メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~   作:上月 ネ子

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12/17の出来事……

(⁠๑⁠•⁠﹏⁠•⁠)「昨日はあんまりレイドボス殴れなかったなぁ……。育成があまり周りに追いついてないとはいえサポートありきでジャバを殴り切るのに2周かかるのは遅すぎるし、編成考え直す必要があるなぁ」

(⁠ ⁠・⁠ω⁠・⁠)⁠「つってももうジャバは討伐完了してそうだし、あともう一体くらい討伐完了してそうだから、残り2体のレイドボス殴っていくか」

フェイズ1「討伐完了」

(⁠;・⁠o⁠・⁠)「えっ」

フェイズ2「ゴウシンを倒せ!」

工エエェェ(´д`)ェェエエ工



みんな早すぎぃ‼


たとえキミが覚えてなくとも

【プリンセスナイト】、【動物苑】、【フォレスティエ】、貴族など、それぞれの代表達を交えてランファの今後を話し合うことになった会合で突如現れた豚の獣人族アゾールド。

 

彼は挨拶をしたあと、ランファに近寄り懐からあるものを取り出した。

 

 

「どうぞ、ランファ嬢。中を確認していただきたい」

 

「…………え、ええ…………?」

 

 

唐突に現れ、突き出された小箱をおずおずと受け取る。

普段のランファであれば突如現れた謎の人物から物を渡されても、よほど切羽詰まることもなければ受け取ることはない。

しかし、このアゾールドに何か既視感を覚えたランファは、疑問に思いながらもそれを素直に受け取った。

 

 

「お待ち下さい。いきなりやって来て堂々と不審なものを取り出さないで頂けますか? ランファさんも、何を素直に受け取っておられるのです! 見知らぬ男性から物を貰うなど……!」

 

「ハッハッハ! これは耳が痛い。確かに皆様方からすればワタクシは突如やってきた不審な人物でしょうな」

 

 

咎めるようにヒルダが立ち上がり、ランファを止めようとするのに対し、アゾールドは愉快に笑う。

 

 

「……え? でも……悪い人じゃ、なさそうだし……」

 

「いや、お菓子を貰った子供じゃないんですから……」

 

 

救護院の子供たちに姿が被ってしまい、表情が引き攣るサレン。

頭を振って、サレンも立ち上がりランファが受け取った小箱を探る。

 

 

「そもそもこれは何なのですか? ヒルダ先生に便乗するわけではありませんが、堂々と不審物を大事な会合に持ち込まれては困ります」

 

「ご心配なく。中に入っているのはマジックアイテムですぞ。この場で確認して構いません」

 

 

 

> マジックアイテム?

 

 

 

「ええ。恐らくは、今のランファ嬢に必要な物となりましょうぞ」

 

 

一同は顔を見合わせる。

あまりにもタイミングが良すぎる話に疑問に思いつつも視線でランファに開けてみるよう促す。

それを受けたランファは小箱の蓋をゆっくりと開けて、中を検める。

 

 

「これ、は…………?」

 

「これ、ピアスかしら?」

 

 

中に入っていたのは小さな宝石が付いた一対の装飾。

耳朶に引っ掛けるような造りになっているのを見て、隣までやってきたサレンはそれをピアスだと気づく。

 

 

「いかにも。それはピアスのように耳に身に着けるマジックアイテムですぞ」

 

「うちも確認してよろしおすか?」

 

「私もいいかな?」

 

 

マジックアイテムという話を受けて気になっていたマホとカスミも同様に近くまでやって来て、そのマジックアイテムを鑑定する。

 

 

「この宝石の部分かな? ここにかなり強力な魔力が込められているね」

 

「しかも、右と左で違う魔法が掛かっとりますなぁ。どういう代物なんやろか?」

 

「流石は【自警団】のギルドマスターとそのお仲間ですな。こうも早く気づかれるとは一流の慧眼をお持ちのようですな」

 

 

アゾールドは少し驚いた顔をした後、マジックアイテムについての説明を始める。

 

 

「まず片方には装着者の感能力を緩和する認識阻害魔法が込められております。これをランファ嬢が身に着けることでシャドウの気配を察知しづらくなるでしょう。

また、もう片方は単純に装着者への敵対者から認識されづらくなる認識阻害魔法を込めておりますぞ。これら二つを身に着けておけば、ランファ嬢はシャドウに襲われる回数が格段に減るでしょう」

 

 

一同は説明を聞き、あまりにもランファに都合が良すぎることに疑問を持つ。

このマジックアイテムはまさしく今のランファに必要な物だ。

しかしなぜそれを用意することが出来たのか。

 

 

「アゾールドはん、随分用意がよろしおすなぁ。まるでうちらの会合を盗み聞きしとったんかと思うくらいやわぁ」

 

 

冗談めかしてマホは言うが、その顔には懐疑の感情が浮かんでいる。

それを受けたアゾールドは苦笑する。

 

 

「流石に心外ですな。先に申し上げた通り、会合の議題は予め【動物苑】から伺っておりましたので」

 

「ではどうしてこうもランファはんに都合のええマジックアイテムを用意できるんどすか?」

 

「ワタクシは普段食物を流通させる貿易商をしておりますが、錬金術も嗜んでおりましてな。そのマジックアイテムは言わば、ワタクシの手作りですぞ」

 

「ということは、あなたは錬金術師⁉ まさか現実でお目にかかれる日が来るとは……」

 

 

カスミが感激しているのをよそに、マホは続ける。

 

 

「……これが一番重要な質問どす。アゾールドはんは一体どういうつもりでランファはんにこれを届けに来たんどすか?」

 

「……ふむ、どういうつもり、とは?」

 

「具体的に言いますと、アゾールドはんがランファはんにここまでする根拠、どすな。最近セントールスに来たアゾールドはんが、どうしてランファはんを助けるんどす?」

 

 

アゾールドは、それまで人の好さそうな笑みを浮かべていたが、その笑みを引っ込め神妙な顔つきになる。

そして口を開く。

 

 

「もちろん、ワタクシ自身ランファ嬢をお助けしたかった、という気持ちもございますが……、一番の根拠は別にあります」

 

 

その言葉を聞いて、一同の表情が少し険しくなる。

その反応に一瞬苦笑を浮かべたが、取り繕うことはせずアゾールドは続ける。

 

 

「……頼まれたのですよ。わざわざワタクシのところまでやって来てランファ嬢を助けてほしい、と頭を下げに……ね」

 

「ええ??」

 

「一体誰がそんなことを……」

 

「……残念ながら、名を尋ねる前にその方は去りましてな」

 

「おいおい、アンタ変わってるな。ユウキやヒヨリみたいなお人好しって感じはしねえし、なんで名前も知らないやつの頼みなんて聞いたんだ?」

 

 

マコトは思わず疑問に思った事をそのまま口に出す。

アゾールドは少し困ったように目を逸らして、

 

 

「……ワタクシも、()()の頼みを聞くつもりは無かったのですがね」

 

「……ぇ……?」

 

 

ランファは何か引っかかりを覚えて小首を傾げる。

それに気づいてか否か、アゾールドは続ける。

 

 

「しかし、これほどの方々がランファ嬢の為に思い、悩んでいただけるのです。来た甲斐はあったというもの。見ず知らずの方の頼みを引き受けたのは間違いではありませんでした」

 

 

誤魔化すように笑うアゾールド。

 

 

「……ワタクシの話はもう良いでしょう。ささ、ランファ嬢早速それを身に着けて効果を試していただきたい」

 

「え、ええと……」

 

 

ランファはマジックアイテムを手に取るが、困ったようにそのまま固まってしまう。

 

 

「あら、ランファさんどうかしたんですか?」

 

「……その、わたし……ピアスつけたことなくて……耳に穴をあける、のよね……? ちょっと怖いわ……」

 

「ハッハッハ! そう言うと思いまして、磁力で耳にくっつけるタイプのピアスにしておりますぞ。これならば穴を空ける必要はございますまい」

 

「本当に用意周到どすなぁ……」

 

 

ランファはサレンに手伝ってもらいながら、貰ったマジックアイテムをピアスのように耳朶につける。

つけて数秒後、ランファは目を見開き、周りをキョロキョロと見渡して呟く。

 

 

「雑音が……聞こえなく、なった…………?」

 

「……本当に効果が出てるんですか?」

 

「ランファさん、ここに来る前に街の人達の声で気分が悪くなっていたから、効果があるなら変化はあると思うけれど……」

 

「まさか、屋内にいても喧騒が聞こえていたとでも……? なんて聴力でしょうか……」

 

 

ミサトの話を聞いて、各々ランファの変化に大なり小なり驚く。

 

 

「……断りを入れておきますが、全く聞こえなくなるわけではありませんぞ? それでは日常生活にも支障が出ますからな」

 

「じゃあ、こうしておらたちが会話してるのはランファさんにも聞こえてるべか?」

 

「……ん、ちゃんと……聞こえてるわ。……前みたいに、響くくらい聞こえたりは……しないけど……」

 

「どうやら成功のようですな。いやぁ、良かったですぞ!」

 

 

ご機嫌に腹を叩くアゾールド。

これでランファを取り巻く事件はあらかた解決に向かうだろう。

皆がそう話し始めたとき。

 

 

「……確かにランファさんの件は解決したかもしれませんが、まだ不明瞭な点があります」

 

「不明瞭な点、どすか?」

 

 

ヒルダは渋い顔をしながらランファを見つめる。

 

 

「……白状いたしますと、シャドウの大量発生は全てランファさんに原因があると考えていました。しかし、今回の会合であくまでランファさんは被害者であると踏まえると、一体何が原因でシャドウはあんなにも生まれてくるのでしょう?」

 

「……確かに、今回の件はランファさんが近くしたことでシャドウがランファさんに襲いかかるわけだが、そもそもシャドウが突然あんなにも生まれた原因は判明していないね」

 

「そもそも、シャドウが生まれる原因が良くわかってないしね……」

 

 

今回の事件は、現れたシャドウがあくまでランファを優先して襲っていただけであり、もしランファがいなかったとしたら、あと大量のシャドウが無差別に人へ襲いかかっていただろう。

ランファへの措置は、ランファにシャドウが襲いかかる事で周りへの二次被害が発生することを食い止めただけに過ぎない。

 

ならば、シャドウとは結局何なのか。

 

 

「……又聞きとなってしまいますが、シャドウが発生することをある程度緩和する事は可能です」

 

「ええ……⁉」

 

 

アゾールドが小さく紡いだ言葉に一同は驚き、一斉に視線が彼に向く。

 

 

「……どういうことですか? なぜ貴方がそのような事を」

 

「もう一度申しますが、あくまで又聞きですぞ。本当に食い止められる保証はございません」

 

「又聞きとは言いますが、では一体誰から……――」

 

 

 

> どうすればいいんですか?

 

 

 

ヒルダの追及を遮るように、ユウキは口を開く。

アゾールドは目を見開いてユウキを見るが、すぐに神妙な顔つきでユウキに尋ねる。

 

 

「……ワタクシの言葉を信じるのですか?」

 

 

 

> 嘘をつかないことは分かります。

 

 

 

「…………‼」

 

 

アゾールドは驚き、言葉を失う。

そして数秒間、顔を伏せてから罪悪感が浮かぶ笑みを浮かべた。

 

 

「……申し訳ありませんが、ワタクシはアナタからそこまで信頼されるほどの人間ではございません」

 

 

 

> …………。

 

 

 

「しかし、そこまで言っていただけた事に報いるためにも、ワタクシも覚悟をもってお伝えしましょうぞ!」

 

 

アゾールドは嬉しそうに笑顔を浮かべた後、すぐに真剣な顔つきで言葉を続けた。

 

 

「シャドウとは、因果の修正と形容することも可能です」

 

「因果の修正……?」

 

「この中で、自分と同じ姿をしたシャドウを見た方も居られるのでは? あれは言わばその方の過去の可能性の一つとも言えます」

 

「過去の、可能性……」

 

「そしてその可能性は意志を持ち、自身の存在を確立するべく生あるものを襲うのです。襲い、ロストさせ、自身がこの世界の本当の住人であると修正するべく」

 

「ロストですって⁉」

 

「そしてロストした者も、過去の可能性の一つとして因果の大海を彷徨い、いずれシャドウとして生あるものに仇なすのです。シャドウとロストという怪現象は、そうした負の循環を起こしているのです」

 

 

アゾールドの言葉は続く。

 

 

「そして、この負の循環を意図的に引き起こした者がいます」

 

「誰なの、そいつは⁉ 一体何処にいるの⁉」

 

「さ、サレンちゃん。落ち着いて……」

 

 

サレンが詰め寄るようにアゾールドに近づくのを、側にいたミサトが宥める。

 

 

「その者とは……いずれアナタ方も刃を交えることになりましょう。もしその者を除くことが出来れば今よりシャドウの発生率は減るでしょう」

 

「減る……無くなる、ではなく?」

 

「彼の者はシャドウの発生の原因の片割れでしかありません。もう片方は……今の皆様からすれば雲の上の存在でしょうから」

 

 

苦虫を噛み潰したような顔でアゾールドは明後日の方向を見る。

情報量の多い話を受けた一同は顔を見合わせ、黙り込んでしまう。

 

 

「……皆様の決戦は、動乱の始まりはもうそこまで迫っております。ですので……マホ嬢」

 

「……はいな?」

 

 

情報を噛み締めていた所をいきなり話しかけられ、マホは反応が少し遅れてしまう。

 

 

「現在ワタクシは【動物苑】と連携し、セントールスに避難用のテントを設営しております。ランドソルに住む獣人族と共にセントールスまで避難するのを受け入れる準備が出来ておりますぞ」

 

「まあ、それはそれは……」

 

「アナタのお父上からも、お会いしたらギルドメンバーと共に避難するよう伝えてほしいと承っております」

 

「そうどすか……でしたら、そのときになったら滞りなく避難できるよう手配しておきましょか」

 

 

せやけど、とマホは断りを入れる。

 

 

「うちらは避難するつもりはありまへん」

 

「理由をお伺いしても?」

 

「うちらはランドソルの治安維持の為に戦うギルドどすえ。うちらがランドソルから逃げるわけにはいきまへんし、なにより獣人族だけを守るというのもあきまへんさかい。……そうどすな、みんなも?」

 

「ああ、そうだな。ま、ランドソルを守るために戦うって約束もしたしな」

 

「……もしかしてニノンさんのアレかい? マコトさんも律儀だね」

 

「……ああ、そんなのもあったわね」

 

「あ、あはは〜☆ でも本当にそんなことが起きるなら私達の出番だよねっ!」

 

「マコト達が何話してるかよくわかんないけど、街の平和を守るために戦うのは異論ないさー!」

 

 

忠臣蔵の件を思い出したマコト、サレン、ハツネは苦笑いする。

 

【自警団】の総意が戦うことだと聞いたアゾールドはそうですか、と相槌を打つ。

 

 

「……であれば、マホ嬢のお父上にはそのようにワタクシからお伝えしておきましょう。

……それでは、ワタクシの要件も終わりましたので、部外者は退散するといたしましょう」

 

「お待ち下さい」

 

 

背を向け、広間を退出しようとしたところをヒルダに呼び止められる。

 

 

「……ふむ、何かまだ説明不足の点がありましたでしょうか?」

 

「貴方の立ち位置です。先程のシャドウの件と言い、ランドソルで動乱が起きると宣った件と言い、貴方はどの立場でそれを私達に教えに来たのですか?」

 

「そうですなぁ。……ワタクシにも果たすべき願いがありますが故に、ランドソルでの動乱に積極的に関わるつもりはあまりありませんでしたが。まあ、強いて言うなれば――」

 

 

アゾールドはここでユウキを見て優しく微笑む。

 

 

「――友を、助けていただいた恩返し、でしょうかね」

 

 

 

> え?

 

 

 

「お名前はユウキ君でしたかな? それと、そちらのサレン嬢とマヒル嬢も」

 

「えっ?」

 

「んん、おらもか?」

 

 

突然名指しされたサレンとマヒルは呆ける。

 

 

「アナタ方には本当に感謝しておりますぞ」

 

 

そう言って、アゾールドは背を向け退出しようとするが、またしても彼を呼び止めた者がいる。

 

 

「あ、あの…………!」

 

「……、何ですかな?」

 

「……え、と。……その……」

 

 

困惑するように、ランファは口をモゴモゴとしながら遠慮がちに尋ねる。

 

 

「わたしと、あなた……何処かで、会いましたか……?」

 

「………………………」

 

 

アゾールドは質疑に対し、数秒間口を噤んだあと、

 

 

「……いいえ、()()()()()()()()()()()()()()()のはずですぞ」

 

「…………っ」

 

「では、ごきげんよう……ランファ嬢」

 

 

アゾールドは後ろ手を振って、今度こそ退出した。

彼の姿が見えなくなり、それと同時にランファは膝をついてその場に座り込む。

 

 

 

> ランファさんっ?

 

 

 

「あらあら、どうしたんですかランファさん?」

 

 

ユウキとミサトはランファに駆け寄り、彼女の表情を覗き込んで息を呑む。

 

 

「わからない……わからない……、けど……っ」

 

 

ポロポロと、ランファの目尻から涙が流れ落ちていく。

 

 

「あの人の……背中を見たら……涙が、止まらない…………っ!」

 

 

ユウキ達は宥めつつも、スンスンと泣きはらすランファに何も言うことが出来ず、ただ困惑するのみだった。

 

 

 


 

 

 

【自警団】のギルドハウスを後にして、暫く人通りの少ない道を歩いているアゾールドはふと立ち止まり、辟易するような態度でため息をつきながら口を開く。

 

 

「……これで満足ですかな――ミソラ嬢?」

 

「――はい。期待以上でした。本当にありがとうございます、アゾールドさん」

 

 

こえはアゾールドの上から降ってきた。

アゾールドはそちらに目を向けると、建物の屋根に腰をおろして見下ろしていたミソラがアゾールドに笑顔を向けた。

ミソラは屋根から飛び降り、アゾールドの前に着地する。

 

 

「……これで、ランファさんを中心としたシャドウの騒動は収束していくでしょう。ランファさんも穏やかに【牧場】で暮らせるはずです」

 

「………………」

 

「どうしたんですか、アゾールドさん。さっきから仏頂面ですよ?」

 

 

仏頂面というよりは親の敵を見るような表情でアゾールドはミソラを睨めつけている。

 

 

「……もしかして、わたしの態度わざとらしいですか? これでも本気でアゾールドさんに感謝してるんですよ?」

 

「それが本心であるのなら、なおのこと理解に苦しみますな」

 

「何がですか?」

 

「それほどランファ嬢を思っていながら、なぜアナタはエリスに肩入れし続けているのです?」

 

 

それまでミソラはニコニコと笑みを浮かべていたが、アゾールドの一言でスン、と引っ込む。

 

 

「アナタとワタクシは既に袂を分かった身。しかしそうであるにも関わらず、アナタは自らワタクシのもとにやって来て、ランファ嬢を助けてほしいと頭を下げてきました。……それが出来るのならば、なぜランファ嬢の味方でいないのですか?」

 

「………………」

 

「彼女はワタクシ同様、リセットによって『現実』を忘れ、アストルムに生きる一住民として在ります。しかしワタクシのことは朧気に覚えているようだった。……きっとアナタとお会いすれば、ミソラ嬢の事もすぐに思い出しましょう」

 

「ランファさんの記憶なんて関係ありません」

 

 

その声はとても真剣なものだった。

 

 

「……ご存知の通り、ランファさんはとっても優しい人です。わたしがお友だちだって言ったのを嬉しそうに真に受けて、最期まで本気でそう思ってくれてました。……わたしには、そんな風に思われる資格なんてないのに」

 

「…………」

 

「ランファさんは前回ではアストルムの敵として、ランドソルに何度も仇なしていました。でも、ランファさんはあまり乗り気ではありませんでしたし、リセットが起きた今彼女はもうただの優しい人です。罰ならもう沢山受けたでしょう。ランファさんはこれ以上苦しむ必要はないんです」

 

「……やはりわかりませんな。友を助けたいと思うのであればそれで良いでしょう。なぜ、そこまで理論武装を……」

 

「前にも言ったでしょう? わたし、可愛そうな人の味方でいたいんです★」

 

 

一転して、ミソラは愉快そうな笑顔を浮かべる。

 

 

「ランファさんはもう可愛そうな人でなくなりました。だから、ランファさんの味方でいるのもこれまでです」

 

「アナタは……」

 

「それに……自分を手に掛けた人をお友だちだなんて思うこと事態が苦しいでしょうから」

 

「なっ……!!!」

 

 

それは、アゾールドにとって寝耳に水だった。

衝撃の真実に愕然とするアゾールドの隙を見て、ミソラは家屋の屋根に跳び乗る。

 

 

「……さて、今回の件で一応お礼をしておいたほうが良いですよねぇ。敵同士、貸し借りは無いに越したことはありませんから」

 

「ミソラ嬢、アナタという人は……っ」

 

「そうだ、アゾールドさんってゼーンさんが今どこにいるか知ってます? エリスさま、ゼーンさんを見失っちゃったみたいで」

 

「……ッ、知っていたして敵に教えるとでも?」

 

「アハッ、それもそうですね★」

 

 

先程よりも険しい表情でミソラを見上げるアゾールド。

楽しそうにミソラは笑い、良いことを思いついた、と手を叩く。

 

 

「ですので、お礼代わりとしてゼーンさんに会ったら今から言うことを伝えておいて下さいね★」

 

「何を……――」

 

「――――――――――――」

 

 

紡いだ言葉は、再びアゾールドを驚愕させた。

クスクスとミソラは笑ったあと、

 

 

「では、またお会いしましょう……今日から始まる動乱を乗り越えた先で★」

 

 

不穏な言葉を残して、ミソラは姿を消した。

ミソラが消えた場所を、アゾールドは睨みつける事しか出来なかった。

 

 

 


 

 

 

泣き止んだランファを宥めつつ、会合は終わりへと向かっていく。

最終的にランファは【自警団】からの定期的な経過観察のもと、【牧場】で保護される形となった。

 

 

そうして各々会合の結果をギルドや協会などへ報告することになるのだが……。

 

 

「……ふう、まったくとんだ貧乏くじだったわ」

 

 

 

> お疲れさま、サレンちゃん。

 

 

 

「あれ、ユウキ?」

 

 

ユウキはギルド管理協会へ報告してほしい、と纏められた資料をマホから渡され、その帰りに【王宮騎士団】に報告しに行ったサレンを待つことにした。

王宮から出てきたサレンはユウキに声をかけられ、驚いたあとユウキに駆け寄る。

 

 

「もしかして待ってたの? 先に帰ってても良かったのに」

 

 

帰る場所は同じなのだから、サレンを待つことに問題はない。

サレンにそう言うと、頬を少し赤く染めて

 

 

「……それもそうね」

 

 

と嬉しそうに呟いた。

 

 

「それに、アンタがいると変なのに声をかけられずに済みそうだわ」

 

 

 

> 変なの?

 

 

 

「アンタも会合に来るときに見なかった? あからさまにガラの悪そうな奴ら」

 

 

それなら見た、とユウキは思い出す。

ランファが指したあの二人組は武装して、まるで傭兵のようにも見えたが、少々素行が悪い雰囲気も見受けられた。

 

 

「聞けば、最近王宮に出入りしてる商人が連れてきた傭兵だそうよ。中でもジロジロと鬱陶しく見られたわ。……なんでジュンさんはあんな奴らの出入りを認めたのかしら?」

 

 

 

> ジュンさんは何て?

 

 

 

「さあ? そもそも会えなかったから何を言われたもないわ」

 

 

納得できない気持ちがサレンの表情に現れる。

だがすぐに頭を振って、早く帰って子供たちに会いに行こう、とサレンは足早に帰路につく。

 

【サレンディア救護院】に帰ってきて、サレンは機嫌を良くして中に入ると、

 

 

「ただいま、みんな。ユウキも一緒に帰ってきたわよ」

 

「あっ、サレンちゃん、ユウキくんも……戻ってきたんですね」

 

「……ん? どうしたのペコリーヌさん、顔が暗いわよ?」

 

 

サレン達を出迎えてくれたペコリーヌにはいつもの笑顔はなく、何か気まずそうに表情を曇らせている。

 

 

「そ、それが……」

 

「――おかえりなさいませ、サレンさん」

 

「お、お邪魔してるっス〜……」

 

 

奥からやってきたのはトモとマツリ。

トモの顔を見たサレンは一瞬にして不機嫌な顔になり、そのままの勢いで口を開く。

 

 

「……また来てたの? 何か他に伝えるべきことが?」

 

「いえ、というよりは……今回の緊急の通知に対してサレンさんに改めて謝罪したく」

 

「悪いけれど、これに関しては見習い騎士から頭を下げられても気を良くすることはないわ」

 

「……っ」

 

「ちょ、サレンねーちゃん! そんな言い方ないっすよ〜!」

 

 

マツリが顔を強張らせサレンを咎めようとするが、トモがそれを手で制する。

 

 

「……それでも、改めて謝りたかったんです」

 

「トモが悪いわけじゃないのよ。今回の緊急の通知について、【王宮騎士団】からは最低限の礼儀ってものが感じられないのよ。団長であるジュンさんの性格なら、ご自身から訪ねに来るはずなのに、王宮の方に報告に行ってもそれがない」

 

 

サレンは大きくため息をつく。

 

 

「ねえ、今の【王宮騎士団】はどうなってるの? クリスティーナやオクトーさんが行方不明になってることと言い、妙な輩が王宮を出入りしていることと言い、明らかに変よ」

 

「…………おっしゃる通りです」

 

 

苦虫を噛み潰したような表情で、トモは目を伏せる。

 

 

「サレンさんには知る権利がありますし、私たちにもサレンさんにお伝えする義務があります。……ですが、その前に無礼を承知でお頼みしたいことがあります」

 

「頼み?」

 

 

トモはその場で、深く頭を下げて次の言葉を伝えた。

 

 

「お願いです……どうか、副団長として騎士団に復帰してください……!」




マホ
前作「プリンセスコネクト!」より続けて登場する、はんなりとした狐の獣人族の少女。メルヘンで予測不能な魔法が敵味方にもたらされる。
独特な世界観を持ち、自らをマホマホ王国のマホ姫と名乗る。そのためか、ギルド内では時々本当にお姫様扱いされ、誰も彼女には頭が上がらない。
自身を助けてくれたユウキを王子と呼び、自身の故郷に招待しようと色々と考えている。魔法の扱いが得意だが、偶に自分が何の魔法を唱えているのかわからなくなるときがあるようだ。



終炎のエリュシオンお疲れ様でした。
今回は私の想像を遥かに超えてレイドボスが討伐されて驚きました。
さて、これを読んでいる皆様も恐らくはミロクを討伐し終えているかと思いますが、正直個人的には嫌な予感がひしひしとしております。最後になんか余計なことしそうなんだよねあいつ。
メインストーリー更新は12/23ですし、それまで待ちきれないですね。
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