メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~ 作:上月 ネ子
「え、えへへ……。今日は、お兄ちゃんとデートです……♪」
上目遣いでユウキお兄ちゃんの顔を窺いながらわたしは呟く。
こうでもしないとお兄ちゃんはデートだと思ってくれない。……もっともデートが何なのかわかってないと思うけど。
案の定お兄ちゃんは首を傾げて、これがデートだということに自覚がないらしい。
そもそもどうしてわたしとお兄ちゃんがランドソルに出向いているのか。
別に大した理由じゃないけど、お買い物。
スズメお姉ちゃんのドジが積み重なって足りないものが幾つかあり、急遽ここまでやって来た。
本当ならお兄ちゃん一人で行くつもりだったみたいだけど、コッコロちゃんが一人で心配だと言い始めて、わたしも同行人として立候補した。
話し合いの結果、わたしが同行人となり、こうしてお買い物を名目としたデートを楽しむことにしている。
> 楽しそうだけど、物買うだけでしょ?
「むぅ……、お兄ちゃんは本当に鈍感さんですね。男の人と女の人が、一緒に出歩くとそれはデートなんですよ……?」
> それなら他の子ともしてるけど、あれ全部デートになるの?
「…………お兄ちゃんのノーデリカシー」
普通、デートしている時に他の女の子に関する話なんて出さないと思っていただけに、お兄ちゃんのその発言はちょっと、いや凄く腹が立った。
だから、少し意地悪することにした。
「……で、デリカシーのないお兄ちゃんには、こうですっ」
わたしはぷらぷらと遊ばせているお兄ちゃんの腕にぎゅっとしがみついた。
> クルミちゃん?
「デリカシーのないお兄ちゃんはこうして、女の子への接し方を少しは学んでください……っ」
> でも、ちょっと歩きにくい……。
「が、我慢して……っ! さもないと、ママ・サレンにお兄ちゃんはお金の使い方が分からなくて万引きをしかけた事があるって言っちゃいますよ……?」
> 勘弁してください。
あの時は本当にビックリした。
いい人だと思っていただけに、万引きをするような人だったなんて……、なんて本気で考えていた。
だけど、事情をよく聞けば単純にお金の使い方が分からないくらいの酷い記憶喪失だったらしく、別に万引きをしたわけではなかったのだった。
けれど、あの時のお兄ちゃんを思い出すと、少しだけ笑いそうになる。
わたしより年上なのに、常識的なことが全然できなくてトラブルばっかり起こしちゃう。
「お兄ちゃんはわたしが見てないとどんなことするかわからないから……」
お兄ちゃんは困ったような顔をして、何も言わずにわたしと一緒に歩く。
これにてようやくデートが再開、とはいかなかった。
「――あ、誰かと思えばユウキにゃ! せっかくだから寄ってくにゃ!」
大通りの方に出ると、屋台から女の人の声がお兄ちゃんを呼ぶ。
近づくと、猫耳の獣人さんがたい焼きを片手にブンブンと手招きしていた。
「……にゃ? 今日は他の子も一緒にゃ?」
「……ど、どうも…………」
わたしを見て、猫耳の獣人さんはお兄ちゃんに話しかける。
「ふむふむ、だったらおやつにたい焼きどうにゃ? 今日は特に良い焼き加減してるにゃ!」
> どうする?
……お兄ちゃんは買う気みたい。
それにしてもこの人さっきお兄ちゃんの名前を呼んでたけど……。
………………………むぅ。
「……ご、ごめんなさい。大事なお買い物があるから……」
「あらら、振られちゃったにゃ。まあ仕方ないにゃ。また今度来て欲しいにゃ~‼」
わたしはお兄ちゃんを引っ張って、屋台から離れる。
「ごめんなさい、お兄ちゃん。……たい焼き、食べたかった?」
> いや、お買い物の方が大事。忘れるところだった、ありがとう。
お兄ちゃんは文句の一つも言わずにわたしを肯定してくれた。
スズメお姉ちゃんからは少し多めにお小遣いを貰っている。一個くらいなら大した事にはならないのに……。
ただの対抗心で、あんな事をして。……わたしってまだ子どもっぽいのかな?
「――見つけたわ! 探してみるもんね」
自分の子どもっぽさに悩んでいると、今度はまた別の女の子の声が響いた。
顔を上げると、ツインテールの小さな女の子がお兄ちゃんに指差して駆け足で近づいてくる。
……何だか苦手そうな空気を纏っているから、お兄ちゃんの影に隠れる。
「ちょっと、今からアタシに付き合いなさい。まさかレディからの誘いを断るんじゃないでしょうね?」
なにこの子……、いきなり出てきてお兄ちゃんに無茶苦茶なこと言ってる。
だいたいレディって……。
お兄ちゃんは案の定困った顔をして、
> ごめん、お買い物を頼まれてるんだ。
「お買い物を頼まれてるって、お使いってこと? なんでそんな子どもっぽいことしてんのよ?」
> 大事なことだよ。
「むっ……」
お兄ちゃんが真剣にお使いの重要性を女の子に諭していると、何が気に入らないのか眉を吊り上げて、
「お使いなら後で出来るでしょ。こっちの用事に付き合ってくれたらそれで良いんだから、ほら行くわよ!」
女の子は手を伸ばして、お兄ちゃんの腕を掴もうとする。
わたしはそれを、黙って見ていることは出来なかった。
「いたっ! な、何するのよ⁉」
気づけば女の子の伸びた手を叩き落としていた。
「……無茶苦茶なことばかり、言わないで。お兄ちゃんはちゃんと断ってるのに……。しつこいと嫌われちゃうよ」
「いきなり出てきて誰よ、アンタ! レディに手を上げるなんて最低だわ‼」
「わたしはさっきからここにいたもん……。それに、レディは失礼な人に名乗ったりしないもん……」
「な、なんですってぇ⁉」
この子は大人のレディでも何でもない。
ただ自分の都合の良い事情を押し通そうとしている、ただの我が儘な子ども。
さっきの、猫耳の獣人さんに嫉妬して、お兄ちゃんとのデートを強引に再開させたわたしと同じ。
そんな子を、大人だなんて認めるわけにはいかない。
「……アンタ今、遠回しにアタシのこと失礼なやつって言ったわね。いきなり手を上げるアンタの方が失礼じゃないの!」
「あ、あなたほどじゃないもん……。デート中なのに、いきなり横から首を突っ込んできた人を失礼って言って何が悪いの?」
「で、デートぉ⁉」
女の子は素っ頓狂な声をあげて、わたしとお兄ちゃんの顔を見比べる。
女の子は取り繕ったように落ち着いて、
「……べ、別に、それが何よ⁉ アタシだってユウキとデートしたことあるし!」
「…………デートさせたんでしょ、さっきみたいに強引に誘って。お兄ちゃんが断りづらい性格なのを知っててそうしたんでしょ?」
「ぐぅ……!」
これ以上は帰るのが遅くなっちゃうので、お兄ちゃんの手を引いて歩き出す。
そっちがそういう手をとるなら、わたしも躊躇わない。
「行こ、お兄ちゃん。早くお買い物して帰らないと、スズメお姉ちゃん達が心配しちゃいます……」
> でも……。
「お兄ちゃんのお友達なんですよね? なら、今度埋め合わせしてあげて。……あなたもそれで良いでしょ?」
「ちょ、なに勝手に決めて……⁉」
「それじゃあね。……大人のレディを名乗るなら、男の人を立てることを少しは学んだら?」
わたし達は彼女の返答を聞かずに歩き去った。
背中にあの子の悔しそうな声が響いていた。
「……お、お兄ちゃん。あの女の子とデートしたことあるんですか?」
> ミサキちゃんのこと?
ふうん、ミサキちゃんって言うんだ。
よく事情を聞いてみると、いきなり喫茶店に誘われて、その店の看板メニューを一緒に食べたことがあるらしい。
……確かにそれはデートかも。
それにしても、
「……うぅ、恥ずかしいです。お兄ちゃんの前であんなにムキになって」
やっぱりわたしはまだまだ子どもかもしれない。
それでも、あの子には負けたくないと思った。
「……お兄ちゃん、ミサキちゃんにはわたしの名前、教えちゃダメですよ?」
> なんで?
「わたしが教えなかったからですよ。……ミサキちゃんから直々に教えて欲しい、って頼みに来るまでは教えてあげないもん」
お兄ちゃんは困ったように笑うだけで文句の一つも言わない。
……お兄ちゃんは大人としての器が広いと言うよりは、単に細かいことを気にしてないだけかも。
でも、今の子どもっぽいわたしを受け入れてくれるなら、それでも良いかも。
クルミ
前作「プリンセスコネクト!」より続けて登場する気弱で常におどおどとしている少女。大きなベルのようなハンマーと頭のリボンがよく目立つ。
「ロスト」というランドソルで発生する怪事件が原因で両親を失ってしまい、【サレンディア救護院】に保護される。そのためか、我が儘をあまり口にしない。
実は演劇の才能があり、おままごとでもその真価を発揮するのだが、周りにはその才能を見出だす人がいなかった。また、天性のサディストでもある。
かーっ!卑しか女ばい!(別ゲー なお言ってない)
という訳でクルミでした。
……あんまり卑しい女の子っぽく書けてないのが自身の腕のなさを実感しますが。
さて、今回ゲストとしてとあるキャラ二人が登場しています。片方は本編で名前を出したけど、もう一人の方はさすがに簡単でしたかね。
さて、次回は二度目のアンケート結果に則り、サレンを予定しておりますが、出来る限り2.5周年に間に合わせるよう頑張ります!
以下のキャラの中で誰を優先的にお話しを書いて欲しい?
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サレン
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シオリ
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シズル
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ハツネ
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ミヤコ