Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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想いを焼き尽くす暴力

 2001年2月10日午前3時50分

 ノルウェー領・オスロ

 

 砂埃を巻き上げながらブラウエライターが駆る4機のタイフーンはつかず離れずの絶妙な距離を保ち、微かな命の炎を懸命に燃やす仲間のもとに急ぎ向かっていた。

 唸るエンジン、躍動する各部関節、センサは最大限に活用しタイフーンが出せる最高速度を常に維持しながら突き進む。

 推進剤の残量を横目で確認。ロケットモーターをフルで使っているために目に見えて減り続けている。

 戦闘可能時間、戦線を離脱するためのルートの確認、匿ってくれるであろう場所までの距離。

 残存機数は6機、敵のラプターは確認出来ているだけでも5機、圧倒的に不利な状況。

 まさに命綱なしの綱渡り、足を踏み外し奈落に転落するのが、自分一人であれば恐れる必要はないが、一人でもミスを犯せば連鎖的に仲間も奈落に落ちてしまう。

 今、ブラウエライターに課せられている命令は、生き延び今回の事、そして自分達の想いをイギリスに欧州連合に世界に伝えること。

 そのためには、この狩場となったゴーストタウンに生き残った6人は無事に合流しなければならない。

 そうすれば、各自が逃げに徹した場合一機は逃げ切ることが出来る可能性が生まれる。

 そこにすべてを賭ける。

 中佐は、自らの脳で生成した可能性の糸を希望に向け垂らす。

 それと同時に考える。

 どうしてこんな事になってしまったのだろうかと。

 

 

 始まりはイギリス前政権の腐敗からだった。

 自らの保身とイギリス国民の世論ばかりを気にかけ、多くの難民を見殺しにしてきた。

 

『我がイギリスには、まだ余裕がある。一人でも多くの人を地獄から救い出すべきだ』

 

 前国王陛下は、そう仰られていた。

 そして、働きかけ続けた。

 王室の財産を切り崩し、人のあるべき姿をお示しになられていたのだ。

 理想を語るだけの愚者とは違い、現実を直視しそして救える人々を救おうと努力なされていた。

 そんな姿を国民は見つめていた。

 だからこそ、王室に嫌、前国王陛下に多くの指示が集まるのは当然のことだった。

 そして、前政権の愚者に消されてしまった。

 我々ブラウエライターは、その一部始終を知っている。

 なにせ、前国王暗殺に気づかずに加担していたのだから。

 それに気が付いた時には、すべてが遅かった。

 我々は憤った。

 そして、義憤に駆られた。

 その結果、昨年のテロを行った。

 我々の罪をすべて背負った隊長と副隊長は、最後にこう言っていた。

 

『これで、イギリスはあるべき姿に戻る。お前達は、後の歴史を守れ』と……。

 

 だが、蓋を開けてみればどうだ?

 現政権はただの傀儡政権だ。

 自分達では何も決められず、決めようとせず、弱者を切り捨て強者に媚び諂うことしか出来ない無能ではないか。

 こんな世界、誰も望んでいなかった。

 前国王陛下や隊長達が夢見たイギリスはこんな場所では決してなかった。

 残された我々が行き着いた結論は、王政の復活。

 前国王陛下の想いが今も生き続けるあの場にしか、我らの夢は存在していない。

 中佐は、知らず知らずの内に奥歯を噛みしめる。

 今自らが行っていることは悪であると中佐自身が理解している。

 だがしかし、この行いを歴史として後の人類が語るとき、自分達を必要悪だと断言すると確信している。

 そしてそれはいずれ、正義と呼ばれるようになると希望を抱く。

 そう正義である。悪でありながらの正義、大義は常に我らにある。

 そう思っていないと戦っていくことは出来ない。

 昨日虐殺した一家の顔が思い起こされる。

 その三人の顔は苦痛に塗れ、睨んでいた。

 それでも振り上げた剣は、振り下ろさない限り鞘に納めることは出来ない。

 もう、後戻りすることは出来ないのだ。

 

 

「03、04、頑張って!もう少し、後少しで合流出来る!」

 

 05が、和真のラプターから逃げる仲間に向け、声を絞り上げる。

 その声には希望と絶望、双方が乗せられていた。

 すでに喉はかれ、かすり切れている。

 それでも叫び続ける。

 

「……こちら03、中佐……、逃げてください。あのラプターは化け物だ。俺達の常識が通用しない。04と二人で足止めを行います。その隙にどうか……」

 

 03の顔が、網膜投影システムにより映し出される。

 その顔は、苦悶に満ちていた。

 汗が吹き出、緊張を打ち消すためだろう。噛みしめ切れた唇をさらに噛みつけていた。

 通信越しにも戦闘の凄まじさを感じることが出来る。

 単機で行っているとは到底思えない爆音が、バックサウンドとして鳴り響く。

 

「何を言っているの03ッ!諦めないで!!」

「そんなことを言っていられるような相手ではないッ!!中佐、英断を!」

 

 部下達が叫び合う。

 その根底に存在するのは、戦友に生き残って欲しいと言う感情。

 実際のところ対BETA戦だろうと、対人戦だろうと関係が無かった。

 隣に並び立つ仲間に生き残って欲しい。

 皆で語り合い覚悟を決め、決起した想いも、真の窮地に陥れば腹の底の想いが勝ってしまう。

 中佐は確信し、決める。

 その顔は、先ほどの辛酸をなめされられた様な表情とは違い。

 晴れ晴れとした表情となっていた。

 

「03、それは認められない」

「ッ!!」

 

 03の顔が驚愕に染まる。

 だが、次の言葉により想いが一つとなる。

 

「撒き餌で行くぞ、うまくやれ」

「「「「「了解!」」」」」

 

 

「動きが変わった?」

 

 二機のタイフーンを追い詰める和真は、敵の挙動の変化を見逃さずにいた。

 120mm水平線砲改から、5発放つ。

 だがそれも、遮蔽物を活用され阻まれた。

 

「死に際の悪あがきとも違う……、自暴自棄になっている訳でもない。どういうことだ?」

 

 和真は念のためにと、倒したタイフーンから奪い取っていた盾、多目的追加装甲シェルツェンをいつでも展開できるように準備する。

 

 

 大海原の中、シャチに追いかけ回されるアザラシのように和真のラプターから逃げ回る二機のタイフーンは、ほとんどの兵装をパージし重量を削減していた。それでも、振り切ることが出来ない。

 流星群の如く砲弾が戦術機の180度すべてを包み込むかのように着弾していく。

 すぐ隣には死。

 一歩前進も死、一歩後進も死。

 全方位に死をばら撒かれる。

 それでも、03と04は漲る生気を表情に現していた。

 

「04、アレをやるぞ!」

「OK、任せな03ッ!」

 

 和真はすぐに違和感に気が付いた。

 

「こちらに向かってきていた4機のタイフーンの機影が消えた?」

 

 和真はすぐさまにコントロールパネルを叩き、レーダーを再度確認、並行して赤外線・振動・音響から探りを入れる。

 だが、見つけることが出来ない。

 

「主脚での静穏モードに移行したか……、いやそれなら、赤外線に引っかかるはず……、まさか、主機を落としているのか?待機モードにし、民家にへばりついていればレーダーも他のセンサすら僅かな時間、誤魔化すことも可能かもしれないが、しかし……」

 

 それもほんの僅かな時間しか効果を発揮しないだろうことは相手も理解しているはず。

 それにだ、待機モードに移っているときの戦術機は丸裸同然なのだ。

 賭けに出ている。

 罠をしいている。

 ならば、今目の前を鬱陶しく飛んでいる二機のタイフーンは誘導担当ということになる。

 後顧の憂いを今ここで断つ。

 心配事は、すぐにでも消し去ってしまった方が良い。

 そう判断した和真は、120mm水平線砲改の弾倉を入れ替え全弾使い切るつもりで構える。

 

 休む暇すら与えられずに次々と120mm水平線砲改から120mm弾が放たれていく。

 放たれた120mm弾を03と04のタイフーンは、紙一重で躱し続ける。

 否、躱すと言うよりも町に守られていた。

 入り組んだ迷路のようなオスロ市街地が遮蔽物と化し盾となる。

 まるで、光線級の照射を他のBETAを盾にして回避する術とそれは似ていた。

 追う者と追われる者、距離は徐々に近づき次第に大きくなる爆発音が死の時を刻んでいるように思わせる。

 だが、03と04には迷いが無かった。

 すぐそこに勝利があると信じているかのような迷いのない機動、和真は徐々に焦りだす。

 すると、曲がりくねった道から直線の道に抜け出した。

 和真は戦域地図を確認する。

 直線の道は100m、50m先には広めの横道が存在していた。

 ただし、民家のせいで鋭角になっており今の速度では曲がり切ることは不可能。

 

「手こずらせてくれる」

 

 和真はその道には向かわないと判断する。

 それよりも、この直線の先に罠がしかれている可能性の方が高いと考えた。

 そのため、早急に二機のタイフーンを沈めようと120mm弾を放つ。

 だがそれは、予想外の連携により躱される。

 

「合わせろよ!」

「良し来たッ!」

 

 一機のタイフーンはロケットモーターに火をともし数瞬爆発的に加速する。

 跳躍ユニットを止め、失速機動領域内で錐揉み回転。

 後から続くもう一機のタイフーンとあわや衝突と言う状況。

 その中で、錐揉み回転していたタイフーンは両腕を伸ばす。

 後から続いていたもう一機のタイフーンは、その手を掴み取り鉄棒の技、大車輪のように大きく回転、放り投げられるかのように見事鋭角で曲がることが不可能と思われた横道に姿を消す。

 支点の役割をしていたタイフーンは、勢いを殺されることにより流れるように体制を整え、ロケットモーターを点火、先に言ったタイフーンを追いかける。

 

「なんなんだあの動きはッ!」

 

 またしても、120mm弾を外してしまった和真は思わず叫んでしまう。

 

「クソがァアッ!!」

 

 倒したタイフーンから奪い取り左手に装備している盾、シェルツェンをコンクリートの地面に打ち付ける。

 それと同時に、両足裏を民家の壁に叩きつけすべてを削り取りながら速度を叩き落とす。

 横道の前に辿り着いたとき、盾を引き抜き民家の壁を足場に跳躍。

 まっすぐ横道に侵入する。

 なんとか成功した。

 そう安堵し、今だ目視で確認出来る位置にいる二機のタイフーンにロックオンしようとした。

 その時、和真は見つけてしまう。

 その二機のタイフーンの先には、王を思わせるほどに威風堂々と立つ一機のタイフーンとそのタイフーンの隣に控えるように膝をつき、こちらに突撃砲を向ける二機の敵の姿が―――。

 

「放てッ!」

 

 中佐の号令により、05・07の二機のタイフーンによる計4つの砲口から砲弾が吐き出された。

 放たれた36mm弾は、03・04のタイフーンを横切り和真のラプターに吸い込まれるように向かう。

 

「ッ!!」

 

 和真は緩やかに流れる時間の中で躱すことが出来ないと判断、左手の盾を構え受け止める。

 青騎士の攻撃は止まらない。

 

「ハァアアアアアアッ!!」

 

 ブラウエライター11が駆るタイフーンが頭上より姿を現し、背部ブレードマウントから両刃の近接戦闘用長刀フォートスレイヤーを叩きつけるように振り下ろす。

 

「くッ!」

 

 和真は僅かに体をそらすことでそれを回避、跳躍ユニットを使い後方にブーストジャンプ、11の機体の影に射線を被らせる。

 弾丸の雨が降りやみ眼前にはフォートスレイヤーを振りぬいた状態の敵。

 すぐさまに反撃に出ようとするが、青騎士はそれを許さない。

 

「ぬんッ!」

 

 05・07の射撃を防がれ、11の攻撃を回避すると読んでいた中佐の乗るタイフーンは、11を跳び越え背部兵装担架からフォートスレイヤーを抜刀、速力と重力を乗せた必殺の一撃を振り下ろす。

 和真はそれを前方に向けていた跳躍ユニットの推力偏向ノズルを巧みに操り、風に掃われた枯れ葉のように縦軸に回転しながら上昇し回避する。

 しかし、その判断は間違っていた。

 移動を始めていた05・07から交差するかのように36mm弾が放たれる。

 和真は瞬時に敵から奪い取っていた盾、シェルツェンの表面にビッシリと取り付けられているリアクティブアーマーを起動させる。

 シェルツェンの表面から叩きつけられるかのような衝撃と共に爆煙が立ち込め、無数のタングステン弾が煙を切り裂くかのようにばら撒かれる。

 リアクティブアーマーの本来の使用用途は、取りついてきた戦車級の排除にある。

 そのため、無数に散らばるタングステン弾は飛来する36mm弾数発を弾くだけに終わり、その他の36mm弾はリアクティブアーマーの使用により傷んだシェルツェンに殺到する。

 次々と穴をこじ開けられていくシェルツェン、もはやそれは盾としての機能を有してはいなかった。

 

「やったか?」

 

 誰かが呟く。

 ラプターのいる場から距離をとった地点にいる03・04の元へは05・07続いて11が、そして最後に中佐のタイフーンが様子見と次のステップに移るために移動を始めようとしていた。

 その時だ。

 突然ブラウエライターすべての衛士の網膜にSOUND ONLYの文字が浮かびあがり、親の仇を目の前にした獣のような声が鼓膜を叩いた。

 

「よくも……、よくも、リリアのラプターを傷つけたなぁああああああッ!!」

 

 市街地に広がる民家よりも、少し高い位置に濛々としていた黒い煙の内部から卵から生れ落ちるかのように、ラプターが姿を現す。

 速度をはじめから最高速に保つためかコンクリートの地面に向け頭から突っ込む。

 それを見ていたブラウエライターの衛士たちは、凡ミスをしやがったと思った。

 爆煙により、視界が閉ざされた中でのロケットモーターの使用は、周りに何があり自分がどの方向を向いているのかを分からなくさせる。

 そしてそれは衝突事故に直結し、BETA戦では良くあることでもあった。

 だからロケットモーターを全力で噴射してしまったあのラプターは、地面に衝突し終わるというなんとも惨めな最後を迎えてしまうのだろうと思った。

 だが彼等は次の瞬間、予想を超える動きを見せつけられる。

 ラプターは、地面と衝突する寸前に片足で地面を蹴りつけると同時に120mm水平線砲改を打つ。

 戦術機の体で衝撃を受け止め、120mm水平線砲改の発射時の反動を利用しドリルのように回転、速度をなるべく落とすことなくほぼトップスピードを維持したまま、突っ込んで来たのだ。

 ラプターの手には、いつの間にかフォルケイトソードを一回り大きくしたような長刀が握られている。

 鎌のような形をした先端部の後方からは、噴炎が上がっている。

 常識外れの機動に、それを耐えて見せた戦術機、しかも見たこともない武器を手に持っている。

 すべてが、予想の範疇を軽々と超えていた。

 脳が一瞬停止してしまう。

 その一瞬が生死を分けてしまうのは、ブラウエライターの隊員全員が知っていた。

 だが、停止してしまっていた。

 その一瞬の中を動く騎士が一人。

 

「ハァアアアアアアッ!!」

 

 中佐のタイフーンがフォートスレイヤーを構え迎え撃つ。

 振り下ろされる巨大な西洋剣、掬い上げるように切り裂くフォルケイトソード改。

 激しい衝突音と共に、ぶつかり合った刃からはスーパーカーボンの欠片が舞い散り、一瞬タイフーンが地面から足を浮かせる。

 そして再び地面に足底をついたと同時に、中佐は仲間に指示を飛ばす。

 

「各自地図に記された地点に迎え!」

「ですが中佐ッ!」

「急げ、皆の想いを無駄にするつもりかッ!!」

「「「「「……了解ッ!!」」」」」

 

 ブラウエライターの生き残りである五機のタイフーンは中佐を残しその場を立ち去ろうとする。

 

「逃げるなぁあああああああッ!!」

「させるかぁあああああああッ!!」

 

 120mm水平線砲改を構えるラプターに対し、中佐は上腕部に取り付けられたカーボンブレードを叩きつける。

 爆発する120mm水平線砲改。

 

「くっ」

「ぐっ」

 

 爆発の衝撃と共に一端距離を取り民家に姿を隠す二機。

 両戦術機共に、各部が欠損していた。

 冷静になった和真は、機体をチェックする。

 

「左足部が中破、右手が小破に各部被弾……、IFCSが無ければ終わっていたな」

 

 和真がレーダーを確認すると、残り五機のタイフーンが別々の方角に向け進んでいるのが分かった。

 それを確認したと同時に小ウィンドウが開き、インフィニティーズ小隊長キース・ブレイザー中尉が姿を現す。

 

「こちらに任せてもらう」

「すみません」

「なに、気にするな。君は十二分にやってくれた。我が隊に誘いたい程に、な?」

 

 楽しげにだが、真剣にそう言ったキース・ブレイザーに和真も落ち着きを取り戻し返答する。

 

「職にあぶれたら、その時にお願いします」

「ふっ、分かった期待している」

 

 そう言うと通信を閉じた。

 和真は、自らの内から突然湧き出しあふれ出た黒く燃える感情を抑え込もうと数度深呼吸する。

 そして、確かめるように呟いた。

 

「……大丈夫、俺はまだ大丈夫」

 

 武装を確認する。

 残された武装は、背部兵装担架と左手に握られているフォルケイトソード改、それとナイフが一本。

 恐らく相手は、突撃砲を所持している。

 どうするか……。

 そこで和真は気づく。

 自分の攻撃を見事防ぎ切ったタイフーンの衛士のことを、強制ハッキングしこじ開けた回線の先から聞こえてきたのは中佐と呼ばれる男が命令を題している声。

 恐らくアイツがブラウエライターの部隊長なのだろう。

 何故かそんな気がした。

 そして、聞きたいことがあったのを思い出す。

 和真は今は二人きりであり周りには誰もいないことを再度確認すると、再び回線を開く。

 

「お前達は何を思って、こんな事をしているんだ?」

 

 すると、和真の網膜にもSOUND ONLYの文字が浮かび上がり、年期を感じさせる渋い声が聞こえてきた。

 

「……想いを叶えるために」

「名声を自らに降りかかった不幸を取り除くためだけに、お前たちは罪もない人を殺したのか?」

 

 すると、堪えるかのような嘲笑と共に中佐が話し始める。

 

「くくくく……、貴様の瞳にはそう映っていたのだな?」

「とぼけるな、先日のテロで捕えた貴様の仲間がそう言っていた」

「あぁ、あそこで動いていた者達には我々の真の目的は話していなかったからな」

「ならその真の目的とやらを話してくれないか?」

「ふぅ……、少しは自分で考えてみたらどうだ?まぁ、このような状況では構わないか。……我々の目的は、王政の復活だ」

「なに……?」

「断っておくが今回の一連の騒動には王室の者は誰一人として関わっていない」

「それを俺が信じるとでも?」

「信じるも何も真実だ。まぁ、貴様らが今回の件で王室に何かしようにももうすべてが遅いがな」

「お前達は、王政の復活のためにBETAを誘き寄せた。イギリスが無くなれば王政もクソもなくなると考えなかったのか?」

「想定している。だが、そうはならんさ」

「なぜ、そういいきれる?」

「国連が提唱しているBETAのユーラシア封じ込め。そのためには、イギリスは無くてはならん存在だ。イギリスが落ちれば、その次はどこだ?防衛能力をイギリスに任せっきりのアイスランドにグリーンランドだ。ではその次は?……北アメリカ大陸だ。アメリカが国連が世界がそれを許すとでも?あの者達がそれを許すはずが無い。いざとなれば、明星作戦で使われた例の新型爆弾が使用されるかもな」

「……もし仮にG弾が使用されてしまえば、あの地域一帯は半永久的に人が住めなくなるかもしれないんだぞ!」

「別に構わないでは無いか……」

「なに!?」

「いい加減に目を覚ますべきなのだ……。ユーラシアを奪い返すのは確かに大切だろう。だが、そればかにりに目先を奪われ今を見ないようではどの道その者達には先は無い」

「お前はなにを……」

「大陸に帰れば、元の暮らしが待っている?ユートピアを奪い返せ?馬鹿馬鹿しい、どうして今の暮らしが国が理想郷だと気が付かない。大陸に帰ったところで待っているのは悲惨な末路だけだ。BETAに支配された世界とはそう言うものだと何故理解しない。あの大陸はもうすでに人が住むことが出来ない場所だというのに……、ならば人が住めない場所なら別に核だろうがG弾だろうが、落としてしまって構わないじゃないか」

「それはお前の理屈だろ?」

「G弾を使わずとも、BETAから土地を奪い返すためには多くの武器弾薬が必要となってくる。我々が乗る戦術機が持つ突撃砲から放たれる36mm弾、これには劣化ウラン弾が使われているのは知っているだろ?そんな物をばら撒くだけで、そこに人が住むことなど出来ぬさ」

「なら、今戦っている国土を奪い返し再興を目指す者達が間違っているとそう言いたいのか?」

「そうではない。皆、国連や政府の馬鹿共に踊らされているだけだ。現実を見せてもらえず夢ばかりを追わされている。だからこそ、我々がそれを正す!今ある場所をより良い場所にし、それを守り通す。それが我らの想いだ」

「……結局現実を見ていないのは、お前達だ」

「ほぅ……」

「この世界は、そんなに優しくない。それほどの時間を用意などしてくれない。お前達がやったことは、結局の所そこらへんに五万といるテロリストと同じだ。不平不満をぶつけているだけだ。お前たちのせいで、何人の人が不幸になると思っている?何人死んだか知っているか?今の人を守らずに不幸にして、明日を語るなッ!テロリスト風情がッ!!」

「我らが苦しみを、想いを知った風に語るな小僧ッ!!必要な犠牲なのだ……、未来を切り開くためには、必要な犠牲だったのだッ!!」

「お前達は、零れ落ちる必要の無い人達までも苦しめ殺した!だから、お前たちのその想いも何もかも、俺が否定して壊して今を守る!」

「時間稼ぎのための会話がまさかこんなことになろうとはな……私を怒らせたな小僧ォオオオオオッ!!」

「俺は初めからブチ切れてんだァアアアアアアッ!!」

 

 中佐のタイフーンと和真のラプターはそれぞれ隠れていた民家の影から飛び出し、互いの愛刀をぶつけ合わせた。

 それは考えのぶつかり合い、どちらが正しくてどちらが間違っているなんて誰にも言えるはずがない。

 だが、この二人は己が信じた道をただ突き進む。

 それを邪魔する者はだれであろうと排除する。

 水と油のように、初めから交わり合うことなど出来はしない。

 

 

 2001年2月10日午前5時00分

 ノルウェー領・オスロ

 

 まだ日が昇らないオスロ市街地。闇が地上を支配し僅かばかりの星の光が降り注ぐ。

 そんな中、ある一角だけはまるでキャンプファイヤーをしているかのように明るい。

 炎の揺らめきが、町に刻み付けられた刀傷を生々しく照らし出す。

 その現場はまるで怪獣映画の破壊された町のように壊れていた。

 民家に突き刺さる巨人の腕、半ばで折れた長刀、そんな場の中心で燃え盛る炎。

 それは、EF-2000タイフーンを燃料に燃え続けていた。

 

「はぁ…うッく……」

 

 和真は戦術機内で必死に息を整えていた。

 酸素を脳に送らなけらばすぐにでも気絶してしまいそうだからだ。

 なにが、BETA戦よりも対人戦のほうが楽だ。

 少し前の自分を殴り倒してやりたくなる。

 本気の殺意を抱いての殺し合い。

 それは、予想を遥かに超えるほどに辛く怖く難しかった。

 和真は推進剤が切れてしまったために主脚で海へ向け移動を始める。

 逃げたブラウエライター全機を撃墜したと知ったのは、つい先ほどだった。

 これで彼らは今後の世界を見ることも想いを遂げることも出来なくなってしまった。

 和真はたまらずに悪態をついてしまう。

 

「クソッ……胸糞悪ぃ……」

 

 深い闇が和真を絡めとる。

 それはもがけばもがくほどに深く絡みつき引きずり込む。

 抵抗なんて出来るはずがない。

 だってそれは、和真自身が望んだ結果なのだから。

 

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