メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~   作:上月 ネ子

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最後まで読めば分かりますが、今回はあんまり話は進んでません。


キミに集い、キミと歩むために

ユウキが倒れて数日、ランドソル内外では様々な人物が動き始めていた。

 

まず、【サレンディア救護院】の近所である【牧場】では、強力な魔法を感知した事で何事か調べに行こうとしたが、数日の間【王宮騎士団】が何かしら調査を行っているために迂闊に近づけなかった。

 

そして、ユウキが目覚める数日前。

【牧場】にて保護されている彼女は何かを強く感知し、気分の悪さを訴えてその場に蹲った。

 

 

「ら、ランラン⁉ どうしたべ⁉」

 

「ぅぅ……気持ち悪い……」

 

「ええ⁉ もしかして病気?」

 

 

ランファの病気を疑ったリマだが、それはランファがふるふるとゆっくり首を横に振ったことで否定される。

 

 

「数えきれない雑音が……頭に響く……っ」

 

「ざ、雑音?」

 

「ど、どういうことですか? ランファさんはマジックアイテムのお陰で変な音は聞こえなくなったんじゃ……」

 

「……まさか」

 

 

シオリとリンは息を呑む。

 

 

「ねぇランファさん。その雑音ってどこから?」

 

「…………」

 

 

ランファは震える指で、地面を指した。

マヒル達は釣られて地面に視線を落とすが、ランファが地面を指した意図が理解できず、首を傾げる。

 

 

「地面の……地下深くで……いろんな雑音が蠢いて……っ」

 

「蠢く?」

 

「少しずつ……街に……」

 

 

ランファはそのままランドソルへと視線を動かした。

 

一同はハッとして息を呑む。

未だ要領を得ないが、正体不明の何かが地下からランドソルへ向かっていくということだけは何となくだが理解できた。

 

 

「な、何が起こってるの……? この前の救護院のことと言い、何か穏やかじゃないわね……」

 

 

リマがそう呟いたとき、

 

 

「……っ、これは……!」

 

 

突如シオリは尻尾が逆立ち、何かを感じ取って口を開く。

 

 

「もしかして、お姉ちゃん?」

 

 

――シオリーン、シオリーン‼

 

 

「しおりん?」

 

 

何かがシオリに起きた事は間違いない。

一同は今度シオリに視線が集まった。

 

 

「お姉ちゃん、どうしたの?」

 

 

――いきなりなんだけど、大変なんだよ‼ ランドソルが、ユウキ君が――!

 

 

「え……」

 

 

ハツネからのテレパシーを受け、情報共有した【牧場】の面々は事態の深刻さをようやく把握することとなる。

 

 

 

 

 

一方ランドソル。

 

商店通りをウロウロと視線を彷徨わせ、手に持ったメモ用紙と店を交互に唸っているエルフの女性が呟く。

 

 

「……まったく、金に糸目はつけないとは言うけれど……」

 

 

まだ自分たちは事態をはっきりと把握できているわけではない。

親友が経営しているギルドを襲われてアキノは慌てているのも理解できるが、だからといって必要になりそうなものを粗方買い集めておきたい、とポケットマネーを差し出してきたのは性急過ぎるとも思う。

 

 

「まさか【王宮騎士団】が敵対するなんて、国家組織を相手にしたら生命線なんていくつあっても足りないわ」

 

 

物理的にも、社会的にも。

 

しかし、ギルドマスターのあの真剣な態度には中々反対しづらいものがあるので、エルフの女性――ユカリは買い物を続ける。

そんな折に、

 

 

「あっ、ユカリさん!」

 

「ん、この声は……」

 

 

聞き覚えのある声にユカリは振り返る。

 

 

「ミサキちゃん! 久しぶりね」

 

「お久しぶりです、ユカリさん! お買い物ですか?」

 

「ええ、ギルドマスターの指示で急に入用があってね。ミサキちゃんも、友達とお買い物?」

 

 

ユカリはミサキの傍にいるふたりの少女に目を向ける。

 

 

「この人が前にミサキっちが話してたユカリさん? ちょっすー☆ うち、スズナだよ!」

 

「ふふふ、ミソラって呼んでください★」

 

 

スズナとミソラは視線を受けて自己紹介する。

 

 

「最近、なんかガラの悪いのが増えたじゃないですか」

 

「……そうね。ミサキちゃん達は声かけられたりしてない?」

 

「そこは大丈夫です。……で、今日は学校は休みだし、数日前から変なのが彷徨かなくなったから気分転換しようって話になって……」

 

「ミソラっちがランドソル内を探検しよう、って話になったんだ〜」

 

「そうなのね……」

 

 

少々軽率なことをしている、と言いかけたがこの三人は事情を知らなそうだと思い、喉奥に言葉を引っ込めた。

しかし、これ以上は危険とも思い、ユカリは少々躊躇いながらもミサキ達にある提案をする。

 

 

「ねえ、もしみんなが良ければだけど、今から【メルクリウス財団】のギルドハウスに来ない? ちょっと事情を話しておきたいの」

 

 

ミサキ達は顔を合わせ、首を傾げる。

そして三人は事情を聞き、後でイオの耳にも入ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

『――……なるほどな。まさかランドソルを留守にしている間にそのようなことがあったとは』

 

 

時間は少し巻き戻り、ユウキが倒れて三日経った頃。

ルカはアンナに頼んで通信魔法を送り、とある人物が所属するギルドへ連絡を送っていた。

 

 

「今アンタ達は何処にいるんだい?」

 

『ランドソルから大分離れた山岳地帯だ。今から戻るにしても数日は下らないだろう』

 

「そうかい……」

 

『だが、急ピッチで戻ることにしよう。我らが同胞ユウキが倒れたとあれば――』

 

『――何してるデスかモニカさん! 韋駄天のごとくシュババッとランドソルに戻りマスよ‼』

 

 

話をしている最中に横から片言声の少女――ニノンが割り込んでくる。

 

 

『ええい、今は引っ込んでいろニノン! 事の経緯をルカ殿からまだ聞いているんだぞ!』

 

「……相変わらず騒がしいやつだねぇ」

 

 

キャンキャンと後ろで騒いでいる少女の顔を思い出し、ルカは苦笑いを浮かべる。

 

 

『……しかし、信じられぬな。あのジュン殿がそのような悪事に手を貸すなど』

 

「アタシ達も騎士団長とまだ対峙してはいないけど、こっちには【王宮騎士団】のやり方についていけない子が居てね。その子の話じゃどうも様子がおかしく見えたそうだ」

 

『ふむ……』

 

 

思案するようなモニカの声が聞こえる。

数秒経ち、モニカは続けて口を開いた。

 

 

『是非も無し。この目で確認しなければ現状何とも――』

 

『あのさ、ちょっといいモニカさん?』

 

『なんだユキ。今は【トワイライトキャラバン】と真面目な話をだな……』

 

 

またしても割って入る声が通信魔法から聞こえた。

 

 

『いやさ、アユミさん一足先にランドソルに帰っちゃったっぽくてさ……』

 

『なに?』

 

『じ、実はモニカさんが通信魔法で話してた頃に、『先輩のところに行かなきゃ』ってクウカが止める間もなく走っていっちゃいまして。放置プレイでしたけど、クウカ的にはナシ寄りのアリでしたね……』

 

『………………………』

 

 

長い沈黙の後、モニカは爆発した。

 

 

『あ、アユミめえ〜〜〜〜っ‼ 独断専行は止めろと普段から言っているだろう‼』

 

 

頭を掻いているのか、ガシガシと暴れる音がする。

その後ゼエゼエ、と息を切らしてモニカはルカにある事を頼む。

 

 

『すまないルカ殿……今からアユミの外見を伝えるからアユミと合流した場合は上手く使ってやってほしい。アユミはスニーキングが得意だから、そなた達の役に立つはずだ……』

 

「お、おう…………」

 

 

ルカはアユミという少女の特徴を教えてもらい、それを最後に通信魔法を終えた。

横で黙って聞いていたアンナが呟く。

 

 

「白き翼――【ヴァイスフリューゲル】か……。遠い異国の軍組織だと聞いていたが、もう少し硬派なギルドだと思っていたのだがな……」

 

「さっきの奴らが特別だろう。ギルドマスターは子供みたいな奴らしいし、メンバーもどいつもこいつも一癖あるらしいからねぇ……」

 

 

ふう、とルカは首を横に振りながらため息をつく。

それを見計らってか、ルカ達に後ろから声をかける者たちがいた。

 

 

「そちらも連絡が終わったようですわね」

 

「エリコとナナカか。何処に連絡を入れたんだ?」

 

「【ラビリンス】のシズルさんですわ。繋がりませんでしたが……」

 

「そうか。んじゃ、【トゥインクルウィッシュ】と合わせて現状二つのギルドは当てが外れたか……」

 

「それ以外だと、【自警団】、【フォレスティエ】、【メルクリウス財団】は協力してもらえるのが確定してる訳だけど……」

 

 

協力を勝ち取れたギルドはそれぞれ他のギルドにも声をかけてみると言っていたが、それでも微妙に心もとないと感じてしまう。

 

 

「ままならないな……」

 

 

ユウキが起きて戦うことができたなら、とないものねだりをしてしまう。

 

 

「ったく、レイのやつ今どこで何してるのやら……」

 

 

ルカはツムギからレイがランドソルを出ているという話を受けたときの事を思いだす。

 

ツムギの話では、ソルオーブなるアイテムを手に入れるために、大陸中を冒険すると言って数ヶ月前に旅に出たそうだ。

ギルド管理協会で【トゥインクルウィッシュ】がどちらに向かったかそれとなく聞いて、目星をつけて通信魔法を送っても空振りに終わった。

 

そろそろ戻ってくるかもしれない、とツムギは話していたが……。

 

 

「……そうだ、例の【リッチモンド商工会】とかいうのはどうだい?」

 

 

ルカは思い出したように尋ねる。

 

先の【サレンディア救護院】襲撃でのいざこざが原因か、【リッチモンド商工会】の息がかかっている傭兵たちが街中で姿を見せなくなった。

 

 

「まだハッキリとした事は言えませんが……どうやら【王宮騎士団】と揉めているようですわ」

 

「【悪魔偽王国軍】の話じゃ強力な魔法に傭兵たちを巻き込ませたみたいで、それが原因かギルドマスターのクレジッタって人が相当お冠みたいですぜ」

 

「内輪揉めってやつかい。ま、しばらくやってくれればこっちとしても動きやすくていい」

 

 

ふう、とルカはギルドハウスのソファに腰を下ろす。

 

 

「あとは、ユウキが元気に目覚めるまで準備をするまでさ」

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって、ランドソルから離れた大きな町。

空には飛空艇が滞空しており、町中はお祭り騒ぎだった。

 

その理由は――

 

 

「ふう〜、握手会もこれで一段落しましたね……」

 

「ライブツアーはまだ始まったばかりなのに、少し疲れました……」

 

「もう、弱音を吐いちゃだめだよ! 私達はランドソルにいない代わりに、大陸のみんなを安心させなきゃいけないんだから」

 

 

【カルミナ】のライブツアーによって、町にアイドルが立ち寄ったからである。

 

ライブツアーが始まり二日。

最初のライブ地で予定通りライブを終わらせ、ファンサービスをしていた彼女たちは、一通りイベントを終えて一息ついた。

 

 

「……あ〜〜、でもこれが何度も続くとなると疲労が抜けきれなさそうでちょっと心配です」

 

 

肩を落として大きくため息をつくツムギ。

 

 

「ランドソルの治安は悪いし、なんかとんでもない悪事も聴いたし、それはそれとしてライブツアーも忙しいし……。

レイ様の顔を見ないとやってられないですよ〜……」

 

「呼んだかい、ツムギ」

 

「…………、えっ」

 

 

ツムギは顔を上げる。

【カルミナ】の握手会会場に、新たに三人組がやって来た。

そのうちの一人は……、

 

 

「レイ様‼」

 

「やあ、久しぶりだねツムギ」

 

 

【トゥインクルウィッシュ】のレイ。

傍にはギルドメンバーであるユイとヒヨリもいる。

 

 

「握手会はもう終わると聞いていたのだが、一目見たいと頼んでブースに入れてもらったよ。……どうやら休憩していたようだね。出直したほうが良かったかな」

 

「と、とんでもないですレイ様! お久しぶりです、レイ様のご尊顔を見られただけで疲れなんて吹き飛んじゃいました!」

 

 

さっきまでくたびれた顔で愚痴を零していたのが嘘のように、ライブで見せた笑顔よりもなおキラキラした表情でツムギははしゃぎだす。

ノゾミとチカはそんなツムギを見て苦笑するが、

 

 

「……ん、待って。レイさん達ってことは」

 

「【トゥインクルウィッシュ】!」

 

「……ん? そうだよ。あたし達は【トゥインクルウィッシュ】! そしてギルドマスターのヒヨリでっす‼」

 

 

ギルド名を呼ばれてビシッとヒヨリは敬礼する。

続くようにユイも口を開く。

 

 

「えっと、ノゾミちゃん? わたし達がどうかしたの?」

 

「実は……――」

 

 

ノゾミはランドソルで起きた異変を詳らかに伝える。

 

ランドソルの治安が悪くなっていること。

【サレンディア救護院】が【王宮騎士団】の襲撃を受け、ペコリーヌが拘束されたこと。

そしてこの襲撃にキャルが加担したこと。

さらに、

 

 

「き、騎士クンが……⁉」

 

「きゃ、キャルちゃんがそんなことを……⁉」

 

「ペコリーヌが、本物のユースティアナ姫だと……⁉」

 

 

続くユウキへの襲撃により、ユウキは意識不明の重体。眠りから覚める兆候を未だ見せないこと。

現在のユースティアナを名乗る存在は偽物であり、獣人族の何者かが王都を牛耳り、キャルはその腹心であること。

 

これらの情報を、一週間前から【トワイライトキャラバン】が通信魔法で【トゥインクルウィッシュ】に伝えようとしていたことまで話すと、レイは顔を手で覆う。

 

 

「何ということだ……悠長に冒険をしている間に、ランドソルでそんなことが起きていたとは……!」

 

「れ、レイちゃん……急がないと!」

 

「ああ、もう少し情報を集めてから戻る予定だったが、そうも言っていられないな」

 

「皆さんはランドソルへ戻る予定だったのですか?」

 

「うん、ソルの塔へ入る方法を探してたんだけど、試した方法は全部ハズレでさ……。仕方ないから情報を集めながらランドソルへ帰ろうって話になったんだ」

 

 

チカの疑問にヒヨリが答える。

 

 

「ごめんなさいレイ様……。本当なら私たちもレイ様達と一緒に戦いたかったんですけど……」

 

「事情はわかっているよ。キミ達がライブツアーを始めているということから、戦いには参加できないのだろう?」

 

「あ〜、大分前から予定立ててたんだっけ? なら、仕方ないよね……」

 

「ですが、今から皆さんが急いでも王都へ帰るには一週間近く掛かるはずです。どうすれば……」

 

「飛空艇で送ってあげたいけど、私達ランドソルを出たばかりだし、騒ぎになっちゃうよね……」

 

 

帰路に時間がかかることに一同は苦虫を噛み潰したような表情で悩む。

しかし、ここで悩んでも仕方がないとヒヨリの一声で我に返り、【トゥインクルウィッシュ】は【カルミナ】に別れを告げて駆け出した。

 

そんな彼女たちが街を出ようとした矢先、近くの馬車から声をかけられる。

 

 

「急ぎの用事ですかな?」

 

「えっ?」

 

 

馬車から顔を出したのは恰幅の良い獣人族の男性。

男性はヒヨリ達を意味深に見つめたあと、ニッコリと笑顔を浮かべて馬車を指す。

 

 

「良ければ乗りますか? ワタクシはセントールスまで行きますが、途中まででよろしければお送りいたしますぞ」

 

「良いんですか! あたし達ランドソルに急いで帰る予定で……」

 

「待てヒヨリ」

 

 

ぱぁ、とヒヨリは笑顔で受けようとする。

それをレイはピシャリと止めて、男性を訝しげに睨む。

 

 

「申し出はありがたいが……貴方は何者だ? こうして対峙しているだけでも只者ではないことは解る」

 

「ハッハッハッ、ワタクシはただの貿易商人ですぞ。色々入用がありまして、ワタクシも急いでセントールスに戻らなねばならないものでしてな」

 

「…………」

 

 

核心をはぐらかされたような感覚に、レイは顔をしかめる。

 

 

「……よろしいのですか、ここで問答を続けても? このまま悠長なことをしていれば、ユウキ君の危機に間に合わないのでは?」

 

「なんだとっ?」

 

「ええ⁉」

 

「ど、どうして騎士クンを……」

 

 

唐突にユウキの名前が出てきて、三人は驚愕する。

 

 

「彼には個人的にとても世話になりましてな。恩返しの意味でも、彼に協力するのは惜しみませんぞ」

 

 

さあ、どうしますか?

 

男性に尋ねられ、三人は顔を合わせてから答えを出した。

 

 

 

 

 

そして、ユウキが目覚めてから数日。

ランドソルから遠く離れた大陸で、双眼鏡を構えて高台からある場所を観察している男がいる。

 

 

「そろそろ始まるかな……」

 

「何が始まるって?」

 

「ちょっとちょっと、忘れちゃったの? ランドソルであんな大変なことが起きてるってのにさ。そこまでバカになっちゃったのノウェ、ム…………」

 

 

そこまで言って、男は声を詰まらせた。

振り返るとそこには、明るい茶髪の少女が仁王立ちで男を睨みつけていた。

 

 

「ようやく見つけたぞオクトー! まさかエルピス大陸にいるなんて……」

 

「……あれあれ、久しぶりだねムイミちゃん。こんなところで会うなんて奇遇だね〜」

 

 

白を切るような軽い態度で男――オクトーは応対する。

それを見て少女はギリ、と歯噛みして吠えるように怒鳴る。

 

 

「その白々しい態度やめろよ! 今アタシをノウェムって呼んだだろ⁉」

 

「空耳じゃない? 君の名前はムイミちゃんでしょ?」

 

「しらばっくれても無駄だからな! お前が【王宮騎士団】から行方不明になる前に、ミロクと会ってるのは知ってるんだぞ!」

 

 

ミロク、という名前を聞き、オクトーはそれまで浮かべていた軽薄な笑みを引っ込めた。

 

 

「……見られてたのか。あいつがノウェムが近くにいたのに気づかないとは思えないし、おかしな事しなかったのはいつでもどうにでも出来るってこと? どこまでも腹が立つなぁ……」

 

 

ボソボソと小さく呟くオクトーの言葉が少女――ムイミには届いておらず、ムイミはドンドンと大きな足音を立ててオクトーに詰め寄る。

 

 

「オマエが本当に覚えてないなら、ミロクはオマエに接触してないんじゃないか?」

 

「……その知恵の回り方、誰かに入れ知恵でもされたかい?」

 

「おっ、よく分かったな! シズルが教えてくれたんだ。オクトーがエルピス大陸に行ったかも、っていうのもシズル達が教えてくれたよ。

さあ、年貢の納めどきだぞオクトー! お前が今何をしてるのか、しっかり話してもらうからな‼」

 

「余計なことを……」

 

 

こめかみを押さえてオクトーは天を仰ぐ。

 

 

「悪いことは言わない。ノウェム、君は今すぐランドソルに帰ってプリンセスナイトと合流するんだ。ランドソルまで僕が送っていくから」

 

「嫌だ! アタシはオクトーと一緒に戻るんだ!」

 

「悪いけどそれは無理だ。あの男が僕に接触してきたのを知ってるなら分かるでしょ? 迂闊にアイツの縄張りに入ったら今度こそ始末される。だから僕は今エルピス大陸に居るんだ」

 

 

ムイミとオクトーは睨み合う。

睨み合いが続く中、オクトーは何かを感じ取ったのか虚空に向けて話し出す。

 

 

「……なに、今こっちは取り込み中なんですけど……」

 

「オクトー?」

 

「…………、そう。始まったか。んじゃ、手筈通りにやればいいんだよね?」

 

「通信魔法か? 誰と話してるんだよ?」

 

 

ムイミを無視してオクトーは相槌を打つ。

しかしすぐにその表情は不愉快そうに歪む。

 

 

「…………了解。……ホント、アンタのその『瞳』ってプライバシーもへったくれもないね」

 

「おい、オクトー?」

 

 

オクトーはふるふると諦めたように首を振る。

そして次にオクトーはムイミの手を取り、もう片方の手を懐に伸ばした。

 

 

「お、おいオクトー、どうしたんだよ急に……」

 

「事情が変わったからね。僕も急遽ランドソルへ一度戻ることになった」

 

「おお! なら久々に――」

 

「ただ、残念だけどノウェム、向こうに着いたら現地解散だ」

 

「はあ⁉ なんでそうなるんだよ‼」

 

「さっき出てきたシズルって奴から聞いてないのかい? ランドソルは今ミロクのせいで崩壊寸前なんだよ」

 

「なんだって⁉」

 

「僕はそっちのフォローに向かう。ノウェムは……ま、彼らの味方になってあげなよ。丁度迷宮女王のプリンセスナイトも数日前に目が覚めて、行動再開してるみたいだしね」

 

 

オクトーは懐から結晶を取り出した。

 

 

「それって……転移結晶か? 今のアストルムでどこから……」

 

「それはヒミツ。ノウェム口軽いから教えてあげない」

 

「ええ〜⁉ そりゃないぞオクトー!」

 

「お喋りはおしまいだよ。……飛ぶよ!」

 

 

オクトーは取り出した結晶を天に掲げると、結晶から光が漏れ出し二人を包み込む。

ぎゃあぎゃあと騒ぐムイミの声を置き去りにして、二人はその場から消えた。




ムイミ
前作「プリンセスコネクト!」より続けて登場する、自称大悪党の少女。大きな剣を構え、繰り出される攻撃は破壊力が高く、誰も受け止めきれない。
天楼覇断剣という大剣を持ち、広範囲及び高威力の攻撃を繰り出すことができるが、現在彼女が持っているものはそのレプリカントの様だ。
本人の名前はムイミだが、彼女はその名で呼ばれるのは好きではなく、「大悪党ノウェム」と自称している。アストルムの真実を知っているようだが……。



アニバーサリーイベントで思ったこと。
ノウェム、結構オクトーへ湿度高めな矢印向けてますね。
あと、ミラとアスラが第三部に関わるキャラかと思っただけにあのオチはちょっと拍子抜けでした。
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