Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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疑問

 深夜の暗闇の中、無着色に塗りつぶされた遊歩道、風も無く、息吹も無く、心音も無く、月明かりと言うライトに照らされた絵画の世界、もしくは活字ばかりの小説の一頁、すべては妄想想像空想、誰にも邪魔されず干渉されず、淡い孤独をスパイスに楽しむ。

 

「銃口、人に向けるのはどうかと思うけど、そこんとこどうよ中尉さん?」

 

 キツネのような細い目、人を小馬鹿にしたようなアヒル唇、ワカメのような天然パーマ。

 そんな風貌の優男は、無駄に手入れされた爪と指を見せつけるかのようにリボルバーのグリップを握る和真の手に被せるようにして握り、銃口を天に向けていた。

 和真は握られている手を振りほどき、慣れない手つきでシリンダーラッチを押しシリンダーを押し出すと、静かにエジェクターロッドを押し残されていた弾丸を取り出す。

 その動作が、事の成り行きを見守っていた者達に違和感を与える。

 そしてそれに気づいた者達から、順に全身に鳥肌を量産していく。

 命への無関心、まるで爪を爪切りで切り取るのと同じ感覚で引き金を引いていた。

 後方の常識から脱した存在、前線とはこのような人間を生み出しているのか。

 テント内にいたアメリカ人達は、そこで気が付く。

 いくら取り繕うとも、ここでは自分達が圧倒的にアウェーであると。

 だが、今この時だけの世界の中心はそんな彼等を放置し時間を進ませていた。

 

「……お前は?」

「ネフレ第二町欧州方面軍・ボマーズ大隊所属 アイバク中尉だ」

 

 そう言いながら敬礼するアイバクに和真も続く。

 

「トイ・ボックスの五六和真中尉だ」

「知ってる知ってる!」

 

 そう言ったアイバクに対し和真は、手に持っていたリボルバーの拳銃をテーブルの上に置くと腰に手を置き挑発的に笑みを作る。

 

「俺もあんたらの事は良く知っているよ、ボマーズ。明星作戦以来だな」

「あん時と同じで、相変わらず無茶しちゃってんよ?英雄志願者」

「そんな風に呼ぶな、気持ち悪い……」

「おや、ご機嫌ななめ?」

「あぁそうだ。―――俺は今、すこぶる機嫌が悪い」

「ふぅ~ん……。だってよ、ヤンキー。それ、しまっといた方が懸命じゃね?」

 

 アイバクが和真の後方で、椅子に座りながら冷や汗を垂らすイーサンに助言する。

 

「ッッ!」

 

 イーサンは、一週間ぶりにありつけた食料を抱き込むようにリボルバーを腕に抱える。

 

 和真は、アイバクが後方のイーサンに声をかけたのを見てから、遠い過去の顔見知りに遭遇したように、ダルそうに振り返る。

 

「これで、腰抜けで無い事は証明されたか?」

 

 イーサン以下、他のアメリカ人は何も発しない。

 

「じゃ、これでうちら帰りますんで!」

 

 アイバクがそう声高に言うと、ネフレ側もオーストラリア側も皆浮かない表情で出口に向かい始める。

 その時、俯き震えていたイーサンが耐えられない、理解出来ないと叫ぶ。

 

「そんなだから……、自分の命すら平気で切り捨てられる奴だから、だからお前達は仲間を平然と見殺しに出来るんだッ!」

 

 皆がその声に足を止めイーサンを見つめる。

 イーサンは、自分を見つめる人間達の顔が能面の様に表情を失っていることに一瞬たじろぐが、堪え言った。

 

「俺は……、俺達アメリカ軍人は、決して仲間を見捨てないッッ!」

 

 その言葉を、和真は受け止める。

 すると、イーサンの後ろで何も出来なかった他のアメリカ軍人達もイーサン同様決意の炎を宿した。

 空気はいつの間にか、熱いモノへと変わっていた。

 それは羨望だったのかもしれない。

 無くしたモノを見せられたからなのもかもしれない。

 戦場に行くと決めたその日、誰もがそう願いそうなろうと戦い、いつしかそれを可能とする力が自分にはないと気が付いたその時から、なるべくそうしようと消極的に考え、誰かを見捨て正しいのかもわからない任務を達成することで、失った1が100を救うと信じ、頭の片隅に置いておくだけとなった初心な願い。

 目の前に立つアメリカ軍人達は、過去の自分の姿だった。

 だからだろうか……、多くの戦場を体験してきたネフレ軍の者達は先輩のように、導き手のような表情になるのに対し、和真の瞳は濁った氷のようになってしまったのは―――。

 

「―――ここは地獄だ。そんな甘えが通用するような場所ではない」

 

 和真が発した言葉は、前線で戦う者達からすれば当たり前の前線の常識である。

 それでもイーサンは引かない。

 

「それでもッ!俺は諦めない!!」

「あくまでも、―――拘るか……」

 

 ひらひらと舞い落ちる枯葉のように、苛立ちが募る。

 目の前の人間達が、自分と重なって見える。

 和真は、鑑写しの自分を客観視しているかのように苛立つ。

 

 なるほど―――と理解した。

 傍から見れば、俺自身がこう見えていたのだろう。

 さらに、変に力を持つ俺はやっかい極まりない存在だったに違いない。

 ザウルやリリア、アナトリー達はこんな気分だったのか。

 ならば、俺がすることは―――。

 

「ここは戦場だ。だから、さっきも言ったように必ず、どうしようも無く助けることが出来ない者は現れる。そんな者を救おうとすれば、自分だけでなく仲間まで危険にさらすことになる。―――わかっているか?」

「分かっている……。わかった上で言ってるんだ!」

「何故そう言い切れる」

「その想いを抱いて、ここに来たからだ」

 

 そう言うイーサンを和真は鼻で笑う。

 

「何が可笑しいッ!」

「50人―――」

「ッッ!!」

「救えなかったんだよな、見捨てたんだよな?」

「ち、違う……」

「違わない、お前達は仲間を決して見捨てないと言いながら、見捨てたんだ。―――仕方がなかった、どうしようもなかった、一瞬だった。どれだけのお題目を並べようとも、それは見捨てたのと同義だ」

 

 冷水を浴びせられた羞恥に耐えるかのように、アメリカ軍人達は歯を噛み締める。

 

「なら―――ッ!」

「ならば、さらなる力を身につけろ。―――想いの力なんてあやふやな、己しか納得させることが出来ない力ではなく。真の力、大切な人達を死なせないための力だ」

 

 和真が捲し立てた言葉の数々は、イーサン達の根底を否定しているに等しかった。

 それだけ、暴力的な言葉を浴びせられ、それでも50人と言う数字が反論の言葉を堪えさせていた。

 

「……教えてくれ、お前の言う力とはなんだ」

 

 絞り出すように、冷静に選び出された言葉を発したイーサンは和真の瞳を捉える。

 和真は、腰に手を回すと見せつけるように逆手に持ったククリナイフを見せつける。

 

「―――これが、俺の力だ」

 

 不気味に刃の部分が黄色く淀んだククリナイフは、和真のありようを見せつける。

 狂気であり、凶器であるそれが和真の歴史を物語る。

 

「……俺は、死人を少しでも減らすために己を鍛え続ける」

「それでも……、さらなる力を手に入れても救い出せない人がいた時、お前はどうする……?」

 

 和真は、ククリナイフを鞘にしまい込むと、冷めているようで激情を秘めた瞳で言った。

 

「その命のすべてを活かし、より多くの者を生かす」

 

 和真はイーサン達に背を向けると出口に向かい歩みを進めた。

 そして出口手前で足を止めると、まだ言いたいことがあったと横目でイーサンを見る。

 

「俺の言ったことは、俺の今までの経験から得たモノだ。俺の得たモノよりもより良いモノが見つかったら、その時はすまないが……、それを教えてくれ」

 

 和真はそう言うと、今度こそ出ていく。

 それに続くようにして成り行きを見守っていたネフレ軍、オーストラリア軍が出ていき、活気に満ちていたテント内を静寂が支配する。

 

「……イーサン」

 

 アメリカ軍の一人がイーサンの肩に手を乗せる。

 だが、イーサンはそれに応じず叫んだ。

 

「なんだよ、なんなんだよッ!――――チックショオオオッ!」

 

 

 テントを出た後、皆浮かない顔をしながらもそれぞれの持ち場に散っていった。

 和真達は仮設補給基地ドルーの大通りに出ていた。

 通夜の帰りのような雰囲気の中、俯き肩を震わせながら和真の後を健気について歩くストーの姿を見ていた千夏は堪り兼ねると、和真に注意しようとした。

 

「和真、あなた―――っ」

 

 だが、それは和真が先に制した。

 

「アイバク中尉、俺になにか?」

 

 一人口笛を吹きながら和真達についてきていたアイバクは、忘れていたと髪を掻きながら言う。

 

「あぁ~、そうそう楽しんでたから当初の目的忘れてた。今回の大規模内陸部進出とさらに広大になった防衛線の構築、どう思う?」

「時期尚早だと、言いたいところではあるが仕方がないだろう」

「ふむふむ……」

「アメリカやネフレ、オーストラリアからの武器弾薬の補充も無限にあるわけでない、それにBETAの進行頻度は明らかに減っている。今のうちに防衛線を広げ前進し、敵の喉元にナイフを突きつけるだけの準備をしておきたい。もしくは、BETAの総数自体が減少したことによって他のハイヴからの増援が来る前に叩き潰して起きたい。……上の考えは、こんなところだろ」

「でも、そこが恐ろしい」

「あぁ、BETAが一極集中的に進行を開始した際に、戦線に穴が開く確率が高くなる」

「後は、中段と下段で戦っているヨーロッパの連中の頑張り次第か」

「この作戦は、欧州連合の働きにすべてがかかっているからな……」

 

 

 フランス領ヴァンドーム

 

 ハイヴが既に建造されつつあるブロアから約30㎞の位置に存在するかつての都は、見るも無残に荒れ地と成り果てその荒野を爆炎の黒と血の赤が染め上げていく。

 踏みしめた大地が激情し震えひび割れる。

 光の矢と劣化ウラン弾が上空でぶつかり合い空の青を塗りつぶす。

 ひときわ大きな光が瞬けば空気が爆ぜ炎の通り道となる。

 美しくも危険な世界を駆け抜けるのは、東ドイツ軍の最新鋭機MiG-29OVTファルクラムであった。

 ソ連機にアメリカの思想をねじ込み生み出された異端児ファルクラム、赤銅色の雑種は雑種に相応しく地べたを這いずるかのように、BETAの群れをかいくぐる。

 戦車級や要撃級、突撃級など雑兵すべてを無視し、この戦場の支配者に着実と距離を縮めていく。

 

「CP、こちらクゥパー01、目標の重光線級まで残り300m、攻撃を開始する」

 

 クゥパー01は、そうCPに告げると了解を待たずしてロケットモーターを奮い立たせ、氷床を滑るように加速した。

 左手に展開されたモーターブレードが、バターを切るように滑らかに、突撃級の脇腹を斬り上げる。

 それと同時に、前方に群れていた戦車級に対し後方のクゥパー03とクゥパー04が散弾の雨を降らせ、戦車級を細切れに変える。

 クゥパー02の戦術機が、初期照射のアラームをけたたましく鳴らす。

 BETAの波の向こう側には、重光線級が逆毛を上げ睨み付けていた。

 慣れ親しんだ子守唄の如き戦術機の悲鳴を無視し連続ブーストジャンプ、まるで三段跳びをしているかのように次々とBETAを盾にしながら突き進む。

 重光線級はすでに目の前、直立不動の構えを持って狙いを定める。

 しかし、クゥパー02のファルクラムはそれより僅かに速かった。

 まるで、槌を振り下ろすかのように頸部の大型モーターブレードを重光線級の頭上から叩きつける。

 固い表皮からは血潮と火花が飛び散る。

 だが、よろけながらも重光線級はその瞳に光を宿していく。

 クゥパー02のファルクラムの対レーザー蒸散塗膜が剥離していく。

 クゥパー02は、フットペダルを踏みしめ跳躍ユニットを最大噴射、抉り取るようにしてファルクラムの右足は重光線級にめり込み続け、そして重光線の瞳から水晶体のような何かが零れ落ちたところで、重光線は崩れ落ちた。

 瀕死の魚のように痙攣する重光線から頸部を引き抜くと、一際大きく跳ね上がり動きを止めた。

 この一連の動作が、BETAを機械ではなく生物なのだと、確信させる。

 

「CP、こちらクゥパー01、目標の沈黙を確認……、帰投する」

『こちらCP、了解した』

 

 帰路につく中で、クゥパー02が通信を開き小隊長に質問した。

 

「隊長、あの話は本当なのでしょうか?」

「対BETA戦専用の戦略兵器のことか?」

「はい、アメリカ軍が独自に開発したとの話ですが、もしかすると日本の横浜で使用された新型爆弾なのではないかと、皆不安がっています」

「……私も、詳しいことは知らんが大隊長の話では核よりもクリーンな兵器なのだそうだ」

「……信じて、宜しいのでしょうか?」

「知らん……、ただ、我々は任された任務をこなせばそれで良い。それが、飢えた民を生き長らえさせる唯一の方法なのだから」

「……はい」

 

 

 同時刻ネフレ第一町社長室

 

 地球の反対側で、血で血を洗う戦争が行われている中無防備な平和をまるで義務であるかのように甘受していたレオは、ミアリーの報告を聞いていた。

 

「アメリカ、オーストラリア、ネフレ軍管轄区では前線拠点をドルーへと移しシャルトル、エヴリー、シャトーダンを要塞陣地化し、防衛線を押し上げることを決定いたしました。欧州連合軍、東欧社会主義同盟軍は、先ほどヴァンドームの奪還に成功したと発表しました。ドイツ、フランス、カナダ、国連軍もアンジェとラ・フレーシュの要塞陣地化に成功し、また、四日後の25日から、トゥールに向け攻撃を開始するとのことです」

「被害規模はどうかな?」

「当初の予定を少し上回りましたが、今現在では三割と言ったところです」

「ふむ……、アメリカ軍はやっぱり例のおもちゃを持ち出して来たかい?」

「はい、彼の有名なスカンクワークス最高責任者クラレンス・リッチ氏が態々前線まで赴いていたことを考えればわかり切っていたことですが、確定事項へと変わりました」

「他のハイヴの状況は?」

「勘ぐりたくなるほどに静かにしています」

「……なるほど、なら我々も準備をはじめるとしよう」

「はい」

 

 

 2001年2月21日20:00

 

 仮設補給要塞陣地ドルー戦術機整備ハンガー裏手のテント

 二時間ほど前まで騒がしく暑苦しく殺伐としたテント内、剥き出しの豆電球が要塞陣地内を戦術機が歩くたびにゆらゆらと揺れている。

 そんな豆電球の真下、小汚いテーブルに肘をつき、着いていたのは和真だった。

 テーブルの上には、小さなウォッカのビンとプラスチック製のコップが一つに灰皿。

 和真は、コップの中に並々注がれたウォッカを一口で呷り、右手に持つタバコの灰を灰皿に落とした。

 すると、テント内の空気が一瞬ひんやりとし、換気された。

 入り口を見るとそこには、やはり人を小馬鹿にしたような表情のアイバクがいた。

 和真はアイバクを横目で確認すると、興味がないとウォッカをコップに再び注ぐ。

 アイバクはやれやれとジェスチャーすると、和真の対面に腰掛けた。

 

「……お前も暇人だな」

「まぁね、あんたなら多分ここにいるだろうと思ったよ。雰囲気的に人混みの中にいたいと思うような奴じゃないと思ったんでね」

「あっそ……」

 

 和真は天井から吊るされた蛍光灯に向け、紫煙を吐き出す。

 

「その様子じゃ、あの後姉ちゃん達に叱られたか?」

 

 アイバクはそう言うと、愉快だと笑う。

 

「……別にそんなことはどうでもいいだろ。で、俺に何か様か?」

「話の続きがしたくてね」

「続き?」

「そうそう、今回のバレンタイン作戦ってさ国連軍が仕切ってんじゃん?」

「……」

「俺が思うにさ、俺達って、上の連中の出世競争の駒にされてね?」

「なにを言ってんだ……、俺達衛士は元々駒だろ?」

「そうだけどさ~、俺はそんなつまんねぇ事に利用されて死にたくないね」

「なら、利用されないように祈ってろ。今となってはそれくらいしか出来ない」

 

 和真はそういうと、コップ内のウォッカを飲み干す。

 

「祈ってるだけじゃ、自分の命を守る切れないね。断言するよ」

 

 和真はタバコを灰皿に押し付けると、アイバクと目線を合わせた。

 すると、アイバクは小瓶に残されていた残りのウォッカを飲み干す。

 

「……協力しねぇか?」

「協力?」

「このペースで広大な内陸部奥深くに防衛線を引くのは間違っている。そのしっぺ返しは、近いうちに必ず起こる。五六中尉、もし、そうなったとき俺達は真っ先にもっもと危険な戦地に送られる。そこが終わってもその次、またその次と、命がいくらあっても足りない。なら、自分達の命を自分達で守る必要があると思わないか?」

「……敵前逃亡に加担しろと?」

「初めからじゃない、もっともヤバイ所を片づけたら、別の無理難題を突きつけられるより速く、後方に下がってしまえばそれでいい。その時は、アンタの突破力が必要になる。……協力してくれないか?」

「他の連中はどうする、見捨てるのか?」

「あぁ、あのアメリカ人みたいな奴等の事か?その心配は無いな!あぁ言った口だけの連中ってのは、BETAの糞共の真の恐怖を目の当たりにした瞬間に逃げてるね。口だけでなく実践してみせた奴なんて、俺は一人も見たことが無い。おっと失礼、あんたがいたから一人は知っているってなるな」

「……お前、軍人として口にしちゃいけないことを良くペラペラ言えるな?」

「俺は国連軍の軍人では無くてね。俺はネフレ社の軍人、いや、社員だからな。ネフレ社からの命令なら何の不満も無いし、同じネフレ社の家族なら喜んで死地に駆けつけて救い出すさ。……明星作戦の時のアンタのようにな」

 

 そう告げるアイバクから視線を外さずに和真はタバコを咥え火をつけた。

 

「悪いが、俺はネフレ社の人間であると同時に国連軍人だ。それと、危険地帯に派遣される率が高くなると言ったな。……望む所だ。俺はそのためにここにいると言っても過言ではない」

 

 一瞬悲しげな表情をしたアイバクに和真はタバコを一本渡す。

 アイバクがそれを咥えると、和真は火をつけてやった。

 

「はぁ~、振られちまったか。死にたくねぇなぁ……」

 

 そうわざとらしく言うアイバクを和真は薄く笑った。

 

「良く言うよ。お前達なら自力でなんとか出来るし、今までもそうしてきたんだろ?」

 

 明星作戦の時に、彼等に救われその実力と手際の良さを間近で見ていたからそう断言出来た。

 

「お前の言い方だと、俺もついでに連れて帰りたいって風に聞こえたぞ?」

 

 アイバクは、和真にそう言われると鼻から勢いよく紫煙を吹き出した。

 

「俺はお前が気に入ってんだよ。だから、こんな所で逝かせる訳にはいかねぇ」

「なんだ、愛の告白か?悪いが俺は男に興味が無くてね、余所を当たってくれ」

「違ェよ馬鹿野郎!ほら、たまにいんだろ?死なれたらヤベェって直観で理解出来る奴」

 

 それは心理現象なのか、相手の魅力なのか、それは定かでは無いがそういった事はたまにある。

 コイツにもし何かあれば、なにか良くないことが起こると直感で理解出来る時が、俺にとってのそれは、レオだった。

 

「なら、精々死なないようにするさ」

「おぉ~、そうしろそうしろ!」

 

 テント内を満たしていたタバコの煙が換気され晴れていく。

 それはまるで、知人と友人の境界のフィルターを取り除いているようだった。

 

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