俺と、メリー?   作:コードネームTOSI

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第七章:メリーの謎

どうも、なんか以上に憑かれた……もとい疲れた斎藤です。

なんか厄介者が余計に増えた感じです。

 

『厄介者とはなんじゃ。

我を何だと思っておるのじゃ!!』

 

「もう、心読むのデフォなの?」

 

『我らは霊体ゆえ人智を超えた存在ぞ。

誰が何を考えていようが、我らにとっては本を読むのと同じようなものなのじゃ。』

 

……って言ってますがどうなんですかメリーさん。

分かったら右手上げて。

 

『はい。』

 

「うん、それ左手だよね。」

 

「わー、もうすっかりツクちゃんと打ち解けてるね。」

 

「楓よ、これは打ち解けると言うより憑かれてるに近いようなものだが?」

 

はい、現在デフォルメの日本人形ツクは俺の頭の上でくつろいでます。

地味に重い、降りろ。首が痛くなる。

 

『なんじゃつれないの。』

 

そう言いつつツクはちゃんと降りてくれた。

案外、素直な奴なんだな……と思ってる事も読んでるんだろ?

 

『ふむ、もちろんだとも。

そしてお主がこの地に来た理由も、その経緯もな。』

 

そう言われた瞬間、俺は一瞬ツクを睨んだ。

だが、ツクはそれもお見通しと言わんばかりに不敵に口元を緩めているように見えた。

つーか、ぬいぐるみなんだからそんな表情変わってたまるか。

 

「え~、何々?

今日亮ちゃんが来た理由?」

 

『私、気になります。』

 

「ん、メリーは分かってたんじゃないのか?」

 

『いいえ、そこまでは読めませんでしたから。』

 

「そうだったのか?」

 

こいつは俺の心読んできた理由とかも全部把握しているものだと思ってた。

けど、違うのか?

 

『全てのモノが違うように霊体も個体差があるのじゃ。

故に心を読める範囲も霊体によって異なるのじゃ。』

 

俺の疑問を読み取ってか、ツクがその答えを言ってくれた。

なるほど、そう言う事か。

 

「で、メリーは読めなかった事をお前は読み取ったと言ったところか。」

 

『そう言う事じゃ。』

 

「ねえねえ、今日亮ちゃんが来た理由って?」

 

「楓、ちょっと黙ってろ。」

 

「うえ~ん、亮ちゃんとツクちゃんが私達を仲間外れにするよ~」

 

『大丈夫、楓さんには私がついてますから。

にしても亮さん、女性を泣かすとは酷いじゃないですか~』

 

「……メリー、今からちょっと真剣な話をする。

だがら、少し黙ってろ。」

 

そう俺が神妙な面持ちで言うと、それが本気だと分かったのかメリーも楓もそれ以上何も言わず静かにし始めた。

 

「ツク、はっきり言う。

どこまで読んだ?」

 

『そうじゃの……

おおよその事情と、理由。

そして今後お主がやろうとしている事は分かっておる。』

 

「……そうか。

なら、これから俺がやろうとしている事は間違っていると思うか?」

 

『いや、自らの邪となるものを取りはわんとする事は防衛本能からなるもの。

その事については我は何も言わん。

……じゃが、2つ大きな覚悟を決めかねぬ事がある。

それを肝に銘じておけ。』

 

「何だよ、その大きな覚悟って。」

 

『お主の……

今後の人生に置いて、降りかかる災厄をどう払いのけるか。

その覚悟じゃ。』

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

朝顔を出したばかりの日も、既に正午を超え真上から日差しをさんさんと降り注いでいる。

ツクの騒動から数時間、俺と楓。そしてメリーとツクは見晴らしの良い展望台へ来ていた。

 

はたから見たら、平日の昼間に男女の高校生が学校をずる休みしてデートでもしているように見えるだろうが、今この展望台には他に誰もいなかった。

 

俺は真剣な面持ちのまま展望台からの景色を眺め、楓はどこか不思議そうに俺を見ていた。

メリーは未だ人には見えない状態らしく、幽霊らしく宙をふわふわと浮きながら辺りを旋回していた。

そしてツクは楓のハンドバッグから顔をひょこっと出して、俺を見ていた。

 

「ねえねえ亮ちゃん?

何で急に展望台に行くって言い始めたの?」

 

「……ここなら、あれがはっきりと見れるからな。」

 

楓の問いにそう言いながら、俺は真っ直ぐ目の前に広がっている光景を見ていた。

そこには広大に広がる海と、近代的な大きな橋が見えた。

 

「メリー、一つ聞きたい。

……お前が轢き逃げにあったのは、あの橋の近くか?」

 

そして、ここに来た一番の理由、メリーの事について尋ねた。

俺の問いにメリーと楓はえ?と言った表情で俺を見、ツクは真剣な眼差しで俺達のやり取りを見守っていた。

 

『きゅ、急にどうしたんですか?』

 

唐突な問いに、メリーはいつものおちゃらけるようなトーンではなく切羽詰まったような、緊張した声で尋ねた。

 

「昨日、カズ達と調べたんだ。

数年前、建設中だった橋を中心とした轢き逃げ事件。

そして青い乗用車をヒントにな。」

 

そこで昨日カズ達とやっていた事をここで告白する。

メリーが何故死ななければならなかったのか?

どうしてこんなことになってしまったのか?

霊となり何をしたいのか?

そして、最後にはその未練を晴らしてあげるにはどうしてあげればよいのかを。

 

『……それで、昨日はずっとパソコンと睨めっこしてたんですね。』

 

「ああ……

いくら情報があるからと言って、公にしてない事件とかもある。

だから、確証を得るために警察のサーバーにアクセスして事件を探った。」

 

「警察のサーバーって……

違法じゃ……」

 

「勿論違法だが、海外のサーバーをいくつも経由してったからな。

どこの誰がアクセスしたかなんて分からないさ。

その辺りカズは強いからな。」

 

そう言い、少しの間をおいた。

メリーの様子が明らかにおかしかったからだ。

普段のおちゃらけながも優しく、大きい瞳は、今やここから見える橋を目にし何かに怯えるように震えていた。

 

「……で、調べた結果。

警察のサーバーに、条件に合う事件が1件あった。

2年前、完成まじかだったあの橋の近く。

大きな交差点で、1人の女子中学生が青い軽自動車に跳ねられ心肺停止となった。

数分後には病院へと搬送されたが、そのまま死亡が確定。」

 

俺達が調べた情報を打ち明け、それが生前のメリーであった確証が欲しかった。

未練を晴らすと言っても、その未練が何なのかまず知る為に辛いだろうがメリーの死の直前から探るのが一番の近道と思ったからだ。

 

そしてその事件がメリー本人であったかのように、徐々にメリーの呼吸が荒くなる。

次第には、あ…あぁっ……など短く声を上げていた。

だが、今度は間を置くことなく言う。

もう退くに退けない。

 

「目撃者は多数いたが、未だ犯人は捕まっていない。

後これは俺達が調べた結果からだが、それだけ多くの目撃者もいながらニュースはおろか地元の新聞にも取り上げられていない。

それに警察の検分と調査結果などが食い違っていることや不可解な点が多く――」

 

俺はそこからまずこの事件の真相について知ろう、そしてそこから事の紐を解いていこう。

その意味も込められ話そうとした。

だが、俺の声はかき消されてしまった。

 

『アアアアアァァァァァ!!』

 

突如、メリーが今まで聞いた事のないような、この世のものとは思えないような声で叫び頭を抱え出した。

 

それに呼応するかのように、先程まで快晴だった空は一気に真っ暗となり激しい雨が降り、立っているのもやっとな程の強い風が吹き出した。

 

「うわっ!?」

「きゃぁ!!」

 

突然の事に俺も楓も背を低くし、風に飛ばされないようにした。

それでも強い雨風が容赦なく俺達を、この周辺を襲った。

 

「なっ、何だよ急に!?」

 

「メリーちゃん怒っちゃったの?」

 

この現象は間違いなくメリーが原因と言うのは明らかだった。

雨も風もメリーを中心に吹いていた。

 

『ふむ、これは霊力が暴走しておるな。』

 

あまりの事に存在を忘れかけていたが、ツクが飛ばされないよう楓にしっかりとしがみ付きながら言った。

 

「霊力が暴走?」

 

『うぬ、我ら霊体を維持する為、そして力の根源となる力じゃ。

普段は人に見れないなど微量な霊力を放出しておるのじゃが、今のあ奴はそれを一気に放出し天候をも支配しておる。

まあ、正確には感情と共に力が暴走し、それが表だって今の現象を起こしておるのじゃ。』

 

しまった、あまりにも軽率だったかと俺は反省した。

初めて会った日から、くだらない会話をしたりゲームしたり、心読みあったりどこか掴めない奴ではあったが、心の強い芯の通った奴だと思った。

 

だが、それでも。

あいつは自分の死について感情が暴走してしまった。

初めて話し合った時、自分の死について平然と話してはいたが、それでも自分の死。トラウマに変わりはない。

もっと時間をかけてでも、別の方法を探せばよかったと思っても後の祭りだ。

とにかく今の現象をどうにかする、それが先決だった。

……だけど。

 

「ねえツクちゃん?

どうやったらこれ、止めれるの?」

 

『それは我でも分からん。

今のあ奴は負の感情に負け、暴走しておる。

それを止める方法は、力の根源となる負の感情を鎮めるほかない。

それが一番安全な方法じゃ。』

 

負の感情を鎮めるって言われても……

 

「んなのどうすりゃいいんだよ!!」

 

『だから分からんと言ったのじゃ!!

じゃが、これを放置することも出来んのも事実じゃ!!』

 

ツクは今まで一番と言っていい位声を荒げた。

それがこの事態が何処まで危険な状態かを示していた。

 

「誰も放置するなんて言ってないだろ!!

だけど、この雨風じゃ下手に動けねーよ!!

少しでも鎮まるのを待った方がいいんじゃねーか?」

 

今の現状、ゆっくり待っていられる状態じゃないのは俺自身分かっている。

だけど、下手に動いたら飛ばされかねないのもまた事実だった。

だから、時の経過で弱まるのを待つのが今一番の得策だろうと思った。

 

それに、メリーの周りには雨風がより激しく舞っている。

その証拠に、木の枝や小さな石がメリーの近くまで飛ばされると一瞬にして粉々に砕けていっている。

近づこうものなら、凶器と化した雨風が容赦なく襲いかかってくるだろう。

そんなとこに誰が好き好んで近づくだろうか。

 

『確かに普通なら待つのも有効な手じゃ!!

じゃが、このまま待っておったらあ奴は……メリーはどうなるか分からんぞ!!』

 

どうやらツクもこの状態では心を読む余裕はないらしく、俺の発言の返答しか返してこなかった。

だが、その解答は意外な言葉が返ってきた。

 

「ツ、ツクちゃん?

メリーちゃんがどうなるか分からないってどういう事?」

 

楓も同じ事を思ったらしく、俺が聞こうとした事を聞いてくれた。

 

『言ったであろう。

霊力とは我ら霊体を維持する為、そして力の根源となる力じゃと。

それは元々我らの中で蓄えられ生成されたもの。

普段は、発散と生成がほぼ同時同量で行われる為尽きる事はないが、メリーは今や生成が追いつかないほど霊力を発散しておる!!

しまいには、全ての霊力を使いきってしまうぞ!!』

 

「……使いきったら、どうなるんだ?」

 

俺は恐る恐る聞いた。

霊力を使いきる。それがどういった事態になるかはこの場ではツクしか知らない。

だけど、ツクの緊迫した声と表情から悪い予感はしていた。

そしてその予感は当たっていた。

 

『本来ならば力の源が消え、消滅するかじゃが……

多くは、怨念だけが残り本物の悪霊となってしまうじゃろう。

それが今の形を保ったままか、はたまた別の異形のモノとなるか……』

 

歯切れを悪くしながらツクはそう言った。

恐らく、今までにも見た事があるのだろう。

だが、今の俺にとってはそこよりも本物の悪霊という単語の方が気がかりでしょうがなかった。

 

「本物の悪霊だって?」

 

『人間には人間のルールがあるように、我ら霊体にも霊体のルールがある。

その中には、人間に有無言わせず危害を加えないと言うものがある。

それはルール以前に暗黙の了解となっておる。

じゃが、怨念と言う邪の道に染まればそんなルールお構いなしじゃ。

誰だろうと、容赦なく襲う。

しまいには人をも殺めてしまう悪霊へとなってしまうじゃろう。』

 

「そんな!!」

 

人をも殺める霊。

確かによく暇つぶしにネットのオカルトサイトとかで、怖い体験をしたと言った記事は見る。

どれも怪我などなく恐怖を植え付け植え付けられただけだ。

それに、それは霊の領域に入った人間を追い出す行為にも近い。

だが、ごく稀に友達が行方不明になった。

隣の住人が消えたなど、安否不明の記事もあった。

それがツクが言った本物の悪霊の仕業なのだと、初めて理解した。

 

そんな悪霊にメリーがなる?

昨日まで、皆とゲームしたり、楽しく雑談したり、ごはん食べたりしていたメリーが?

 

「……させるかよ。」

 

そう思った瞬間、俺の中で何かが弾けた。

そして気が付いたら、立ち上がり激しい雨風の中一歩また一歩とメリーの元へ襲いながらもゆっくりと向かっていた。

 

「亮ちゃん!!

危ないよ、戻ってきて!!」

 

『お主、どうするつもりじゃ!!』

 

後ろで楓とツクが止める声が聞こえた。

聞こえはしたが、俺は振り向きも、歩みも止めることなく一歩また一歩と前に進んでいた。

 

そしてやっとの思いでメリーの近くまでたどり着いた。

ここから思いっきり手を伸ばせばメリーに触れる事は出来るだろう。

だが、手を伸ばそうものならメリーの周囲でさらなる猛威を振るう雨風の餌食となってしまう。

 

……まだ出会って数日しか経っていない。

特に楽しい思い出もなければ、どちらかと言えばうるさく、うっとおしいと思う事が多かった。

だけど、それでも……

 

「不思議と嫌いと思った事はねーよ!!」

 

俺は最後に思った事を叫びながら、手を伸ばした。

その瞬間俺の手には鋭い刃物で斬ったかのような傷が無数に出来血が飛び出した。

 

「亮ちゃん!!」

 

あまりの事に楓が叫ぶが、俺は痛みを堪えながらメリーの肩を掴んだ。

その瞬間、雨風がより激しくなり俺は思いっきり吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐっ!!」

 

吹き飛ばされはしたものの、何とか態勢を整えもう一度メリーの元へと向かった。

先程より激しい雨風の所為で近づくのすら困難となったが、何とか再び先程と同じ距離まで近づいた。

 

楓はそれまで何度もやめるよう言っていたが、もう何を言ったか内容すら覚えていない。

今、俺はただメリーを止めたい。

そして救いたい、その一心だった。

 

元々こうなってしまったのは、俺が原因でもある。

その償いもあるが、メリーに人を殺めてほしくい。

また、昨日までのようにくだらない話をして、ゲームをして、遊んで……

そんな日常をもう一度送ってみたいと言う事しか考えれなかった。

 

そして今度は両手からではなく、俺自身一歩前へ踏み出る事により、これ以上メリーを過度に刺激せずに近づこうと考えた。

 

だが、その代償に今度は俺の体全体が雨風によって切り刻まれる。

痛く、体のあちこちでは衣服が破け血が滲み出ている。

後もう一歩、後もう一歩で届く。

その前に痛みで意識も飛びそうだった。

後一歩がとても大きく感じた。

 

だが、俺は最後の力を振り絞りその一歩を歩んだ。

そして、倒れそうなのを踏みとどめそっとメリーを抱きしめた。

 

正直これが良かったのか分からない。

行くと決めたは言いものの、どうすればいいか分からなかった。

だけど遠い昔、泣きじゃくる俺をそっと抱きしめてくれた母親。

その時、とても温かく優しく、そして安心した。

 

その記憶がここで蘇えり、同じ事をした。

それが本当に正解だったか分からない。

だが、先程まで激しかった雨風が次第に弱くなり始め、最後には止み空には再び青い空が顔を出した。

 

『あっ……亮さん?』

 

そこで久々にメリーの声を聞いた。

普段とは違って、どこか弱弱しく、蚊が泣くような小さな声だったがメリーの声だった。

 

「たくっ、面倒掛けさせんなよな……」

 

俺は未だメリーを抱きしめたまま、そう言ったが正直な話もう動く体力すら残ってはなかった。

そして視界は徐々に暗くなり始めた。

 

「今度、面倒掛けたらぶん殴るから…な……」

 

体力の限界を迎え、意識がもうろうとしている中メリーにそう言った。

それを見てメリーは悲しそうな顔をしながら、どこか嬉しそうな顔をしていた。

 

『……うん、分かったよ。

お兄、ちゃん。』

 

そしてメリーのその言葉に疑問とどこか懐かしさを覚えながら、俺の景色は真っ暗になった。

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