乾いた大地に、乾いた風。
潤いとは無縁の荒んだ国土。その外縁部に位置するこの村は、
今だけは、我々黒の騎士団の歓声で賑わいを見せている。
紅月カレンの一声で結団式が催されることとなり、その準備が行われている最中だ。
扇から部隊の詳細を聞いたルルーシュは、そのままこちらに向かって真っすぐ歩いてきた。
「姉上、少々お時間をいただいても」
「ああ。私もお前に話がある」
皆が宴の支度をする喧騒から少し離れたところで、ルルーシュが口を開く
「作戦への協力、感謝します。条件をクリアするには、姉上の協力が必要不可欠でした」
「先刻宣言した通りだ。ナナリーのために、我らは動く」
「ええ。それで構いません。俺は赦されようとも、赦されるとも考えていない」
「勿論、赦すことなどありえない。お前が如何なる覚悟をもって世界を壊し、創造したとしても、この感情が消え失せることは決してない」
そうだ。ルルーシュが、どれほど稀有な奇跡を起こしたとしても、そのために必要な多くの犠牲を払ったことに変わりはない。そしてその悲劇の中に、最愛の妹は斃れた。それがたとえ、ルルーシュが意図したものではないとしても。
「だからこそ、感謝を」
真っすぐに私の瞳を捉えるその双眸は、以前の禍々しさを備えてはいなかった。
ゼロの仮面を脱ぎ去り、ルルーシュという個人の純粋な想いが愚直に響いてくる。
傾いできた夕日に目を移し、口を開く。
「なぁルルーシュ、覚えているか。昔ユフィが語り、そして実現しようとした世界のことを」
「それは、ナナリーの夢でもありましたから」
「他人に優しくなれる世界、平和と思いやりの溢れる日常。私はな、ユフィと、ユフィが語るその夢が好きだった。今でも。でも、心のどこかで、それは叶わない幻想だと諦めていた。この世は絶えず戦火を内包し、強者が生き残るシステムが敷かれているのだと。だがな、この一年、お前が造り上げたこの世界は確かに、あの子が望んだ世界だったよ。ずっと思っていた。ユフィにこの景色を見せてやりたいと。ユフィに――」
溢れる感情が抑えきれずに、熱くなる目頭を押さえる。
一息ついて、言葉を紡ぐ。
「だから、私からも礼を言う。ありがとう。あの子の願いを叶えてくれて」
我が弟は心底驚嘆したように、目を見開いた。
悪逆の限りを成し、世界に爪痕を刻んだ男に、感謝しているものがいるとは微塵も考えていなかったようだ。
「日も落ちてきた。冷えてきたし、そろそろ宴も始まる頃だろう。皆のところへ戻ろう」
振り向いて数歩歩いたところで、背中がわずかな温もりに包まれた。
「たしかに、その恰好では体が冷えてしまいます。作戦まで、体調は万全でお願いしますよ、姉上」
そういって、立ちすくむ私の横を追い抜いていく。
「まさか私が、この衣装を身にまとう日がくるとはな」
自嘲気味な笑みとともに、そんな言葉をこぼす。
―ユフィ。お前のいない世界を生きる孤独さえ、ユフィの遺した優しさが癒してくれるよ。
羽織ったマントの裾を掴み、歩みを進める。
温もりを感じられる、この世界で。