メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~   作:上月 ネ子

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何だかプリコネのメインストーリーが私好みの超展開になってきたのでモチベーションが上がってきました。


キミと不確かな未来には探偵を有効活用できない

ランドソルでは日夜大なり小なり事件が発生する。

時に区画一つが魔物の驚異にさらされるようなことが起きたり。

時に喫茶店のプリンが横から掻っ攫われたり。

 

そう、これから語られる事件も、それらの中の一つとして語られるのである――

 

 

 

 

 

「街道で何かが蠢いている?」

 

 

ここ数日のランドソルで噂になっていることをユウキから聞いたカスミは事件の臭いがすると感じ、耳を傾ける。

 

 

「何かというのは、魔物の類……ではなさそうだね」

 

 

ユウキの反応からしてそうではないと確信する。

魔物の仕業であればマコトやカオリが出張れば良いだけだからだ。

 

ユウキの証言をまとめるとこうなる。

 

街道の景色が歪んでいるように見えて、足を踏み入れると気がついたら全く別の場所に辿り着いてしまうという怪現象である。

 

ユウキも先程まで配達の仕事をしていたが、今日は特に向かう用事もないのにエルフの森にいきなり立ち入ってしまい、何がなんだかと困惑してしまった。

 

 

「なるほど、面白い! そういった怪現象の謎を解き明かしてこその探偵というものだ。早速現場に急行しよう!」

 

 

 

 

 

「これは……想像以上だね……」

 

 

街道に出た二人。

目の前に起きている光景を見てカスミは絞り出すように呟く。

 

まるで海が荒れているように景色がはっきりとしない。ぐにゃりと道が上下左右に歪み、草木もゴムのように伸びてゆらゆらと揺れている。

 

ずっと見ていると眩暈を起こしそうだ。

 

 

「虎穴に入らずんば虎子を得ず……ここは……っ」

 

 

 

> 何をするつもり?

 

 

 

「決まっているだろう――飛び込むのさ、あれに!」

 

 

駆け出すカスミをギリギリで止める。

 

 

「ちょ、何処を掴んでるんだい助手くん⁉」

 

 

 

> 危なすぎる。僕も一緒に行く。

 

 

 

ユウキはカスミの手を握る。

これなら逸れない、とサムズアップする。

 

 

「む、むぅ……少々近すぎる気が……。い、いやそんな事を言っている場合ではないか。分かったよ助手くん」

 

 

コホン、とカスミは一息ついて、

 

 

「いいかい、3、2、1の合図でアレに飛び込むよ。準備はいいかい?」

 

 

ユウキは大きく頷いて、一歩目を少し前に出す。

 

 

「それじゃあ、……3、2、1!」

 

 

二人は駆け出して、歪みの中に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

頭が酩酊感を訴えながら、ゆっくりとカスミは頭を上げる。

カスミが目を覚ました時に見たのは、既に使われなくなったであろう古い城だった。

至る所に小さなヒビがあり、窓も割れていてとても人が快適に住めるような場所ではない。

 

さて、ここはアストライア大陸のどのあたりだったかと腕を組んで、カスミはある事に気づく。

 

 

「……あれ、助手くん?」

 

 

手を握っていた筈のユウキの姿がない。

眩暈がしていたので何らかの影響で手を離してしまったのかもしれない。

 

 

「やはりただの自然現象ではないか……。では何か外部からの作用で……?」

 

「……おぬし、人の居城の前で何をしておる?」

 

「…………ッ!?」

 

 

ビクリと跳ねて、カスミは飛び退く。

赤と白のレオタードをまとい、こちらを見上げる赤い目の少女は鋭い目つきで口を開く。

 

 

「獣人族か……。しかし、ここまで近づくまで気づかなんだとは、何やら事情がありそうじゃのう」

 

「き、君は……?」

 

「わらわはイリヤ・オーンスタイン! 太古より目覚めし吸血鬼じゃ! ククク、わらわが恐ろしいか?」

 

 

喉を鳴らして笑うイリヤに対し、カスミは首を傾げる。

イリヤ、イリヤ……何処かで聞いたような?

 

 

「……ああ、思い出した。前に【自警団】のギルドハウスに遊びに来たイリヤって、君のことかい」

 

「【自警団】じゃと? 何じゃ、おぬしマホとカオリの戦友か。それならそうと早う言わんか。どれ、わらわがもてなしてくれるわ」

 

 

イリヤは背を向けて廃城に戻っていく。そして顔だけ振り返って目で合図する。

招待されたのだと理解したカスミは後をついていく。

 

中は案の定と言うべきか、ボロボロで城としての威厳を全く感じない。

そこで客間らしい部屋に案内されそれなりに大きい椅子に腰掛けたイリヤ。適当に向かい合うように椅子に座るカスミを見てイリヤは口を開く。

 

 

「すまんのう。今は皆出払っておってな。茶菓子は出てこんと思うてくれ」

 

「別にたかりに来たわけじゃないから安心してほしい……。私としても、ここに来たのはアクシデントのようなものだしね」

 

「あくしでんと? ……ふむ、話が見えんが、それはおぬしにこびりついた魔力の残滓と関係あるのかのう?」

 

「魔力の残滓? 何か解るのかい?」

 

「魔力、というよりは霊に近い匂いじゃがのう。……そういえばしばらく前にけったいな精霊が暴れておったようじゃが、それによく似とる」

 

「精霊か……。参ったな、専門外だ。助手くんの人脈なら精霊魔法に詳しい人とかいるだろうが……」

 

「ふむ? まあ事情は知らぬが、手を貸してやろう。精霊だか魔物だか知らんが、わらわの与り知らぬところで暗躍など許せぬわ」

 

 

スッと立ち上がり何処からか武器を取り出すイリヤ。武器とにらめっこして顔を顰めているがやがて諦めたように首を振った。

 

 

「やはり眷族の力が無ければ満足に戦えそうもないか……」

 

「戦闘か……。助手くんと逸れたのはつくづく痛いな……。彼の力があれば戦力も上がるだろうに……」

 

「「…………?」」

 

 

お互いに呟いた言葉を聞いて、何かしらの引っ掛かりを覚えるのだった。

 

 

 

 

 

「ところで、精霊と言ったけど、空間を捻じ曲げる力を持った精霊なんているのかい?」

 

「以前ランドソルで暴れとったフォギーという精霊は他者から時間を奪い取っていたらしいの。それくらい規格外な力を持った精霊が他にもおるという事じゃの」

 

「時間を奪う……」

 

 

廃城を後にして、イリヤの先導で空間の精霊を探すカスミ。

 

カスミは出会ったとしてどうするべきかを思案する。

自身に精霊を使役するような力はない。

あくまで探偵の役割は真実を探求し、解明すること。

 

【自警団】に身を置かせてもらっているが、荒事は得意ではないので他の専門家に任せるしかないのだ。

 

 

「――見えてきたぞ」

 

「……っ」

 

 

イリヤは大鎌でそれを指す。

 

そこには何もない。

より厳密に言えば、空間の歪みが特に酷いだけで、その中に何者かがいるようには見えない。

 

 

「…………まさか、空間の歪みそのものが、()()だとでも言うのか!?」

 

「違いない。精霊の核とでも言うべきか……霊力の塊みたいな香りがあれの中から強く感じる」

 

 

冷静に判断したあと、イリヤは忌々しく舌打ちをする。

 

 

「フォギーもそうだったようじゃが、あれが精霊じゃと? とんでもないわ、同じ魔の者として言わせてもらえば、あれはもはや魔物じゃ」

 

「……同じ魔の者、ってそういえばさっきも妙な……」

 

「――その人の言うとおりです」

 

 

明後日の方向から第三者の声が聞こえ、二人は身構える。

 

現れたのは、マイクの様な長い杖を構える翠の少女――チカだった。

 

 

「君は、カルミナの……!」

 

 

 

> ……ようやく合流できた。

 

 

 

「助手くん!?」

 

「眷族!?」

 

 

チカの影から出てきたのはカスミとはぐれてしまったユウキ。

 

あのあとユウキは海辺に放り出され、魔物に追われながらもランドソルを目指していると、偶然チカと出合い、空間の精霊という存在が現れてしまったことを知る。

 

 

「まさかランドソルに現れるなんて……空間の精霊……キリン」

 

「キリン……それがやつの名前……」

 

 

ユウキは剣を構え、強化の力を放つ。

 

 

「よし、久々に来たのじゃ――おおおッ!」

 

 

強化の力を受けて、イリヤの姿は光に包まれる。

その姿は先程までとは大きく異なり、背が高く、スタイルも抜群な妙齢の女性へと変貌した。

 

 

「な、なあっ⁉ ど、どういう原理でそうなったんだい!」

 

「い、今は後にしましょう! 来ます!」

 

 

チカは精霊の唄で精霊を唱喚し、押し寄せてくる歪みをせき止める。

 

しかし、押し返されるのか、その歪みに精霊が飲み込まれようとする。

 

 

「なるほどのぅ……核はそこか!」

 

 

イリヤは素早く魔法を展開し、歪みに向けて魔力を放つ。

 

歪みはピタリと止まり、ガラスが割れるように歪みにヒビが入る。

それはバキバキと音を立てていき、最後には大きな破裂音を立てて、その姿を表した。

 

獣のような四足歩行に、額から天に伸びる長い二本の角。ユニコーンを連想させる魔物のような霊体だった。

 

 

「これが、キリン……」

 

「さて、こいつをどうするか……」

 

「精霊は完全に倒すことは不可能です。無力化して精霊界に送り返すしかありません」

 

 

キリンはいななき、二本の角を突き出して突進してくる。

 

 

「では、動きを止めてみようか――!」

 

 

キリンを囲うように檻のような光が顕現する。

光りに包まれたキリンは目に見えて動きが鈍り、力が抜けていくように膝を折る。

 

 

「ふふ、クリミナルプリズンの前には、逃げ場は無いよ!」

 

「チャンスです! 私が精霊界へのゲートを開きます。その間に、誰か強力な一撃を……!」

 

「ふっ、ならばわらわが引き受けよう」

 

 

イリヤは一歩前に出て、大鎌を振り上げ、魔力を放出する。

放出する魔力は大鎌に収束し、次第に赤黒い魔力の奔流へと変わる。

 

 

「恐怖しろ――」

 

 

飛び掛かり、その奔流をキリンへとぶつける――

 

 

ヴァーミリオンバイトッ‼

 

 

赤黒い光が辺りを包み込み、力尽きたキリンは静かにその場から消え去った。

 

 

 

 

 

戦いを終えて、イリヤの廃城へ戻ってきた一行。

 

 

「――それにしても、助手くんがカルミナのアイドルと知り合いだったとは……」

 

「かるみな、というと、アカリから聞いた事あるのぅ。ランドソルで有名なあいどる、だとか。不思議な縁もあるものじゃ」

 

「一番の不思議が何を言っているんだい、イリヤさん……」

 

「本当ですね。さっきまでの姿は一体……」

 

 

ソファにどっしりと座っているイリヤはユウキの強化が抜けたのか、子供の姿に戻ってしまっている。

 

 

「……まあ、それよりもキリンの事です。まさか、またあんな強力な精霊が、人が立ち入れる場所に現れるなんて……」

 

「どういうことだい?」

 

「精霊というのは本来、人が滅多に立ち入ることが出来ない場所に居るんです。強大な精霊なら尚の事。それがこんな短い期間に、二体も現れるなんて……何かの予兆としか思えないんです」

 

「予兆……論理的根拠は感じないが、本職がそう言うのなら、可能性はあるのかもしれないね」

 

 

予兆と言えば、とカスミは思案する。

 

助手たるユウキの人間関係は本当に広く、そして深い。

チカのような唱喚士や、イリヤのような本物の吸血鬼疑惑のある人物。

果ては王宮騎士とも面識があるかも、という噂もある。

 

 

(まるでこれから誰かと戦いに行くかのような面子だね……)

 

 

考えすぎか、とカスミは自嘲する。

 

 

 

 

 

なお、今回の事件は根本的には何も解決していない事をカスミは終ぞ見抜くことは出来なかった。

 

今回の事件が尾を引き、後の事件に間接的に関わっていることを、後のユウキは知ることになる。




カスミ
前作「プリンセスコネクト!」より続けて登場する、推理が大好きな名探偵獣人。ルーペのような形状のステッキは探偵の必需品であり、彼女のお気に入りである。
元々は根無し草だった様だが、マホが立ち上げた【自警団】に見を置き、時折探偵の仕事として事件を推理し、犯人を捕縛して【自警団】の一員として戦う。
推理モノの小説がお気に入りで、彼女の口調は小説から影響を受けている。実際の性格はあまり自分に自信がなく、何でもかんでも推理したがるだけの普通の少女である。



もう少し早めに投稿しようかなとも思いましたが、メインストーリーがそろそろ更新されると思い、見終わってから書き始めました。

実際それは正解で、おかげでこの作品の今後の方向性がある程度決まりました。

そしてなんともまあ考察しがいのあるストーリー展開になったので、ここで自分の考察を整理するべく書き連ねようかと思いましたが、確実に長くなるので活動報告の方に纏めるつもりです。
興味のある方はご覧ください。

以下のキャラの中で誰を優先して書いてほしい?

  • アキノ
  • スズナ
  • チカ
  • ミサト
  • ミミ
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