メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~   作:上月 ネ子

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※注意!

今までスマホで更新していましたが、今回は諸事情によりPCから更新しております。
なので、一部フォントが今までと違っている可能性があります。
ご了承ください。


その二人、同じキミのムジナにつき

薄暗い森の中を歩く少女が一人。

彼女の名はエリコ。愛用の大きな斧を引きずって人の通らぬ道を躊躇いもなく歩いていく。

 

一見清楚な彼女だが、ランドソルでは知る人ぞ知る危険人物であり、『壊し屋(デストロイヤー)』という通り名がある用心棒でもある。

そんな恐ろしい一面を持つ少女が、憂鬱そうに溜息を一つ。

 

 

「はあ……、ミツキさんの人使いの荒さにも困りものです」

 

 

今朝の出来事を掻い摘んで思い出す。

唐突にミツキから「アシディーサ」という花を摘んできてほしいと頼まれ、それなりの報酬をちらつかされて受ける事にした。

エリコとしては、ミツキには普段から用心棒として雇ってくれたり、薬の調合を指南してくれたりと恩を感じてはいるのだが、こうも軽々しく顎で使われるのは辟易とする。

その上敵に回すのは得策ではないので下手な文句も言うべきではない。

 

ただ、それ自体はエリコはそこまで文句の言葉はない。が、

 

 

「本当なら今日はあのお方に会いに行くつもりだったのですが……」

 

 

エリコが口にする「あのお方」とは一人しかいない。

彼は最近病院で集中治療を受ける程の重傷を負っていたらしく、それを聴いたエリコは真っ先に面会しに行くつもりだった。

だが、足を運んだ時には既に沢山の羽虫(おんな)共が群がっており、病院でもありその場で事を起こすのは躊躇われた。

長い目で見て自分が勝利するためにその時は一歩引いて、確実に自分が勝てる場を作るべく、エリコはしばらくの間彼との接触は控えていた。

 

そして、準備が整ったと思った矢先にこれである。相手を立てる事に不満を抱かないエリコだが、いざ彼が絡むと狂いだすのがエリコの玉に瑕である。

 

 

「……まあ、言っても仕方がありません。引き受けた以上仕事は最後までやり抜くのが道理ですわ」

 

 

深い森をいつも通りの足取りで目的の花を探すエリコ。

その数十分後に、エリコの嗅覚が刺激臭を感知した。

 

 

「……これは」

 

 

開けた場所に出ると、そこには天然の花畑が広がっていた。

辺り一面、萌黄色の花で咲き乱れており、近づけば近づく程渦巻く刺激臭でエリコの顔を歪ませる。

 

 

「ミツキさんの情報通りですわね。これがアシディーサ……。なるほど確かに、こんなのを長時間嗅いでいたら気がおかしくなりそうですわ」

 

 

毒の類だろうか。

この臭いを嗅いでいるとほんの少し気分が悪い。

体に悪影響が出る前に数本摘んでいこう。

 

そう思いながら、エリコはアシディーサの花に手を伸ばして――

 

 

「――その花に触っちゃダメですッッ‼」

 

「――……ッ⁉」

 

 

後ろからの少女の絶叫にエリコの体は跳ね、

 

 

「……ひいいああぁぁぁっ⁉」

 

 

思わず片手間の斧を少女の首元に向ける。

向き合う事数秒、過剰なほど怯えた少女から悪意を一切感じないことを確認して、エリコは斧を下げた。

 

 

「…………ごめんなさい、敵だと思って思わず手荒な真似をしてしまいましたわ。怪我はしていませんか?」

 

「は、ははははははは、はいぃぃぃ…………」

 

 

涙目になりながらへたり、とその場に尻餅をつく少女――アオイは迂闊に声を掛けたのを激しく後悔するのだった。

 

 

 

 

 

「――腐食毒?」

 

 

聞き慣れない種類の毒にエリコは首を傾げる。

 

 

「は、はい……。あの花は、そういった物質を腐らせる毒を含んだ蜜を持っているんです。だから、虫や鳥も寄り付かないし、周りにあの花以外の植物も生えたりしないんです……」

 

 

アオイの解説に、エリコはアシディーサの花畑を見る。

危険だからと花畑から遠ざかり、その週域を改めて見ると、一面を見渡せられるような位置から既に植物は生えていない。

 

 

「では先程の臭いは……」

 

「気化した蜜の臭いですね。蜜程ではないですが、毒を含んでいます。長時間嗅いでいると命に係わります……」

 

 

なるほど、とエリコは頷く。

 

 

「しかし困りましたわね。あの花を摘んでくる仕事を頼まれたのですが」

 

「えっと、その……」

 

「……何ですか?」

 

 

口を開いては閉じるの繰り返し。

チラチラとエリコの顔を窺うように小さくなるアオイに、エリコは眉を顰める。

 

 

「言いたいことがあるのならはっきりと言いなさいな。そういう態度、私はあまり好きではありません」

 

「ふぇっ⁉ そ、そう、ですか……」

 

 

またしても涙目になりながら、アオイはおずおずと口を開く。

 

 

「え、えっと、アシディーサの花を、どうするつもりだったんですか?」

 

「先程も言いましたわ。それを摘んでくる仕事を受けていると」

 

「い、一体何のために……?」

 

「さあ?」

 

「ええっ⁉」

 

 

さして興味が無いように短く答えたエリコにアオイは困惑する。

 

 

「そういうのを詮索しないのは仕事のマナーだと思っていますので」

 

「で、でででででででもとっても危険なんですよ⁉ 【フォレスティエ】でも危険植物として管理すべきだって意見が出てるんですよ!」

 

「あら……、貴女【フォレスティエ】のギルドメンバーでしたのね」

 

 

どうしたものか、とエリコは思案する。

【フォレスティエ】は排他的な考えがあり、領域内を許可なく横行する事は許されない。

もしアシディーサの花畑が【フォレスティエ】の管理下にあるのなら、迂闊に手を出せば今後の活動に大きな支障が出てしまう。

 

 

「…………うぅ」

 

 

またしてもおどおどと小さくなり、どうするべきかとチラチラとエリコの顔を窺うアオイ。

 

 

「何ですか?」

 

「え、えっと、その、ほ、本当に、必要なんですか?」

 

「…………そうですわね」

 

 

わざわざ名前を出した以上、ミツキの研究に必要不可欠なものなのだろうとは思う。

が、彼女の性格を考えると趣味でそういった植物を集めているのかもしれないので、真意を誤魔化すために適当に頷く。

 

 

「だ、だったら、これを使ってください…………」

 

「これは?」

 

「ど、毒性の植物を採取するのに使う魔法の袋、です……。これがあれば、危険なものに触らずに袋の中に入れられます……」

 

「あら、良いんですの? かなり貴重なものだと思うのですが」

 

 

受け取りながらエリコは疑問を口にする。

 

 

「も、もう一つ、持ってます、から……」

 

「それに、【フォレスティエ】の許可なく摘んでいって問題ないのですか?」

 

「そ、それは……た、多分、大丈夫、だと、思います……。ま、まだ管理して、ないので……」

 

「ふうん……」

 

 

自分好みの返答にエリコは機嫌を良くする。

 

 

「ならばお言葉に甘えて、早速摘みに行ってきますわ」

 

 

エリコは軽い足取りで方向転換し、花畑に向かう……前に、

 

 

「アオイさんと言いましたか?」

 

「ふあああああああああっ⁉」

 

 

気を抜いたアオイは突然声を掛けられてビクリと跳ねる。

 

 

「貴女、かなり毒について詳しいんですのね。今度機会が合ったら私にご享受くださいな」

 

「は、ははははははい、機会があれば、ははははははっはは……」

 

 

今度こそエリコは花畑へと歩いていく。

 

 

 

 

 

「…………ふぁあああああああああああん、こわかったよぉ~~~~~~っ」

 

 

エリコが花畑に向かったのを確認してから、アオイは茂みの中に身を隠して悲鳴を上げる。

 

いきなり斧を首元に突きつけられて、射殺すような眼光で目を合わせてきて、堂々と話をしろと言われてアオイのメンタルは氾濫寸前だった。

間違いなくアオイにとって一番苦手なタイプの人間だったが、言葉の節々からはこちらを気遣うような雰囲気が感じられたので、悪人ではないのだろう。

 

 

「そういう意味では、ユウキさんにちょっと似てるのかな……」

 

 

 

> 呼んだ?

 

 

 

「ぷああああああああああっ‼」

 

 

アオイは飛び跳ねて茂みの中から飛び出してしまった。

 

 

「あ、あなたは我らがBB団の団長さん! どうしてここに?」

 

 

 

> 素材採取のお仕事。

 

 

 

「えっ、それって……」

 

 

先程花畑の方に向かったエリコと何か関係があるのか、そちらの方向に一瞥しながらアオイは首を傾げる。

 

 

 

> もう帰るところだけど、アオイは何してるの。

 

 

 

「あ、あの、一体何を採取して――」

 

「その声はユウキ様! ああ、こんなところで会えるなんて、やはり私とあなた様は結ばれる運命にあるのですわ!」

 

「ひゃああっ⁉」

 

 

採取が終わったのか、エリコが花畑から戻ってくると、ユウキの顔を見つけてこちらに駆け寄ってくる。

そして、アオイはユウキと一緒にいる時の癖で、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ああ、ユウキ様! 入院されていたと聞いたときはこのエリコもわが身の様に心配して――」

 

 

空気が止まった。

エリコの言葉も止まった。

代わりにこの場の気温が死んだように下がり始めた。

 

 

アナタ……何を……しているの……かしら……?

 

「――――――――――――――――」

 

 

斧を向けられた時が可愛いと思えるくらいの鈍重な殺気を向けられ、アオイは白目をむいて固まってしまった。

 

 

貴女、いったいだれに密着しているのか理解できているのかしら、この羽虫が……

 

「――ぁぁ――――――――ぁ――――――」

 

 

アオイは動けず、ユウキの後ろでプルプルと怯えるだけ。

それがさらにエリコの逆鱗に触れ、ついにエリコは斧を振りかぶり、

 

 

 

> 落ち着いて。

 

 

 

間に挟まるユウキに諫められる。

 

 

「……っ、あなた様は私よりも、その女を庇うんですの⁉ 私よりもその女が良いと⁉」

 

 

 

> アオイは人見知りが激しい。手加減してあげて。

 

 

 

「人見知り?」

 

 

思い当たる節はある、とエリコはさっきまでのアオイとのやり取りを思い返す。

 

何もしていないのに怯えるような態度に、堂々と言いたいことが言えない気の小ささ。

確かに人見知りと言えばそれまでだが、エリコは同時にある真実に気づいてしまった。

アオイが人見知りであることを前提として、何故ユウキと距離がこんなに近いのか。

記憶喪失の人間族(ヒューマン)のユウキと、【フォレスティエ】に所属するエルフ族のアオイ。接点などあるはずがない。

ならばなぜ?

 

 

「ふ、フフフフフ、そういう事ですか……」

 

 

突然笑い出し、アオイは涙を流しながらユウキにしがみつく。

 

 

「貴女は私と同じ、という事ですわね」

 

「ふぇ……?」

 

「そうだアオイさん、先程機会があれば毒の指南を受けたいと私言いましたわね?」

 

 

エリコはその場から去りながらアオイに一言呟いた。

 

 

その機会、絶対に作ってみせますので、楽しみに待っていてくださいな

 

 

……その日から、アオイは大きな斧を振り回す小柄な鬼に追いかけられる悪夢を見るようになった。




エリコ
前作「プリンセスコネクト!」より続けて登場する、ユウキへの愛に狂った少女。小柄な体と同じくらいの大きな斧を軽々と振り回す様はまさに鬼神である。
ランドソルでは「壊し屋」という通り名で知られている危険人物という扱いを受けている。用心棒の仕事を引き受けることがあり、その斧の錆になった者も少なくない。
自身を助けてくれたユウキに運命を感じており、以降「運命の赤い糸で結ばれた殿方」と思い込んで篭絡するために少々危険な手段を使う。実は少しドジっ子。



というわけで、主人公にひたすら一途なだけのエリコでした。(語弊)
プリコネの危険人物筆頭、なんて誤解を受けていますが、エリコはプリコネキャラの中でも割と常識人です。ツッコミもしますし、仲間意識も強いですし、子供にも優しいです。
ただ主人公が絡むと常識がぶっ飛んでしまうだけなんです。

さて、ドSの次はドМですね。(風評被害)

以下のキャラの中で誰を優先的にお話しを書いて欲しい?

  • アヤネ
  • カスミ
  • シノブ
  • ニノン
  • ミソギ
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