メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~   作:上月 ネ子

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今回のお話は、物理的に一番主人公と距離が近いあの従者がメインです。


導きに必要なキミとの距離

「主さま。わたくしコッコロは、あなたさまのガイド役であり、従者でございます」

 

 

山道の傍らにある少し寂れた屋敷――【サレンディア救護院】のギルドハウス。

ある一室でユウキはベッドの上で正座を作り、正面に立っている少女に頭を垂れている。……というより反省の念を示しているようだ。

毛先に癖のある銀髪。少し色白な肌。エルフ族を象徴する横に長い耳。

ユウキの意識が覚醒してから行動を共にするコッコロは、不満を隠そうともせずにユウキを咎めんとしていた。

 

 

「主さま、わたくしコッコロは、あなたさまのガイド役であり、従者でございます」

 

 

 

> どうして二回言ったの?

 

 

 

「どうやら主さまには、失礼ながらご理解いただけなかった様でしたので、念入りに強調しました」

 

 

言葉は申し訳なさそうにしているが、口調からして完全にディスっている。

言葉の意を汲めないユウキですらも、彼女が途徹もなく不機嫌であるというのが理解できるほどに。

 

 

 

> コッコロちゃんにはいつも助かっているよ?

 

 

 

「当然です。それがアメス様からのご宣託を受けたわたくしの役目ですので。…………しかし、ここ最近その役目が他の方に割りを食わされているのではないかと、わたくしの中で疑念が生まれました」

 

 

 

> …………?

 

 

 

流石にユウキもこれには首を傾げる。

つまりは、ユウキを導く役目を他の人がやっているという事なのだろうか?

 

 

「主さま、一昨日は何をされていましたか?」

 

 

 

> 一昨日? 剣の練習を実戦でやっていたかな。

 

 

 

「それはお一人でですか?」

 

 

 

> いいや、レイが一緒にいたけれど。

 

 

 

レイ――【トゥインクルウィッシュ】のギルドメンバーの一人。時折街に行っては彼女と会い、剣の指南を受けている。

ここ最近は実戦を交えて剣の練習を行っており、彼女には万一を備えて同行してもらっている。

 

 

「…………では、次の質問です。昨日は配達のお仕事をされていましたよね?」

 

 

コッコロの質問に対し、ユウキは素直に頷く。……コッコロの声と肩が僅かに震えていたのには、ユウキはちっとも気がつかなかった。

 

それよりも、ユウキはなぜコッコロが昨日の仕事内容を知っていたのだろうか頭に引っ掛かっていた。仕事に行ってくるとだけ断りを入れているが何をするかの具体的内容を話した覚えがないのだ。

 

……サレンちゃんやスズメちゃんには話したことがあるから、二人から聞いたのかな、とユウキは自問自答を終わらせた。

 

 

「どちらまで向かわれていたのですか?」

 

 

 

> エルフの森に配達に行った後、【牧場(エリザベスパーク)】に配達に行ったよ。あそこは往復で凄く時間がかかるから、いつも後回しにしちゃうんだ。

 

 

 

エルフの森への配達は、基本的に森の管理ギルド【フォレスティエ】が対応する。ギルドマスターのミサトとは配達の度に何度も顔を合わせるのだが、他の用事があるユウキを引き留めるような事はしない。

コッコロもそれはある程度理解しているので、後者の追及にかかったのだ。

 

 

「……存じております。ですがそれを加味しても、昨日は主さまのお帰りが遅かったのではないかと、わたくしは思っております」

 

 

昨日ユウキが救護院に戻ってきたのは陽が完全に落ちて少し経ってからの事だった。サレンに帰りが少し遅いと小言を言われていたのは、コッコロの記憶にも新しい。

 

それに対し、ユウキは少々遠慮がちに口を開いた。

 

 

 

> ……シオリちゃんが、オススメの本を紹介してくれて。仕事が終わったからお言葉に甘えました……。

 

 

 

シオリ――【自警団】から出向し、現在は【牧場】のメンバーとして常駐している少女。体が弱いため、常に【牧場】に住んでいる。たまにランドソルに降りてきては、本を買ってくる趣味があり、そのうちの一、二冊をユウキが借りて読んでいたのだ。

 

シオリは、最悪一日中部屋の中でずっといることもあるため、そのための気晴らしにも読書をしている。そんな彼女が読む本はどれも分厚く、まだ読み書きもたどたどしいユウキからすれば、一冊を読み終えるのにかなりの時間を要するほどだ。

 

…………さてここまで話すと、流石にユウキもコッコロの異変に気づく。頭を附せ、プルプルと分かりやすく震えている彼女は、最後の質問です、と口を開いた。

 

 

「今日、これから、どちらに向かわれるのですか?」

 

 

一語一語を強調して、コッコロは問いかける。

 

それに対し、ユウキは

 

 

 

> ……ミミちゃん達に勉強教えてあげるって誘われました。近々【ルーセント学院】で小テストがあるから、その対策に――

 

 

 

「――お誘いを受けたのですね?」

 

 

 

> …………はい。

 

 

 

【リトルリリカル】のギルドリーダー――ミミに小テストの話をすると、勉強を教えると誘われた。しかし、ユウキが現在通っている【ルーセント学院】のクラスには、ミサキのようなコッコロと同年代の子やスズナのようなユウキと同年代の人もいるため、ミミ達より少々学習内容のレベルが高い。

実際にテスト範囲をミミに見せたところ、涙目になった彼女は早急にキョウカを頼り、呆れ顔を浮かべられながらも、ユウキに協力することになった。

 

そこまで思い返すと、ユウキは急に顔が引っ張られる感覚に抗えず、体勢を崩しかける。顔を上げると、すぐ近くにコッコロの顔が。

 

 

「………………てですか」

 

 

 

> ……?

 

 

 

「どうしてまずわたくしを頼ってくれなかったのですか‼」

 

 

彼女の目には大粒の涙が浮かんでいた。しかし、なぜ泣きそうになっているのかが、ユウキには理解できない。

 

そのままコッコロはユウキをベッドへと押し倒し、雨霰のごとく口を開く。

 

 

「勉強ならわたくしが教えます! 読みたい本があるのならわたくしが買ってきます! 戦闘能力を身に付けたいのなら――わたくしの得物は槍ですが、立ち回りくらいなら教えられるはずです‼ そもそも主さまをお守りするのがわたくしの役目です、戦闘能力を身につける必要などありません! 勉強だってわたくしが教えますからわざわざ学院に通う必要などありません! 文字だってわたくしが教えます! 勉強も常識も戦闘も生活も記憶もお仕事も何もかもわたくしがお導きします‼ なのにどうしてわたくしを頼っていただけないのですか⁉ わたくしはそんなに頼りないですか⁉ ならばわたくしを罰してください、役に立たないこのコッコロを躾けてください、必要ないだなんて言わないでください‼ お願い、お願いだから……っ」

 

 

彼女はすがり付くようにユウキの胸に頭を埋め、ポロポロと涙を決壊させた。コッコロに、ユウキは何も言えなかった。

このまま時間が過ぎ去るかと思われたが、

 

 

「――ユウキさーん、出掛けるんでしたよね。どうかされましたか――ってええ⁉ な、何ですかこの状況は! 一体何があったんですか⁉」

 

 

中々降りてこないユウキの様子を見に来たスズメが、張り詰めた空気を断ち切ったのだった。

 

 

 

 

 

あの後、コッコロを宥めるのはスズメやアヤネ達に任せることになり、ユウキは約束通りミミ達のもとへと向かった。

その際出ていく前に、

 

 

「戻ったらちゃんとコッコロと話し合いなさい。明日までには仲直りすること。良いわね?」

 

 

サレンに軽く説教されたユウキだった。

 

 

 

その後、【サレンディア救護院】に戻ってきたユウキは、いち早くコッコロの部屋に向かい、もう一度話し合いたいとドアを叩く。

彼女は宥められた後、部屋から一切出てきていないらしい。

ユウキも呼び掛けてみるが、コッコロからの反応はない。

それでもユウキは諦めず、コッコロに呼び掛ける。

 

 

 

> もう一度、君と話し合いたい。

 

 

 

暫くの静寂の後、か細い声がドア越しに響く。

 

 

『……主さま』

 

 

コッコロはゆっくりと、言葉を続けた。

 

 

『スズメさまから注意を受けました……。従者たるもの、主の重荷にならないように、と』

 

 

スズメの目にも、コッコロの行き過ぎた献身は異常に見えていた様だ。同じく従者であるスズメは、ドジこそ多々あるものの、主であるサレンに迷惑が掛からないよう心がけているのだ。

故に、ユウキへ必要以上に世話をしようとするコッコロを見て、それ以上はユウキへの重荷になりかねない、と危機感を伝えたのだ。

 

コッコロは十一歳。他者との適切な距離を理解するにはまだ幼すぎる。しかし、アメスの宣託かあるいは何か別の衝動か、コッコロの行動理念は常に主のユウキを中心としている。

 

 

『わたくし、は……、主さまの頼れる存在でありたい、のです。……でも、あなたさまの、重荷になど、なりたくありません……っ』

 

 

 

> それは違うよ。

 

 

 

ユウキはいまだに人格の形成が未熟ではあるが、それでも、今こうしてユウキがここにいるのは、コッコロのおかげである、としっかりと理解できている。

ユウキを赤ちゃん、ペットと揶揄する者はいたが、それが何を意味するかはユウキが一番理解していた。

 

 

 

> 一番の重荷は、僕だった。コッコロちゃんじゃなくて、僕の方だよ。

 

 

 

「――それは違いますっ‼」

 

 

 

ドアが開き、ユウキの胸に素早くコッコロが飛び込んでくる。離さないように、逃がさないように彼を抱き締める。

 

 

「主さまが重荷であるなど、そう思うのはわたくしが未熟であるからです! わたくしが、あなたさまの……――⁉」

 

 

コッコロの言葉が止まったのは、ユウキが頭を撫でたからか。このままずっと撫でられそうな流れを察し、彼女は眉を少し吊り上げる。

 

 

「どうして頭を……。わたくしは、小さな子供じゃありませんっ」

 

 

 

> 僕だってそうだよ。……頭を撫でられるのは嫌じゃないけど。

 

 

 

彼はクスリと笑い、続ける。

 

 

 

> いつか記憶を全部取り戻して、今よりずっと強くなって、頭も良くなって。今度は君を、守ってみせる。コッコロちゃんに背負われるんじゃなくて、隣に立ちたいから。

 

 

 

「……わたくしだって、同じです。主さまに背負われて喜ぶほど、子供じゃありません」

 

 

数秒の間の後、二人は笑いあった。

 

 

 

 

 

余談だが、この一件の後一週間に一日だけ、「コッコロの日」なるものが設けられた。……設けたのはサレンだが。

 

サレンいわく、

 

 

「ちゃんと構ってあげないからこんなことが起きたのよ。大分大人びているけど、コッコロだってまだ子供なんだから。ちゃんと適切な距離を二人で学びなさい」

 

 

とのことである。

 

ちなみに、コッコロはこの事を知らない。

一週間に一日は必ず彼と一緒にいられるため、彼女の不満は少しずつ解消された。

 

 

 

しかし、コッコロがユウキとの適切な距離を学習し終えるのは遠い未来のお話である。




コッコロ
「プリンセスコネクト!Re:Dive」で初登場したメインヒロインの一人。ランドソルから遠く離れたエルフの森からユウキの従者として駆けつけた。
他の者からすれば、正体不明の存在「アメス」との交信を行っている。アメスから受けた宣託のままに、彼女はユウキの記憶探しを手伝う。
物静かで、世間知らずである。【サレンディア救護院】で仮住まいをする前はユウキと同じ部屋を借りて寝泊まりしたほどに。



コッコロの行き過ぎた献身は、キャラストーリーを見たときに「ん?」てなり、ヤンデレの風評を聞いたときに確信に変わりました。一体何が彼女をそうさせるのか……。
あと、これは持論ですが、コッコロもシズルもエリコも目のハイライト少ないんですよね……。そういうキャラデザなのかもしれないけど、この三人って、あっ……(察し)
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