メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~   作:上月 ネ子

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改めまして、あけましておめでとうございます。

メインストーリー第二部もおそらく今月で終わり、新キャラも公開されましたね。

ただ今後のプリコネのストーリー展開が全く読めないため、このまま予定通り第一部を書き終えたら更新が滞るかもしれません。
ご理解の程をお願い致します。


キミがどうしようもない現実に直面しても

『アタシの名前は模索路(もさくじ)(あきら)。またの名を七冠(セブンクラウンズ)が一人――迷宮女王』

 

 

ユウキの視界に大きく映る彼女はそう名乗り、ニイッ、と得意げに微笑む。

対してユウキはあまりピンと来ず、首を傾げるだけ。

 

 

『……あ〜、リセットのせいだから仕方ないとはいえ、その反応はちょっと傷つくわぁ……』

 

 

 

> ごめんなさい……?

 

 

 

『ああ、いやいや! 少年は何も悪くないよ!』

 

 

慌てて模索路晶と名乗った女性はユウキの言葉にブンブンと首を振る。

 

 

 

> えっと、モサクジアキラさん? クイーンラビリンスさん? どっちで呼べばいいんだろう……?

 

 

 

『あー……』

 

 

女性はう〜ん、と唸ったあと、

 

 

『……アタシの事はラビリスタって呼んでよ。一応、ランドソルではそう名乗って過ごしてたからさ』

 

 

 

> ラビリスタさん……。

 

 

 

反芻するようにユウキは名前を頭に覚えさせる。

 

そこで、ユウキはランドソルの単語が出たことでふと気になったことを尋ねた。

 

 

 

> ここはどこですか?

 

 

 

『何処、か……。う〜ん、なんて説明したら少年は解ってくれるかなぁ』

 

 

うんうん、とラビリスタは唸ったあと、ゆっくりと話し始める。

 

 

『まず、少年がいる場所はランドソルではない。いや、もっと言えばアストルムでもない』

 

 

ラビリスタは続けてこう説明する。

 

現在ユウキがいる場所はアストルムという世界の外側にある、データの大海からさらに外の隔離された空間にいる。

本来であればアストルムの住民はここまで来られないが、外側にいるラビリスタ達が何とか隔離場所を作り出し、不慮の事故でデータの大海から弾き出された住民を保護できるように誘導したらしい。

 

 

『……つまり、大分噛み砕いて言えば、少年はアストルム(向こう)で仮死状態になるほどの重体になって、意識だけアストルムからここまで飛んできちゃった、……ってところかな』

 

 

どう、わかった?

ラビリスタはそう尋ねるが、ユウキはあまりピンと来ず、首を傾げて俯く。

 

 

『……まあ、すぐに飲み込めるわけないよね。コッコロちゃんも最初はちんぷんかんぷんだったし』

 

 

コッコロの名前が出てきて、ユウキは顔を上げる。

コッコロもここに来ていたのだろうか。

 

 

『コッコロちゃんはそこじゃなくて、()()()であらかじめ用意していた素体に意識を入れて、ある程度自由に動けるようにさせてたんだよ。

少年が来ると分かってたなら用意してあげたかったんだけどね……。あれ用意するのすっごい予算がかかるんだよ』

 

 

肩をすくめてラビリスタは首を振る。

 

 

 

> コッコロちゃんはいつ頃ラビリスタさんに会いに来てたの?

 

 

 

ユウキは続けて質問する。

まだちゃんと理解している訳では無いが、コッコロもこっちに来ていたとなると、ユウキと同じように大変な目にあっていた筈だ。

だが、ユウキが記憶していた限り、そんな事は無かったはず……。

 

 

『コッコロちゃんがこっちに来たのは……、もう一ヶ月半くらい前だったかな?』

 

 

 

> 一ヶ月半……?

 

 

 

『ああ、あくまで現実の時間での話だよ? アストルムと現実じゃ時間の流れが全然違うし。下手すりゃ、こっちの一日はアストルムじゃ数ヶ月くらいの時差があるんだよ』

 

 

 

> 現実って……?

 

 

 

ユウキは先程からこっちだの現実だのアストルムだのと、まるで違う世界に生きているかのような口ぶりをしているのが気になった。

ラビリスタはそうだね、と相槌を打ってから続ける。

 

 

『折角だから、ちょっと移動しようか』

 

 

 

 

 

 

 

ラビリスタはユウキの姿が映っているタブレットを片手に、自身がいる椿ヶ丘公園をぐるり、と一周する。

 

 

「……ここが少年たちが過ごしていた本当の現実。今は椿ヶ丘っていう町の公園に居るんだけど」

 

 

ラビリスタはタブレットの液晶部から景色が見えるように抱え、ユウキに尋ねる。

 

 

 

> ランドソルの王宮みたいな大きな建物が沢山ある……。

 

 

 

「ん? ああ……」

 

 

ラビリスタは、ユウキが公園の景色だけでなく公園から見渡せる建物に目が行ったことに気づく。

 

 

「流石にあの王宮の方が大きいだろうけど……。まあ、こっちじゃあれくらい大きなマンションやビルはありふれたものだよ」

 

 

ユウキは何も言えないのか、はあ、とため息をついている。

それを見てラビリスタは苦笑し、

 

 

「他のところも見てみるかい?」

 

 

ユウキはうん、と即答で頷く。

ラビリスタは次にキッチンカーに乗り込み、タブレットを助手席から前が見えるように固定する。

 

そして、車を走らせビル街や駅のある交差点を通り、その都度ユウキに声をかける。

 

 

「どうだい、すごいスピードだろう?」

 

 

 

> 馬車よりも速い!

 

 

 

「まあね♪ まあ、馬車はともかく馬は車と同速以上のスピードで走れるけどね」

 

 

 

> 車?

 

 

 

「そうそう、今アタシ達が乗ってるこの四角い箱みたいなの。これがあれば……燃料さえ定期的に補給させたら、世界中をこれで旅することも不可能じゃないよ」

 

 

おお、とユウキから感嘆の声があがる。

 

その後、椿ヶ丘の至る所を見て回り、その間にラビリスタはユウキにアストルムでなにかあったのかを一つずつ尋ねていく。

そして、日が傾いてきた頃にラビリスタ達は公園に戻ってくると、ラビリスタ達は車から降り、少し歩いてある場所に着く。

 

 

 

> ここは?

 

 

 

「ここはキミの帰る場所――ユウキの自宅だよ」

 

 

ラビリスタは言いながら、目の前の家を見上げる。

 

少し大きめの一軒家。小さな庭があり、そこからカーテンが半開きになってリビングが見える。

 

 

 

> ここが僕の家……?

 

 

 

「うん、大分前にネネカとクリスが教えてくれたから間違いないと思うよ」

 

 

ユウキはその言葉に首を傾げる。

まず、クリスとはクリスティーナの事だろうか? ジュンもそう呼んでいたし……。

次に、

 

 

 

> ネネカさんとクリスティーナさんはラビリスタさんの友達?

 

 

 

「友達、友達かぁ……」

 

 

ラビリスタは困ったように声が上擦り、苦笑する。

 

 

「クリスは肯定してくれそうだけど……、ネネカは嫌そうな顔で否定するだろうなぁ……」

 

 

 

> 仲が悪いの?

 

 

 

「良くはないね。少年にもたまにちょっかいかけてるし、アタシとしてはほんの少しだけ気が気じゃなかったかな。

聞けば、記憶喪失になっちゃったユウキに色々教えてあげたらしいじゃん? ネネカがそんな手間のかかる上にリターンも大してない事を率先してするなんて意外だなぁ、って思って」

 

 

 

> ネネカさんは僕に勉強を教えてくれた優しい人だよ。

 

 

 

「……そう言われるとまた何か企んでそうで心配だなぁ。それとも単にユウキを気に入っただけかな? ちょくちょく家に来たことがあるみたいだし」

 

 

うんうん、とまたラビリスタは唸って考え始めた。

それをよそに、ユウキはもう一度自分の家と思われる建物を見る。

 

その外観にどことなく既視感があって……――

 

 

「何か思い出せたかい?」

 

 

心を見透かすように、ラビリスタは尋ねる。

分からない、とユウキは首を振るが、

 

 

 

> でも、たまに夢で見たことがあるような……。

 

 

 

「夢……」

 

 

 

> アメスさまが時々見せてくれる夢。

 

 

 

「その夢、詳しく教えてくれても良いかな?」

 

 

先程までの愉快そうな口ぶりから一転、ラビリスタの声と表情には張り詰めたような緊迫感があった。

ユウキは何事かと首を傾げつつも、言われたとおりにポツポツと話し始める。

 

 

 

 

 

場所は公園に戻り、ラビリスタはキッチンカーでユウキの夢についての話を聴いていく。

 

 

「…………要約すると」

 

 

何かに気づいたのか、ラビリスタは少々険しい顔つきでゆっくりとユウキに尋ねる。

 

 

「ユウキが見た夢では、現実みたいな町並みでランドソルで出会った友達と遊んだり、海に行ったり、トラブルに巻き込まれたような出来事だったんだね」

 

 

 

> うん。

 

 

 

「んで、友達と絆を結んでランドソルでの異変を解決し続ければ、夢の内容が現実になる、と。それをフィオ……じゃなくて、アメスが言ったんだね」

 

 

そんな事を言っていた気がする、と朧気に思い出すようにユウキが呟く。

 

ラビリスタはしばらく頭に手を置き無言になったあと、真剣な顔つきでユウキに尋ねる。

 

 

「ちなみに、その夢に出てくる友達って、コッコロちゃんとかユイちゃんとかだよね?

その子達の()()()()()って覚えてる?」

 

 

外見や髪色。

尋ねられて、ユウキはしばらく置いてから恐る恐る答えた。

 

 

 

> …………コッコロちゃんが銀髪で、ユイはピンク、だったような……。

 

 

 

「わかった」

 

 

ユウキの言葉に、ラビリスタは即答で返した。

ラビリスタは背を向け、カチャカチャと作業を始める。

それを何事かとユウキは疑問に思いつつじっと見ていたが、しばらくしてラビリスタはタブレットを持ち上げ、何かの端末と繋げる。

 

 

「……ユウキ、本当にすまない」

 

 

ラビリスタは唐突にそう言った。

 

 

「アタシは七冠の一人だ。本来ならユウキ達と一緒にアストルムの異変を解決するために戦う責務がある」

 

 

けれど、とラビリスタは首を振る。

 

 

「けれど、そうもいかなくなっちゃった。現実も現実でアストルムによる被害が出ちゃってね」

 

 

 

> 被害?

 

 

 

「さっきアタシは、この世界こそユウキ達が過ごしていた現実って言ったけど、だったらどうしてユウキ達は今アストルムに居るのか、って疑問に思わない?」

 

 

それは確かに、とユウキは遠慮がちに頷く。

 

 

「……閉じ込められちゃったんだよ」

 

 

 

> え。

 

 

 

「ユウキ達は今、意識だけアストルムの中にいて、アストルムこそが現実だと思いこんでしまっている。そんな悲劇がアストルムの中と外で起きてしまったんだ」

 

 

ふるふると、ラビリスタはやるせなさを感じるように首を振る。

彼女の額には、何かの焦りが原因か大粒の汗が浮かんでいる。

 

 

「アストルムの中では、現状正当な方法でログアウトすることが出来ない。アタシの仕込みも、リセットのせいで全部パアになっちゃったし。

……だけど、外はもっと深刻だ。アストルムに囚われ、寝たきりになってしまったユウキ達の体が刻一刻と限界が訪れている。残された家族や友人達は、ユウキ達の帰りがいつになるのかどんどん焦っている。

それだけじゃない。これ以上ユウキ達が戻ってくるのに時間が掛かろうものなら、外部から強制的にアストルムを解体させろ、なんて過激的な意見もどんどん大きくなってきた。……もしそれが強行されようものなら、ユウキ達はアストルムの中でアストルム諸共永遠にロスト……死んでしまう」

 

 

 

> そんな!!!

 

 

 

そんな事実到底受け入れられない!

ユウキはそう反対するが、ラビリスタは力なく首を振る。

 

 

「分かっている。ユウキの怒りは当然だ。けれどね、誰もが皆ユウキみたいに他者を思いやっている訳ではないんだ」

 

 

ポツポツとラビリスタは諦めたように呟く。

 

 

「ユウキ達がアストルムに閉じ込められているのを、現実では『ミネルヴァの懲役』と呼ばれている。ミネルヴァっていうのは、アストルムを管理していた存在で、どんな願いでも叶えられるほどの力を持っていた。

それ故に、沢山の人達がアストルムにダイブし……閉じ込められた。あの子は何も悪いことをしていないのに、まるで諸悪の根源のようにアストルムを生み出したアタシ達七冠諸共針の筵に遭っている」

 

 

 

> 何も悪いことをしていないのなら、どうして……。

 

 

 

「そんな言葉に耳を傾けてくれる人は、もういないんだよ。それだけ懲役の被害者は多いんだ。……何より、アストルムの中にいるユウキの言葉なんて、現実の人たちからすれば知ったことではないんだろう」

 

 

ラビリスタから再びカチャカチャと作業音が響く。

 

 

「……現実の人達はアストルムの中で何が起きているのかを知らない。知りようがない。故にいくらでも悪し様に言えてしまう。

ユウキ達がこれまで何と戦い、ランドソルの平和を守ってきたのかもそう。現実の人達にとっては()()()()()()()()()()()でしかないんだ」

 

 

 

> ………………………。

 

 

 

「……それでも、そんな他愛もない話だと一蹴されても。アタシ達はやるしかないんだ」

 

 

ラビリスタの言葉には、確かな覚悟が込められていた。

ラビリスタは作業しつつ、ユウキに目を向ける。

 

 

「ねえ、ユウキ。アタシのプリンセスナイト。今はあえて主として、ナイトであるキミに伝える。

キミは懲役を終わらせて、仲間の皆と一緒に現実に戻ってくるんだ」

 

 

 

> どうすればいいの?

 

 

 

欠片も拒否せず方法を尋ねるユウキに、ラビリスタはフッと笑う。

 

 

 

「……こうなるともう方法は一つだ。ユウキ達がミネルヴァを取り戻し、キミが選んだ大切な仲間とともに願うんだ――全ての『レジェンドオブアストルム』のプレイヤーを、現実へログアウトしてほしい、と。

ソルオーブを集め、ソルの塔を取り戻し、その頂上でミネルヴァに願うんだ。いいね?」

 

 

うん、とユウキは深く頷く。

 

 

「その為に、ユウキにいくつかお土産を送っておくよ。戻ったら【美食殿】のギルドハウスに受け取りに行ってほしい。送ったら多分すぐにネビアが気づくだろうから、ネビアに教えてもらってね」

 

 

それと最後に一つ、とラビリスタは付け足す。

 

 

 

「……きっとキミは今後も夢でアメスに会うんだろう。そこでどんな話をするのかアタシには分からないけど……。今後は、アメスと話をすることがあっても話半分に聞き流しておくこと。いいね?」

 

 

 

> どういうこと?

 

 

 

「…………アメスも今は大変なんだ。きっとユウキのことを正しく導いてくれないだろう。だからこそ、皆と一緒に現実へ帰るために、今後はユウキ自身でちゃんと考えて、仲間と力を合わせるんだ」

 

 

ラビリスタは真剣な表情でユウキを見つめている。

冗談で言っていないと確信したユウキは、迷いつつもラビリスタの言葉に頷いた。

 

 

「……アタシはアタシで皆が無事に戻ってこられるよう、現実でできる限りのことをする。そして皆戻ってきたら、うちのクレープ屋でパーティーと洒落込もうよ」

 

 

 

> クレープ? それってお姉ちゃんたちの……

 

 

 

「そう、そう。シズルちゃん達が開いているあのクレープ屋は元はアタシのお店」

 

 

それまで神妙な顔つきのラビリスタは、ニイッ、とおどけるように笑った。

 

 

「……それじゃ、お話はこれでおしまい。アストルムに帰る時間だ。……そろそろコッコロちゃんが心配で寝不足になってそうだからね。あの子になにかあったら長老にどやされそうだよ」

 

 

ラビリスタは作業音を立てながら、ユウキに指示をする。

 

ユウキはラビリスタから言われた通りに、じっと直立して目を閉じる。

 

そして、次の言葉を口にした。

 

 

 

> ダイブ・アストルム―――――

 

 

 

「―――――どうかアタシのプリンセスナイトに、太陽と星の祝福を―――――」

 

 

 


 

 

 

タブレットからユウキの姿が完全に消え、液晶も暗くなる。

隔離データから完全に送り出せた証拠だ。

 

ラビリスタはユウキがアストルムに戻れたのを確認してから、椅子に掛け震えるように息を吐いた。

 

 

「やってくれたな……っ」

 

「――……どうやら、あのガイド妖精にも異常事態が起きてしまった様ですね」

 

 

キッチンカーの窓口から男の声が入る。

その声に聞き覚えのあるラビリスタはガタリと勢いよく立ち上がり、窓口から外を覗くと、ある男が立っていた。

 

黒い服で身を包み、厳ついグローブのような手袋を身に着けているアッシュブロンドの男。

 

 

「ラジラジ⁉」

 

「久しぶりですね、晶。様子を見に来れば、一時的とはいえ貴女のプリンセスナイトが帰還していたとは」

 

 

ラジラジ――もといラジクマール・ラジニカーントは表情を全く変えずにそれにしても、と続ける。

 

 

「リセットの繰り返しによってバグでも発生しましたかね」

 

「……もしかして盗み聞きしてたの? 全く、七冠ともあろうものが、アタシも含めてどいつもこいつも情けないったらないね」

 

「そんな軽口に付き合うつもりはありません。貴女もそうなのでは?」

 

「…………」

 

 

ラジニカーントの指摘に、ラビリスタは表情を引っ込める。

そして、重い口を開けるようにゆっくりと言葉を紡いだ。

 

 

「……ラジラジはバグって言ったけど、それは勘違いだ。バグならまだ良かったよ。……事態はもっと最悪になっているかもしれない」

 

「と、言いますと?」

 

「一ヶ月くらい前かな。アタシがこっちに戻ってきて現実からアストルムの状況を確認してたんだけど、ふとフィオの反応がソルの塔から完全に消えたんだ」

 

 

ラジニカーントの顔色が僅かに変わる。

 

 

「……確か、あのガイド妖精は再構築によって変異していたのでしたか」

 

「ああ、ミネルヴァが行方不明になったことで、おそらくソルの塔を管理する代理としてアストルムのシステムが自動で書き換えた可能性がある」

 

「……そもそもそれ自体がバグと判断できますが?」

 

「ちゃんと話聞いてた? そのフィオが行方不明になったんだよ?」

 

「………………………」

 

 

ラジニカーントは顎に手を当て無言で考え始めた。

それに配慮することなく、ラビリスタは続ける。

 

 

「……盗み聞きしてたのならその後は解るよね? フィオは変異してアメスと名乗るようになった。でもそのフィオは現在行方不明。にもかかわらずアメスと名乗る謎の存在がユウキにソルの塔の管理システムを介して夢から干渉しているんだ」

 

「……まさかとは思いますが、既にソルの塔は……」

 

「十中八九、いや確実に下手人の手によって管理を掌握されているだろうね。しかも、ソルの塔にはこれまでのループのデータやプレイヤーの記憶情報などもある。何者かがアメスを仕立て上げて、歪んだ現実の情報をユウキに与えて思考誘導しているかもしれない」

 

「下手人について目処は? 件の【レイジ・レギオン】ですか?」

 

「それは無いかな。ユウキから話を聞いている限りだと、リセット後は【レイジ・レギオン】はバラバラになってギルドとして活動していない。エリスからも見放されたんだろうね」

 

 

そこまで話して、ラビリスタは苦虫を噛み潰したような渋い表情をする。

 

 

「こういうあまりにも性格の悪いやり口を選択するのは別にいる。あいつだ―――――」

 

 

 


 

 

 

ユウキ! 戻ってきたのね!

まったく、意識を失って全然目覚めないし、あたしのところにも来ないから本当に心配してたのよ?

 

……それで、何があったの?

 

…………、なるほど、晶のところに……。ま、予想通りってところね。

あいつに限った話じゃないけど、七冠って基本自分勝手で秘密主義なところがあるからねぇ。

 

……ま、今はそんなことは置いといて。早くコッコロたんのところに戻りなさい。あの子、アンタが倒れてからずっと泣いてるのよ? 早く安心させなさい。

そして、ペコリーヌちゃんとキャルちゃんを助け出して、第一の特異点(ターニングポイント)を乗り越えるの。そうじゃなきゃユウキ達の現実は取り戻せない。

 

…………どうしたの、急に苦い顔をして?

もしかして、晶に何か無茶振りされた?

 

……自分なりに頑張ってみる?

 

………………………、そう。ま、頑張んなさい。あたしはこれからもここで、アンタ達の戦いが上手くいくことをこれからも願っているわ。

 

それじゃ、またね〜♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………そう。迷宮女王に何か入れ知恵されたのね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じゃあ、私のこの役割も潮時でしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで神の啓示の様で、おこがましくも楽しいと思っていたのですがね。

 

クククッ、ククク…………―――――




ラビリスタ
前作「プリンセスコネクト!」および「プリンセスコネクト!Re:Dive」の舞台であるアストルムを生み出した七冠(セブンクラウンズ)の一人。本名は模索路(もさくじ)(あきら)
『オブジェクト変更』という権能を用いてアストルム内の建物や自然などの形状を自由自在に変化させる能力を持つ。彼女のまたの名は迷宮女王(クイーンラビリンス)
どういうわけか、アストルムではランドソルでクレープ屋を営んでいてシズルやリノに協力してもらっていた。それもアストルムの真実を解明するためだとか……。実は、医学の心得がある。



補足
特異点(ターニングポイント)という言葉を使うのはミソラやミロク側のやつらだけです。
ソルの塔が掌握されたのに覇瞳皇帝は気づかなかったのか、と疑問に思った方は、ミロクが覇瞳皇帝に気づかれずに結界を展開し、後ろを取った事からお察しください。
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