Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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ラッキースケベ

「やっちまった……」

 欧州連合軍、国連軍の援護の元脱出に成功した和真達は迎えに来たロイヤル・スウィーツ内にいた。

 ロイヤル・スウィーツ戦術機軽空母内の格納庫には、小隊規模の戦術機を収納することが出来る。

 ただし戦術機のような背の高い兵器を立てて搬入出来る訳も無くガントリーに固定されたまま、和真達の戦術機は仰向けに倒されていた。

 圧迫感を感じさせる密閉された格納庫内、天上を見つめるラプターの隣で和真は頭を抱えていた。

「ラプターでの、デモンストレーションは無理だな!」

 頭を抱える和真にロイヤル・スウィーツに乗り込みケアンズから来ていた兄貴が話しかける。

「各部間接の摩耗、装甲の疲弊、跳躍ユニットの限界使用による動作不良、こりゃ一端ケアンズに持ち帰って修理しないとどうにもならないな!」

 ラプターは先の戦闘での和真の無茶な戦闘機動に耐えかね所々が故障していた。

 元々、高機動性に優れているとは言っても余りネフレの方で弄られていなかったラプターは、和真のスタイルに合わせることが出来なかった。

「それにしても、あのラプターを一回の戦闘でここまでしてしまうなんて、お前も成長したもんだな!」

 兄貴はそう言うと、和真の背をバシバシと叩く。

 その顔からは、攻めていないことは容易に理解できた。

「ここでの、修理で間に合わないかな?」

 和真は僅かな可能性に欠けて聞いて見た。

「無理だな!」

「ですよねぇ~!」

 和真はそう言うと、肩を落とす。

 だが、兄貴はそんな和真の肩に手を乗せた。

「でもな、そのために俺がきたんだよ!」

 

 プライズ・ノートン基地に帰って来た和真とストーは、マリアに帰還報告をするためにマリアの元に向かう。

 元々は、マリアの護衛と言う任務を預かっており今回の任務は本来ならば彼女の許可をとってからの筈であった。

 だが、和真は彼女から許可を取らずに別任務に向かった。

 そのための謝罪をするために向かったのだ。

 イギリス近衛軍の兵士に案内され辿り着いた部屋は医務室。

 薬品の香りが部屋の外にまで漏れ出していた。

 嫌な予感が和真を襲う。

 自分が離れていた時間の間に何者かに襲撃されてしまったのか。

 そう言った考えが和真を慌てさせた。

 急ぎながらも落ち着き、静かに扉を開く。

 白一色の清潔感溢れる室内には、イルフィとオルソン大尉、ベルナが1つのベッドを中心に立っていた。

 そして、ベッドに腰掛けていたマリアはゆっくりと幽霊のように首だけを和真達に向ける。

 その姿を見た瞬間、和真とストーは緊張していたのか、空気を名一杯吐きだした。

「はぁ~……良かった」

「心臓に悪いよ……」

 すると、和真とストー目掛けてマリアは走り出した。

「お、お前等ぁああああああッ!」

 金髪を振り回し、裸足で周りの目など気にもしないでマリアは走る。

 そして、和真とストーの首に抱き着いた。

「馬鹿野郎ッ!心配したじゃねぇかッ!!」

 半べそを掻きながらも、力強く抱きしめるマリアを見た和真とストーは目線を合わせ小さく笑う。

 そして、幼子をなだめるように言葉を発した。

「たく、俺らがあの程度でどうにかなるわけないだろ?」

「ごめんね、心配してくれてありがとう!」

「べ、別に、俺は心配なんて……」

 顔を赤くしながら、そう言うマリアに和真は笑いながら背中をさすってやる。

「はいはい、心配性なお姫様なことで」

「マリアの泣き顔も綺麗だね!」

「う、うるせぇッ!」

 すると、オルソン大尉が和真達に歩み寄る。

「見事な戦闘だった。さすがわトイ・ボックス、良い物を見させてもらった」

「大尉が迅速に動いた結果ですよ」

 和真がそう言うと、オルソン大尉は自傷気味に笑う。

「今日のデモンストレーションはすでに不可能と基地司令と話しをつけてきた。今日の視察は現時刻を持って終了とし、これよりバッキンガム宮殿に帰投する。姫様もそれでよろしいですね?」

「えぇ、お願いします」

 そして、和真達はプライズ・ノートン基地を離れバッキンガム宮殿に向かった。

 空を戦闘ヘリが飛んで行く。

 未だに、戦争は終わりを迎えていないようだった。

 

 バッキンガム宮殿に辿りついた時には、すでに午後8時を過ぎていた。

 帰投した俺達をセバスチャンが迎える。

「お疲れ様でした。ご入浴の準備が整っております。まずは、疲れを癒して下さい」

 そんなセバスチャンにマリアが賛辞を贈る。

「あなたは、いつも気が利きますねセバスチャン、ありがとうございます」

「もったいないお言葉にございます」

「それでは参りましょうか皆様」

 宮殿に戻ったマリアは、姫様となっていた。

 

「さて、五六中尉、男2人きりとなってしまったな……」

「はい……」

 あれから和真達は男用の寝室に案内され、今はオルソン大尉と二人きりになっていた。

 マリア達は、先に風呂をすませにいっている。

 なんでも、日本の文化を取り入れ、中でもリラクゼーション効果が高いと言われている露天風呂を建設したのだそうだ。

「さて中尉、せっかくの男同士の貴重な時間だ。有意義に使いたい、そう思わんかね?」

 そう言ってむさ苦しい顔を向けるオルソン大尉から和真はケツをずらし距離を取る。

「はい、そうですね大尉……」

 そう言った和真にオルソン大尉は意気揚々と話し始めた。

「中尉の好みの女性はみつかったかな?」

「はい?」

「イルフリーデ・フォイルナー、ドイツ貴族フォイルナー公爵家の一粒種にして、ドイツ陸軍最強のツェルベルス大隊所属の衛士、健康的なラインの体つきに十分に女を主張しているバストとヒップ、どこか気の抜けた所があるが、そこが愛らしさを一層際立たせている」

 そこまで言ったオルソン大尉は、どうだ?と目で訴えかける。

「はぁ……」

「なんだ、違うのか……」

 オルソン大尉は、がっかりした雰囲気を出すが直ぐにモチベーションを立て直す。

「では次に、ベルナテッド・ル・ティグレ・ド・ラ・リヴィエール、フランス貴族にして、フランス陸軍随一の部隊、戦術竜騎兵連隊に所属の衛士、小柄で愛らしい姿からは想像もつかない暴れん坊の姿はまさにティグレ(虎)、だが時折見せる物憂げな表情が女だと認識させる」

 オルソン大尉は、今度こそ!と目線を和真に向けるが、和真は他のことに驚いていた。

「ベルナは、貴族だったのですか?」

「あぁ、その通りだが?名前の通りの貴族であり、フランス革命で市民側についた貴族の末裔だよ彼女は、ティグレとは地名を、リヴィエールはフランス語で大河と言う意味だ。だが、あれは地名の方のティグレと言うよりも、スペイン語での虎と呼んだ方が真実味を増すな」

「確かにそうですね!」

 そう笑いながら、答える和真を見ながらオルソン大尉は、彼女でもないか、と呟く。

「ふむ、やはり本命はストー少尉か……?」

 その発言に和真は噴き出した。

「それはないですよ大尉、俺にとってあいつは部下であり世話の焼ける妹のような存在だ。そんな対象としてみることなんて、ありませんよ」

「で、ではマリア様か!これは、いささか厳しいモノがあると思うが……、嫌、愛にそんな無粋な壁は無意味、か……」

「それこそ無いですよ!イギリス王位継承権第4位の女性をそんな目で見られる程に俺は男としての度胸が無い」

 和真がそう言うと、オルソン大尉は驚きを隠せないようだった。

「ここまでの美女が集まり、好みのタイプがいない?……中尉、貴様は男が好きなのか?」

「そんな訳ないでしょッ!それに、俺は既婚者ですよ!!」

「なんとッ!?中尉の奥様は、どのような女性なのだ?」

 和真は僅かに目を細め、ニクスを思い返す。

「そう、ですね……。彼女は、頑固で意地っ張りでその癖に恥ずかしがり屋で、なんて言うか、ほっとけない。そんな女です」

「ふむなるほど、保護欲をかきたてる女性なのだな?」

「そうですね、守ってやりたい、そう思ってしまったら後は一直線でした。彼女がたまに見せる笑顔や仕草、どれもが俺の目に止まって、そしてどれもが可愛かった」

「かった?何故過去形なのだ?嫌、……すまない」

 オルソン大尉は、すぐに自分の失態に気が付き謝罪する。

 今の世の中、愛する人と最後まで共にいられる贅沢を味わえる人はほんの一握りしかいない。

 後方国家では、当たり前のそれが、前線では奇跡に等しかった。

 だからこそ、和真の話しかたに違和感を覚え、何も考えずに人の傷を抉るような真似をしてしまったと、オルソン大尉は深く謝罪した。

「……良いんですよ、大尉のおかげで俺は今でも彼女を愛しているのだと、再認識できました」

 沈黙が室内の空気を悪くする。

 上司に気を遣わせてしまったと、慌てた和真はすぐさま別の話題を振ろうとした。

 だが、それはオルソン大尉により止められた。

「中尉、では下の世話はどうしているのだ?」

「へっ……?」

「愛する者がいなくなってしまった今、息子の世話をしているのか?」

 和真は、いきなり何を言い出すんだと思いながらも、素直に答えた。

「……いえ、していませんが」

 その瞬間、オルソン大尉はサングラスを外し目を光らせる。

「いけない、それはいけない事だぞ中尉ッ!!」

「な、なにがですか?」

「人間にとって当たり前の三大欲求の1つである性欲を我慢することは、任務に支障をきたすことになるッ!!」

 和真はオルソン大尉の剣幕に押され、頷く事しかできない。

「そんな君には、私の秘蔵のコレクションを進呈しよう!」

 そう言って立ち上がったオルソン大尉は鞄の中から何かを取り出し和真に突き出す。

 それは一冊の雑誌だった。

 表紙には、ボンキュボンのお姉さんが裸で淫らなポーズを取っている。

「これは、アメリカで有名な写真集だ」

 題名には、Play・Guyと書かれていた。

「こ、これは……?」

「私のコレクションの1つだ。君に譲ろう……」

「で、ですが、これはオルソン大尉の大切なコレクションでは?」

「いやなに、これは私の気持ちだ。使ってやってくれ……」

 そう言いながら、微笑むオルソン大尉を見た和真は胸にこみ上げてくるモノを感じた。

 男にしかわからない友情が確かにそこに結ばれることになった。

「大尉ッ!」

 感極まって和真がオルソン大尉に感謝の気持ちを伝えようとする。

 だがその時、良く知った声の叫び声を聞いた。

「「「「キャ―――――――ッ!!!」」」」

「ハッ!」

「ぬッ!」

 和真とオルソン大尉は一瞬顔を見合わせ、即座に行動に移る。

「今の声は、ストー達の声でした!今彼女達は露天風呂の筈ですッ!」

「宮殿内だからと、油断してしまっていた……。急ぐぞ、五六中尉ッ!」

「了解ッ!」

 和真は手に持つPlay・Guyを投げ捨て、現場に走った。

 数多く同じ感覚で並び立つ扉を横目に見ながら長い廊下を走りぬける。

 オルソン大尉は、すでに遥か後方だ。

 和真はそれを横目で確認しながら、疑問に感じていた。

 

 何故誰も反応を示さない?

 マリアの叫び声は確かに聞こえた筈だ。

 なのに何故、いつも通りの業務をこなしている?

 近衛軍も給仕達も、どうして?

 嫌な考えが和真の脳裏に浮かび上がってくる。

 まさか、コイツ等全員がグルなのか?

 もし、そうならマジでやばい!

 

 和真は走る速度をさらに上げた。

 すると、廊下の突き当たりにそれを見つけることが出来た。

 デカデカとサークルの下に十字のマーク、女性を表す絵が描かれた暖簾が姿を表した。

 イギリスの寒い気候もあり、湯気が廊下にまで出ている。

 和真は、暖簾を払いのけることもせずに突貫した。

 そして、日本風の脱衣所を抜け扉を開け放つ。

「皆無事かッ!?」

 湯気が和真を一瞬包み込み、風が吹くと同時に視界が開けて行く。

 和真は、返事が無い事にさらに焦り叫んだ。

「オイッ!皆、どう、し……た?」

 だが、和真の瞳に飛び込んで来たのは悲惨な現場では無く、男共の楽園だった。

 レンガで作られた足場に、和風な木や草や岩が置かれており何個も桶が置かれていおり、湯が流れる音が響く。

 空は一面の星空で、風呂場を照らすライトが幻想的な風景を作り出す。

 そして、少し大きな露天風呂の中央辺りには、生まれたままの姿をした女性が四人。

 無事な姿を見た和真は、ホッと胸をなでおろすと同時に冷や汗が噴き出してきた。

「あの~、えっと、まずは話合おうじゃないか?」

 そう言って、なんとか弁明を計ろうとする和真の瞳はバッチリとすべてを見ていた。

「か、和真さんッ!?」

 イルフィは、そう言うと胸を隠し湯船に身を隠す。

「……」

 ベルナは、濡れた髪を前に垂らし小刻みに震えている。

「こ、こっちを見るなッ!」

 そして、マリアは近場にあった桶を手に持ちブーメランよろしく放り投げてきた。

 それを見た、ベルナとイルフィが親の仇を見つけたかのように、次々と桶を放り投げてくる。

「ちょ、お前等っ、話しを、聞いてッ!」

 高速回転しながら、向かってくる桶をすんでの所ですべて回避していく。

「「「見るなぁあああああッ!!」」」

 投げ飛ばされた桶の内、1つを体を捻り回避、二つ目をジャンプし回避、三つ目は和真の顔面を捉えた。

「がはっ……」

 和真の顔面にヒットした桶はどこかへと飛んで行く。

 宙に浮く和真に追い打ちをかけるかのように、銀色の物体が和真の体にタッチダウンを決めた。

「ぐえッ!」

 まるでカエルが引き潰されたかのような、情けない音が口から漏れ出す。

「和くーーーーん、怖かったよぉ~~~ッ!」

 倒れる和真を押さえつけるように、腰に抱き着いていたのはストーだった。

 ストーは、自分が裸であることを忘れたかのように縋り付いている。

 ストーの長い銀髪が、滑り落ち、今にも綺麗な桃が見えてしまいそうだ。

「痛たたた……、一体どうしたんや?さっきの叫びは……」

「ね、ネズミが―――ッ!」

 そう叫ぶストーを見た和真は、目が点になった。

「この世で一番気持ち悪いBETAを間近で見ている癖に、なんでネズミが怖いんだよ……」

「だって、だってぇえええええッ!!」

「はぁ……、でも、良かった」

 昔のように泣きながら、抱き着いて来るストーの頭を撫で和真はホッと息を吐いた。

 皆が無事で本当に良かった。

 和真はそう思った。

 だが、和真は1つ勘違いをしていた。

 皆が無事の皆の中に、和真は含まれていない事を……。

「そうだよなぁ、良かったよなぁ……」

 地獄の底から響いてきたかのような、おぞましい声が和真の鼓膜を揺さぶる。

「ま、マリア、さん?」

 バスタオルを体に巻き付けたマリアが、鬼の形相でにじり寄ってくる。

「最低ですッ!信じられませんッ!!」

「い、イルフィ、これは誤解なんだッ!」

「ふ、ふふふふ、うふふふふふ……」

「べ、ベルナ……、怖い、怖いよ!」

 そして、三匹の鬼が和真に近づく。

「ヒッ!」

 和真は、どうにか逃げ出そうとするが、腰にへばり付くストーがそれを許さない。

「「「一遍死ねッ!」」」

 そして和真は、鬼が手に持つ三つの桶の攻撃を受け意識を手放した。

 

 意識が途切れる瞬間、和真は空に舞う1つの桶が岩場の影に落ちて行くのを見る。

 その先には、1人の男が息を潜めていた。

「せ、セバスチャン……?」

 消え入りそうな意識の中で和真は納得した。

 セバスチャンが、こうして覗きをしているのを宮殿内の皆が知っていたから、皆慌てていなかったのかと。

 セバスチャンの隠密行動の力に感服しながらも、なんだかやるせない気持ちになっていた和真が見た最後の光景は、手を合わせて祈っているセバスチャンの姿だった。

 

「はっ!!」

 和真が飛び起きると、そこは寝室だった。

「お、俺は、今のは、夢?」

 そう呟く横から、声が聞こえる。

「夢じゃない、すべて事実だ」

「オルソン大尉……」

 消えてしまいそうな声で、名を呼ぶ和真にオルソン大尉は親指をグッと立て、真っ白な歯をキラリと光らせる。

「よかったじゃないか、このラッキースケベ!」

 




今話も読んで頂きありがとうございます!

デゥーティーロストアーケイディアを呼んでいた時は、特に疑問に思っていなかったのですが、ネットで調べるうちに、ベルナテッドの名前の意味を知りました。
さすがわ、やってくれるよアージュの皆さん。
パロネタも本気ですね!
でも、こういうの大好きです!

次回の更新も出来るだけ早く行いたいと思います。
お付き合い頂ければ幸いです。
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