魔神が 歩みだす 日   作:歩暗之一人

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魔神が 歩みだす 日

 

 

肩にかかる荷物の重みを少し煩わしく思いながら、むき出しの荒れた大地を歩く。

元来体力には自信はないが、この体は一年の眠りから目覚めて間もないため、輪をかけて疲労感を強く感じる。

傍らを歩む身軽な連れは、数歩先を行き、振り返りながら言う。

「もう音を上げるのか?私はお前を連れて回る間中ずっとこの細腕で旅を続けてきたというのに」

「そういうな。これから先、俺が荷物を持つ時間のほうが遥かに長いだろう。それにお前は結局荷物に振り回されてよくこけていたじゃないか」

「な、お前、覚えているのか」

「体は動いていたんだ。見聞きしたものは記憶に残っている。ずいぶんと優しくしてくれてたじゃないか。声色だってだいぶ」

「よせルルーシュ、それ以上は聞きたくない」

少し顔を赤らめながら顔をそむけるC.C.を見て、やはり変わったのだと感じた。

俺も、彼女も。全てをやり切って、ギアスという名の呪いを、願いに変えて、同じ視点に立ってお互いを見ることが出来る今、互いの在り方も、関係性も、以前とは少し変わったのだろう。今俺たちの間にあるのはしがらみではなく、共犯者としての契約でもない。あの時交わした、たった一つの約束。俺はそのために甦り、こうして歩き出した。

「まぁそうむくれるな。それに今の俺はL.L.だ。」

生まれなおした俺の、新しい名前。C.C.の隣を歩むための、ゼロとは違う記号。

「そうだったな。精々筋肉をつけて、そのもやしみたいな体をマシにしてくれ、L.L.」

「はいはい、お姫様」

そこまで話して、この不老不死の体は肉体改造というか、成長をするのだろうか、という疑問が頭をよぎった。まあいい。これから先、時間はいくらでもある。

彼女の隣を歩む永い道のりの中で、徐々に息切れしなくなっていけば、体力は自然とついているということだ。

たとえ体は変わっても、変わらないものがある限り、俺たちはどこまでもいける。

行き詰まりに絶望したあのコクピットの中でのC.C.の叱咤と涙を思い出す。

俺はいつもの俺のままで、あり続けていいのだと。

「なにを一人で笑っているんだ?」

「ん?今俺は笑っていたか?」

「ああ。こぼれるようにな」

「そうか」

「で、何を考えていたんだ?」

「ふむ、そうだな。今までお前を泣かせた分は、笑わせてやらないと、とな」

「ふっ、そんなことをまじめに考えていたのか。それに、それじゃノルマにもならないな」

「ああ。わかっている。最期まで、お前に笑顔をくれてやるとも」

「ずいぶんな自信だな。私にギアスは効かないぞ」

「違うな。間違っているぞ。このギアスだけはお前にかかる。それに」

「それに?」

「約束だからな」

過去をやり直すのでも、ただ今日を積み重ねるのでもなく、より良い明日を求めて。

―――たとえどれだけ時間がかかろうとも、人は幸せを求め続けるから。

かつてシュナイゼルに向けた言葉を反芻する。

 

未来永劫続く果てしない悪路も、C.C.と二人なら、一歩ずつ、歩みを進めていける。

 

計算するまでもなく、そう信じられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よかった。ルルーシュはちゃんと歩き出した。

ずっと孤独を抱えていたけど、今は違う。

素敵なめぐりあわせがたくさん、ほんとにたくさんあって、今の道がある。

これから先も、きっと楽しいことばかりではないかもしれない。

でも、今日より悪くなるかもしれない明日を、より良い明日にしていく力があると、ルルーシュはすでに証明しているもの。

 

ナナリーとルルーシュを、このCの世界から送り返せて、ほんとによかった。

あの二人がいてくれれば、世界はきっとよくなる。

お姉さまも、スザクも、幸せになれる。

 

これで私の心残りはなくなった。

さよならみんな。

さよならスザク。私の騎士。

 

きっとまた、会いましょうね。

 

 

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