メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~ 作:上月 ネ子
「……ユウキさん、なかなかイカしたマントを身に付けているね。普段より凛々しさが数段上がってるかな」
ランドソルを散歩している途中、偶然出会った人物――ユキに呼び止められ、他愛もない世間話をしていると、ふとユキはユウキのマントに目を留めた。
「新しく買ったのかな? 前のとは色もちょっと違うし、こんな模様も無かったよね」
マントには何かの魔方陣のような、剣に関係しているような模様が大きく描かれている。
それに大いに興味を持ったユキは良いことを思い付いたように口を開く。
「中々センスのあるマントだよね。きっと製造者も一流なんだろう。まさしくボクのような美しい人を美しく彩るのに相応しい人材に違いない」
また始まった、とユウキは呆れた表情を見せるが、ユキは気づいていない。
「という訳でユウキさん、ボクにそのお店を紹介してくれないかな?」
> ええー……。
正直遠慮したいというのがユウキの本音であった。
ユキのこのテンションは確実に彼女が苦手とするタイプなので会わせるのがとても忍びない。
「何さその反応。職人って言うのはね、その才能をボクのような恵まれた存在に力を注ぐ事でより飛躍するんだよ。きっとその職人だってボクを一目見れば喜んで腕を振るってくれるに違いないよ」
> いや、それは無いと思う。
「即答⁉ ちょっと、いくらなんでも失礼だよそれ!」
ユウキはその理由を口にした。
> だってツムギちゃん、君に興味湧かないと思うよ。
「――へえ、ここがツムギさんのお店か。外装はこじんまりとしているけど、まあ職人の実力は外面だけじゃ解らないし」
気分よくツムギの仕立て屋に興味を示すユキをよそに、ユウキは心の中でツムギに謝り続ける。
ユウキはユキの性格が少々苦手である。自己評価が高過ぎて、自分本意な考えで周りを振り回す行動がいくつか思い浮かぶ。
汗臭くなるからとバイトをサボり、美の追求と言ってギルドの備品を売り払ったルピで気球を買ったりと、中々のトラブルメイカーである。
そして今、ユウキのマントが【カルミナ】のツムギ直々の手製だと知って、こうしてツムギの店に足を運びに来たのである。
「しっかし、流石はユウキさんだね。【カルミナ】のアイドルにまで顔が利くとは。世界で一番可愛くて美しいボクでもその顔の広さだけはキミに及ばないかもね」
こうしてユキが他人を手放しで誉めているのも珍しいのである。何故ならユキは基本的に自分にしか興味がないから。
そんなユキとツムギが波長が合う筈もない、と記憶喪失ながらに確信しているユウキ。
「ちょっとユウキさん、いつまで突っ立ってるの? 早く中に入ろうよ。ボクの白玉のような肌が焼けちゃうよ」
観念してユウキは店のドアを開き、つい先日訪ねたばかりのツムギに挨拶をする。
「いらっしゃいませー! ……ってなんだ騎士さんかぁ。いったい何の用です? 冷やかしなら――」
冷やかしならぐるぐる巻きにして外に放り出しますよ。
ツムギの言葉は最後まで言えなかった。
「やあ、初めましてツムギさん。ボクは世界で一番可愛くて美しいユキだよ。早速で悪いんだけど、ボクをキミのセンスでコーディネートしてもらえるかな」
まったく悪気のない見る人が見れば確実に振り返りそうな笑顔を見せて、ユキは注文する。
が、当のツムギはゆっくりとユウキに顔を向けて、
「…………騎士さん?」
> はい?
ユウキを拘束し、カウンターの奥へと一緒に引っ込んだ。
ユウキをぐるぐる巻きにしたままツムギは強張った笑顔で尋ねる。
「いいご身分ですねぇ。私がわざわざ繕ってあげたマントを見せびらかして、その上デートですか。しかもよりにもよって私の店をデートプランに組み込むなんて、いい度胸してますねぇ」
何故だか若干、いやかなりキレているツムギにユウキは首を傾げるしかない。
「レイ様から前に聞いたことありますけど、本当に女の子の知り合いが多いんですね。……で、何処の誰なんですあのユキさんって人は?」
> ち、違います。
「はあ? 何が違うんですか?」
>ユキは男です。
「………………………はあ?!」
ツムギは女性のスリーサイズを一目見ただけで見抜くことが出来る。
故にユキの体格を人目見れば男女の区別がつくのでは、とユウキは考えていたのだが……。
「……え、いやでも、確かに女の子にしてはちょっと胸回りがしっかりしていたような……」
「――ちょっと! いつまで客を待たせるの⁉ 早くキミの作った洋服を見たいんだけど!」
「……え、あ、はい! 少々お待ち下さい……」
釈然としない気持ちでツムギはユウキの拘束を解き、カウンターに戻ってきてもう一度ユキの体格を確認する。
「えっと、ユキさんでしたか? 確認ですけど、本当に男の人……なんですか?」
「へえ! 分かるんだ! 初対面でボクを男だと気づいたのはツムギさんが初めてかもね~♪」
「そ、そうなんですか……」
途端にツムギの目には自尊心の高い面倒くさい男に見え始めるのだが、それを打ち消すようなユキの容姿が輝いて見える。
「えっと、それなら男性ものの服を用意した方が良いですかね?」
「ふふ、ボクの美しさを引き立てるのに男物の服装なんて役不足だよ。ボクの美貌は性別を超越するんだからね!」
「はあ…………」
思わずツムギはユウキを睨み付けた。なんて面倒くさい客を連れてきたのだろう、と。
予想通りの反応にユウキは畏縮するしかない。
「……え、えっとそれでは幾つか見繕わせて頂きますが、サイズの方は如何しますか。希望されるなら、少し緩めにできますが」
「え、どうして?」
「だって、ユキさん少し胸回りががっしりしてますよね。そのままにしておくと息苦しくなりますよ?」
それを聞いてユキは目を見開いた。そして次に自分の胸に手を当てて、
「分かるの?」
「はい。男性でもある程度のサイズは見れば分かりますから」
「凄い‼ と言うことは女性だと完璧に分かるんだね! だったら今度モニカさん達連れてこようかな。ボクと同じギルドメンバーなんだから、もう少しファッションに頓着してほしいからね」
もう来ないでくれ、なんて口が裂けても言えないツムギであった。
「――はあ、もっとお金があればもう少し買ってたんだけどなぁ」
ドレスを数着買って早々に店を出た二人。
ユキは服が入った袋を見ながら恨めしそうに呟く。
「ユウキさんもどうしてお金を出してくれなかったの? キミが出してくれたらもう一着買えたのに」
> ごめん。
普段のユウキであればお金を出していただろう。
しかし、試着中何度も些細ないちゃもんを繰り返してはツムギを振り回し、段々とユウキを睨み付ける顔が険しくなっていたので、買い物を続けるよりも早く帰る事が得策だと判断した。
なお余談だが、後日ユキは【ヴァイスフリューゲル】の面々を連れてツムギの仕立て屋にやって来るのだが、ニノンの暴走とクウカの妄想が店内を支配し、その日は客足が少なくなったことにツムギがキレて、ユウキにまで飛び火することになる事を先に伝えておこう。
「まあいいけどね。色の好みとか色々注文したけど、それはそれとして全部クオリティが高かったし」
> あんまりツムギちゃんを振り回すのは悪いと思うけど。
「何を言ってるのさ。ボクの美しさを磨くその行為の前ではどんなことも後回しになるのさ。きっとツムギさんはこれからボクの美貌による伝説の一ページに刻まれるんだから、感謝して欲しいくらいだね」
全くの悪びれもない台詞にユウキはため息をこぼすしかない。
しかしユウキにとっては数少ない同姓の友人。大切にしたいのだが、これからもユキに振り回されるのだろうな、とユウキは無意識に確信していた。
ご友人は選ぶべきではないでしょうか主さま、と幻聴が聞こえてくるのだった。
ユキ
前作「プリンセスコネクト!」より続けて登場しているヒロイン(?)の一人。鏡の杖で常に自分の容姿を確認しながら誘惑の力で戦うことが出来る。
自らの容姿が誰よりも優れていると信じて疑わない、いわゆるナルシスト。自身の美貌の前では全てが霞み、全てが些末事だと本気で思っている。
が、実は男であり、自身の容姿が性別を超越するほどのものであることがナルシスト具合に拍車をかけている。最近は女と間違われてナンパされるのが悩み。
私、復活!!(訳:お待たせしてすみませんでした。)
えー、インスピレーションが降ってわいたので急遽ユキをメインにして書かせていただきました。次回は確実にアオイです。
気づけば2.5周年。せめてその日が来るまでは新しいアンケートの方を反映させて書きたい所存でございます。
それまでもう数日ほどお待ち下さい……。
以下のキャラの中で誰を優先的にお話しを書いて欲しい?
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サレン
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シオリ
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シズル
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ハツネ
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ミヤコ