Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
俺は、悠陽と別れた後港に向かい船内から離れて行く日本を眺めていた。
この世界に、元の世界の俺を知る人達はいない。
だけど、この世界で俺を認めて頼ってくれる、俺のことを忘れないでいてくれる存在もいることを知った。
だから、俺はこの世界で生きていく。
帰る望みを捨てた訳では無いが、この世界で骨を埋める覚悟はできた。
この先どうなるのか解らないが、少なくとも精一杯生きて後悔だけはしないで生きようと新たに決意した。
光州の港には、父さんとタエがいた。
「和真、大丈夫かい?」
その短い言葉の中にどれだけの思いがあるのか俺は知っている。
だから、多くを語る必要を感じなかったから俺も簡潔に答えた。
「うん!」
俺を見ていた父さんは納得した顔をしていた。
「それじゃ、帰ろうか?」
「わかった、父さん!」
俺はタエを抱き上げ車に乗り家に向かうことにした。
家に着くとなぜか、くまさんがいた。
「く、くまさん!?」
「あぁ?お前か、お帰り・・・。」
なんとも気だるそうに答えるくまさんだが、問題はそこじゃない。
「なんで、くまさんがここに居て自分の家みたいに寛いでるの?」
「あぁ、それは彼が僕の友達になったからだよ?」
父さんが後ろから言ってくる。
「友達?でも、くまさん森からでないんじゃ・・・」
「あほ!あんな所にずっと居たら餓死するだろうが!」
「た、たしかに・・・。」
「彼は、家の前で倒れていてね。そこで介抱して事情を聞いて、ボディーガードをしてもらうことになったんだ。」
「その変わり飯を食わせてもらうがな?」
「俺がおらん間にそないなことがあったんか。」
「それより和真?」
「なんですか?くまさん。」
「くまさんって・・・。それより、お前面が少しましになったな?」
「そうですか?」
「あぁ!なんかあったのか?」
俺は、日本でのことを思い出す。
本当にいろんなことが合った。
「はい!」
「そうか・・・」
くまさんは、そのまま黙り合成ウォッカをラッパ飲みしていた。
「和真、晩御飯の支度をしようか?」
「はい、父さん」
晩飯を食べ終わるとくまさんが席を立ち、帰ると言う。
なんでも、寝泊りはあの小屋でしているらしい。
俺は、くまさんを玄関まで送ってその時にお願いをした。
「くまさん!俺を鍛えて下さい!!」
「なんだ?藪から棒に・・・」
「俺は、後悔だけはしないと決めたんです。だから、強くなりたい!そんで、勝ちたい奴もできた・・・!やから、お願いします!」
俺は、頭を下げてお願いをする。
正直賭けである、もし断られても自分1人で鍛えるつもりでいる。
「別にええで?」
「ほんまですか!?」
「あぁ、脱走兵の俺が言うのもなんだが、この世界では力がいる!それが、どんな形の力であれだ!だから、お前が欲しい力の形を俺が教えてやれるなら教えてやるさ!それに、ボディーガードするにしても守る対象も少しくらいは動けて貰えないと困るからな?」
くまさんは、そう言うと恥ずかしそうに頬を掻く。
「ありがとうございます!!」
「けど、俺は厳しいぞ?お前が止めてくれと言っても止めないからな?そのつもりでいろよ?」
「はい!」
「それじゃ、明日から早速始める!0400までに、森に来い!良いな!!」
「はい!」
「違う!!その場合は、了解だ!!もう一回!!」
「了解!」
「よし、解散!」
俺は、くまさんの変わり様に驚いたがこれから強くなれると思うと、ドキドキしてその日は余り寝ることができなかった。
朝4時、俺はくまさんの小屋に来ていた。
朝食は作り置きをし、父さんには書置きをしている。
くまさんが、小屋の中から出てきた。
「良し、時間どうり来たな!それでは、これより訓練を始める!」
「よろしく願いします!」
「まずは、簡単なランニングからだ!お前の家から森の入り口まで往復10周!!」
俺の家から、森の入り口まではだいたい1kmくらいある、つまり20km走れと言うことだろう。
「じ、10周ですか!?」
「口答えはするな!お前は、はいかYESか了解と言えば良いんだ!」
「り、了解!」
俺は、これが軍隊式かと驚いた。
だけれど、くまさんの言う通りにすれば間違いなく強くなれる。
だから、必死に食らいついて行くと決め走り始めた。
時たま吐いたりしながら、何とか走りきることが出来たが、俺は森の入り口で倒れてしまいそこで、少し休憩をしていた。
すると、いきなり大量の水が顔に掛けられる。
「うっ!ぶは!」
「誰が!休んで良いと言った!?強くなりたければ、休まずに来い!」
「はい!!」
俺は、とうに限界の体に鞭打って起き上がらせくまさんの後をついて行く。
着いた先は、森の中の拓けた広場だった。
「良く、走ったな?楽にしろよ。」
俺は、いつものくまさんに戻ったのを確認してから、近くの切り株の上に座る。
「お前に見せたい物があってな?連れてきた・・・。」
そう言うと俺の前に2つの物を置く、1つはマシンガンでもう1つはショットガンだった。
「いいか?これが、解りやすい力だ。簡単に命を奪う力だ・・・、けどな?これでもBETAは倒せない・・・。小さい奴なら何とかなるが、大きい奴らは無理だ。しかも、小さい奴らも大量に来るから、抑えきれない。だけれど、いざって時は頼りになる。それに、敵はBETAだけじゃない、時に人も敵になる・・・。そんな奴らから身を守るために、お前にもこれの扱い方を教えようと思う。ホントは、対人戦なんて教えたくはないがな。俺が、持ってこれたのは、これらだけだが知らないよりか、ましだろ?」
そう言って、銃の扱い方を教えてくれる。
けれど俺は、BETAと戦っている中で人どうしも戦うのを聞いて茫然としていた。
「よし、だいたい理解したか?」
「だいたいは・・・。」
「じゃ、好きな方を選べ。最初はそんなもんで良いだろ?それで、慣れたらもう片方も教えてやるよ!」
「はい!」
俺は、二つの銃を見る。
片方は威力があるが球数が少ない、もう片方は球数が多いが威力が弱い。
正直銃のことなんて何も知らない、だから目についたショットガンを選ぶ。
「そっちだな?じゃ、打ち方とかを教えるぞ?」
それからは、12時になるまで訓練をした。
訓練が終わるころにくまさんが一発撃たせてくれると言った。
「弾が少ないから一発だけだが経験してないといざって時に困るからな。」
そう言って銃を渡してくる。
俺は、それを構え木に向かって撃った。
もの凄い音が辺りを支配して、周囲の音を支配した物を反動の凄さから俺は落としてしまった。
「これが、銃だ!わかったか?」
俺は、頷くことしかできなかった。
その後、手が痺れる中俺は家に帰った。
家で父さんに訓練を始めたことを直接伝えると、父さんは「やっぱり、男の子だね。」と笑って言ってくれた。
でも、その顔はどこか寂しそうな顔だった。
それから、2週間毎日気絶しそうになるまで体力作りと銃の扱い方を学び、体力が前に比べると上がってきたのを感じ始めた頃、俺はくまさんの小屋に招待された。
「さて、和真!お前もそろそろ体が出来てきたから近接戦を教えて行こうと思う。」
くまさんは、俺の前に二本のナイフを出してきた。
「これは、ククリナイフだ!俺の元居た軍でグルカの戦士に選ばれた奴らは皆、これを持っている。」
そう言うと、皮で出来ているような鞘からナイフを出す。
そのナイフは内側に刃が湾曲した珍しい形をしていた。
「こいつは、先端が重くなっていてな?敵を叩き切ることができるんだ。元は国連軍から支給された物で少し本物のククリナイフと違うが、これしか無いからこれで訓練するぞ?」
「はい!」
いつもの広場で、俺とくまさんは対峙する。
「そいつは小手先の技なんざ必要ない、切れる距離まで踏み込んで全力で叩き切る!そう言う物だ。そら!打ち込んで来い!」
「くまさん?その手に持ってるのは何?」
「あ?これか?これは、それのデカイ版の奴だ。昔は儀礼用とかで使われたらしいが今は、BETA用の武具として使ってる。」
くまさんは、1mあるんじゃないかと思う位大きいもはやナイフで無いそれを片手で軽々と弄ぶ。
俺は、改めてくまさんの非常識さに驚く。
俺は、くまさんのナイフの3分の1程のナイフを持ち上げるが、包丁なんかとは比べものにならないくらい重く、持っているだけで腕の筋肉が悲鳴をあげる。
それでも、無理やり振り上げ相手に突っ込む。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
「ふん!」
全力で振り下ろした俺のナイフを、くまさんはその場から動かずに弾き飛ばす。
「うわっ!」
ナイフは俺の手元から離れ俺自身尻もちをついてしまう。
その隙に、俺の首元にナイフを添えられる。
「はい、1回死亡。お前は踏込が浅い、もっと懐まで入って来い!それと、相手の一挙手一投足全体を見るように視野を広く持て良いな?じゃ、もう一回!!」
「はい!!」
俺はそれから、相手の全てとその周りも意識するように心がけて脅えることなく相手の懐に入れるように何度も訓練をした。
「はい、100回死亡。今日はここまでな?」
「あ、ありがとうございました。」
俺は疲れから、肩で息をする。
「結局、一回も勝つことができひんかった・・・。」
「当たり前だ!今日始めたばかりの奴に負けたら俺の面目丸つぶれだろうが!」
「た、たしかに・・・。」
俺は、苦笑いしながらくまさんに背を向けナイフを切り株に置きに行く。
その時、ゾクッと後ろから何かを感じて頭を下げる。
俺の頭があった場所を小石が飛んで行く。
俺は、もし当たっていたらと想像して青い顔をしながら投げた本人に向かって文句を言う。
「ちょ!くまさん、危ないでしょ!?」
「うん?ちょっと確かめたい事があってな?これで、確信した。」
「何をですか?」
「お前は、反射神経が良いのと危機察知能力が高いことだ。」
「つまり?」
「つまりお前は、脳が躱さないと!って思う前に体が勝手に躱しているってことだ。判断しないで躱すのは良くないが、これからはこの能力をさらに鍛えていくぞ?」
「了解!」
俺は、ナイフを直すために小屋に戻りそこでくまさんと別れた。
俺は、家に帰るまでの道のりで今回の訓練の反省を行っていた。
「イメージでは、もっと早く踏み込んで懐に入れたはずやねん、やからそこを鍛えて。それと、もっと視野を広く持たんと不意な攻撃には対処できんからな・・・。」
その日の晩から俺は自主トレーニングをすることにした。
それからさらに二週間たったころ、自分の戦う時のスタイルを完成させていた。
「やっぱり、お前はナイフ一本よりも二本の方が良いな?」
「なんだか、こっちの方がしっくりくるんですよ。」
「まぁ、その方が良いならそれで良いだろ?それに、お前も大分強くなったし扱い方も理解してきたろ?だから、それをお前にやるよ。」
そう言って俺が手に持つ二本のククリナイフを指差す。
「いいんですか?」
「別に構わねぇよ。もともとそのつもりだったしな?」
「ありがとうございます。」
俺は、背筋を伸ばし頭を下げる、その姿を見ていたくまさんは恥ずかしそうに頭を掻いていた。
「お前も大分板についてきた感じだな?弟子なんて者、俺は想像していなかったぜ。」
「なら、これからは師匠と呼びましょうか?」
「やめろ!気色悪い。」
「ははは!」
「それより、今日は日本に行くのだろ?」
「そうですね、自分がどれだけ強くなったのか確かめたいですし、多恵とも会いたいですから。」
「このシスコンが!」
「シスコンは褒め言葉ですよ?師匠。」
「けっ!」
「それじゃ、行ってきます!」
「おう!自分がどの位置にいるのか理解してこいよ?」
「了解!」
俺は、父さんに港まで送ってもらい船に乗り込む。
今回はタエも一緒だ!
父さんにはくまさんが付いていてくれるので安心だろう。
離れていく港を見ながら今度こそはと心の中で呟く。
「待ってろよ?尚哉!巨乳の素晴らしさを教えたる日がとうとう来たで?」
今回の話は、修行編になります。