俺と、メリー?   作:コードネームTOSI

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第十章:亮の過去

鉄也が帰った後、亮は1人静かになった部屋で床に落ちていたアルバムを見ていた。

そこには若いころの亮の両親である時峯と汐里、亮自身。そして妹である雛が映った写真があった。

家族4人で撮った写真でそれ以外は時峯が買ったマイホームや車。

経営をしている会社の写真、どこか遊びに行った写真など風景や物。

または家族の誰かが映った写真が保管されていた。

 

一通り見た亮は、一度アルバムを閉じ一度深呼吸するともう一度開けた。

そこには、家族4人が一緒になって撮った唯一の写真にして、床に落ちていた時開かれていたページだった。

音一つない静かな部屋の中、亮はずっとその写真を見ていた。

 

「……どうしてこうなったんだろうな?

母さん、雛……」

 

そして、メリーが来るまでずっと続いていた静寂が再び部屋を支配しつつある中、亮は寂しげに呟いた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

「はい撮るよ~」

 

陽気な声で初老の男性が手に持っているカメラのシャッターを押した。

カメラの前には家を背景に、2人の子供を連れた家族がいた。

 

「どうもすいません。

カメラマンなんて頼んでしまって。」

 

父親と思われる男性が、老人からカメラを受け取った。

 

「いや、これくらいいつでも頼んでくれて構わないよ。

いや~、にしても立派なお家ですね。」

 

「ええ、やっと夢の第一歩を踏み出せましたよ。

次は、会社を大きくして地域だけじゃなく全国。

そして世界へ向けて頑張りますよ。」

 

「はははっ、こりゃ頼もしい方だ。

まあ、これからも近所同士仲良くやっていきましょう。」

 

そういい残し、老人は隣の自宅へと帰っていった。

男性、若き日の斎藤時峯もまた妻である汐里と息子、亮と娘の雛と共に夢にまで見たマイホームへと入っていた。

 

十数年前、斎藤家はごく普通の幸せに満ちた家庭だった。

一家の大黒柱である、時峯が起ち上げた金融の会社は軌道に乗り始め、利益も大きく出てきた。

そして決意を新たに家を購入し、会社もまた大きくなりつつあった。

 

「父さんすごいよ。

こんな大きなお家建てちゃうなんて!!

ねえ、今度友達呼んでもいい?」

 

「あっ、お兄ちゃんだけずるいよ。

私もお友達沢山呼んで遊んでもいい?」

 

会社を経営し、立派な家も建て、家族を大事にする。

時峯は子供たちにとって自慢の父親でもあり、尊敬する人物だった。

 

「そんなに沢山呼ぶんだったら、いっそのことパーティーでも開こうじゃないか。

どうかな汐里?」

 

「あら、いいですね。

それなら腕によりをかけていっぱい料理を作らないといけませんね。」

 

「頼んだよ汐里。

お前の料理は世界一だ。

私が言うんだ間違いないよ。」

 

「全く、貴方ったら……」

 

そして妻である汐里も専業主婦として夫と家庭を支えていた。

近所の付き合いもよく、またこの地域の神社の神主とは学生時代の先輩であり家族ぐるみの付き合いがあった。

当時、亮は子供ながらこの幸せがずっと続いて行くものだと思っていた。

だが、その幸せは突如崩れ去ってしまう。

 

時峯が家を購入してから2年後のある日、亮と雛が小学校から帰ってきた時に事件は発覚した。

割れた窓ガラス、散乱した部屋、腹部から大量の血を流して倒れている母親の汐里。

金目の物を狙った強盗だった。

そして不運にも、母親の汐里は強盗と遭遇してしまい命を落としてしまった。

 

警察の調べで、普段よりも早く買い物を済ませた汐里は、帰宅後犯人と遭遇しもみ合いの中、犯人が脅しで使ったであろう包丁が腹部に刺さり出血多量でなくなった。

だが、あまりの突然の母親の分かれに亮達は訳が分からず、また最愛の妻の悲惨な死に、時峯はそのことを忘れるかのように亮達にも気をとめず仕事の鬼になったかのように仕事に打ち込み自社を大きくした。

 

それと同じ時期に警察は全力を挙げ、捜査した結果犯人をにたどり着いた。

たどり着いたが、その犯人は死体となって発見された。

死因は腹部を鋭い刃物で刺され出血多量となっていたが、殺害した犯人の特定には至っていなかった。

 

そして時は流れ、亮が小学6年生になった時もう一つの悲劇は起こった。

雛が体調を崩し倒れたのだ。

いなくなった母親に代わり、幼いながらも家事をしていた雛だったが無理が集り等々限界を迎えたのだった。

元々体も強く無く、持病も持っていた雛はすぐに病院へと搬送されたが自体は深刻だった。

 

その日、亮はずっと雛の傍から離れずただただ泣き、妹の無事を祈り、そして後悔していた。

雛が無理をしたいたのに気が付かなった事。

自分がもっと手伝ってやればよかった、いや兄である自分がもっと率先してやればよかったと。

そして、雛が倒れたというのに仕事を優先している父親、時峯はもう何を考えているか分からなくなってしまっていること。

 

次の日、雛は部屋を変えられ重々しい機械がある部屋へと移された。

口には呼吸器が取り付けられ、様々な機械が定期的に音を発していた。

そして時峯がようやくやってきたかと思うと、主治医と数分話しただけでとっとと帰ってしまっていった。

亮は遠目でしか見ていなかったが、主に主治医が話し込んでいた。

だが時峯は一言二言言っただけで去ってしまい、主治医もあまりの事に茫然としていたようだった。

 

そしてその日の内に、雛に取り付けられていた呼吸器が外され、最後には定期的になっていた機械音がずっと鳴り続いていた。

 

その日からだっただろうか。

亮が父親に対して尊敬はなくなったのは。

常に広い部屋でただ一人いることになったのは。

父親との会話が無くなったのは。

そして翌年、亮が中学生となった時更なる出来事が起こった。

 

偶然スーパーで買い物をしていた時だった。

当時、雛の担当主治医に会ったのは。

本当に偶然であり、主治医は申し訳なさそうに亮に話しかけた。

当の亮も、そのことを言われあの時の主治医だということを思い出した。

そして主治医は少し話があるといわれ、近くの喫茶店へと入っていった。

 

「……で、何ですか話しって?」

 

「正直、あの時言おうかどうかと悩んでいたんだがね……

けど、兄である君にはやはり伝えるべきだろうと思ってね。」

 

「雛のことですか?」

 

「……ああ。

斎藤雛ちゃんは生まれつき体も弱く、よく病気にもなっていた。

昔はよく入退院を繰り返していたね。」

 

「……えぇ、だから俺がちゃんと守ってあげるべきだった。」

 

「実は、雛ちゃんは20歳まで生きられるかどうか分からないほど病弱だったんだ。」

 

「なっ、そんなの初めて聞いたぞ!?」

 

「ご両親は幼く、仲のいい兄妹に言うのは酷だと思ったんだろう。

現に、倒れたあの日も手の施しようが無かったんだよ。」

 

「そう、だったのか……」

 

「だけどあの日……

時峯さんに症状を伝えたんだけど……」

 

そう言われ、亮はあの日のことを思い出した。

祈るばかりの俺に、仕事を優先し雛をろくに見もせず少し話しただけで帰っていった父親。

今思い返せば父親の行動に怒りをも感じる。

だが次に主治医が言った言葉に、怒りを超え憎しみへと変わった。

 

「あの時、時峯さんは……

―――――――――――――――――――――と私に言ったんだよ。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

『……さん、りょ…ん』

 

「ん……」

 

ふと近くで呼ばれる声が聞こえ、亮は意識を取り戻しつつあった。

そして、目を開けるとメリーが体を揺らしながら呼んでいた。

 

『あっ、亮さんようやく起きましたね。』

 

「メリー……

あっ、俺寝てたのか。」

 

アルバムを見ていた内に、寝てしまったと状況を理解しふと時計を見ると夜の11時を回っていることに気が付いた。

 

「あ~、もうこんな時間か……」

 

『全くそうですよ。』

 

「……つーか、今までお前どこにいたんだよ。

朝もいなかったようだしよ。」

 

「浮遊しながら寝ていたらどっか行っちゃってました。」

 

「お前はカジキやサメの類か。

(※マグロなどは寝ながら泳いでます。。)」

 

『いいえ幽霊です!!』

 

「知っとるわ。

誇らしげに言うな。」

 

次第に頭も冴えてきた亮は、メリーが今までどこにいたのか聞いたがうまいことはぐらかされてしまった。

もっとも本当なのかもしれないが……

 

『それより亮さんお腹すきました!!』

 

「まあ時間も時間だしな。

あ~、インスタントでもいいか?」

 

『またインスタントですか?

たまにはちゃんと作って栄養価のあるものをですね……』

 

「すでに死んでる分際で、栄養価どうの言われたくないわ。

つーか、幽霊かつ勝手に憑りついてるくせに文句言うな!!」

 

『ブーブー!!』

 

「ブー垂れるな。」

 

『フーフー!!』

 

「なぜ濁点取った!?

取っても意味ないからな!?」

 

『いや、熱いものを冷まそうかと思いまして。』

 

「熱いものってなんだよ?」

 

『今の亮さんのテンションです。』

 

「誰の所為でこうなってると思ってんだ!?」

 

あの時失ってしまった騒がしい日々。

そしてメリーが着た事によって再び騒がしくなった日々。

俺にとってはどこか懐かしく、そして楽しくなっていた。

だが、俺はこの時ちゃんと気が付いてあげるべきだったのかもしれない。

この時からメリーの様子が出会った頃とは変わりつつあったことに。

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