メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~   作:上月 ネ子

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4周年までもう秒読み!

このSSもそろそろ佳境に突入させたいので頑張っていきます!


キミが寝ても覚めても、ページは捲られ続ける

小さな森の中、鋭く空を切る音が連鎖する。

細剣を素早く振るい、機敏に足を運ばせる少女――レイ。

 

日課の素振りを終えて、はあ、とため息をつく。

 

 

「いまいち物足りないな……」

 

 

ボソリと出た言葉はほのかな不満。

レイは日課の成果を確かめるために魔物と戦うことがあるが、最近ではその魔物を全く見かけない。

弱いスライムすら見かけないほどだ。

 

 

「シャドウとも戦ったが、あまり達成感もなかったし……」

 

 

ここ連日ではシャドウが大量発生する異変が相次いでいる。

レイ擁する【トゥインクルウィッシュ】もシャドウを掃討するべく戦いに出向いたが、その時に幸か不幸か自身のシャドウと相対する機会があった。

しかし、自身と瓜二つの怪異と切り結んだ感想は「不気味」の一言。

剣を振るった余韻など何もなく、ただただ気味が悪い後味しかなかった。

 

 

「ギルド管理協会は結局、原因となっているものを見つけられていない様だし……」

 

 

シャドウが大量発生するその背景にはいつも謎の歌が聞こえてくるらしいが、その歌の主は未だに見つかっていない。

【王宮騎士団】もこの異変について、あまり人員を割いていないという噂も出ている。

現在のランドソルの情勢はあまりにも不安定だ。

 

 

「それもこれも、前国王から王位を継いだというユースティアナという方が王になってからだな……」

 

 

知り合いの剣士からユースティアナに関する黒い噂を聞いたことがある。

いわく、ランドソルの王族なのに獣人族。

いわく、彼の者が王位を継いでから獣人族との軋轢が強くなった。

いわく、問題行動を起こした【王宮騎士団】の副団長を野放しにしている。

などなど、かのユースティアナが王位を継いで以降、ランドソルの情勢が大きく傾いたように思える。

 

これから先、ランドソルはどうなっていくのだろう。

再びレイはため息をつく。

 

その時ガサガサ、と茂みが揺れる音が聴こえ、レイは臨戦態勢を取る。

魔物がいなくなったと聞いたが、よもや何処かに潜伏していたのだろうか。

警戒心を強めると、

 

 

「――……おかしいですわね。一向にランドソルに近づいた気がしませんわ」

 

「はっ?」

 

 

茂みを掻き分けて出てきたのは、燃えるような赤髪の少女だった。

 

 

 

 

 

「――それでこう言ってきたんですの。『世の中金ほどあって困ることはありません。金があれば人は集まり、金を使えば時が早まる。そのタイミングを見極めてこそ一流の商人ですわ』って! 全く嘆かわしい方でしたわ‼」

 

「そ、それはそれは……」

 

 

小さな森を抜けてレイとアキノはランドソルの帰路につく。

現在レイはアキノから最近の商談で起きた出来事を聴いている。

 

 

「商人にとって重要なのはお金よりも信頼ですわ。もちろんお金も必要ですが、信頼でお金は勝ち取れてもその逆はありえませんのよ。あのクレジッタ・キャッシュという方は根本的な勘違いをしていますわ!」

 

 

もっとも、商談の出来事というよりはクレジッタとやらに対する愚痴のように聞こえてしまうが。

 

 

「……はっ! わたくしとしたことが、愚痴っぽくなってしまいましたわ。申し訳ございません」

 

「いや、気にしていないよ。苦労しているようだね」

 

 

レイは苦笑いを浮かべながらアキノを労う。

 

そもそもどうしてこんな話をしているのか。

かのウィスタリア家の令嬢であるアキノとこうして出会えたことは、貴族の世界から一歩引いているレイにとってまたとない機会だった。

 

同じ貴族令嬢として自分と彼女は何が違うのか。

逃げた自分では出来ないことを成し遂げられるであろうアキノを見て、少しは自身を顧みてもいいかもしれない、と思ったレイだった。

 

 

「しかし驚いたね。名門財閥たるウィスタリアのお嬢様も、ままならない人生に悩んでいるとはね」

 

「お恥ずかしいことですが、わたくしはまだ家を継ぐには世間知らずのようですから。商談もたくさん経験して、武者修行もして、そうして一人前の人間となったとき。わたくしは初めてアキノ・ウィスタリアとして胸を張れると思っております」

 

「……前向きだね。私には無いものだ」

 

 

またしてもため息をつくレイ。

 

 

「……そういえば、あなたの顔をどこかで見たような気がするのですが……」

 

「…………」

 

「確か、しばらく前に商談でお会いした方のご令嬢の似顔絵を見せていただいたのですが、あなたによく似ていたような……」

 

「……全く、よもや仕事に私情を挟むとはね」

 

 

その似顔絵を見せてきた人物が誰なのか容易に想像でき、レイは呆れてものも言えなくなる。

 

 

「おそらく私の父だろう。お恥ずかしながら、家出中の身でね」

 

「まあっ! それはまた……」

 

「軽蔑したかな? 貴女からすれば、貴族の義務から逃げ出した最低な貴族令嬢だろうしね」

 

「い、いえ……。ですが、何故そのような?」

 

「あの家には、私に一切の自由が無いからだ」

 

 

吐き捨てるようにレイは続ける。

 

 

「子供の頃に貴族の嗜みとして習い事を受けた。剣術と馬術。だが、時が経ってもそれが生かされる場面などなかった。こうして家出するまではね。そして成長してからは沢山社交界に連れ出された。……吐き気がしたよ。あそこには頭に欲望しかない連中しかいない。みんな私を見ているようで、父しか見えていないんだ」

 

「…………」

 

「あのままあの家にいたら、私は壊れて父の操り人形になっていたかもしれない。言いなりのままでいたら、きっと今頃【聖テレサ女学院】にでも通わされていたんじゃないかな。あそこはランドソル中の貴族令嬢が通っている閉鎖的な学院で有名だ。世間をよく知りもしない、籠の中の鳥になっていたかもしれない」

 

「…………」

 

「私は実家に対して、なんの誇りも感じない。私が家の操り人形になることを、父が望んでさえいるように感じる。……私は、貴女のようにはなれないよ」

 

 

レイの独白を聞き終え、アキノは心中でため息をつく。

 

 

(どこか既視感を覚えると思いましたが、サレンさんも色々なしがらみに悩まされていましたわね……)

 

 

以前アキノはサレンから貴族としての悩みを打ち明けられたことがある。

貧乏貴族であるために、一つでも多くの商談を成功させなければならないこと。

成功者である父親に擦り寄るべく、自身を懐柔しようとしてくる周りの貴族たち。

 

だが、一つ明確に違うことがあるとすれば、レイは未だにその絶望から希望を見出だせておらず、暗中模索している。

サレンにとってのアキノが、レイにはいないのだ。

 

だが――

 

 

「レイさん、だからといって逃げ続けることは得策ではありませんわよ」

 

「それは……わかっているつもりだ。だが……」

 

「あなたが本当に望む自由を掴み取るには、お父君に認めてもらうしかありません」

 

「……っ、そんなこと無駄だ! あの人は、私の言葉など全て子供の戯言だと思っている。あの人には何も届かない」

 

「それは、あなたがお父君に一人前だと認めてもらえていないからですわ」

 

 

レイの険しい表情が強張り、一転して弱った子供のように歪む。

 

 

「……そんなことを、言われても……っ」

 

「残念ですが、わたくしにはこれ以上の最善策は思いつきわせんわ。ですが、きっとお父君があなたに求めているものはそこにあるのだとわたくしは考えます」

 

「それは、どういう……?」

 

「わたくしや、わたくしの友人がそうであるように。貴族として、貴族の自覚を持って独り立ちをすることを求められるからです。その事実から逃げ続けているレイさんをお父君が認めておられないということなのかもしれません」

 

「……」

 

「そして、認めてもらう方法は、自分でその答えを見つけるしかないでしょう」

 

「…………結局はそうなるのか」

 

 

諦めるように乾いた笑みを浮かべるレイ。

天を仰ぎ、自嘲するレイは絞り出すように口を開く。

 

 

「……振り出しに戻った気分だ。そんな日は、一体いつ来ることやら…………」

 

「……何やら背負い込んだ表情をしておりますが、別に一人で考えろとは言っていませんわよ?」

 

「え」

 

「わたくしたちは貴族であると同時に一人の人間なのですから、助け合って生きるのが賢い生き方ですわ! 持ちつ持たれつ、支え合って進み続けることでより良い社会を築き上げていくものです」

 

 

アキノはトントン、と自身の胸を叩き満面の笑みを浮かべる。

 

 

「ですので、困ったときがあったらわたくしを呼んでくださいませ! 馬車でも飛空艇でも使って駆けつけますわ‼ おーっほっほっほ!」

 

「え、ええ? し、しかし私は別に貴女に何か助けた覚えは……」

 

「えっ? だって今わたくしをランドソルまで案内してくれていますわよね? 今すごく助かっていますわよ?」

 

「……ああ、そうだったね」

 

 

元々道に迷ったアキノをランドソルまで案内することが目的だった事を失念し、笑いを堪えきれなくなったレイだった。

 

 

「そうだね……なら、そのときは力を貸してもらうことにするよ」

 

「ふふ、勿論ですわ‼」

 

 

 

 

 

ところ変わってエステレラ街道。

 

現在ここには敷物を地面に敷き、昼食を取っている男女二人組がいた。

 

 

「はあ、何だかひもじいですねぇ。いつもなら倒した魔物で料理をしているところですが……」

 

 

 

> その魔物が全然いないもんね。

 

 

 

ギルド活動の一環として、食材のために魔物を倒そうと色々調べていたペコリーヌとユウキ。

しかし、あれからギルド管理協会には魔物の討伐依頼はなく、魔物の目撃情報もめっきり減り、予め用意していたおにぎりを食べながら途方に暮れていた。

 

 

「それにしても、ランドソルで何が起こっているんでしょう? 小型の魔物すら一体も見かけないなんて……」

 

 

ランドソルの情勢に過敏なペコリーヌはうんうんと唸る。

それだけじゃない、とペコリーヌは憂う。

 

 

「【美食殿】だって、全員で集まるのも少なくなっちゃいました……。キャルちゃん、どこへ行っちゃったんでしょう……」

 

 

 

> コッコロちゃんも、故郷にある神殿にアメスさまの託宣を聞きに行っちゃった……。

 

 

 

そう、現在【美食殿】のギルドメンバーはペコリーヌとユウキだけ。

キャルはシャドウの大量発生異変を機にギルドハウスに顔を出すことが減っていった。

コッコロはアメスとの交信が上手くいかないと、故郷のエルフの里に一度帰ることになった。

 

ギルドハウスに集まっても、たった二人しかいない。

これでは満足にギルド活動が出来ない。

 

 

「……そうだ! 二人を驚かせるために、とびっきりの魔物の食材を見つけてきましょう!」

 

 

 

> というと、何処に?

 

 

 

「確かカリンさんの話ではエルピス大陸の開拓が滞っているようですし、協力するついでに珍しい魔物の食材を手に入れるんです!」

 

 

エルピス大陸では魔物がいないという話は出てきていない。

善は急げと、ユウキ達はギルド管理協会へと駆け込むのだった。

 

 

 

 

 

この世界はユウキを中心に回っている。

だがユウキの与り知らぬところで物語は動いている。

良くも悪くも。

 

 

 

それを伝えに来る者の足音は、すぐ近くで響いていた。




アキノ
前作「プリンセスコネクト!」より続けて登場する、上流階級のお嬢様。豪快で情熱的な攻撃はその範囲がとても広く、威力も絶大である。
世間知らずなところがあり、金銭感覚がずれている。困ったことがあれば、大金をはたいて解決しようとする癖があった。しかしユウキとの出会いでお金が大事なものであると理解した。
実はかなりの方向音痴であり、ランドソル内の目的地へたどり着くために、ランドソルの外に出てしまっていた、というのもしばしば。サレンとは子供の頃からの長い付き合い。



4周年目前に更新することが出来ました。
少しフライングですが、プリコネ4周年おめでとうございます!
まさか水着美食殿が星6内定とは……(水コロしかいない私、愕然)
予想はしてましたがランファのプレイアブル化も結構早かったですし、驚きの情報ばかりでしたね。
そして次回イベント……クルミとミサキの組み合わせとか、個人的にデジャヴを感じるなぁ?
私はちょっぴり険悪に書いちゃったけど、多分イベントストーリーはそんなことにはならないでしょう。

以下のキャラの中で誰を優先して書いてほしい?

  • アユミ
  • イリヤ
  • スズメ
  • マホ
  • ルカ
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