メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~   作:上月 ネ子

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この話は中編です。
前編から読み始めることを推奨します。


もう一度、キミが始める物語(中編)

アヤネの捜索を本格的に始めたユウキ。

協力者としてカスミ、同行者としてミソギとぷうきちを交えて【牧場】を目指す。

 

 

「それにしても驚いたね。本当にぬいぐるみが喋るとは」

 

『あんたは……オレのこえ、聞こえるのか……?』

 

「微かに、だけれどね」

 

 

サレンの話では既にぷうきちの声が聞こえないという者もいるようだ。

このままではぷうきちの声を誰も聞くことが出来なくなってしまう。

それを防ぐためにもアヤネを見つけ出さなければ。

 

 

「ぷうきち、ふだんはもっとお喋りなんだよ。なのに、すっごく苦しそう……」

 

『くるしい、って……いうか、力がぜんぜん、でないだけ、だ……』

 

「どちらにせよ長くは保たなそうだね」

 

 

山を登り始めて数刻、【牧場】の柵が見え始めてきた頃。

ユウキ達は猫背で歩き回っている少女を見つけた。

 

 

 

> リン!

 

 

 

「……うあっ! びっくりした……」

 

 

ビクリと跳ねて少女――リンは槍を杖代わりに体を傾け、ユウキ達を捉える。

 

 

「ユウキ……なんか忘れ物でもしたの?」

 

「やあ、リンさん久しぶりだね。突然で悪いけれど……」

 

 

カスミはリンにここまでの経緯を話し、アヤネが来ていないかを尋ねる。

リンは面倒くさそうに顔を険しくして、

 

 

「冗談でしょ……? この前シャドウが現れたばかりだよ? 迷子になったとしてもこんな所にまで来ないと思うけどなぁ」

 

「そうは言うが、今のアヤネさんは精神が不安定な状態だ。当て所なくあちこち走り回っていても不思議ではない」

 

「……少なくとも【牧場】には来てないけど」

 

 

キョロキョロとリンは辺りを見渡す。

数日前はシャドウは山道に現れ、何体かはここまで来ていたようだが、リマとシオリがあっさりと撃破し、ユウキへ救援を行っていた。

 

 

「……とはいえ、あくまでこの辺りでの話になるから、それこそエルフの森方面とかだとちょっと管轄外かな」

 

「エルフの森って、ミサトせんせーのところかな? だったらキョウカが見つけてくれそうだけど……」

 

「エルフの森方面にはしおりんも見回りに向かってるから、戻ってきたら聞いてみよっか」

 

「それにしても貴女も見回りをしているんだね。マコトさんの話では、筋金入りの引きこもりだと……」

 

「…………仕方ないじゃん。あんなことあったばかりなんだからさ。自分の目で安全が確認できないと安心してぐうたら出来ないじゃん」

 

 

ぶっきらぼうに答えるリンは背を向けてギルドハウスへ向かっていく。

ギルドハウスではマヒル、リマ、シオリが集まっており、彼女たちはリンが連れてきたユウキを見て三者三様に驚く。

 

 

「あれ、あんちゃんと【自警団】の子だべ! どうかしたか?」

 

「しおりん、お客さんだよ」

 

「え、私に……ですか?」

 

 

シオリはエルフの森方面でアヤネを見かけていないか尋ねられ、首を傾げる。

 

 

「……ごめんなさい、そんな特徴の子は私は見かけてないです」

 

「そうか……」

 

「それに、向こうには【フォレスティエ】のミサト先生やお姉ちゃんがいます。見かけない子がいたら、最寄りのここに連絡を入れてくれます」

 

『その、連絡が……ないって、ことは……アヤネがいない、って……ことか……』

 

「ぷ、ぷうきち君⁉ どうしたの、声に力がないわよ?」

 

 

かすれたぷうきちの声が届いたリマは声を上げてぷうきちの顔を覗き込む。

ちなみにマヒルとシオリは聞こえていないのかリマの態度に首を傾げる。

 

 

『久しぶり、だな……このあいだは、アヤネを、助けてくれて……ありがとな……』

 

「……もしかして、アヤネちゃんがいなくなったのと何か関係があるの?」

 

『たぶん……な。……いま、アヤネは……ひとりぼっち、だから……早く、見つけないと……』

 

 

気丈に振る舞うが、ここまで一緒に来たユウキ達は、その声がどんどん弱々しくなっていくのが分かる。

 

 

「……はやくアヤネを見つけないとっ」

 

「確かに、これ以上時間をかけるのは得策ではないな。ここにいない以上、もしかしたら中腹の森で迷子になっている可能性もある。引き返したほうがいいかもしれないな」

 

「だったら私も――」

 

「待った。森の先導ならあたしがやるよ。リマはまっひーと一緒にここで待ってて」

 

「えっ?」

 

「リンリンどうした? 自分から名乗りを上げるなんて珍しいべ」

 

 

リマがついていく素振りを見せたのを、リンが待ったをかける。

 

 

「……単純に時間の問題だよ。あたし、これでもレンジャーの才能を認められて【自警団】に入ったんだよ。森の歩き方ならリマより得意な自信はあるよ。……それに、ミイラ取りがミイラになるのも寝覚めが悪いしね」

 

「リンちゃん……!」

 

「私は【フォレスティエ】に行ってアヤネちゃんについて聞きに行ってきます。マヒルさんとリマさんは入れ違いにならないようにここで待っててください」

 

「了解だべ! そっちは任せたどシオシオ!」

 

「……助かるよ」

 

「ありがとうねえちゃんたち‼」

 

 

かくしてアヤネの捜索にリンも加わり、一行は中腹まで下りて森へと入っていった。

 

 

 

 

 

森へと入ってから十数分経ち、一行はのらりくらりと茂みを躱しながら進んでいくリンの後を追っていく。

 

 

「ねぇねぇ、レンジャーってそんなにすごいの?」

 

「そりゃあね。覚えることとか沢山あるし、目と耳と鼻と直感が頼りだよ。……まあ、お母さんにこれでもかと叩き込まれたけどね」

 

「なんにせよ頼もしい限りだ。……それにしても視界が悪い。中々痕跡が見つからないね」

 

「…………、そうでもないよ」

 

 

リンは立ち止まり、地面のそれを槍で指す。

そこには、新しくついたであろう足跡が。

 

 

「この足跡、アヤネってこのだと思う?」

 

「……いや、これは――」

 

「ううん、違うよ。アヤネの靴はもう少しちっちゃいよ」

 

 

先にミソギに言われてしまい、言葉が詰まってしまったカスミ。

探偵の面目躍如のため、一つ咳払いをしてその足跡から情報を分析する。

 

 

「足跡はまだ新しい。それに、足跡の形は革靴によくあるタイプだね。……少なくとも登山に適した靴じゃない。不自然すぎる」

 

「だね。…………ん?」

 

「……これは」

 

 

急にカスミとリンは口を閉じ、スンスンと鼻を鳴らす。

 

 

 

> どうしたの?

 

 

 

「いや、なんか急に香ばしい匂いがして……この足跡の方向かな?」

 

「ああ、間違いない。微かににんにくの匂いがする……これは、ラーメン?」

 

「え? ラーメン?? なんで?」

 

 

こんなところでラーメン屋でもあるのかとミソギは首を傾げるが、すぐにありえないと首を振る。

 

 

「なんか……変だよね、それ?」

 

「ああ、全くもって。……リンさん、どうする?」

 

「決まってるでしょ。誰だろうと、人がいるなら確認しなきゃ」

 

 

再びリンの先導で茂みをかき分けながら進んでいく。

歩いてから数分後、その異常な匂いが進行方向から漂ってくるのをユウキとミソギも認識する。

 

リンから息を潜めるように言われ、その匂いの元にゆっくりと近づいていく。

最後の茂みを越えると――

 

 

「……〜♪ ………………えっ?」

 

 

ツルツルと、岩場に座ってラーメンを食べる少女がいた。

少女はラーメンを啜ったあと、見られているのに気づき、呆けた顔をユウキ達に向ける。

 

 

「えっと、みなさんもハイキングですか?」

 

「はっ? ハイキング?」

 

「はい。わたしも見ての通りハイキングの真っ最中でして♪」

 

「見ての通り、って言われても……」

 

 

カスミは少女の格好を一瞥する。

 

薄着だし、しかもミニスカート。

荷物だって少ない。

何より彼女が履いている靴がショートブーツであり、先程の足跡とほぼ一致するだろう事が見て取れる。

あまつさえ、この辺りの景観は控えめに行って最悪。ハイキングなら山頂を目指すだろうが、何故こんな場所に……?

 

 

「何もかもが怪しすぎる……っ」

 

「あ、怪しいっ? えっ、わたし何か疑われてるんですか?」

 

「え〜〜っと……ひとまず質問してもいい?」

 

 

リンはひとまずこの怪しい少女が目撃者であることに一縷の望みをかけて、アヤネについて聞いてみる。

 

 

「……う〜ん、赤いツインテールに、赤いドレス……。ごめんなさい、ここに来るまでは見ていないですね……」

 

「ねえちゃんはなんでここでラーメン食べてたの?」

 

「それはラーメンが大好物だからですよ♪ ラーメンって一括でいっても色々ありますよ。醤油、塩、味噌、豚骨、担々麺。そういえばオーエドではつけ麺なんてのもあるらしいですね。()は結局食べ損ねちゃいましたし、次に行く時は食べてみたいですね♪」

 

 

 

> ラーメン食べたくなってきた。

 

 

 

「助手くん……話がどんどん逸れていってるよ」

 

 

ため息をついて呆れるカスミは少女を軽く睨みつける。

わざとかどうかは定かではないが、こちらが聞きたいことをのらりくらりと躱されているような気がしてくる。

 

今度こそ追及しようとして、

 

 

「あれ、あそこに見えるのって、もしかしてさっき話してたアヤネさんって子ですか?」

 

「えっ」

 

 

少女が指差す先には、暗がりではっきりとしないが、赤いツインテールが揺れて見える。

間違いない、アヤネの特徴である。

 

 

 

> アヤネちゃん!

 

 

 

「アヤネーーーッ‼」

 

 

有無を言わさずユウキとミソギは走り出す。

 

 

「ちょっとふたりとも! 視界の悪い環境でいきなり走り出すのは危ないって!」

 

 

二人を先行させるわけにはいかないと、リンも走り出す。

 

 

「……〜〜〜〜っ! ……待ってくれたまえ‼」

 

 

怪しい少女を問いただしたい気持ちをぐっと抑え、カスミもユウキ達を追う。

 

少女はユウキ達を無言で見送ったあと、ラーメンに手を付ける。

食べ終わった頃に、

 

 

―――――♪―――♫―――♪――

 

 

あの歌が聞こえてきた。

少女がそれを耳にしたとき、嬉しそうに、懐かしそうに、寂しそうに微笑む。

 

 

「今日はこの辺りで歌ってるんですね……」

 

 

少女は岩場から腰を上げ、パンパンとスカートの埃を払う。

そして今一度ユウキ達が走り去った先を見て、呟く。

 

 

 

「騎士さんも大変そうですねぇ……★」




リン
前作「プリンセスコネクト!」に続けて登場する、ぐうたらなリスの獣人族。面倒くさがりなりに、味方への支援と敵の妨害を使い分けて戦う。
元々は【自警団】の所属だが、【牧場】に出向して警備の仕事をすることになる。が、平和なのをいい事に警備の仕事をシオリやリマに押し付けてギルドハウスに引きこもる。
どんぐりとあんぱんが大好物で、よく通販で【牧場】に取り寄せるほど。レンジャーとしての才能があるようだが、非常事態以外で発揮されることは早々ない。



何とか今日中に間に合った!
明日も投稿する予定です。
さて、最後に登場した少女の正体とは?
……まあ、名前を伏せてるだけで正体を隠してるつもりはありませんが。

以下のキャラの中で誰を優先して書いてほしい?

  • アユミ
  • イリヤ
  • スズメ
  • マホ
  • ルカ
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