Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior   作:はんふんふ

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バレンタイン作戦4

 

 BETAの反撃が始まる2時間前―――

 

 

 和真はイーサンを送り出した後、自身に与えられた権限を使いレオと話し合っていた。

 

「……君も随分と生き急ぐようになったようだね」

 

 それは人の頭程の大きさのディスプレイ横のスピーカーから漏れ出した。

 

「こんなクソの集いに延々と付き合っているんだ。……急ぎたくなると思わない?レオも良く知っていると思うけど、俺は潔癖症なんだ」

 

 今和真がいるのは、シャルトル要塞陣地内の通信室の一角だった。

 周囲にはネフレ軍の者達で固められ、内部の音が漏れないように特殊なシーツでデスクやパソコン計器類をすべて覆い隠している。

 勿論その中には和真も入っており、周囲の欧州連合軍から派遣された通信兵達は、まるでそこが身近な死地であるかのように、自らに飛火しないように目線を必死で逸らす。

 だだ、聴覚だけは嫌にも意識を向け続けていた。

 聞こえる、聞こえないを加味しても、そうしたくなる心理が働いてしまっていた。

 和真のまさかの潔癖症発言に、その言葉の真意を知るレオは噛み締める様に無理に笑顔を作った。

 

「和真君がわざわざこの回線を使って、私的に部隊を動かしてまで私と連絡を取った。まぁ、理由は言わなくても良いよ。……分かっているからね」

 

 レオのその言葉に和真は、レオにも見せたことがないような自虐的でそれでいてどこか加虐的な笑みを浮かべる。

 その笑みを見たレオは胸中を察せられないように努めて冷静に笑みを浮かべ続ける。

 だがそれは、誰がどう見ても無理をしているようにしか見て取れない。

 それだけ、レオが、世界トップの企業の頂に座する男が和真に心を許していることの証でもあった。

 

「なら話が早い……。今一人の男が我らが戦術機母艦インヴィジブル級航空母艦4番艦ロヤル・スウィーツに向かっている。その男に例の玩具を使わせたい。許可を出して欲しい」

 

 和真のその言葉にレオの片眉がピクリと動いた。

 

「それがどいう事か理解しているのかい?和真君……君は―――」

 

 レオはそこから先の言葉を吐くことが出来なかった。

 それは和真の瞳がすでに覚悟を決めていたからだ。

 突き進む意思を持っていたからだ。

 メアリーによる極秘情報の漏洩、それは確かにレオの指示だった。

 和真との今後の信頼関係を崩さないために、そしてレオ以外の組織の幹部連中の眼を欺くために、計画はすでに進むところまで進んでいる。

 故に、一個人の意思を尊重する時期は過ぎてしまった。

 

 後は、描いたシナリオに世界を添わせていくだけ―――。

 

 レオはその先の未来のために、自身のありとあらゆるものを賭けて来た。

 だが、レオは恐れた。

 ここで和真の信頼を、盲目的とまで思わせるほどの、それこそ買い手と買われた人形のような関係を壊すことを―――。

 和真と言う男は、ヨーロッパの地で確実に己の価値を高め、そして磨き上げていた。

 

 英雄たる器を―――。

 

 だからこそ、レオは頷いた。

 そこに、和真の姿に新たな価値を見出したからだ。

 一言で言ってしまえば、レオは和真の利用価値を改めた。

 

 とんだ拾い物をしたものだ……。

 

 レオにそう思わせることに和真は成功していた。

 和真は重そうにダルそうに口を小さく動かした。

 

「ありがとう……」

 

 その言葉がレオの耳に聞こえた時、レオは相手が地球の反対側にいることも忘れてぶん殴ってやりたい気持ちになる。

 

 君がそこまでする必要は無いと説教したかった。

 

 だが、それは出来ない。

 互いに大人として、男としてそれは出来ない。

 だからせめてと、レオは激励を送る。

 

「ッ……もうすぐだ。頑張りなさい」

 

 レオのその言葉を聞いた和真はうれしそうな顔をして、少しだけ声量を上げた。

 

「うん」

 

 防音効果を持たせたシーツから和真が姿を現すと、周囲の温度が三度下がったような感覚を周囲の者達はしていた。

 布が擦れる音が、まるで刃物を擦り合せた音のように耳元に届く。

 カツンと脚部コネクトプロテクターが床を踏む音と同時に、皆が思い出したかのように仕事を始める。

 

「……事後処理は任せる」

 

 和真はネフレの者にそう伝えると、足早にその場を後にした。

 

 

 

 和真は通信を終えた後に、新たな姿に変わったラプターのコックピットに深く座り込む。

 

「……」

 

 和真は操縦桿の手前に位置するコントロールパネルの一つをゆっくりと押し込んだ。

 網膜投影システムにより映し出されたのは、ラプターの装備一式だ。

 ラプター自身は特段変わった個所は無い。

 いつも通りの和真のためのラプターだ。

 ただし、その背部だけは違っていた。

 まるで小型にしたファンデーションを取り付けているかのような。

 もっと言ってしまえば、小さな飛行機が取り付けられていた。

 

「アローユニット……か。まさか完成形を持ち出してくれるなんて、な」

 

 アローユニット、それは戦術機としての思想を変える後付け装備だ。

 展開し装備すれば翼の長さは戦術機一機分はあり、その上部にはガンブレード一つに、フォルケイトソード2が二振り。

 翼下には3連装ミサイルポッドをそれぞれ一つずつ取り付けられている。

 さらに右腕には120mm水平線砲を装備し、砲弾には120mm無線誘導弾を使用している。

 左腕には36mm突撃砲G11を一つ装備している。

 上腕部にはスラッシュアンカーをそれぞれ一つずつ。

 膝部の兵装モジュールにはCIWS-1Bを一振りずつ格納している。

 跳躍ユニットには増槽を装備し、膝部から下には過去に兄貴が開発したホバー移動用のスラスターユニットを取り付けている。

 和真は随分とおしゃれになったラプターに内心歓喜する。

 すると、兄貴が通信を繋げて来た。

 

「和坊、チェックはすませたか?」

「あぁ、良い感じだよ兄貴。まさか、光線級が闊歩する戦場に空戦用のユニットを装着してつっこむなんて思いもしなかったよ」

「正確には空戦も出来る装備だけどな。どうだ、異常はあるか?」

「ある訳ないよ。システムスキャン……、やっぱりオールグリーンだ」

「なら結構!アローユニットとラプターの同調はメルの嬢ちゃんが吶喊で仕上げた。大切にな!」

「なら、この試作兵器の使用はアイツの発案?」

「そう目くじら立ててやるな。今回ラプターに取り付けられた兵器群はヴェルター用の兵器を生み出すために、錆が出る程使い倒したろ?アローユニットに至っては、お前に一刻でも早く戦場から遠ざかって欲しいって言うメルの気づかいだ」

 

 和真は兄貴のその言葉にくすり、と笑った。

 その笑い方は上品で、色香を持っている。

 大人の笑みだ。

 

「兄貴……?」

「なんだ?」

「メルに感謝を伝えて欲しい。……変わらないでいてくれるアイツは、俺にいつも初心を思い出せてくれる」

 

 和真は噛み締めるように「そうだ……」、と呟いた。

 

「俺はテストパイロットだ。……どこまでいってもそれは変わらない。……変えてはならない。……俺が何をテストし何を後世に残すのか。所詮この戦場だって俺達の試験会場にしか過ぎない。それは今後訪れるであろう戦場でも変わらない」

 

 和真は両頬を力強く叩いた。

 肉を打ち付ける音が響く。

 

「よし……!緊張は解けた。行ってくるよ兄貴!」

 

 兄貴は一瞬目頭が熱くなった。

 あの張りつめて変わってきていた和真がほんの一言だけではあるが、戻ったのだ。

 まだ、変わり切っていない。

 それは成長していないともとれるが、それは兄貴にとってストレスの原因を一部取り除くには十分だった。

 

「あぁ、頑張れよ!」

 

 兄貴がそう言うと、眼前の映像が切り替わる。

 ラプターが本格的に戦闘態勢に移行するのだと、筋肉を立ち上げていくのだと、エンジンとモーターの音で伝えてくる。

 全てのシステム動作を自動チェックし終わり、残弾、燃料、装備、損傷状態を次々と映し出す。

 最後にIFCSをロードし終わるとCPの顔が映し出された。

 

「それでは、五六中尉に課せられた任務の説明に移ります」

 

 和真は短く息を吹き出す。

 

「現在ラプターに装備されたアローユニット並びにファンデーションを使用し最低限の燃料消費に抑え南に約80キロメートル離れたメールまで最短で向かって頂きます。そこに中規模のゲートが確認されています。ゲート入り口はネフレ軍が確保していますので、ファンデーションをその場で降りハイヴ内部に進行を開始、先に進行を開始しているアメリカ陸軍第66戦術機甲大隊と合流した後にスタブをさらに進行、すでに制圧されたホールにて待機しているオービットダイバーズと合流後、部隊を二つに分け、別方向からメインホールに向け侵攻を開始、トゥールより侵攻を始めている各国軍と共にメインホールを制圧します。尚、ハイヴ内では、無線通信が困難であるため、オービットダイバーズが敷設した有線ケーブルを使っての通信となります。各ゲートより侵攻中の各国軍との連携は不可能と考えられますので、臨機応変に対応するようお願いします」

 

 そう申し訳なさそうにするCPに和真は苦笑いで答えた。

 どだい無理な連携任務であるが、要は早い者勝ちだと言いたいのだろう。

 メインホール―――。

 そこにはそのハイヴの心臓部とも言われている反応炉が存在する。

 そしてその近辺もしくはその反応炉その物がG元素の塊もしくはG元素精製所であるとも言われている。

 各国の狙いはもちろんそのG元素だ。

 いくら出来て間もないハイヴと言えども、多くの光線級を即座に出現させたことを考えれば、それはもうたんまりと用意しているだろう。

 何故なら、G元素は奴らにとっての主食なのだから。

 そして人間にとっての御馳走だ。

 この作戦は、グレート・ブリテン防衛戦からG元素争奪戦に姿を変えた。

故に早い者勝ち。

 いくら国連でG元素を一国が取得出来ないように法律を作ったとしてもそんな物をご馳走を前に律義に守る奴なんていない。

 最悪G元素を前にして各国が戦争を始める可能性もある。

 和真はそこまで考えて嫌そうに溜息を吐いた。

 つまり、和真はお目付け役を任されたのだ。

 理想的なハイヴ攻略を行うようにするために―――。

 和真は自身の復讐までになんとか作戦を終わらせなければならない。

 だがだ、こうも考えられた。

 ヴァンドームに現存するG元素の量よりも、ハイヴに蓄えられているG元素の方が明らかに多いだろう。

 そして、反応炉も存在する。

 そこに人類が侵入すればその存在は、ヴァンドームに向かうことなくこちらに来るのではないか?

 2700mm電磁投射砲の実験も終えたのなら、ヴァンドームから引き上げるだろう。

 徐々に距離を離すエサより身近なエサの方が大切だろう。

 その可能性の方が高い。

 和真はそう瞬時に考えると、CPに了解とだけ伝えた。

 

 

 

 BETAの反撃が始まる1時間前―――

 

 

 

「現場より周囲半径2キロメートル内においてBETA小型種の姿すら無し、さすがですね」

「はっ、貴様に言われると嫌味にしか聞こえんな」

 

 和真は今、フランス領メールに口を開けたゲートの入り口に立っていた。

 周囲には、枯れ果てた大地しかなく。

 風が吹こうが巻き上げる砂すら存在しない状態であった。

 そんな中で佇む戦術機達の中で、和真は見知った部隊であるボマーズの隊長と通信を繋げていた。

 

「俺が引き連れて来たファンデーション達は、あなた方が使って下さい」

「言われずとも、すでにこちらにHQから命令が来ている。それよりもまた随分と暴れたそうだな?この地に集まった軍人達は皆、お前の話しで持ち切りだ」

「……なんだかいい気はしませんね。それで、その話の内容は?」

「突然現れては周囲のBETAを根こそぎ屠っていく複眼の戦術機、レーダーにも映らず姿を確認することすらやっと、見た者達は皆、戦意が高揚していった、だと―――。まるで勝利の女神様のようじゃねぇか、えぇ?」

「その中身がこんな男だと知れば、幻滅物ですね」

「はっ、違いない。っと、さっさと行け時間だ」

「了解です」

 

 通信は閉じられる。

 そうして、脚部スラスターと跳躍ユニットに火を灯し、アローユニットを展開すると別の人物が秘匿回線を繋いできた。

 その人物はアイバク中尉であった。

 

「よっ!英雄志願者、まだ生きてたみたいじゃん」

「お互い様だろ?それよりも、俺はこれから忙しいんだ、つまらない用事なら通信を切るぞ?」

「ちょい待ちちょい待ち!なぁ、別にもぅよくねぇか?」

「なにがだ?」

「嫌、お前はもう十分に仕事をしただろ?ここいらでとんずらこいても別にいいんじゃないかってさ」

「あのな……」

 

 和真はそう嫌気がさした声を出し、アイバクと視線を合わせる。

 すると、和真は少し息を飲んだ。

 アイバクの表情が余りにも真剣だったからだ。

 

「隊長達のことなら気にすんなよ。俺がうまく話をあわせてやっから」

 

 アイバクはどこか嘆願するように和真に語り掛ける。

 それは甘い蜜であった。

 この戦場での和真はすでに歌になり世界に知らしめるレベルの戦果を叩き出している。

 文句を言う者なんてそうそういないだろう。

 わざわざ、一番の貧乏くじであるハイヴ制圧なんてしなくても、すでに相応の箔が付いている。

 故に仲間内では、だれも損をしない。

 だからここで降りても良い。

 だが、和真自身が納得できない。

 目的が別に変ってしまったのだから……。

 和真は話題を変えた。

 

「お前達の次の任務は確か、ヴァンドームにいるアメリカ産のおもちゃの護送だったな」

 

 和真がそう話題を振ると、アイバクは少し嬉しそうに声質を高くした。

 

「応よ!それが終わり次第俺達は第二町に帰ることが出来るんだ」

 

 本当に嬉しそうに話していた。

 帰ったら、何をするやら、第二町の特産だったり、はやりのファッションだったり、したいことがたくさんあるようだった。

 そんなアイバクに対し、和真は少し悲し気な顔をした。

 互いに良いように使われているとわかったからだ。

 だから、和真は通信を切るようにボタンに手を伸ばしながら、唇と舌を動かした。

 

「ありがとう……道中気をつけろよ。なにがあるかわかったものじゃないから……」

 

 アイバクが何かを言おうとした瞬間、その顔は和真の眼前から姿を消した。

 ラプターはすでに準備を整えている。

 

「……ふぅ」

 

 和真は口先から僅かに息を吐くと、ラプターを前進させた。

 

 

 

 ハイヴ内での戦闘自体は、和真に覚えがあった。

 それはJIVESを使ってのヴォールクデータのおかげでもあった。

 まだ、リリアとザウルが存命していた頃から、いつかこんな日が来ると度々訓練のメニューに加えていた。

 その中で、和真は最深部までをクリアすることが出来ていた。

 ただし、それはデータ上のことなのだと痛感する。

 

「ヴォールクデータよりも狭いな。それにこの光、目が慣れるまでに時間を要しそうだ」

 

 スタブ内を進む和真を淡い光が包み込む。

 それは円柱状の道に広がる壁すべてから発せられていた。

 無線通信が届かないと言うのもどうやら本当のようだ。

 先程からノイズしか拾わない。

 さらに言えば、トンネルの様な作りに対し、音が響かない。

 寧ろ、壁に音が吸収されているかのようだ。

 それにBETAが一匹も出現しないのは気味が悪すぎる。

 外の常識がここでは通用しない。

 だから、外の戦い方は中では通用しないかもしれないと考え直す。

 

「俺の経験が役立たない可能性があるな……」

 

 経験の力が通用しない。

 それは和真に任務の達成難易度を跳ね上げさせる一つの要因になっていた。

 BETAとの戦いに100%なんて存在しない。

 そもそも戦争に確実なんてあってはたまらない。

 だが、和真の中に眠る数多のデータは、その100%に限りなく近づける。

 そして対処してきた。

 それが、ここで未知と来たものだ。

 和真は自身を過小評価している。

 所詮、ナノマシン内の経験の力を使わなければ、BETAの突発的な攻撃に対処しきれずに殺されてしまうだろうと結論付けている。

 そのため、和真はナノマシンを抑制する錠剤を齧り付くように飲み込み。

 脳のリミッターを躊躇わずに切った。

 和真がスタブ内を進んで行くと、少しだけ開けた場所に出ることが出来た。

 そこには、中隊規模のストライク・イーグルが何やら作業をしていた。

 

「お疲れ様です」

 

 通信は問題なく繋がったようだ。

 この距離ならなんとかなるのだろうと、脳に記憶させる。

 

「おぅ、お疲れ様」

 

 声をかけて来たのは、通信装置を敷設しているオービット・ダイバーズの一人だった。

 

「アメリカ陸軍の姿が見えませんが、どういうことでしょうか?」

 

 和真は周囲を見ながらそう呟いた。

 そして時間を見る。

 任務の開始時間はまだ過ぎていない。

 

 どういうことだろうか?

 

 和真の呟きを聞いたダイバーズの衛士は、苛立たし気に答えを返す。

 

「どうもこうも、先に行っちまったよ。俺らの仲間は、それに追随するしかないからな。そっちもヤンキーの連中と行っちまったよ」

 

 和真は「ふむ……」と頷く。

 

「……と言うことは、各国軍は、もう初めてしまったと言うことでしょうか?」

「そういうこった。こっちがわざわざ親切心で他のハイヴ内予想図から組み立ててやった所割安全なルートってのを使ってな。―――俺らがハイヴに侵入する以前からすでに勝手に進軍する連中が現れだして作戦もへったくれもあったものじゃない」

 

 和真と相手の衛士は同時に溜息を吐いた。

 

「……現場の人間としては、たまったものじゃないですね」

「そりゃ、上のお偉いさん方は、遥か未来ってやつを見据えて命令をしてるから仕方ねぇよ。ただ、もう少し、今を見て欲しいとは思うがね」

「G元素ってのは、そんなにも手に入れておきたいものなのでしょうか?」

「そりゃお前―――、横浜の事は聞いてんだろ?アレをしでかしたどえらい爆弾を作るためには、G元素が必要なんだから欲しいわな」

和真は本心から馬鹿にしているかのように鼻で笑う。

「実にくだらないですね」

「まぁ、そう言ってやるなよ。俺達国連軍人の仕事の一つとして、そう言った各国の我儘を穏便に解決するってのもあるんだからよ」

「そうですね……愚痴ったってしょうがない」

 

 和真はそう言うと、スタブの先に進もうとした。

 

「あっ、オイ、お前もしかしなくてもこっから先に一人で行こうってのか?」

「はい、そのつもりです」

「オイオイっ、今までのところは俺達で蓋しちまったからBETAの野郎もみなかったろうが、ここから先は、そういう訳にはいかねえぞ」

 

 相手の衛士がそう言うと、一つのコンテナを指差し、さらに一つの地図を和真に提示した。

 

「このルートを通っていけば、お目当てのヤンキー達がいる。何のために、俺の仲間がくっついて行ったと思ってんだ。それと、しっかりと補給してけ」

 

 和真はうっかりしていたと額を叩く。

 

「……すいません。どうやら、俺も相当緊張していたようだ」

 

 相手の衛士は和真の言葉に豪快に笑った。

 

「そいつは仕方ないって!皆、お前と同じだ」

 

 和真は、その姿にハイヴ内でも冷静さを失っていない衛士の姿に、黙って感謝するのだった。

 兵站の重要性、それをこの戦場で一番理解しているのは他でもない。

 

 ハイヴなんて棺桶に毎度送られているオービット・ダイバーズなのだから―――。

 

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