メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~   作:上月 ネ子

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【悪魔偽王国軍】が作戦に参加してない……?
と思う方もいらっしゃるので、ネタばらしの布石として彼女らから始まります。


不穏な脅威はいつもキミの影に潜む

一方その頃。ランドソル地下道では。

 

 

「強い魔力を感じる……始まったようじゃの」

 

 

【悪魔偽王国軍】の頭目イリヤは地上で作戦が開始されたのを感じ、天井を見上げる。

 

 

「その、本当に良かったのですか? 私達に同行して」

 

 

イリヤ達の後ろから同行するのは【王宮騎士団】から離れたトモとマツリ。

トモは申し訳無さそうにイリヤに尋ねる。

 

 

「気にせんでよい。元より地下道の調査はわらわ達が受け持つつもりだったのじゃ。それに、本調子を取り戻したとはいえ、離反したお主らを残してアジトを留守にするのも憚られたからの」

 

「自称伝説の吸血鬼とは思えない思いやりのある発言なの」

 

「やかましいわ! あと自称ではないわ‼」

 

 

ふよふよと浮いて前を陣取るミヤコは疑念の目つきでイリヤをからかう。

いつも通りの空気感にヨリ達は苦笑する。

 

 

「緊張感無いッスね〜。一応自分たちも作戦のためにここに来てるんスよね?」

 

「正確には、【悪魔偽王国軍】は……だけどね」

 

 

暗に自分達二人は違う、とトモは訂正する。

 

トモは昨日、ある情報を通信魔法で知り、地下道を調べようと外出しかけたところをイリヤに止められ、通信魔法の主とも話し合い、ペコリーヌ奪還に合わせて地下に潜ることとなった。

 

ランドソルの真下に近づいてきたとき、イリヤとアカリはあることに気づく。

 

 

「……ふむ、これは」

 

「あれ、この辺りって確か認識阻害魔法がかけられてましたよね、イリヤさん?」

 

「ふむ、どうやら粗方解除されたようじゃな。あ奴らがやったのか……」

 

 

どうやら安全に合流する手筈は向こうでつけておいたようだ。

ならばここからは問題ないだろうとイリヤは振り返る。

 

 

「トモ、マツリよ。事前に話した通りじゃ。見送りはここまでじゃ。あとは合流して地上の奴らに加勢せい」

 

「ですが、無理はしてはいけませんよ。特にトモさんは調子を取り戻したとはいえ、動けるようになったのはつい数日前なんですから」

 

「わかってます。ですが、今回ばかりは無茶を通します」

 

 

ググッ、とトモは握り拳を作る。

 

手に入れた情報が真実であるのなら、一刻も早く確かめに行かなければならない。

 

 

「皆さん、ここまでありがとうございました。【悪魔偽王国軍】は【王宮騎士団】でも要警戒対象ですが、この御恩は決して忘れません」

 

「それじゃイリヤちゃん、行ってくるッス〜‼」

 

「じゃからイリヤちゃんと呼ぶなと……!」

 

 

トモに続いてマツリも地下道を進み、振り返ってイリヤ達に手を振ってからトモを追った。

見送った【悪魔偽王国軍】の一同はそのまま来た道を戻り、遠くから感じる無数の魔力の反応を感じ取る。

 

 

「……これは」

 

「百や二百じゃきかんのう」

 

「……ん〜? でもなんか、変な感じなの」

 

「変って何が?」

 

 

ふと唸りだしたミヤコに対し、アカリは尋ねる。

 

 

「これ、魔物っぽい感じだけど……」

 

『どっちかっつうと、これはシャドウだな』

 

「ええ……⁉」

 

 

気配の正体をミヤコの代わりにドクロ親父が口にする。

一同はそれで驚愕し、武器を構えて警戒を露わにする。

 

 

「……お主ら覚悟は良いか?」

 

「ええ、少なくともあれらを地上に出すわけにはいきません」

 

「よし……、では行くぞッ‼」

 

 

イリヤの号令で、一同は駆け出した。

 

 

 

 

 

一方、地上の王宮裏通り。

 

 

零の太刀・水月鏡花‼

 

 

目にも止まらぬ剣閃を収め、次の瞬間目の前の騎士達は斬り飛ばされた。

ルカは倒れる騎士達が気絶しているのを確認してから、後ろのユウキ達に合図を送る。

 

ユウキ達はマホ達が広場に乱入した直前のタイミングで裏通りから王宮を目指し、ペコリーヌの救出を図ることになる。

もっとも、今ルカが倒した騎士団員が防衛に回っていることは予想の範疇であったし、もし王宮内に騎士団員がいるのならそれをあぶり出すのも彼らの役目であった。

 

 

「しっかし、思ってたほどこっちには人を回してないんだねぇ」

 

「クリスティーナ一人で事足ると高を括っているのかしらね」

 

 

3つの防衛地点はそれぞれ大隊レベルの騎士団員が置かれていると予想していたために、ここまで退けてきた騎士団員の数の少なさに仄かな違和をルカとミツキは感じ取る。

 

 

「もしかして待ち伏せされてるのかも……」

 

「本隊は将と共にいるということか……」

 

「ありえない、とは言い辛いですね。救護院を襲撃した際も、彼女は単独ではなくジュンさまや騎士団の方々と一緒にいましたし」

 

 

コッコロは2週間前の出来事を思い出し、ただ単独で猪突猛進するような戦士ではない事を口にする。

 

 

「……実際クリスティーナとかいうのはどれくらい強いんだい? 流れ者としてはどんなやつかいまいちピンと来ないんだよね」

 

「『壊し屋』として言わせてもらえば、クリスティーナ・モーガンの戦闘力は規格外、ですわね」

 

 

ルカの疑問にエリコは淡々と答える。

 

 

「規格外?」

 

「強さの指標として参考にならない、という意味です。

いわく、団員との訓練でも負け無し。攻撃も防御も彼女の前では意味をなさない……。

唯一叶うものは国王陛下のみ……だとか」

 

「国王陛下、って例の覇瞳皇帝とか言うやつ?」

 

「己を皇帝(カイザー)などと言うだけあって、そやつも規格外ということか……?」

 

 

クリスティーナよりも上の存在に居るものを想像した彼女らは、敵の勢力の未知数具合に頭を悩ませる事になる。

 

 

「これ以上は考えても無意味か……」

 

「そうね。それに必ず勝たなければならない、というわけでもないわ。私達はあくまでお姫様を助けられれば、後は幾らでも帳尻を合わせられるもの」

 

 

ミツキは【トワイライトキャラバン】の一同に視線を送る。

すると彼女らは何か覚悟を決めたように力強く頷いた。

 

そして、一行は裏通りを進み続け、広い場所に出る。

その先に待っていたのは――

 

 

「やあ坊や」

 

 

気さくに挨拶をする仮面をつけたクリスティーナ。

だが声音に反して彼女の表情は少々不機嫌気味である。

 

 

 

> クリスティーナさん……!

 

 

 

「ハハハ☆ やはり坊やはこちらから来たか」

 

「やはり、ですって?」

 

 

クリスティーナの言葉に引っかかったミツキは思わず疑問を口にする。

 

 

「フッ、キサマらがこの二週間、ランドソル中を嗅ぎ回っていたのは知っている。情報を集めていたのはキサマらだけではないということだ」

 

「では、あなた方は主さまがこちらのルートを辿るというのも……」

 

「当然事前に把握済みだ。こちらにも、情報集めが滅法得意な能力を持った奴がいてね」

 

 

 

> それは…………?

 

 

 

何か引っかかりを覚えたユウキ。

だが、考える時間は与えないとばかりにクリスティーナは片腕を上げて合図を送った。

 

 

「なっ……」

 

 

突如として左右から騎士団員の小隊に挟み撃ちにされる。

 

 

「やっぱり待ち伏せしていたか……!」

 

「フン、それにしても舐められたものだ。キサマらもここにワタシが防衛として置かれているのも事前に知っていたのだろう? てっきりワタシはイリヤ・オーンスタインもこちらに連れてくるものとばかり思っていたのだがな」

 

「何故そこでオーンスタイン卿が出てくる……!」

 

 

知人の名前が唐突に出てきて、アンナは食い気味に反応する。

 

 

「知れたこと。かつてランドソルの古い歴史にはあの女と同じ名を持つ悪魔がいたそうだ。そして二週間前の、あの猫娘がけしかけたキマイラを、奴は一人で容易く葬ったそうじゃないか!

私は確信したよ。それまで半信半疑だったが、伝説は存在したのだと! ならば心ゆくまで死合うことが戦士として至上の喜びだとは思わないか?」

 

 

それまで嬉しそうに語るクリスティーナはスン、と感情を引っ込める。

つまらなそうに彼女は続ける。

 

 

「だが奴は来ていない。こんな興冷めなことはない。故に――」

 

 

刹那、クリスティーナの姿がブレる。

 

次の瞬間にはユウキの目の前にいた。

 

 

「この乾きはオマエで代わりに満たすとしよう」

 

 

 

> なっ――⁉

 

 

 

突然目の前に現れたことでユウキは反応が遅れてしまった。

クリスティーナに素早く首を掴まれ、そのまま明後日の方向に投げ飛ばされてしまう。

 

 

「主さま!」

 

「この……っ‼」

 

 

同様に反応が遅れたコッコロとルカ達。

ルカは一同の真ん中に突然現れたクリスティーナを掴んで動きを止めようとしたが、またしてもクリスティーナの姿はブレて、その手は空振りに終わる。

 

その隙を逃さないと、左右から騎士団員達がぶつかってきた。

 

 

 

> みんな‼

 

 

 

分断されたことを理解したユウキは立ち上がって戻ろうとするが、それを遮るようにクリスティーナが立つ。

 

 

「おいおい。目の前にこんな美人がいるのに他の女に目移りとは、本当に気が多いみたいだなぁ、坊や」

 

 

からかうようにクリスティーナは剣の先をユウキに向ける。

 

覚悟を決めたユウキは剣を抜き、クリスティーナに斬りかかる。

クリスティーナは避けることはせず、それをそよ風に吹かれたように容易く受け止めた。

 

 

「まだまだ軽いなッ!」

 

 

その状態のままユウキを剣で押し飛ばし、転げるユウキに向けて剣を振り上げ追撃する。

 

ユウキは転げながら急いで回避するが、瞬時にクリスティーナが移動してユウキの腹を蹴り上げる。

 

 

 

> かはっ…………。

 

 

 

「逃げ回るのはナシだ。そんなのつまらないだろう」

 

 

ギリッ、とユウキは歯噛みする。

 

息を整えながら、ユウキはもう一度剣を構えて斬りかかる。

またしてもクリスティーナは避けず、ユウキの剣を弾いて今度はクリスティーナから剣を振る。

 

ユウキはそれを受け止めるも、バランスを整えるために数歩後ろに下がる。

そこからはもうユウキの防戦一方だった。

後ろに下がったユウキに対し、クリスティーナは追撃の一撃を何度も打ち込む。その度にユウキはどんどん下がらされる。

 

 

「どうした、そんな受けの戦いでワタシには勝てないぞ?」

 

 

 

> くっ……!

 

 

 

「それに――そんなザマであの猫娘を本当に助けられると思っているのか?」

 

 

 

> え。

 

 

 

ユウキは突然の言葉に呆けてしまう。

その隙を逃さないとばかりに、先程よりも力強く剣でユウキに叩き切る。

 

 

 

> うあああっ‼

 

 

 

勢いよく吹き飛ばされ、ユウキはまたしても地面を転げる。

クリスティーナは再び素早く距離を詰めて、ユウキの首を掴む。そして、近くの壁に叩きつけた。

 

ユウキは衝撃で肺の空気を無理やり吐き出され、何度も咽る。

だが、諦めるわけにはいかず、拳に力を込めてクリスティーナを睨む。

 

クリスティーナはそんなユウキの態度に薄く笑い、顔を近づけて口を開いた。

 

 

「一度しか言わないからよく聞け」

 

 

 

> えっ?

 

 

 

ボソリ、とクリスティーナは続ける。

 

 

「キャルを、助けたいのだろう?」

 

 

どういうつもり、とユウキは問う前に、ユウキはまたしても明後日の方向に投げ飛ばされる。

 

ユウキは立ち上がり、剣を振り上げながら近付くクリスティーナに対し、訳も分からず剣で受け止める。

クリスティーナは小声で続ける。

 

 

「誰かに聞かれるのも面倒だ。このまま続ける。よく聞け、いいな?」

 

 

ユウキはまだ理解が追いついていないが、おずおずと首を縦に振る。

そしてまたしてもクリスティーナの一方的な剣戟が始まり、その都度クリスティーナの話が届けられる。

 

 

「……察しているかもしれんが、キャルとワタシ達はある存在に洗脳されている。故にワタシ達はそいつの思惑通りに行動を強制されている」

 

 

 

> 洗脳……。

 

 

 

もしかして、とユウキは作戦会議が始まる前にコッコロと話し合っていたことを思い出す。

やはり、二人としてもキャルが唐突にあのような乱暴な行為を進んでやるとはどうしても思えなかったのだ。

故に誰かに行動を強制されているのではないか、という結論に至り、この作戦でキャルも取り戻すと決意したのだ。

 

 

「……だが、ある程度自由意思と自由行動が許されているワタシ達とは違い、キャルは完全に操られている。言動も、考えも、本人のこれまでの振る舞いを参考にしてあのような支離滅裂な行動をさせているのだから始末に負えない」

 

 

まるで本当に嘆かわしいと思っているのか、クリスティーナは辟易とした態度で首を振る。

 

 

「しかしそんな坊やに朗報だ。キャルを洗脳の軛から解放する方法が一つだけ存在する」

 

 

 

> 本当にっ?

 

 

 

「ああ。キャルに掛けられた洗脳はワタシ達に掛けられた魔法とは違う。ある存在の特殊な力でキャルの行動を強制させている」

 

 

 

> 特殊な力?

 

 

 

「そう。ワタシ達『七冠』やオマエのようなプリンセスナイトなどが持つ特殊な力で、だ」

 

 

 

> 七冠、って……。

 

 

 

その単語を聞いたのはつい最近。

それはアストルムと『現実』の真実を教えてくれたユウキの主であり――

 

 

「坊やならばそれを無効化出来るかもしれない」

 

 

 

> ど、どうやって……。

 

 

 

「簡単だ。()()()()()()()()()

 

 

その言葉に呆けてユウキは再び呆けて、力が抜けてしまった。

そのせいでクリスティーナの剣が受け止めきれず、またしても吹き飛ばされる。

 

ユウキは急いで立ち上がり、向かってくるクリスティーナを再び剣で受け止める。

 

 

「キャルに掛けられた洗脳は深刻だ。アイツの持つプリンセスナイトの権能にまで作用している。そのせいで本来なら魔物の傷を修復するなどという不可能な行為まで可能にするほど権能の限界を引き出されている。キャルの肉体を鑑みても非常に危険だ」

 

 

 

> それが、どうしてキャルちゃんを斬ることに……⁉

 

 

 

「オマエには特殊な能力を持つ相手に対し絶大な特攻能力を持つと聞いている。プリンセスナイトの権能を持つキャルを斬ればキャルの権能を、権能にまで作用している洗脳の軛さえも斬ることが出来る、かもしれん」

 

 

 

> …………ッ。

 

 

 

ユウキはあることを思い出し、自分ならそれが可能かもしれないと思い始めた。

だが、とクリスティーナは続ける。

 

 

「だがそれは絶大過ぎて、最悪キャルはロストしてしまうかもしれない」

 

 

 

> なっ……⁉

 

 

 

しかし、続けて語られたリスクを聞いて、ユウキの肩にずしり、と言葉にできない重い何かがのしかかった。

それを剣で感じ取ったクリスティーナはニヤリ、と愉快そうに笑う。

 

 

「さあ、覚悟を決めるときだユウキ――()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

ユウキは何も言えず、ただ剣を受け止めることしか出来なかった。

そして、クリスティーナに剣を弾かれ、無防備の懐を蹴り飛ばされる。

 

 

「ふん……」

 

 

話は終わりだ、とクリスティーナは笑みを止め、カツカツと足音を立ててユウキに近付く。

 

そこを、

 

 

ブラッディローズッ‼

 

 

クリスティーナの真下から赤黒い茨の鎖が放たれる。

クリスティーナを拘束しようとしたそれらは、姿がブレる彼女の前に空振りに終わる。

 

だが、

 

 

「……ちっ、弛んでいるぞキサマら」

 

 

クリスティーナは少し離れた場所で倒れている騎士達に向けて吐き捨てるように呟く。

その隙にコッコロがユウキに近寄り、回復魔法を唱える。

 

 

「駆けつけるのに遅れて申し訳ありません、主さま……!」

 

 

 

> 僕は大丈夫。

 

 

 

それよりも、とユウキはクリスティーナを見る。

二人を遮るようにルカ達は横に並び、アンナが両腕を広げると同時に彼女達の周りを鎖が囲むように包み込む。

 

 

「ああ……⁉」

 

 

 

> みんな!

 

 

 

ユウキとコッコロは駆け寄ろうとして、

 

 

「行きなさいユウキ君‼」

 

 

ミツキがそれを咎めた。

 

 

「貴方達はお姫様を助けるのよ‼」

 

 

 

> でも!

 

 

 

「勘違いしては駄目よ。この戦いはランドソルの御旗を取り戻すための戦い。あの子が死んだら全部終わりなのよ」

 

 

 

> …………ッ。

 

 

 

「あ、主さま……!」

 

 

ユウキは逡巡した後に、コッコロの手を引いて先へ進むことを選んだ。

暫くして後ろから剣戟の音が聞こえてきたが、それでもユウキは走ることを止めなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「……主さま、本当によろしかったのでしょうか?」

 

 

まだ割り切れないのか、コッコロはそうユウキに尋ねる。

 

ユウキも悩んだが、この作戦はあくまでペコリーヌを助け出すこと、これに尽きるのだ。

ならば自分達は先へ進まなくてはならない。

 

そうコッコロを諭すと、

 

 

「……確かに、主さまの仰るとおりです……」

 

 

コッコロもある程度踏ん切りがついたのか、顔を上げて走り出す。

そのまま進んでいると、グラグラ、と地響きによって地面が揺れ、二人は立ち止まる。

 

 

 

> 今のは……?

 

 

 

「凄まじい雷の魔法でした。方向は……」

 

 

コッコロはその方向に顔を向ける。

あちらはマホ達が突入した王宮門前の広場だ。

雷の魔法ということは、あちらには……。

 

 

「キャルさま……」

 

 

コッコロは唇をきゅっと噛み、溢れそうになる感情を押し込める。

ユウキはそんなコッコロに、優しく声を掛ける。

 

 

 

> 必ず二人を取り戻そう。

 

 

 

「……っ、はい!」

 

 

 

コッコロは力強く頷く。

二人は再び広場へ向けて走り出し、

 

 

 

――ドンッッッッ、ドンッッッッ‼

 

 

 

と強い雷撃に狙われる。

 

 

「……ッ⁉」

 

 

二人は咄嗟に飛び退くが、今の雷の魔法の音を聞いて困惑した。

 

 

「今のは……」

 

「――ふん、本当にこっちから来ていたのね。小賢しい真似を」

 

 

二人は声の主へと顔を見上げた。

 

不遜な態度で空から二人を見下ろす仮面の獣人族キャル。

キャルは建物の屋根に降り立ち、魔導杖を向ける。

 

 

「裏口から通って騎士団の意表を突くってわけ? 残念だけどタネはもう割れてるのよ。大人しく死を受け入れろ」

 

 

バチバチと、彼女の周りに稲光が舞う。

 

 

「キャルさま、もうやめてくださいまし! 本当のキャルさまは、このようなこと……!」

 

「止めてくれない? お前までそういうこと言うの。脳天気な単細胞女なんて一人だけで十分なのよ」

 

「キャルさま……!」

 

 

それが誰のことを指して言っているのかを察したコッコロは眦を吊り上げる。

もはや話し合いもこれまでか、とコッコロは歯を噛み締めて、槍を構えようとするが、

 

 

「主さま……?」

 

「…………?」

 

 

ユウキは一歩前に出て、コッコロを腕で遮る。

 

 

「主さま、何を……」

 

 

 

> コッコロちゃんは先にペコさんの所へ向かって。

 

 

 

「なっ⁉」

 

 

突然のユウキの提案にコッコロは驚愕する。

 

 

「お待ちください! お話が違います!」

 

 

コッコロは作戦を始める前、ペコリーヌにたどり着く前にキャルと出くわしたときは協力してキャルを助け出そうと話し合っていた。

だが、ユウキは一人でキャルを相手取ろうとしている。

 

 

 

> キャルちゃんは、僕が助ける!

 

 

 

「無茶でございます、主さま! 今のキャルさまの実力はとてもではありませんが主さまお一人では……」

 

 

 

> お願い、コッコロちゃん。コッコロちゃんは先に……。

 

 

 

「嫌です! わたくしはもう、主さまのお側を離れたくありません‼」

 

 

コッコロの脳裏に浮かんだのは、呼吸もできず、何も言わず、死んでいるように倒れているユウキの姿。

たった半日離れていただけで、コッコロの与り知らぬ場所でユウキは瀕死の状態に陥っていた。

もしここを離れれば。今度こそ死んでしまったら。

コッコロは涙目でイヤイヤ、と駄々をこねる子供のように首を振る。

 

だが、そんな話し合いを待ってくれない者がいる。

 

 

「あうっ」

 

 

コッコロはユウキに抱き寄せられ、地面に一緒に伏せる。

同時に地面を揺らすほどの雷撃が落ち、立ち上がったとともにキャルが魔法を放ったのだとコッコロは遅れて気づく。

 

 

「ピーチクパーチクと……、暢気な奴らね」

 

 

不愉快そうに、キャルは地面に降り立ち、ユウキ達に向けて魔導杖を向ける。

 

 

「どいつもこいつも……あたしを虚仮にしやがって⁉ あたしなんて眼中にないって言いたいわけ⁉」

 

「え……」

 

 

それはどういう意味か。

 

問う前に、キャルは魔力を込めて光線を打ち出す。

ユウキは一歩前に出てそれを剣で受け止める。

 

 

「主さま‼」

 

 

 

> コッコロちゃん、早く!

 

 

 

「ぅ、ぅぅ…………っ」

 

 

コッコロはふるふると震え、ゆっくりと先へと振り返る。

 

 

「必ず、必ずペコリーヌさまと共に戻ってきます……っ」

 

 

 

> うん。

 

 

 

「だから、申し訳ありません……っ」

 

 

コッコロは王宮へ向けて走り出した。

それを横目で見届けてから、ユウキはキャルに向き直る。

 

キャルはつまらなそうに吐き捨てる。

 

 

「お前をぶっ殺すのに一分もいらない。その後あいつを追いかけて殺すだけ。囮なんて無意味よ」

 

 

 

> 違う。僕はキャルちゃんを助けるために残るんだ……!

 

 

 

「ほざけ」

 

 

それを最後に、キャルは再び杖に魔力を込める。

 

ユウキは剣を握りしめ直す。

そして、クリスティーナのあの言葉を思い出した。

 

 

 

――さあ、覚悟を決めるときだユウキ――オマエにキャルが斬れるかい?

 

 

 

きっとコッコロは止めるだろう。

だからコッコロはこの場にいて欲しくなかった。

これからユウキがすることを知れば、きっと他に方法があると言うだろう。

あるいはクリスティーナは嘘をついていると言うかもしれない。

 

だがユウキは知っている。

クリスティーナは嘘をつくような人ではない。いい加減なことを話す人ではない。

故にこれしか方法が無いのだろう。

 

 

「さあ、今すぐ死に晒せッ‼」

 

 

ここに、ユウキの覚悟を決めた戦いが始まった。




ミツキ
前作「プリンセスコネクト!」より続けて登場する、怪しさ満点の妖艶な医者。取り扱い注意な薬品や植物で相手を混乱させる姿はまさに闇医者である。
ランドソルでは優秀な医者と噂されているが、それはあくまでいわくのある評価である。後ろめたいものを抱える患者相手には法外な治療費を要求することも。
ついたあだ名は『隻眼の悪魔(ワンアイドデビル)』。眼帯で隠した瞳は滅多なことでは晒さない。記憶喪失のユウキの記憶を取り戻すという約束で彼を治験薬にする。実は動物が苦手。



公開された日に第三部を見ましたが、なんと言えばいいのか……。
まず、懲役終わってなさそうでしたね。あと、シェフィがロストしたから【美食殿】があの子を忘れてしまった、という考察も見て「そういやそうだった」と愕然としました。
現状情報量が少なすぎて考察のしようがないですね。
ただ、新キャラは滅茶苦茶いるみたいですが、ボスキャラっぽいのはオープニングには登場してなかったのでどう物語を落着させるのかも注目だと思います。
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