メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~ 作:上月 ネ子
前編の内容を前提に執筆しておりますので、先に前編から読むことを推奨します。
買い物が終わり、ユウキは救護院に戻ってくると、ガシッと横からお腹のあたりにしがみつかれる。
「戻ってきやがったなこのデクノボー! 後はてめーが相手しやがれってんだ!」
> カリザくん?
事情を話すこともなく、カリザはそのままユウキを盾にしてその影に身を屈める。
その後、コツコツと小さな足音がユウキに近づく。
「あっ、お兄ちゃん。戻ってきてたんだ」
> ハナちゃん、ただいま。
その銀髪の少女はハナ。
だいぶ前に【リトルリリカル】と共に肝試しで立ち寄った屋敷に一人過ごしていた少女だ。
しかし、あんな街から離れた場所に一人だけで住んでいるのは色々と危険なため、ユウキは【サレンディア救護院】へ連れてきたのだ。
もっとも、似た境遇の少女をユウキはもう一人知っているのだが……。
> 友達とは仲良くしたほうが良いよ。
「誰が友達だ‼ さっきからウロチョロと……用もねーのに近寄ってくんな! 終いにはぶっ飛ばすぞ‼」
「で、でも……ミミちゃんもカリザくんのこと心配してたし……」
「あんのチビウサの差し金か……っ」
出入り口で騒いでいるせいか、キッチンから誰かが顔を出す。
「おや、喧嘩ですか? 喧嘩するとお腹の減りが早くなっちゃいますよ? もしかして目一杯お腹を空かせたいんですか?」
「黙ってろ腹ペコ女‼」
カリザはハナにユウキを押し付けて、階段を登っていく。
「遊んでほしいならその二人に相手してもらえ‼ オレぁガキの遊びなんざぜってーやらねーからな!」
「あ…………」
ハナが呼び止める暇もなく、カリザは奥へと消えていった。
「…………」
「大丈夫ですよハナちゃん。カリザくんは気難しい年頃ですから。キャルちゃんと同じですね☆」
> 確かに。キャルちゃんとよく似てるね。つまり、カリザくんも優しい子だよ。
二人でハナを慰めながら、ふとユウキは口を開く。
> ところで、なんでペコさんが?
「実はわたし、今日から暫くの間ここで住み込みで働くことになりまして……。ちょっと街中が居心地が悪くなってきて……」
後半からあまり要領を得ない物言いとなり、ユウキは首を傾げる。
どういうことか聞く前に、階段から誰かが下りてくる。
「主さま! お帰りなさいませ!」
> コッコロちゃん! 戻ってきてたんだね。
「はい……っ、たいへん、たいへんお久しぶりでございます。1秒でも早く、主さまのお顔を見とうございました……っ」
コッコロはそのまま駆け寄り、ユウキに涙目で微笑む。
その大袈裟な反応にペコリーヌは苦笑を浮かべ、次に寂しそうな顔をする。
「……これでキャルちゃんが居たら、【美食殿】の皆が久々に全員揃うんですけどね」
「そういえば、キャルさまはどちらにおられるのかお二人はご存知ではないのですね……」
一転してコッコロも寂しそうに顔を伏せる。
現在時刻のように、【美食殿】に黄昏時が訪れようとしていた。
翌日。
この日は【ルーセント学院】は休校日であるが、イオとの約束通りにプール掃除をするべく朝早くから出発する。
街に入って学院のある区画に向かおうとして、ふとユウキはそれが目についた。
ステージなどの広場がある区画の通りの前にある大きな立て看板。
看板には、「カルミナライブ・オン・ステージ‼ 重大告知あり⁉ 日程:●●/●●〜〜……」とライブの告知が書かれている。
書かれた日程は今からおよそ二週間後になる。
もうそんなに時間が経ったのか、とユウキはしみじみとする。
そういえばチカちゃんにライブの準備を手伝ってもらうかもしれないって言ってたな、とユウキは思い出し、そろそろノゾミから声がかかるのかも、と考えていると、
「……へぇ、カルミナのライブですか。わたしも見に行きたいですねぇ」
いきなり、ユウキの後ろから顔を覗き込んできた。
> ミソラちゃんっ?
「はい、ミソラですよ★」
ユウキの肩からニュッと顔を出してきたミソラは愉快そうに微笑み、パッと離れる。
「偶然ですね騎士さん。今登校中ですか?」
ユウキは頷く。
どうやらミソラも同様のようで、一緒に登校することになった。
登校中、至る所にカルミナのライブ告知の広告が貼られており、ユウキも事前に聞いてはいたが、これまでより大規模になるライブになるだろう。
「わたし、カルミナのライブって見たことないんですよね。騎士さんも今度のライブは見に行くんですか?」
もちろん、とユウキは大きく頷く。
それにその後に行われるであろうライブツアーも、最初はランドソルで行われる。それも見に行く予定だ。
チカが話していた新衣装もどうなるか興味が尽きない。
「そうですか★」
次に口にするミソラの言葉はユウキには届かなかった。
「見に行けるといいですねぇ★」
【ルーセント学院】に着き、新しく買った水着に着替えてプールサイドに出ると、既にスズナとミサキがデッキブラシを持って掃除を始めていた。
「あっ、ヒデサイ! ちょっす〜☆」
「なんだ、今日はちゃんと遅れずに来たのね。てっきりまた遅刻ギリギリに来ると思ったわ」
スズナは昨日見せてくれた白のビキニにパレオを巻いており、長い髪の毛先の方を三つ編みで纏めている。まさに清楚スタイルだ。
ミサキも同様昨日見せてくれた黒のバンドゥビキニを身に着け、長い髪をポニーテールに纏めている。露出が多いと彼女の体の小ささがよく目立つ。
「――遅刻? もしかして騎士さんって遅刻常習犯なんですか?」
後からやって来たミソラがミサキの言葉に疑問を持つ。
「実はね、コイツ昨日遅刻ギリギリで息を切らしてやって来たのよ。そそっかしいわよね〜」
> 登校中に魔物に襲われたから。
「えっ、魔物⁉」
スズナが素っ頓狂な声を上げる。
あの日、ユウキは突然横から魔物に襲われ、森の方まで追われてしまい結果として遅刻寸前まで登校に時間がかかってしまった。
「……また運が悪いわね。今ランドソルって魔物全然見かけないのに」
> それに、あの魔物ちょっと変だった。
「変って?」
> 何か、こう、別々の魔物が合わさったような……。
「…………っ⁉」
後ろから息を呑む声がユウキに届くことはなかった。
ユウキがあの時見た魔物は、中型の魔物に小型の魔物の一部が無理やりくっついたような、かなり不細工な見た目の魔物だった。
それなりに魔物を知っているユウキでもあんなのはこれまで一度も見たことがない。
「なにそれ、超こわ〜……っ」
「街に入り込んで来ないと良いけど……」
「何を考えてるの、あの人は…………っ」
「…………ん、どしたのミソラっち? 顔がちょっと怖いよ?」
「――えっ? ああ、ちょっと恐ろしいな〜って思って」
何かを誤魔化すように、ミソラはユウキを後ろから押し、プールサイドに立て掛けられたパラソルまで連れて行く。
そんなことより、とミソラは話題を持ちかける。
「騎士さん、日焼け止め塗ってくれませんか? 背中に手が届かなくって……」
「いや、アンタその水着で背中の手が届かないところにまで塗る必要無いでしょ」
ミソラが着てきた水着は、昨日ユウキ達に見せたデザインとは少し異なり肩紐のついた白黒のワンピースだ。
あの特徴的な長いフリルはなく、代わりに白いミニスカートのような短い装飾がついている。
ミソラはうつ伏せになり、水着をはだけさせながら愉快に口を開く。
「まぁまぁ、念のためってやつですよ。なんなら水着の中まで塗ってくれても構いませんよ★」
「水着の中に手を入れるってこと⁉ やったらぶん殴るわよユウキ‼」
「ね、ねえ、昨日から思ってたけど、もしかしてミソラっちヒデサイに狙い撃ちちう、ってコト?」
「ふふ、興味があるのは確かですね……ひゃっ⁉」
唐突に冷たさを感じ、ミソラの声が裏返る。
ユウキが日焼け止めをミソラの背中に塗り始め、いきなりの感触にミソラの表情には若干の戸惑いがある。
「い、いきなり……んんぅ、しかも、意外と手際が、いい……ですねっ、ひうっ!」
予期せぬ感触にミソラも思わず顔を伏せてしまった。
それを見ていた二人は――
「〜〜〜〜っ、ユウキ! 次はあたしの背中に塗りなさいよ!」
「え? ミサキっちにはうちがさっき塗ってあげたけど?」
「ね、念のためよ念のため! なんか大人っぽいやり取りしてるなぁ、とか思ったわけじゃないわよ⁉」
「ね、念のため、かぁ。な、なら後でうちにもしてもらおっかなぁ、あはは〜……」
――デッキブラシから手を離し、パラソル下へ寝転がりに行くのだった。
「ひんっ、わ、脇の下までぬるの……っ、うひゃんっ!」
「きゃ、ちょ、ちょっと、そんな腰の方まで、塗らなくていいからぁ……ひんっ⁉」
「あら、何だか楽しそうな声が聞こえるわね」
更衣室で着替えている最中、プールの方からスズナ達の声が微かに聞こえ、イオはクスクスと笑う。
着替えを終えて、イオはプールサイドに出ると、
「皆おまたせ! プール掃除は捗って、る…………?」
イオの目に飛び込んだのは、プールサイドのパラソルの下にうつ伏せで顔を伏せているスズナ達三人と、デッキブラシでプールの底を掃除しているユウキの姿。
「あら、もしかして休憩中だった? ユウキ君も休憩してもいいのよ?」
> 大丈夫。
ユウキはサムズアップで問題ないと返す。
「スズナちゃん達は大丈夫? さっきからずっとそうしてるけど……」
「だ、だいじょぶ〜……」
「ど、どうしたの? 顔が赤いわよ? もしかして熱中症?」
「そ、そんなんじゃないから大丈夫よ、イオちゃん」
ミサキはそう言うが、顔を上げたスズナとミサキは顔が赤く、苦しそうに(?)表情が僅かに歪んでいる。
何かあったのは間違いない、と今度はミソラに尋ねる。
「ミソラちゃんは大丈夫なの?」
「え、ええ……。ただ、ちょっと今は見られるのは恥ずかしいなぁ、……って」
「恥ずかしい?」
何が恥ずかしいのだろうか。
イオは少し考えて、合点する。
「あっ、解った! ユウキ君に水着を見てもらうのが恥ずかしいのね? 心配しなくても皆似合ってるわよ。ねえ、ユウキ君?」
話を振られたユウキはスズナ達を一瞥する。
そして、口を開こうとして、
「ちゃんイオストップスト〜〜〜〜ップ! 今ヒデサイに何か言われるのゲキ恥ずなの! ヒデサイに話振るの無しで‼」
「さ、賛成〜〜! 今ユウキの顔まともに見れないし……」
「………………………」
「え、ええ……?」
突然大声で制止するスズナとミサキ。
ミソラも一言も喋ってこそいないが、顔をユウキから逸しまともに話を聞く気はないと態度で表している。
イオはただただ困惑するのだった。
その後、プール掃除も恙無く終わり、全員でプールで遊んでいると空が茜色に染まり始めていた。
「あ〜楽しかった! 久々にテン上げさいこーちょー!」
「全く、バシャバシャと騒ぎすぎよスズナは。何回も顔に水がかかったんだから」
「そう言いながらミサキさんも魔法使ってプールで津波起こしてサーフィンしてましたよね★」
「い、良いじゃない! そんなに大きな津波起こしてないし……。ミソラはミソラで何処からあんな大きな水鉄砲持ってきたのよ」
「いや〜、水遊びなら定番かなって♪ でもスズナさんすごいエイムでしたね。全然逃げられませんでした」
「ふっふ〜ん、うち狙い撃つのは得意だし☆」
プール遊びの余韻を三人で語り合いながら、ふとスズナはあることに気づく。
「そういえばヒデサイ遅いな〜。まだ着替えてるのかな」
「もう帰ってるんじゃない? 男子は大人のレディより着替える時間かからないでしょ」
「時間といえば、イオ先生もですね。やっぱり後片付けわたし達も手伝った方が良かったですかね?」
プール遊びが終わったあと、掃除道具やプール開きのための下準備はユウキとイオが引き受け、三人は先に帰っていいと言われたのだが……。
「……ちょっと様子、見に行ってみましょうか」
「そうだね。時間かかってるならうちらも手伝えばいいし」
「世話がかかるわよね〜」
三人はグラウンドに回り込みフェンスの外からプールの様子を覗き込みに行くことにした。
すると――
「あ、ふぅん……だめぇ、もっと、優しく……っ」
「「「…………ッ⁉」」」
――耳に飛び込んできたのは、少女達の恩師の艶声。
何事かと、三人は姿がプール側から見られないようにこっそりとフェンスから覗き込む。
「ぁ、ああっ……⁉ そこ、あんまりぃ……つよくしない、でぇ……」
艶声にはさらに湿り気が強くなり、カタカタと震えて床を叩く音が外から聞こえる。
三人は声の主を見つけると、その姿に目を見開いた。
うつ伏せの状態で腰が浮き上がっているイオと、その上から背中を両手で押さえつけているユウキ。
イオの臀部はユウキの下腹部に密着しており――
「ちょ、とょっとあれ、だいりょうぶなの……?」
「呂律回ってませんよミサキさん……」
「あ、あれって、見ていいのかな……? なんか、こう……っ」
スズナが必死に言葉を絞り出そうとするところを遮るように、イオの矯声は畳み掛ける。
「や、あああぁっ! だめ、だめぇ! これ以上はむり、むりなのぉ⁉ おねが、ゆるひ……ふああっ!」
「ひぅ」
スズナは顔を真っ赤にしてその場に蹲ってしまった。
「ゎぁ、い、イオちゃん、あんな顔を……はわわ……っ」
微かに見えたイオの表情が、普段の朗らかな彼女の姿とあまりにもかけ離れていて、ミサキは頭がぐわんぐわんと混乱し、膝をつく。
「…………! …………★」
一方何かに気づいたミソラは玩具で遊ぶ子供のように笑みを浮かべ、口を開いた。
「わあ、凄いですね♪ アレってあんなことまでするんですね」
「…………え」
「んうぅ、まだ、まだつづけるの……? もう、限界なのにっ、やああん⁉」
「あんな大胆に足を開かせて、あんな体勢に……」
「ちょ、実況なんてしなくていいから! 見なさいよスズナを‼」
「ぅ〜〜〜〜っ」
ミサキが指したスズナは先程よりも顔が赤くなり、涙目になって耳を手のひらで塞いでいる。
それを聞いてか否か、ミソラは楽しそうに続ける。
「おっ、そろそろラストスパートですかねぇ?」
「ら、ラストって……――」
「あ、や、あああぁっ、あぁぁぁぁんぅぅんっ‼」
「「〜〜〜〜〜〜ッ⁉」」
ガタガタ、とイオの体が揺れる音が外まで響き、スズナとミサキはビクゥッ、と大きく跳ねる。
「はーっ、はーっ、ぁーっ、ぁぁーっ……」
余韻が長いのか、湿度の高いため息混じりの声が掠れて届く。
「ぅぅ、何なのこれ、凄いモヤモヤする……」
「……ぐす、テン下げズブズブやばたにえん……」
涙声で二人はお互いを慰めるようにギュッと抱きしめ合う。
その胸中には複雑な感情が渦巻いているのが表情でわかった。
「……終わったみたいですね……――
「「………………………ええ???」」
意味不明。
キョトン、と思わず涙も引っ込み、スズナとミサキは大きな声で呆けた声が出てしまった。
「……あれ、今の声って」
どうやらイオにも聞こえたらしく、フラフラと立ち上がってフェンスの方へと近づいてくる。
「やばっ――」
三人の考えていることは奇しくも一致し、全速力でその場を去っていく。
「も、もしかして泳ぎの練習してたところ見られたのかしら……? その上マッサージであんな恥ずかしい声出してたのも……?」
今度はイオの顔が赤くなり、フラフラとその場に蹲ってしまった。
「――ミソラ! アンタ絶対気がついてたわよね⁉」
「教えてくれなかったとかちょっと酷すぎだし!」
「ふふふ、ごめんなさい★ いかがわしい事をしてるにしては体勢とかが変だなって思って♪」
イタズラが成功したようにミソラは楽しそうに笑っているが、ミサキとスズナは納得出来るはずもなく。
頬を膨らませて二人同時にそっぽを向く。
「ふんだ! そう簡単には許してやらないわよ!」
「うちだってオニおこプンプンまるだし!」
「あらら、それは困りましたねぇ★」
簡単には許してくれない、と怒り心頭の二人に対し、先程よりも嬉しそうに頬を緩めるミソラ。
「…………ホント、不思議な人ですねぇ、騎士さんは」
二人が何で誤解し心を痛め、怒っているのかの理由の中心にいる人物を思い浮かべたミソラは、この場にいない彼に小さく呟くのだった。
イオ
前作「プリンセスコネクト!」より続けて登場する、大人の色香溢れる教師。彼女が振りまく無自覚の魅了は、敵味方関係なく翻弄されてしまう。
【ルーセント学院】の新任教師である彼女は学院の廃校の危機を救うべく、自らが担当するクラスの学力向上を目指しているが、その成果はあまり芳しくない。
記憶喪失のユウキを学院に転入するよう手配し、教え子として熱を注いでいる。外見の大人っぽさに反して少女趣味な一面があり、少女漫画みたいな青春をユウキを絡めて妄想することがある。
前編、中編と書いて思ったことが一つ。
ミソラの描写が結構多いな……。
まあ、個人的にもメインストーリーで今後が気になるキャラですからスポットが当たるように書いちゃってるのかもしれません。
多分後編もそんな感じになるかも。
以下のキャラの中で誰を優先して書いてほしい?
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アユミ
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イリヤ
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スズメ
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マホ
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ルカ