メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~   作:上月 ネ子

10 / 55
さて、プリコネアニメも四話も放送して、少しずつ新規勢が増えてきた頃でしょう。

今回はアニメOPにも出てきた、アマノジャクハートなツンデレアイドルがメインのお話です。


キミへの想いは言葉で誤魔化せない

アイドルギルド【カルミナ】のメンバーの一人、ツムギ。

彼女はアイドルとして活動するその傍ら、個人経営の仕立て屋を開いている。

 

そんなツムギの店に、ある日二人の男女が訪れた。

 

 

「オーダーメイド、ですか?」

 

「ああ。もしかして駄目だったかな?」

 

「いえいえ、そんなこと無いですよ! レイ様のお願いならどんなことでも受け付けますよ! 受け付けます、けど……」

 

 

ツムギは、当然の権利のようにレイの隣に立つボロボロになったユウキを一瞥する。

 

事情を聴いてみると、レイとユウキの二人はランドソルの外に出て剣の鍛練をしていたらしい。……この時点でツムギとしては一言もの申したい気分だったが、グッと飲み込んで聞き手に徹する。

だが、突如として魔物からの攻撃に遭い、レイを庇ったユウキは軽傷で済んだものの、見ての通りボロボロになってしまった。

 

服装や剣以外の装備はレイがお詫びとして買い揃えたそうだが、マントだけは彼に似合ったものが見つからず、レイが選択した行動はユウキにピッタリなマントを一から作ってもらうことだった。

 

 

「騎士さん、レイ様に装備を用意してもらったとか図々しいんですけど、何様ですか?」

 

「待て待て、ユウキに庇ってもらえなければどうなっていたか分からなかったんだ。これは当然の礼儀だ」

 

「むう…………」

 

 

それを言われるとツムギとしては弱い。

しかし、このままレイの言うとおりにするのは、何故だか癪に障った。

 

 

「私的には、騎士さんにマントなんて似合わないと思うんですけど」

 

「そうかな? あまり派手さの無いあのマントは騎士らしい風格が出ていたと思うんだけど」

 

「そもそも騎士さんが騎士らしい風格があるということに突っ込みたいんですけど……」

 

 

……薄々感じてはいたが、ツムギとレイのファッションセンスはあまり噛み合っていない。ツムギがダサいと感じているものを、レイは渋味を感じているようだ。

 

しかし、レイのオーダーを受けると言った以上、ツムギにユウキのマントを繕わない理由はなかった。

 

 

 

 

 

翌日、ツムギはユウキを呼び出し、新調した服装や装備を身につけてマントのデザインを考えることにした。

引き受けた以上、ダサいものを作るわけにはいかない。

 

しかし、

 

 

 

> ツムギちゃん、大丈夫?

 

 

 

「はっきり言って全然大丈夫じゃないです……」

 

 

ツムギはユウキにマントはあまり似合わないと思っていたために、インスピレーションが全く刺激されない。

ユウキはあまり騎士らしくないのだ。

ランドソルにおいて、騎士といえば【王宮騎士団】の兵士を想起させる。

彼らはマントなんて身に付けていない。身に付けたとしても普段ユウキが身に付けていたあのロングマントでは邪魔になるだけである。

 

ツムギはふと彼の顔を見やる。

そもそも、彼に騎士っぽい武骨な格好なんてミスマッチである。どれだけ格式張った礼服や鎧を身に付けたところで、滲み出るカリスマの無さや、そのうえ少しふにゃけた表情が台無しだ。

確かに今まで何度も世話になったし自分の仕事やアイドル活動を献身的に手伝ってくれたその優しさはまるでおとぎ話に出てくるヒロインに颯爽と駆けつける――

 

 

「~~~~~~~~~っ‼」

 

 

いつの間にか思考がコーディネートではなく、ユウキについてのモノローグに変わっていたため、顔をブンブンと振り冷静さを取り戻す。

 

 

「ひ、一先ず、騎士さんにはあまり暖色系は似合わないことが分かりました‼ ほら、行きますよ!」

 

 

 

> 行くって何処に?

 

 

 

「原料集めに決まってるでしょう。ほら、騎士さんも準備してください!」

 

 

幸い、ツムギの顔色が真っ赤になっていたことをユウキが指摘することはなかった。

 

 

 

 

 

ランドソル近郊の森にやって来たツムギとユウキ。

ここでは色染めの原料になる木の実や植物があるため、ツムギは度々ユウキを護衛役として呼びつけて、幾つか収穫している。

 

 

「……いつの間にか、騎士さんを連れ出すのが当然みたいになってるなぁ……」

 

 

 

> 何か言った?

 

 

 

「ただの独り言です。……今回はこの植物を採取しますよ」

 

 

ツムギはユウキに採取する写真を見せる。

インディゴスライトと言って、水に漬け込んで出てきた灰汁が濃い青色の染料になる。

写真を受け取ったユウキは早速キョロキョロと辺りを見渡しては、歩き出して探そうとするが、

 

 

「ちょっと! 一人で勝手に行かないでください! 何のための護衛役ですか⁉」

 

 

ツムギの糸によって拘束され、そのまま引っ張られて採取場所へと移動することになった。

 

採取場所にはインディゴスライトが生えているが、その数はあまり多くない。

 

 

「騎士さん、こういう数の少ない植物は全部とっては駄目なんですよ。知ってますか?」

 

 

 

> どうして?

 

 

 

「全部とったら無くなってしまうからですよ。今後も採取できるように、幾つかは絶対に残さないといけないんです」

 

 

へえ、と感心するユウキ。

本当に分かっているのだろうか心配になったツムギは、まずひとつ摘み取る。

 

 

「ほら騎士さんも。二つもあれば十分ですから、出来るだけ大きいのを探してください」

 

 

頷いてユウキは、この中で一番大きなインディゴスライトを見つけるべく、草花を掻き分けて渡された写真に合致する植物を探す。

すると、一際大きなインディゴスライトを発見する。

ためらいもせず、ユウキはそれに手を伸ばして、きゅっ、と上に引っこ抜くと、

 

 

――ア――――――――――ッ‼

 

 

耳を裂くような絶叫が響き渡り、驚いたユウキはそのまま後ろに倒れてしまう。

 

 

「……な、何ですか今の声! ……って騎士さん、その手に握ってるのは……」

 

 

ツムギはユウキの手に握られてある植物――に擬態した魔物のマンドレイクを見て驚く。

マンドレイクとは回りの草花に頭部の葉を擬態させて地面に潜り、自身を引き抜いた相手に絶叫を浴びせることで弱体化させるという、危険な魔物である。

 

 

「まさかこんな所にいるなんて……。騎士さん立てますか?」

 

 

ツムギはユウキに声をかけるが、ユウキはそれに反応して立ち上がろうともがくが、一向に立ち上がれない。

 

 

 

> 体が動かない……。

 

 

 

「マンドレイクの声を至近距離で聴いたからですね。マンドレイクの声は聞いた相手を死に至らしめるとか言う、いわくつきの植物型魔物ですから」

 

 

ユウキはびくりと体が跳ねてさらにもがくが一向に立ち上がれる兆しが見えない。

ツムギはその滑稽な姿に軽く吹き出して、気分をよくしながらユウキに駆け寄ろうとする。

 

 

「まったく世話が焼けますね。そのままじっとしててください、マンドレイクを拘束した後で助けますから――」

 

 

だが、それは叶わなかった。

がさがさとツムギ達の周囲から草木を掻き分ける音が響く。

 

茂みから顔を出したそれらは、ユウキを中心にして円を作り、二人を包囲していた。

 

 

「い、いつの間に――⁉」

 

 

ツムギは狼狽するが、魔物達の視線を追ってみると、それは全てユウキに収束している。

そこで少し冷静になり、魔物達は先程のマンドレイクの絶叫で集まったのでは、と結論が出た。

 

 

 

> ツムギちゃん、逃げて!

 

 

 

「なっ⁉ 何言ってるんですか‼」

 

 

だが、底抜けのお人好しはそれに気づいてないのか、あるいは気づいた上での事か、ツムギに逃走を呼び掛ける。

 

 

「この魔物たちはあなたを狙ってるんですよ! 死ぬ気ですか⁉」

 

 

 

> ツムギちゃんに何かあったら、レイやノゾミ達が悲しむから。

 

 

 

「…………ッ」

 

 

本気で言ってるのだろう。

その淀みの無い堂々とした発言に一瞬怯んだツムギは、歯軋り一つ立てて、

 

 

「……そうやってレイ様も、当然のように庇ったんですね」

 

 

ぼそりと、呟いた。

 

そして、ツムギは両腕を伸ばして、糸を伸ばしながら大声で宣言する。

 

 

「後でたっぷりと言いたいことがありますので、そのままじっとしててくださいねッ‼」

 

 

その日、ユウキが見たツムギは、ユウキの強化が無いにも関わらず魔物をなぎ倒すその姿は、今までで一番強かった。

 

 

 

 

 

その後、動けない自身を囮にしてツムギを逃がそうとしたユウキは、激昂した彼女に罵詈雑言の雨霰を浴びせられ、糸でぐるぐる巻きにされてランドソルまで引き摺られた。

 

なお目的のインディゴスライトだが、ユウキが握っていたマンドレイクの頭部の葉を切り落として使用することができ、問題なく色染めに取りかかることができた。

 

後日――

 

 

「――これは……」

 

 

ユウキのマントが完成したと聞いて、ユウキに同行したレイは、彼の背になびく深青色のマントを見てため息をつく。

 

 

「この黒に近い青……、良いね。ユウキの控えめな騎士の誉れを体現しているようだ」

 

「騎士の誉れ、ですか……」

 

 

己の命を平然と天秤にかけて仲間を守ろうとする、その底抜けで残酷なお人好し具合を騎士の誉れというのならそうなのだろう。

ツムギは声に出さなかったが、そう思った。

 

 

「……ん、ツムギ、この模様は何?」

 

「え? ああ、それですか」

 

 

レイはユウキのマントの中心部にある謎の円形の模様を指差す。

円をベースとして、花びらのような模様が弧の内部に描かれ、中心から十字方向に剣の先のような軌跡が弧の外側に伸びている、不可思議な模様だ。

 

 

「ほら、騎士さんがあの、仲間を強化する力の模様ですよ。剣からそんな感じの模様が浮かんでませんでしたか?」

 

「………………………」

 

 

唖然とするレイ。

珍しい顔が見られた、と若干喜んだツムギだが、そんな顔を向けられる理由が彼女には分からない。

 

 

「……ユウキの事を、よく見てるんだね」

 

「へ」

 

「私は言われるまで気がつかなかったよ。私もまだまだ目の付け所が甘いな」

 

 

その声音には、若干の嫉妬が混じっているように感じられた。

 

 

「ちがっ、違いますからねレイ様! 私、騎士さんの事なんて全然見てませんから‼ 私はレイ様一筋ですからね‼ ……騎士さんも何ポカンとしてるんですか! 勘違いしないでくださいね‼ 騎士さんの個性がそれくらいしか浮かばなかっただけなんですから‼ 絶ッ対に勘違いしないでくださいね――――ッ‼」

 

 

今日もツムギのアマノジャクハートは絶好調である。




ツムギ
前作「プリンセスコネクト!」より続けて登場する、裁縫用の糸を駆使して戦う少女。アイドルギルド【カルミナ】のメンバーとして歌って踊って戦う。
ファッションにうるさく、自作の服を売って仕立て屋を経営している。また、その才能をいかして、【カルミナ】のライブでもパフォーマンス等もツムギが考えている。
レイの過激的なファンであり、ユウキがレイと仲の良い男だと知ったときに彼を目の敵にするようになるが、アイドル活動として背中を押してくれた彼に恩を感じている。



どうも皆さま、約一ヶ月ぶりです。
予定通りツムギのお話を書くことが出来ました。
あんなに心変わりが分かりやすいツンデレキャラも今日日見かけませんが、同時に自分のスタンスも貫いているツムギのキャラは個人的にもとても好きです。

次にアンケートですが、アンケートの結果が反映されるのはクルミのお話の後になります。つまり、

次回アオイ予定→クルミ予定→アンケート結果一位キャラ予定

ということになりますので、それを踏まえた上で、アンケートにご協力をお願い致します。

以下のキャラの中で誰を優先的にお話しを書いて欲しい?

  • サレン
  • シオリ
  • シズル
  • ハツネ
  • ミヤコ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。