影していた。
オルソン大尉が構えるハンドカメラの先にはストーの姿、盛大に突っ込んだストーのパンツが綺麗に見えていた。
「大いに結構~~~~~~ッ!!」
そう叫ぶオルソン大尉を放置し和真はストーの元に向かった。
「だから走るなといっただろう?」
「がずく~ん……」
「あぁあぁ、顔が泥だけじゃないか」
和真はポケットからハンカチを取り出しストーの頬をゴシゴシ擦り泥を落とす。
「まぁでも、制服が汚れない様に転げたのは偉いぞ!」
和真はそう言うとストーを立ち上がらせた。
「もうすぐでバッキンガム宮殿だ。歩けるか?」
和真の問いにストーは目元を指でこすりながら答えた。
「うん!」
そうして到着したバッキンガム宮殿、その内部を見た和真はどうして徒歩でここまでこさせられたのかを理解した。
「なんにもないな」
「ないね」
そう何も無かったのだ。
バッキンガム宮殿は数々の彫刻や絵画など、他国に見せつける意味合いでも飾っていたのだが、何も無かった。
そればかりか、明かりすら余り灯っていなかった。
「それだけ、財政が厳しいと言う事だ。少しでも国民の生活をよくするために質素倹約をしていると言う事だろう。まさに、ノブレスオブリージュ、素晴らしい!」
オルソン大尉は鼻息荒くカメラを回す。
「こんな所で撮影しても構わないのですか?」
「許可は得ている」
執事に案内されている途中で、オルソン大尉は王女のインタビューをしてくると別行動を取ることになった。
そして、和真とストーはメイドにステート・ルームに案内された。
「双銃士の御二方は、すでにこちらでお待ちです。マリア様がお見えになるまで室内でお待ちください」
扉が開かれ室内に入ると、2人の少女がすでにソファーに座っていた。
扉が開かれた事に気が付いた二人は立ち上がり敬礼をしてくる。
それに和真は答礼をしながら自己紹介を始めた。
「国連太平洋方面第9軍所属五六和真中尉だ」
「同じくストー・シェスチナ少尉です!」
和真達の挨拶が終わると、手前に座っていた金髪を赤い大きなリボンで一まとめにしポニーテールにしているドイツ軍装を着た少女が自己紹介を始めた。
「西ドイツ陸軍第44戦術機甲大隊・第2中隊所属イルフリーデ・フォイルナー少尉であります!」
フォイルナー少尉に続き、奥にいた長く無造作でありながらも気品を感じさせる金髪をしたフランス軍装を纏った小柄な少女が自己紹介を始めた。
ただし、フランス語でだ。
「フランス陸軍第13戦術竜騎兵連隊・第131戦術機大隊所属ベルナデッド・リヴィエール少尉です!遠路はるばる安全な場所から、よくお越しくださいました中尉殿」
ストーはいきなりフランス語で話され、何を言っているのか解らないと言った顔をしていた。
「ちょ、リヴィエール少尉貴方―――ッ!」
「黙ってなさい、キャベツ女。あなただって腹を立てていたのでは?」
「……」
「衛士である私達がどうしてこんなことをやらされなければならないのかって、あなたも言っていたわよね?国連の連中がなにを考えているのか知らないけれど、私達にはこんなことをしている時間も余裕も存在していないのよ」
一息に言い切ったリヴィエール少尉は、小さい背ながらも眼力だけで相手を畏縮させてしまうような、猛虎の目を俺に向けてきた。
そして、その瞳が語っていた。
こんな戯言は早く終わりにしたい、と――――。
和真はその瞳を真正面から受け止めフランス語で返した。
「確かに君の言う通りだリヴィエール少尉。ただね、俺達は軍人であり、これは命令なんだよ。そこに、個人の考えなんて微塵も必要が無い。自らの意志で命令を捻じ曲げることが可能なのは、権力を持った一握りの人間だけだ。さて、キリスト恭順派からロンドンを守り貫いた双銃士の1人である君は、その一握りの人間なのかな?」
「あなた、つまらない人ね?」
「そうだね、つまらない人間だ」
和真はそう言うと、今までの温和な笑みを消し去る。
「1つ言っておきたい、俺達は君達と同じ地獄を見て来た人類だ。君の想像しているような人類では無い」
鷹のように鋭い視線を受けたリヴィエール少尉は怯むことなく、むしろ楽しそうに口元を歪め、獅子の瞳で受け止めた。
「なんだ、そんな瞳も出来るのね?先ほどの発言は撤回するわ。あなたはつまらなくなんてなさそうね」
「わかってくれたのなら、それでいいよ」
フランス語での会話を終えた俺達は何も言わずにソファーに座る。
ピリピリと肌が痛くなりそうな空気はいつのまにか消えていた。
「それにしても遅いわね」
あれから待つ事さらに二時間、姫様は来る気配すら見せない。
リヴィエール少尉は、イライラが貯まっているのか用意されたクッキーを小さな口に次々と放り込んでいた。
「お聞きしてもよろしいですか、中尉?」
背筋をまっすぐに伸ばしたままのフォイルナー少尉は、どこぞのお嬢様のように礼儀正しく聞いてきた。
「そんなに畏まらなくていいよ。それだと俺も気が休まらないしね。堅苦しいのは無しで行こう」
俺がそう言うと、フォイルナー少尉は肺にたまっていた空気を一気に吐きだし力を抜いた。
「はぁ……ありがとうございます中尉、私も辛くて辛くて」
「見ていてわかったよ」
そう楽しげに話す中で、和真は自分の茶菓子に伸びてきた二つの手を叩き落とす。
「イタイ……」
「チッ……」
「ストー、リヴィエール少尉、俺の物を取ろうとするんじゃない」
「堅苦しいのは無しなんでしょ?だったら、良いじゃない!」
「あんだけあった大量のクッキーはお前のその小さい体のどこに消えているんだよッ!」
「育ちざかりなのよ!」
「物理法則考えろよッ!」
「あ、あの中尉……?」
「あっ、ゴホン、なにかな?」
「今さら取り繕っても遅いよ和君……」
ツッコミを入れてくるストーを無視し、フォイルナー少尉の話を聞くことにした。
「中尉は、日本人ですか?」
「嫌、俺は日系オーストラリア人だ」
「そう、ですか……」
フォイルナー少尉は、和真の返事を聞くと寂しそうに肩を落とした。
「良かったら話してくれないか、力になれるかもしれない」
「本当ですか!?清十郎、真壁清十郎を御存じですか!?」
「真壁……」
確か、斑鳩家に近い有力武家だったかな。
「ごめん、知り合いではないな。でも日本には知り合いが多い。機会があれば聞いて見るよ」
「ありがとうございます!」
さらに待つ事一時間、和真は腕時計を確認しストーは船を漕ぎ始め、フォイルナー少尉は欠伸をし、リヴィエール少尉は用意されたクッキーをすべて食べつくしてしまったためにイライラが募り腕を組んで人差し指で肘を叩き始めていた。
「さすがイギリス人、ジョンブルは人を待たせてもなんとも思わないようね」
リヴィエール少尉が毒を付き始める。
「おいおい、フランス人のお前が言うなよ」
すかさず和真が突っ込みを入れた。
それに呼応するようにフォイルナー少尉が続く。
「その通りですわリヴィエール少尉、あなたの国もドイツや日本を見習うべきです。ねぇ~、中尉ぃ~!」
「ねぇ~!」
「キモッ!」
「スー……スー……」
その時、扉が勢いよく開け放たれた。
「わっ、キャッ!」
船を漕いでいたストーは扉が勢いよく開く音に驚き1人ソファーから転げ落ちそうになっている。
あえてその無様な姿を無視した和真達は扉を開いた主に視線を向けた。
「君達緊急事態だッ!」
「オルソン大尉、一体どうしたと言うのですか?」
扉を開けた人はオルソン大尉であり、後ろには初老の執事の人が立っていた。
オルソン大尉に敬礼する二人に答礼を返したオルソン大尉はよほどの事なのかサングラスがずれ落ちそうになっていた。
「説明は私の方から……」
オルソン大尉の後方に控えていた初老の執事が一歩前に進み出る。
「私、マリア・ヴィクトリア・メアリー王女に使えています。執事のセバスチャンにございます。実は――――」
「「「「い、家で!?」」」」
ことの経緯を聞いた俺達は空いた口が塞がらなくなっていた。
「マジかよ、あっ、胃が痛くなってきた……」
「か、和君大丈夫!?」
「呆れた、イギリス人は味覚だけじゃなしに脳ミソまで馬鹿になってしまったの?」
「あんたがそれを言うな、味覚馬鹿代表キャベツ女」
「な、なんですって!!」
呆れかえる俺達にセバスチャンは、申し訳なさそうに進言する。
「申し訳ありません、今、近衛を使って全力で捜索中であります。今しばらくお待ちください」
和真は胃を抑えながら、セバスチャンに提案をした。
「その捜索任務、俺達も協力します!これ以上待たされたくありませんし」
「で、ですが……」
俺の提案を断ろうとしたセバスチャンにオルソン大尉が待ったをかける。
「うむ、そうした方がよさそうだ。こちらにもスケジュールと言うものがあるのでね」
「では、困ったお姫様を捜索してきます」
俺達は二時間後にまた宮殿に集合すると言う事で、バラバラの方角に探しにいくことになった。
「はぁ、いないな……」
あれからすでに1時間と30分、歩き回り探し続けていたが姫様は見つからない。
「ここで最後にするか」
和真が最後に向かったのはヴィクトリア・タワー・ガーデン。
木々が綺麗に並び立、芝生の上を子供達が走り回っていた。
「こんな近くにいるわけないよな」
ヴィクトリア・タワー・ガーデンは、バッキンガム宮殿から近い所に存在する。
こんな所にいるならすでに誰かが見つけているだろう。
和真はそう思い半ば諦めながらヴィクトリア・タワー・ガーデンの奥に進みテムズ川を柵越しに眺める。
太陽の光を反射し、水の流れに乗りながら船がゆっくりと進んでいく。
その光景は時間がここだけ世界から切り離され、遅く流れているのだと感じさせた。
「キレイだな……」
そんな言葉が和真の口から自然と零れ落ちる。
するとどこからか、声が聞こえてきた。
「い、いきなりキレイだなんて……。照れるじゃねぇか!こ、これは!その……、告白なのか!?その、待ってくれ!別に嫌って訳じゃないんだぜ?ただ俺達は初対面だろ?だから、こういうのには順序があると思うんだ!その……なんだ?まずは、お互いを深く解りあうところから始めないか!?」
どこかで、愛の告白でもやっているのだろうか?
人がせっかく良い気分で黄昏ていたのに、他所でやって欲しいモノだ。
俺は、どんなカップルが求愛行動を取っているのか確かめてやろうと野次馬根性を出して声のした方を向く。
すると、10m程離れた木陰からこちらを潤んだ瞳で見つめる同い年位の女の人がいた。
そいつの見た目は、完全にお嬢様だ、『お~ほほほほほほほ!!』と笑いだしそうな感じだ。
それより気になるのが、ドリルだ。
そう、頭の横の髪が大きなドリルとなって太腿まで伸びている。
どこかの貴族だろうか?
俺はもしかしたら見つけたか、と思いセバスチャンに教えて貰った姫様の特徴を思い出す。
1つ、世の男共を悶え苦しませるほどの美貌の持ち主。
1つ、その体からは黄金のオーラを放っている。
1つ、常に民の事を考え自らのことは二の次としたノブレスオブリージュを体現した御方。
うん、こんな情報で見つけることは出来ないな。
俺は未だに俺を見つめる女を観察する。
整った顔立ちは確かに綺麗ではある。
黄金のオーラは放っていない、むしろそんな人間を見たことがない。
最後のは、確かめようがないな。
俺は、探していた人物ではないと確認すると、そいつを視線から外し辺りを見回す。
だが、どこにもそれらしいカップルはいなかった。
「あの……。まずは、友達からで良いか?」
さっきの女がまた、話かけてくる。
俺は、後ろを振り向く。
誰もいない、女を見る、俺を見ている。
……俺か?
俺が1人で、どうこの現状を打破するか悩んでいると突然女が目の前に現れた。
オイ……。お前の位置からここまで、10mはあるのになぜお前はジャンプして俺の前にいる?
そしてその女は、空に浮いたまま拳を振りかぶり俺を殴り倒した。
「へ、返事をしろ~~!!」
左頬にクリーンヒットしたパンチで俺は、地面に右顔面から叩きつけられた。
「ぶへッ!!」
女は、着地するとまた跳躍し俺に馬乗りになりなおも殴りかかってくる。
「は、恥ずかしいじゃないか!恥ずかしいじゃないか!!」
「止め、ぶはっ!ちょ、おぶっ!まっ、ぐはっ!―――この、いい加減に!!」
俺は相手の両手を掴み睨みつける、すると相手の女は涙を溜めた瞳で俺を睨みつけていた。
だが俺は、太陽に照らされ金色に輝く長髪と整った気品溢れる顔立ちに目を奪われてしまっていた。
「ひっく……、俺に、ひっく……告白しておいて、グスッ……弄ぶのか?」
コイツは何を、言っているんだ?
「お、俺にキレイだって言っておきながら、……無視するのか!?」
キレイ何て言ったか?……言ったな、コイツに向かってじゃないが確かに言ったな。
「一先ず落ち着け、それと俺の上から早く退いてくれ!」
俺が、そう言うと慌てて退いてくれた。
「良いか?俺がキレイだと言ったのはお前にじゃなくて、ここから見える景色に対してだ。……それと、キレイだと言われただけでどうして告白まで行きつく」
「そ、それは……うぅ~~~!!」
女は俺の横に腰掛け涙目でまだ睨み付けてくる。
「……ハァ!」
俺は溜息をつき立ち上がる。
「じゃ、俺はもう行くわ!」
「あっ、オイ!」
「別にもう用は無いやろ?」
「……う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああああん!!」
「なッ!!」
今度はタックルされ吹き飛ばされてしまった。
右顔面がまた地面に激突する。
「い、痛てててて……」
「ご、ごめん」
女はそう言うと、俺の右前髪を持ち上げ綺麗なハンカチで泥を落とそうとしてくれた。
だが、俺の前髪を顔全体が見える位置まで持ち上げた所で女は固まる。
「じ、ジジィ……?」
その懐かしい呼び方につい反射的に叫んでしまう。
「俺はジジィじゃねぇ!」
俺の事をジジィ呼ばわりしたこの電波女は、驚愕の表情から今度は花が咲くような笑みをした。
「やっぱり、やっぱりクソジジィじゃねぇか!」
「なんで俺が、見ず知らずの女にジジィ呼ばわりされきゃならない!?」
俺がそう半ギレで叫ぶと、電波女は頬を掻きながら言ってきた。
「ほら、俺だよ。オスロで散々世話をしてやっただろ?姉ちゃんとはうまくいったのか?」
その話し方、そしてジジィに姉ちゃんと言うキーワードからある1人の人物が脳のタンスから姿を表した。
「泥棒、ガキ?」
「オウッ!」
大人の女となった泥棒ガキはそう言うと、あの頃と同じ笑顔をした。